――日本の予想外は雲龍型が二〇隻以上も造られたという点で、現代戦では使い物にならない大きさなので、コア・ファイター搭載改修の施された初期の六隻のみが現役に留まり、その他は輸送艦や病院船、運搬船、工作艦、情報収集艦に転用された。その穴を埋める方策が迷走したため、結局、超大型空母の少数保有と強襲揚陸艦の航空運用で補う事が決まったのは1948年、その計画艦の建造認可が1949年という有様で、連合艦隊は航空戦力が致命的に不足していた。64Fのガンダムの保有が黙認されたのは、本来、戦争の主力となるはずの連合艦隊の航空戦力が(日本の航空戦力一括管理の意図のもと)空軍に移管されてしまったことによる混乱、海軍航空隊の存廃が正式に決まったのは、予算対策でしかないことへの士気低下が大きく関係していた――
――本来、日本もここまでの混乱は想定していなかった。管理が空軍になる『空地分離』を想定していたためだが、扶桑海軍航空隊は井上成美の施策で空軍化しつつあったために、混乱に却って、陥った。さらに、訓練のために、陸上配置になっていた空母航空隊が特に混乱し、自主的に艦載用装備を外した整備班長が日本の役人にその場で叱責され、ショックでその場で自殺する事件が相次ぐなど、お互いの時代の違いによる倫理観の差がモロに悪手になった。結局、元の艦上機部隊は旧任務の継続が指令されたものの、混乱は(ジェットへの世代交代も重なり)収まらず。連合艦隊の組織的行動力は決定的に損なわれてしまった。また、元々が無線による意思疎通に消極的であった海軍のプロペラ機乗りは、高度に管制を受ける近代空戦への適性が存外に低く、機種転換訓練で落する者も多く生じてしまった。かといって、空自出身者は普通の形での空母への着艦など、経験がない。それも空母航空隊の形骸化に大きく作用してしまった。64Fが肥大化した理由は、陸軍出身者であろうが、空母着艦技能を有する者が集中していたからで、再教育する必要がないからでもあった。事変世代は多くが(徴兵者を中心に)軍を既に去っていたが、職業軍人になった少数の者が屋台骨となっていた。その代表格が七勇士であった――
――この長い戦乱によって、扶桑の軍備は一気に戦後の冷戦期の水準へ飛躍した。旧式の高射砲や機関砲は一掃され、最低でも、ボフォース40mm機関砲が使われるようになっていった。これにより、魔女の世界の各国と隔絶した性能の兵器を持つようになった扶桑だが、同時に、軍縮が許されなくなった事でもあった。連合国構成国の大半が、長引く戦乱で既に財政的意味で死に体になっていたからだ。扶桑は温存されていた国力の大半を太平洋戦線に使うことになったが、扶桑が軍事大国のままで生き残るのを異様に恐れた、日本の左派が戦乱を酷くしたと言ってよかった。のぞみたちはその『戦後日本の扶桑への平和主義気取りの高慢さ』を打ち砕くために、『魔女の世界に集められた』と言ってよかった――
――日本は実際、2010年代の後半くらいまでは扶桑への介入に熱心であった。だが、のぞみの一件は強い衝撃であったし、海軍の作戦遂行能力を実質的にゼロにしてしまう失態が同時に発覚した後、(日本が疫病や災害の頻発期に入り、扶桑は戦時に入った事もあり)日本は扶桑への関心を無くしていった。だが連邦を組んだ以上、政府や省庁レベルでの交流と運営は続いていた。これはのぞみの一件で『うかつに介入すると火傷ではすまなくなる』と認識し、今度は『触らぬ神に祟りなし』になったからだ。扶桑としてはたまったものではない。政治問題化した『教職出身の予備士官の復職』問題は結局、文科省とのせめぎあいもあり、『大学講師への転職は即時に認めるが、小中学校の教諭には、数年のクールダウンを挟まければならない』という風に妥協された他、『魔女への覚醒者は然るべき年齢になった後に軍学校へ入るか、漁師になるか、MATに入るか』というコースが定められ、軍への入隊下限も15歳と定められた。これは兵器の高度化などで、一定程度の基礎学識が必要となった関係である。同時にRウィッチ化が前提の雇用形態になり、この言葉は自然と使われなくなっていく。そのため、名うてでありながら従来の規定の年齢で一線を退いた坂本は後年、『昔気質の士官』と評されることになる。坂本本人は『小学校も戦時の繰り上げ卒業だし、中高をぶっ飛ばして、大学にいくわけにもいかんだろう?』と笑い飛ばしているが――
――こうした変革を受け入れられなかったのは、事変当時~直後の子どもであった『1945年に16~9歳であった世代の海軍系の魔女』によく見られた。皮肉なことに魔女の世界では、派遣に積極的であった陸軍航空隊のほうが総じて洒落た文化に寛容な気風を強く持っていたのである。志賀の失態が報じられると、海軍航空の『集団主義と不寛容さ』は世間の批判の対象になり、俗に言う『炎上』の事態に陥った。また、宮藤芳佳が(プリキュア化を理由に)空軍に移籍したことは海軍航空にとって大打撃となり、海軍航空は(史実通りに)移籍したエースたちの後釜になり得るほどの優秀な人材を得られず、長い冬の時代に突入することとなった。対照的に、陸海の気骨ある優秀な人材の巣窟となった空軍は(亡命カールスラント軍人の教導もあり)瞬く間に最強の空軍に成長していく。必要と政治的理由から、富嶽や連山などの戦略爆撃機の保有も続けられた(連合国で戦略爆撃機を大規模に保有可能な国が、扶桑とブリタニア以外に残っていなかったため)。日本は扶桑の戦略爆撃機に強い拒否反応を示したが、他国が『持てない』という事情によりやむなく認めた。そうでなければ連合国軍は崩壊してしまうからだ。日本とて、現地の国際秩序の完全な崩壊は望んでいなかったからである。こうして、扶桑は日本とは違い、国際秩序のために軍拡を選んでいく。つまり、史実でのアメリカ役を引き受けたのである。日本は安全保障の持ち回り制を模索していたが、他国がダイ・アナザー・デイ含めての戦乱で『すっかり衰弱しきってしまっていた』ために叶わぬ願いとなった。カールスラントが如何に連合国で重要な役目を担っていたか。その証明となってしまった。結局、日本連邦はカールスラントと違い日本主導で『時代不相応の兵器の輸出』を禁じた事もあり、連合国間のバランスは日本連邦一強になっていった。この時期に欧州の軍需産業が一気に衰退してしまったこともあり、扶桑は自由リベリオンを育成し兵器工場にする事で、兵器生産の負担を軽減させようとする。そのために以後、扶桑においてでさえ、自主制作の戦闘機を作る機運は失われていく。橘花や火龍は『徒花』として、かろうじて残存した機体が博物館に展示される事になった。本来は梅花、閃電も存在していたが、横須賀航空隊の暴走で失われてしまっている。震電は残存個体が『ジェット化の素体』に使用され、原型通りには存在しなくなっている――
――震電は残存個体の残存パーツを集めて組み上げられた個体が日本に提供され、映画撮影に使用された。これは一号機と二号機用に制作されていたものと、制作中であった三号機との寄せ集めであった。幸い実機用のエンジンは少数が現存しており、その中でもっとも出来の良い個体が載せられる様子はドキュメント番組となった。計測された性能は時速765km。P-51Hにはわずかに劣ると思われたが、通常運用では優るものであった。これは扶桑の金属精錬技術が史実より良いために、機体重量が軽く仕上がった事、ハ43の離昇出力が2200馬力を超えていたことによる。また、非武装状態では770kmに達し、(高オクタン価ガソリンの恩恵もあるが)日本最速のレシプロ戦闘機の座を得た。レシプロ戦闘機として世に出なかったことには変わりないが、もしティターンズが現れなければ、10年は一線を張れただろうという予測も出た。ティターンズはその点で、魔女の世界の科学技術の進歩の速度を『史実よりも加速させた』のがわかる。また、そのせいで魔女が対人戦に不向きな存在である事が強調されてしまった事から、扶桑皇国さえも『厄介者』と見なすようになり始めた。事変世代が屋台骨になっていたものの、本来その後継ぎとなるはずの中堅世代が大量に抜けた事は補えるはずはなく、魔女兵科の解消は本気で検討され、1949年6月某日、天皇にその旨が上奏されていた――
――昭和天皇は上奏に訪れた将校にこう述べたという――
「私としては、竹井が若い頃から骨を折り、祖父や父を説得し、ここまで育て上げた魔女の兵科が、生まれてから30年ほどで『徒花』と嘲られるのは忍びないのだ。せめて、此度の戦が終わるまで、現状維持できないのか?竹井に残された時間は……そんなには長くはないだろうし……」
竹井少将(元)はこの時期には病の悪化で床に臥せっており、医者からも『あと五年持てば……』という体調と診断されていた。それを知っていた天皇なりの温情であった。結果的に、実権を伴う『国家元首』としての最後の発言(議会制民主主義と文民統制を明確にした新憲法の正式な施行が戦時を理由に、戦後に変更されたため)となった。この発言の効果もあり、魔女兵科は今しばらくの時間を得られ、その間に『混乱防止のための準備』を進めていく。とはいえ、在籍人数自体は全盛期の半数以下に減少していた事、その更に過半数が『平時に戻れば、家庭の事情で退役する』事が見込まれており、その運命は既に決していたと言えた。
――戦後日本の自由な空気の流入により、扶桑の旧来の支配階級は苦しい立場に置かれた。日本から『特権階級』と見なされ、攻撃の対象となったからだが、扶桑は華族当主の従軍が当たり前であり、一代華族も存在する。その兼ね合いもあり、結局『金鵄勲章の扱いを将来的に瑞宝章と統合する』(等級の廃止)事、戦後に『危険業務従事者叙勲』を作る事で日本側と折り合いがつけられた。また、軍人の若年での叙勲が日本側に問題視されたが、外国では普通のことなので、日本側が(戦争回避のために)妥協した結果でもあった。従来の基準での叙勲対象者への実質的な実務面の代替として、個人感状の授与の増加とセットに二階級昇進をつける事が決議された。また、『この変更後も、旧来の制度下での勲章の価値が損なわれることはない』との一文も明確に記される事になった。ミーナの人事目でのミスは日本連邦の運営に大きな影響を残したわけだが、後年、『魔女の世界』で日本人が異様に恐れられる理由でもあった。ミーナは鷹揚かつ寛容で鳴らしていた分、『特異体質を見抜けなかった』(表向き)という失態は傾国を招いたとして、白眼視された。同性愛によって『目が曇った』だけなら、まだ言い訳しようがあったが、同僚に責任転嫁してヒステリックに当たり散らしたのは言い逃れのしようのない行為であった。その責任を追求されたカールスラントは『501統合戦闘航空団の運営権の放棄』で償ったが、ドイツが無理に軍縮を行わせたため、失態を口実にリストラが敢行され、多くの優秀な軍人が路頭に迷う事になった。本国に嫌気が差して機材ごと亡命し、日本連邦軍に入隊する事例も相次いだ。結局、カールスラントに残されたのはごく一部の慰留に成功したベテランとエース(史実の国防軍所属者)のみであった。とはいえ、扶桑も扶桑で教官になれそうな者たちがごっそりと抜けてしまった事で、次世代の育成に支障が生じていた。日本も『平時になれば、どうせ復員してしまうから』という理由で、扶桑軍の人員育成を軽視していた。それもあり、カールスラントの軍人達は多くが教導部隊に回され、前線への人員供給を担っていた――
――日本人が魔女の世界で恐れられるようになったのは、エディタ・ノイマンを作戦会議の場で公然と殴打する外交官がいたり(彼女が文化財を軽視する発言をしたのが原因だが)、カールスラントそのものを莫大な違約金と賠償請求で本当に潰しかけたからであった。エディタはこの出来事を期に、軍務に身が入らなくなり、二年後の1947年にマルセイユの慰留も固辞し、正式に退役。表向き(教え子のマルセイユの手前)はガランドの退役を理由にしてのものだが、鬱病を公にしたくなかった故であった。また、この不祥事がドイツにリストラの大義名分を与えてしまうことになり、急降下爆撃偏重を理由に、エルンスト・ウーデット、ヘルマン・ゲーリングの両名は(史実が史実なので)実質的に失脚。実権のない名誉職に追いやられた。コンドル軍団出身者もこの際に、多くが連座的に公職追放が検討された。この動きを察知した彼女らは直ちに予備役編入を願い出、日本連邦に渡った。(それはカールスラントにコンドル軍団の名誉剥奪が通達されたのと同日であり、史実と180°異なる実情の判明で、後年に名誉回復される)カールスラント空軍の中枢を担っていた人材がごっそり抜けてしまったため、本来は『問題児』であるので、ドイツは(早々に手放すつもりの)エーリカとマルセイユの両名を昇進させざるを得なかった。両名は永住権も取得した義勇兵になっていたが、強引に軍籍を維持させ、他のエースたちも(日本連邦に取られないために)必要と判断された(人望のある)一部が軍籍復帰と名誉回復の処置が取られた――
――一連のカールスラントからの『エクソダス』により、日本連邦空軍は一挙に王者への道を歩み始めた。魔女兵科の人材不足が(表面的には)問題ないレベルに回復したのは、彼女らの亡命による。Rウィッチ化処理(タイムふろしきで、魔力の最盛期にあたる14歳前後に戻させる)が施されるわけだが、人的意味で(大戦期の世代が)日独相当の国々の魔女の最盛期(戦後世代に強大な魔力がある可能性は低いため)にあたり、その後の世代に『ほとんど期待できない』からで、ある意味では残酷な事実だった。逆に言えば、この時代さえ終われば『1990年代までの4、50年は平和になる』事が保障されていることでもある。誰かが『仮初でも、数十年の平和はいいものだよ』と述べたというが、第一次世界大戦から二十年で戦争が起こったのを考えると、それは的を射ていると言えた――
――人型兵器はオーバーテクノロジーという事で、一部の司令部直属部隊の特権と定められた都合、通常部隊の戦後水準への更新の速度が早められた。とはいえ、F-4などの第三世代以降の大型戦闘機は野戦飛行場での運用が不可能なため、A-4攻撃機を独自に改造し、戦闘機として運用する部隊も生じた。これは海軍航空出身の部隊に多く見られ、第二世代以降のジェット戦闘機は総じて、扶桑海軍系の人材の好みではないので、A-4は特に愛された。ジェット時代の軍用機の格闘性能の問題は可変戦闘機やコスモタイガーの時代でなければ完全には解決しないので、同機は(独自改造で)戦闘機として少なからずが運用され、その戦歴に華を添えた。格闘戦厳禁のMe262からは考えられない光景であったので、亡命したカールスラント空軍関係者は強いショックを受け、自国の惨状に涙したという――
――防衛装備庁は艦上機を早期に『F-14とF/A-18系に更新したい』意向であったが、載せられる船が(供与艦以外にない)少ない事から、当面はその前の世代の機体を空母航空隊の主力とせざるを得なかった。機体の陳腐化を恐れる防衛省の意向もあり、Gフォースの航空部隊には可能な限りの高性能機がかき集められ、実質の攻勢への抑止力となった。空母の更新は命題でありながら、財務当局が(民需優先の志向により)強く渋った事により、1949年に(建造)がようやく始まるという有様であった。これは既存空母が二次大戦型であることを財務当局が認識していなかったことによるもので、建造が認められたのは(財務当局の)仕事している感を扶桑にアピールするためであった。とはいえ、戦後基準の空母は(米軍の場合)6000名近い人数が乗り込むので、戦時でなければ量産の許可は出なかっただろう。史実の戦訓もあり、空母は後衛、戦艦などは『弾除けの囮』というドクトリンが確立された。とはいえ、艦種としての戦艦が健在である世界線であるので、艦隊決戦を見越し、特に有力な戦艦は艦隊決戦の際には、護衛を従え、隊列から離れ、艦隊決戦に挑むという条件も付与された。元々移動砲台扱いが続いていた戦艦にとって、M動乱以来の流れは福音であり、ここ数年は(対空専任の護衛艦の増加もあり)ゲリラ的に運用されていた――
――日本はかつての恐怖と金銭面の都合からか、一隻の戦艦に万能性を志向する傾向が強く、被弾率の低下よりも『耐弾能力を限界にまで上げる』方向の近代化を志向した。結果、水爆に耐える戦艦を生み出してしまった。これは宇宙戦艦用の資材、それも、宇宙戦艦ヤマト以降の世代の新鋭艦用のもので補強したおかげだが、船体自体は酷使で疲労が蓄積してる戦艦も多く、代替が計画されるに至った。その場繋ぎの役目も、水戸型戦艦の役目であった――
――敷島型と三笠型は移動司令部のような位置づけであるので、水戸型は現場判断で出動できる戦艦の中で最強であることとなり、その同型艦の竣工が急がれたが、仕事が減った小規模の造船会社からの猛抗議で、中・小型艦の工事が優先されてしまうというゴタゴタにより、結局、水戸型三番艦の完成は先送りにされてしまった。そのゴタゴタも、64Fに期待が集まる理由であった――
――立花響は(装者としての)活躍の機会が減ってしまい、本人も落ち込んでいたが、プリキュア因子の覚醒で名誉挽回を意気込んでいた。前世と違い、ヒーリングステッキを必要とせず、(パートナー妖精なしに)シンフォギア展開状態からシームレスに変身可能になるなど、成長力はそのままであった。この時期は変身を『なじませる』目的の訓練も兼ね、キュアグレースの状態で過ごしていた。身体的に『元気の見本』のような状態でグレースになっていることには『気が引ける』との事だが、『ステッキで片手が塞がる』事が無くなっているのは、響の特性と思いが『力を変質させた』ためだと推測されている――
――とはいえ、まさかのプリキュアの前世持ちであったことは本人もびっくりであった。装者としては(歴史の変化で)本来ほどは活躍できなかったので、(現役時代と違い、格闘技に自信があるので)プリキュアとして、名誉挽回と意気込んでいた――
――のぞみたち『主力』の半数があちらこちらの世界の騒乱に駆り出されていたので、彼女は魔女の世界の守りについていた。現役時代と異なり、ガングニールの突破力が付与された状態になっているので、戦闘能力は現役時代の比ではない。ただし、現役時の浄化技は使えなくなっているというデメリットがあるが、現在は(浄化を必要としない敵であるので)問題は発生していない(元々、救うことを第一に考えていた事もあり)。グレースの状態では、声のトーンが高くなっており、立花響と同一人物である事は(事情を知るか、親しい人物でもなければ)判別は難しい。また、現在のところ、さらなる後輩たちがいないので、末席の立場である――
――ある日――
「のぞみちゃんがすごくパワーアップしちゃったから、他のプリキュアが霞んだってのはきついなぁ」
「そりゃそうだって。現役時代にないフォームに目覚められた上、パワーアップの源泉が最強クラスのマジンガーだよ?生物学と別の次元で『人外』にクラスチェンジしたわけ。そのマジンガーの事で揉めて、喧嘩したんだけどさ。月を削っちゃって……」
キュアミラクル曰く、その喧嘩では、お互いに最強フォームで喧嘩したものだから、並の宇宙戦艦などは塵に還るようなエネルギーをぶつけあった事、ステゴロでは(経験差とパワーの差で)圧倒されたとのこと。
「魔法が効かない(ZEROとの融合の恩恵で、並の攻撃系魔法では、ダメージを一切負わない)から、ステゴロに持ち込んだけど、途中からはパワーと経験の差でボコボコ。なんとか戦えるくらいの気力はあったけど、長引いてたら、完全にノックアウトされてたね……」
「うへぇ……」
アレキサンドライトスタイルのキュアミラクルが途中から圧倒され通しという点に、キュアドリームのエターニティフォームのポテンシャルが窺えた。
「どういうパワーアップなの?」
「神を超え、悪魔も倒し、銀河すらも切り裂く。そう言ってた。本気になれば、銀河を切り裂くのも簡単だと」
「どこの伝説巨神?」
「そそ。その気になれば、エクスカリバーの応用でイデオンソードの真似ができるとか。もっとも、その上の次元の能力への進化を狙ってるらしいけど」
「元の世界で装者してた時、綾香さんが似たような事言ってたな……。その時は年上ってわかんなかったし、調ちゃんの姿だったから、本当だと思えなかったけど」
「あの人、本職の軍人で、それも戦闘機乗りだから、スピード戦術は通じないよ。おまけに、見かけによらずの馬鹿力でさー……」
「なんかあった?」
「毎年の模擬戦で圧倒され通しでさ。あの人、元から魔女で、なおかつ剣術の達人、それで光速で動けるじゃん?おまけに、パワーは下手なプリキュアが子供扱いときてるから……
「本当の姿、見たことある?」
「あるよ。式典や勲章の授与とかの時は本当の姿で受け取ってるから、あの人。日本で面が割れてるから、プライベートもないとかで、姿を変えてるんだって。元々、日本で、ある程度は知られてたらしくて」
黒江の本当の容姿は(この時代には)同僚の間でも『レアモンスター』じみた扱いであることが、キュアミラクルの口から、キュアグレース(立花響)へ語られた。
「それで、事が終わった後も使ってるんだ」
「まぁ、調ちゃん本人も公認してるしね。姿自体を骨格レベルで変えられるから、指紋や目の認証もすり抜ける。肉体自体を作り変えるわけだから」
「うへぇ……。でも、私を覚醒めさせた『因子』って、誰でも持ってるわけじゃないっしょ?」
「うん。だけど、何らかの縁があれば、唐突に覚醒めるんだって。現世でどういう存在でも、ね」
それはキュアアムールのことだと思われる。彼女は現役時代はアンドロイドであったが、転生後に『高町なのはのコピー体』の『シュテル・ザ・デストラクター』(星光の殲滅者)になっていたが、プリキュア因子の覚醒で、キュアアムールになっている。プリキュアとしての相方が不在なのだが、元々、魔法使いとして強力であったなのはのコピーなので、戦闘能力自体に問題はない。この時点では、ミッドチルダの守りについている。
「どういう事?」
「なのはちゃんには、ある出来事で生み出されたコピー体がいるんだ。今はたぶん、外見上は18歳前後になってると思うんだけど、その子もプリキュアになった。あたし、のぞみちゃんに次いで知名度あるから、変身してたほうが、のんびりできるんだよねぇ。昔みたいに隠さないでいいしさ」
現役時代は正体を隠していたが、ドラえもんの世界に生き返ってからは、大っぴらにプリキュアとして過ごしているキュアミラクル。ドリームの力で、彼女も『ある程度は記憶が共有されるようになった』とのこと。
「なんか、昭和の終わりの頃のアイドルみたいだ」
「あなたの何代か後の後輩には、プリキュアの姿でアイドルしてる子が出てくるよ」
「え~~!?」
「本当」
キュアミラクルは前世の記憶から、2025年のプリキュアの存在を知っていたようだ。そして、プリキュアオールスターズがとある次元で『相打ち』になったという『巨悪』に触れ始める。
「本題に入るけど、あたしらが集められた本当の理由は……別の次元の自分たちの仇討ちだよ」
「どういう事?」
「その次元の戦いの生き残りが、キュアルージュなんだよ」
「えーーーーー!?」
「仮面ライダー……昭和のだけど……彼らを異形にした技術を持つ、ナチス・ドイツの生き残り。別のあたしらが相打ち同然になりつつも、打撃を与えたって話の裏が取れたんだ。連中はあたしらにとっても、不倶戴天の敵って事」
キュアミラクルは、自分たちの並行同位体がバダンと相打ちになって斃れた(戦死した)事をキュアルージュから聞かされ、複雑な心境であるらしい。扶桑の戦争に加担した理由の一つは『ことは(キュアフェリーチェ)の面倒を見てくれた、キュアドリーム(のぞみ)への恩返しと、バダンから日本(扶桑)を守るためだと告げ、プリキュアオールスターズそのものの並行存在がバダンとの死闘で次々と倒れていった事を示唆する。その中には自分(キュアグレース)も含まれている事は確実。
「それで、この世界の日本軍に?」
「一匹狼で対抗できるほど、連中はみみっちい組織じゃないからね。扶桑軍組織のバックアップは必要だよ。それと、生活の問題もあるし」
意外と現実的な理由だが、扶桑に与するのは、扶桑軍のバックアップが組織との戦いに必要であるからで、意外に打算的であった。もはや、日独の戦争といっていいレベルの話である上、妖精たちのバックアップが事実上失われている状況なので、扶桑軍に与するのは自然な流れである。
「たしかにねぇ……」
装者としても、SONGのバックアップを受けていた身でもあるので、ある程度は妥協したグレース。戦う相手がナチスの残党というのは、亡霊に出会ったような気分である。アドルフ・ヒトラーの妄執を引き継いだ者たちが自分たちの主敵になるのは、妙な感覚を覚えるのだった。