ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百四話「扶桑の戦争の展望、朝日奈みらいの語り」

――扶桑海軍はM動乱で大正期建造の艦艇の陳腐化を思い知らされたため、新型艦艇は軒並み大型化した。怪異が主敵では無くなった影響で、艦艇の被弾率低下を気にする必要が無くなったからである。また、M動乱での戦訓で、艦艇に万能性を求めるのが当たり前となったのも、大型化を促進した。戦艦が軒並み300m級になったのも、安定性と速力の両立のためだ。急速な港湾設備の刷新によって、その運用が可能となったからである――

 

 

 

 

 

 

――大戦前の列強は前弩級戦艦や弩級戦艦の更新となる新鋭艦の計画を立てていた。圭子のもとに集められたのも、そんな計画倒れに終わった戦艦たちの青写真であった――

 

 

――扶桑は1920年代末~30年代前半期に建造した『紀伊型戦艦』が戦機に恵まれぬままに『時代遅れ』の烙印を押された事に狼狽した。本来は1950年代まで使い倒すことにしていたからだが、兵器の発展は紀伊型戦艦を瞬く間に時代遅れにしてしまった。結局、大和型戦艦の血統のみが生き残ることになったが、艦政本部は大いに不満であった。だが、戦艦の発達が事実上、大和型戦艦で止まってしまったのは揺るぎない史実であった。それと全くデザインの異なる戦艦を作ることは、もはや不可能であったので、大和型戦艦をもとに発展させるしか選択肢はなかったのだ。そんなわけで、(予算確保のためもあり)新鋭艦は大和型戦艦のデザインを引き継ぐのが慣習となっていった。副砲の廃止と、対空兵装のミサイル・レーザー化、CICの導入などの革新はあれど――

 

 

 

 

――大和型戦艦の系譜がその強大さを武器に、連合軍のシンボルに君臨していく時代の到来とともに、欧州が世界の中心である時代の終わりは訪れた。ブリタニアはクイーンエリザベスⅡ級の竣工こそ成功したが、急速な軍縮と空軍の近代化の代償で、かつての強大な海軍は数年で失われ、日本連邦のイエスマンに成り下がっていった。ロマーニャはタラント空襲からの一連の戦乱で軍備どころでは無くなったが、ヴェネツィア公国の衰退に伴う『安全保障上の理由』での資金援助でインペロ級戦艦の完成に成功。ロマーニャ国民の心の拠り所となっていった。その点ではもっとも幸運と言える。カールスラントは疎開先で内乱となり、国家存亡の危機に陥った。その影響で海軍どころではなくなり、頼みのビスマルクとティルピッツも荒廃し、使用不能な状態になってしまうなど、散々であった。オラーシャも海軍の新生を試みる前に分裂・終わりなき紛争に突入したため、結局、扶桑海軍はこれらの理由で、アジア太平洋の安全保障を一手に引き受ける羽目となり、身勝手な軍縮は左派の夢物語に終わったのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑皇国は近代化の名目で空母を少なくされたのを、戦艦で補ったので、傍目からは大艦巨砲主義に見える。そのため、日本のマスコミに批判されたが、魔女の軍事的有用性の低下で、通常航空機の空母が多数必要になった現状こそが想定外であった。そのため、流星や天山などの旧式攻撃機もまだ残っていた。A-1を載せられぬ空母のほうが多かったし、純正の扶桑産飛行機を望む部隊が空母部隊には多かったのだ。流石に、この頃には陳腐化していたが、残存機は愛好され、円満に退役していくのである。行政的には円満になりつつあるが、扶桑軍人の(失態を犯した際の自殺癖は『武士時代の名残りが色濃く残っていた』故で、それを払拭するには、新しい教育制度を身に着けて育った世代が成人する『数十年後』までの時間が必要である(日本には、旧軍人への侮蔑感情によるものか、『潔く、サクッと死んでくれる分、おめおめ生き延びた史実よりマシだ』という失礼な声まで存在する有様であった)。無論、公になれば炎上必至のものだが、それを公人が(悪びれずに)言ってしまう点に、戦後日本の歪みが凝縮されていた――

 

 

 

 

――無論、日本政府も罰を与えているが、戦後日本の人々は軍人を『戦バカ』と侮蔑しており、軍馬育成に力を入れていた軍人を『時代遅れのノータリン』と罵倒し、その軍人を金属バットで殴打し、最終的に死なせる事件も起こるなど、日本政府が真っ青になる事件が頻発し、外務省は対応に苦慮していた。競馬と軍部を強引に切り離す事で生ずる『納入を待っていた適齢期の軍馬はどうすんの?』という問題、牧場の生産馬をすべて競走馬に切り替えたとしても、オグリキャップやメジロマックイーンのような、超強い芦毛の競走馬が生まれるには、(少なくとも)数十年の時間と繰り返しの世代交代が必要である事から、扶桑は『あんたらの言うことはわかったけど、適齢期を迎えた軍馬はどうすんだよ!!』と猛抗議。結局、その軍馬達は(怪異に探知されにくい事から)当初の予定通りに従軍することになった他、気性のおとなしい個体は時代劇映画撮影のための『俳優』に転職していった。それに伴い、軍馬の代わりとして、四輪駆動車やオートバイが急速に普及していったのも事実であった。(扶桑陸軍は怪異に探知されるのを異様に恐れた故に)自動車やオートバイは『プロパガンダ向けの』限定的な配備に留まっていたが、M動乱からの流れで必要となったため、一気に増加させようとしたが、日本側が民需を優先させた弊害で、予定の六割にもそれらの配備数が達しない始末であった――

 

 

 

 

 

 

――扶桑は史実より道路状況はマシであったが、関東大震災が起きていない世界線であったため、東京もそれ以前の面影が色濃く残っていた。だが、ダイ・アナザー・デイを契機に急速に再開発が進んでいった。東京府と東京市も東京都に統一・衣替えし、行政区も史実通りの23区に再編されるなど、日本側の体制に近づいた。それに伴い、火力発電所などの近代化も急がれた。だが、建設用地に古の怪異の封印が確認されるなどの混乱もあり、1949年の段階では、怪異討伐のほうが優先されていた。それに駆り出されていたのが、64Fの留守部隊の要員であった。主力に比べれば地味な仕事だが、扶桑の安全確保には欠かせない仕事であった。扶桑は国土再開発を戦争と同時に行えるくらいには余裕があったが、それでも、古の強大な怪異の討伐は本土の低練度の部隊には荷が重いため、64Fの人員の派遣が要請され、実行されていた。実質的に高練度の人員の駆け込み寺の様相を呈していたからで、キュアルージュやキュアジェラートなどはその仕事を任されていた。プリキュアたちが扶桑の老人らの信頼を勝ち得たのは、このような討伐活動の功績、キュアドリームとキュアフェリーチェの最前線での活躍が大きかった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑社会が戦後日本のような自由な空気を獲得するには、古いしがらみを持たぬ世代が主流になるのを待たねばならないが、それでも、前時代の支配階級が史実ほどは没落していないなどの点が異なる。華族制度も(法的特権の将来的な廃止を条件に)存続し、魔女の供給の一定の保証は得られた。これにより、既存の華族は『魔女の供給』と『古の支配階級であった事の名残り』以外に肩書の意味を失っていくが、黒田のように、空気の変わった実業界で成功を収める者も生まれてもいく。黒田は1948年に財団を(自身の嫁入りのための貯金を準備資金に回した)興し、野比財団と手を組んだ。その事と、出資者名簿に扶桑きっての名士が揃っていた事から、財団は急成長。華族の中でも有力な家柄の当主の設立というのが効いたのである。そんな扶桑にも、プリキュアたちは少しづつ地位を得ていた(それぞれの思惑と打算はともかくも)――

 

 

 

 

――転生先の肉体が扶桑軍人のそれであった者もいるのもあり、プリキュアたちは必然的に扶桑皇国の防衛戦略に組み込まれた。実質的に妖精たちとは切り離された状態であるのもあり、各々の合意を得たうえで、のぞみ、ラブ、響(シャーリー)、ゆかり、ゆり、咲の古参組+α(第一期プリキュアと、プリキュアで軍階級が一番高いキュアマカロン)の五名の合議で、扶桑に与する事を正式に決めた。それに伴い、階級もヒロイン活動に見合うものと言うことで、最低でも中尉、リーダー格は佐官スタートという規則も定められた。1947年の冬のことである。折しも、日本の粛清人事で、憲兵は組織ごと縮小改編。将校への左遷の嵐で軍紀が緩みに緩んでおり、軍内の司法調査権も与えられた。これは日本の大衆が扶桑憲兵の解散を目論んだが、自衛隊の『警務隊』に吸収させるのかという(至極当然な)問題が表面化したことで、統廃合の議論がグダグダになったための緊急措置であった。憲兵は一般大衆にも横暴に振る舞っていたので、扶桑の国民もこの措置を容認。プリキュアたちは強大な権限を(血の献身と引き換えに)与えられたことになる。例えば、夏木りんは記憶の回復後は裏方に専念しており、軍内での司法警察権の行使という役目を勤めており、キュアルージュの姿で一般兵士の狼藉を止めたりしていた。戦争が長引くと、どうしても市中で一般大衆に狼藉を働く不届き者が出てくる。組織を否定された憲兵に代わって、誰かがその取り締まりをする必要があった。いわば、法的には次代の警務組織である警務隊までの繋ぎの扱いであったが、同組織への移行に時間を要する(人員の『間引き』を日本が主導したが、憲兵の人数があまりに多すぎてそれにすら四苦八苦していた)ため、そのまま継続されている。いつしか、世間的に『64Fの特権』と認識されるようになった。これは日本側が構想した『警察が軍を取り締まる』事に大衆が拒否反応を示したことと、逆に政財界の大物に遠慮なしに捜査できる存在の必要性を日本側に説くことで扶桑の大衆を納得させるため、64Fの幹部に司法警察権を与える方法が取られたのである。警察は反対したが、扶桑は『別の国』であるので内政干渉となる。結局、大卒扱いになっている幹部級にのみその権利を与えるという事で落ち着いた(扶桑は『戦前日本に近い学制』であったので、中学校卒が高学歴に入る。高校以上は富裕層の特権のようなものであったので)。師範学校卒の人間たちへの救済措置だけでも一苦労なのに、憲兵のリストラを強引に実行すれば、扶桑で内乱が起こりかねない。それを鑑みての措置であった――

 

 

 

 

 

――憲兵はY委員会による議論の末、思想調査を行い、問題のない者に警務隊の身分を与える事、思想的に問題のある者は追放の後、理由をつけての収監(終身刑)か、国外追放となった。これは史実と異なり、(大衆に横暴で知られていたが)八割方は職務に忠実であったためで、その彼らから仕事を強引に奪い、未来永劫の犯罪者の烙印を押すことに慎重な意見が相次いだからである。プリキュアたちが警務官を兼任する状態が続いたのは、憲兵の解体で『軍内部の秩序が崩壊する』事への懸念が相次いだための折衷策であったのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――64Fは政治的にも特殊な部隊になりつつあった。粛清人事で弱体化した扶桑軍の上層部が陸海双方の優秀な人材を温存するための避難場所として活用したり、最前線に常に置かれる事から、前線の将兵からの尊敬も得られるというメリットから、人員を出向させる本土駐屯の部隊も相次いだ。将官が常に出陣する事から、他国からは揶揄されたが、指揮官先頭の範であると日本連邦では褒め称えられていた。これにより、他国でも『将官も出陣の覚悟は決めとけ』という風に規範が変化していく事になる。これは真田志郎の『どんなに機械が進歩しようが、最後は人間の意思が物を言う』という持論が伝わったからで、21世紀では『指揮官先頭』に反論も出ていたのが、23世紀の軍事学的変化がそれを否定してしまうこととなった。こうして、想定外の状況にも対応でき、常に勝ってくる者=いい指揮官という図式が日本連邦で確立されていく。この図式の影響はヤマトの帰還後に『旗艦』として計画・建造されたアンドロメダ級に『強力な個艦戦闘能力』が付与されるなどして残り、それはさらなる次世代の戦闘空母『ブルーノア』で頂点に達する――

 

 

 

 

 

 

――キュアグレース(立花響)は装者仲間が芸能人を兼務しているのに、驚き方が大げさであるのを指摘されたが――

 

「あの二人は、芸能活動と戦いを分けてるからね。プリキュアとアイドルを兼任するってのは考えなかったんだ」

 

「現役時代はあたしだって、魔法使いって公にしてなかったさ。今は面がモフルン共々割れてるし、魔法つかいってのもね。故郷の世界も滅んじゃってるから、生き返った直後は身の振り方を考えたけど、はーちゃんが世話になったし、恩を返さないと、魔法つかいがすたる…ってね」

 

「のび太さんの街、なんか耐性あるよね」

 

「気になって、前に聞いたら、のび太さんの時代から20年前くらいはオバケのQ太郎、10年前には、パーマンが近くにいたみたいで、ほとんど間を開けずに『少し不思議な光景』が続いた関係で、慣れちゃったんだって。あの辺の人達」

 

「なにそれ……」

 

「あたしも似たような事言っちゃったよ。それで、今じゃ関東近郊の人達が耐性持ちなんだって(オバケのQ太郎やパーマンが主に関東近郊で活躍したため)。で、その間に、あたしら(プリキュア)の現役時代のことがアニメとしてやってたそうでね」

 

「本当?」

 

「うん。だからさ、今さら正体隠すのもなーってなってね」

 

「この世界は戦争中なんでしょ?なのに、なんで、平和そうなの?」

 

「最前線が離れてる場所だし、史実と違って、日本軍の防空体制がきちんとなされてるからさ。史実であんなザマになったのは、燃料もなかったし、高射砲の弾もなかったからだよ。たとえ飛べても、爆撃機のいる高度に上がれなかったから」

 

「どうして?」

 

「日本軍の史実の技術力じゃ、爆撃機のいる高度に上がれるエンジンが造れなかったんだ。燃料も、その頃のは、江戸の頃の行灯油に毛が生えたような代物。こんなんで、飛行機のエンジンがまともに動くと思う?」

 

「……」

 

「だから、この世界の日本軍はジェット機の実用化に血眼になったんだ。ジェットエンジンなら軽油の類で動くし、プロペラ機より遥かに速く飛べるから」

 

扶桑軍は以前よりジェットに目をつけていたが、既得権益やレシプロ機の性能向上などもあり、中々、進展しなかった。だが、震電などでも『勝てない』究極のレシプロ戦闘機『P-51Hの存在を知らされた扶桑は、メタ情報でジェット戦闘機の開発に邁進したが、独自研究の殆どを『横須賀航空隊の愚行』で失う事態に陥り、結局は史実通りに『米国製ジェット機が主力に収まる』事になった。この愚行を起こした張本人らは(事件を起こしたのが『若い魔女』であった事もあり)最前線送りにされ、平均で半年から一年で戦死していった。その間にF-86、F-104、F-4Eと、順当に世代交代はなされ、扶桑軍が元来好んだ形の飛行機はすっかり消え去っていた。

 

「米軍が史実で戦後に作った装備で、第二次世界大戦の頃の米軍と戦う。これこそ、彼らにとっちゃ、大いに皮肉だよ。ま、負けた国の研究を思う存分ぶんどってたんだ。ツケは払わないとねぇ……」

 

「なんか怖いよ」

 

「エンジニアの勉強すると、戦勝国が敗戦国の技術や資材を根こそぎ奪っていく事があるのを知ることになるし、それで終始貧乏だった国の存在もね」

 

それは戦後直後にソ連に金属という金属を奪われた上、ついぞ『ソ連の衛星国』以外の何者にもなれなかった東ドイツの事であった。(とはいえ、内乱の末に、史実ドイツよりも悲惨極まりない有様となったカールスラントは、国家的に立ち直れる要素がほとんど残っていないが)カールスラントへの追求を日本がある程度のところでやめたのは、ドイツ自身による『先祖の同位体への断罪』が目に余るレベルに拡大し、とうとう内戦を誘発してしまったからである。同時に、扶桑への日本の干渉が収まるきっかけにもなった。これにより、疎開先からの撤収どころか、民族存続すら危うくなり、NATOがやむなく軍政を引く羽目となった。

 

 

「それと、日本の役人って、どうして高圧的なの?自分のひいじいさんくらいの世代の人たちなんでしょ?相手は」

 

「自分たちは、世界を敵に回して、惨めに負けた先祖達と違うって思ってるのがいるんだよ。2020年代に40の終わり~60代前半の人たちに多いね。そのへんの世代は戦前からの反動が大きかった時期の教育で育ったから。自分たちもバブルで散々に遊び呆けて、その下の世代のことを一考だにしてなかったくせに、上の世代を見下すんだから」

 

「なんかあったの?」

 

「父方の親類に、就職氷河期の影響で苦労してた人がいたんだ。あたしには優しかったけどね。その人、就職氷河期と不景気でえらく苦労してて、周りに見下されてたんだ。そのことを思い出してね」

 

みらいの実家にも、かつての就職氷河期の煽りを受けた世代の親類がいたようである。その親類に良くしてもらった思い出があるからか、その上の世代であるバブル世代にはネガティブな思いがあるらしい。世知辛いが、彼女も親類の全員は好いていなかった事がわかる。

 

「自分たちが若いときの夢を、まだ追ってるってやつかね?21世紀も20年超えた時代からすりゃ、バブルの絶頂期なんて、大昔だってのにさ。こっちは生まれた時から不況だっての」

 

「溜まってるねぇ……」

 

「2000年代初めに生まれた身としちゃ、一昔前や二昔前の事言われてもね」

 

「あたしも、花寺のどかとしては、2007年くらいだったからねぇ……」

 

 

「2007年?」

 

「どうしたの?」

 

「のぞみちゃんが現役張ってた頃だよ、その年」

 

「つまり、のぞみちゃんは……」

 

「あなたと一回りは違うことになる。こんなのは世代が違うと、ザラだよ。なぎささんは1990年生まれって聞いた事あるし」

 

「プリキュアになってなきゃ……?」

 

「同年代の姿で会うことはない年齢差ってこと。あたしも、本当はいちかちゃんと五歳近くは離れてるしね」

 

みらいはいちか以降の後輩に言っていないが、いちかの現役時代には『本当は大学生』である。現役時代の姿で会っていたし、滅多に会えなかったので、本当の年齢を言う機会を逸したのだ。現在も、お互いにややこしい事情持ちなので、余計に言えなくなったと、みらい(キュアミラクル)は〆る。

 

「あたしたち、お互いに生きてる時間は無視してたんだね」

 

「そういう事。のび太さんに至っては、違う時間軸の自分同士で連絡取り合ってんだよ?それに比べりゃ、生きてる時代が多少違う程度は可愛いもんさ。のぞみちゃんやラブちゃんはスマホのない時代の学生だよ?」

 

「文明って、たった数十年で変わるんだね」

 

「20年から30年くらいの時間があれば、基本は同じでも、形態はすごく変わるよ。あたしらの親世代の若い頃の連絡手段なんて、公衆電話やポケベルだよ?それが携帯電話とそれについてるメール機能に変わって、電子手帳とかはスマホが取って代わった。ゲームだって、昔はカセットが主流だったのが、今じゃ多種多様な媒体で出てるじゃん?」

 

「TVゲーム、やるんだ」

 

「今は人並みにするよ?最初は父親が『学校で、友達と共通の話題を持てるようにしよう』ってことで買ってきたのが始まりだったな~……」

 

この時点では普通にゲーマーの類だが、現役時代は普通に『父親が自分をダシにして、ゲーム機を買ってきた』と告白するみらい。

 

「あたしも、前世は病弱な時期が長かったから、おとーさんが早いうちに買ってくれたっけ……」

 

二人は現役時代の背景的に、TVゲームを早いうちから保有できたようだが、のぞみの時代までは『ある程度の年齢までは買い与えない』という認識が生きており、のぞみ曰く、TVゲームを買ってもらえたのは『13歳の頃』だという。のび太も小学校高学年になって以降にTVゲームを買う許可が出たように、1980年代末~2000年代後期くらいまでは、そうした風潮が残っていたのだ。

 

「この世界の『今』、あたしらの時代よりのどかだけど、命が軽くない?」

 

「明治がそんな昔じゃないし、武士がいた時代から100年も経ってない時期だからだよ。おまけに、この世界は怪異のせいで、史実より死が身近にあるからね。武士的な倫理観が死んでないのさ。日本は戦争が終わった時に捨てたけど、この世界じゃ、祖父母世代の人間たちがその時代を見た人たちだからね。だから、失態を犯した時に腹を切るって思考になりがちなんだよ。先祖が武士だった人たち、普通に軍隊にいるし。だから、日本も下手な事を言えないって困ってるらしいよ」

 

忘れられがちだが、扶桑は武士の時代が終わって、100年も経っていない頃である。また、日本で言うところの『戦前の倫理観が生きている』ので、たとえ、扶桑が太平洋一の大国の地位に数百年も君臨していても、東洋の田舎者と見なされるのは当たり前の時代であった。例えば、カールスラントは『日本人を怒らせるとどうなるか?』を国家存亡の危機に陥る事で思い知ったわけである。

 

「だって、士官級はすぐに失態=ハラキリだよ?武士の時代じゃあるまいし」

 

失態を犯した扶桑軍人が、やたら腹を切りたがることはプリキュアから見ても『時代錯誤の風習』であるが、彼らとしては『家族に類が及ばないように』という考えからの行為であった(史実では、遺族がその後も責められた軍人は数多いが)。

 

「この世界の日本って、なんか血腥くない?」

 

「史実よりはマシだよ。織田家がそのまま天下統一できた世界線だから」

 

扶桑はハイカラな信長率いる織田家が権勢を保ったままであった世界線の国家なので、史実ほど舶来コンプレックスはない。むしろ日本の舶来コンプレックスの強さに呆れる側だった。また、軍事強国・科学立国として君臨していたカールスラントに指導層が憧れるのは当然だが、日本が強引に親米英派をヨイショし、史実の親独派の尽くを失脚させてしまったので、カールスラントは扶桑からの資金援助のツテを失い、困窮に喘ぐ事になった。(史実の第二帝政が生きている事がわかったために方針転換されるが、ドイツが史実の戦前の支配階級を排除しまくったせいで、カールスラントは以後の長い間、『衰弱した元・列強』という屈辱に甘んずるしかなく、本土帰還も『夢物語』扱いされるようになるのだった)

 

「ただ、これからは違う。この戦争が終わっても、東西冷戦の時代に入るだろうから、日本はこの世界の歴史を『史実に近い形』に修正しちゃったことになる。つまり、敵にまんまと利用されたってわけ」

 

「あたしたちにできることは?」

 

「この戦争の被害を減らして、敵の思惑を挫くこと。扶桑の国力じゃ、アメリカ大陸の全部の占領なんて、できっこないからね。敵の軍隊をハワイと西海岸で完全に叩き潰すしか、きっかけも掴めない。問題は日本をどう説得するか……」

 

扶桑の国力は大日本帝国(最盛期)の10倍近いが、それでも、大陸全土の占領は不可能だ。日本の大衆はリベリオン本土への侵攻に忌避感を持つが、そうでもしないと、この戦争は『いつまでたっても』終わらないのだ。日本の左派には『原爆を東京か大阪に落としてもらい、軍部の腐敗した上層部を根こそぎ粛清した上で、扶桑の連中の鼻っ柱を根本からへし折る』と考えている者が多い。立派に利敵行為だが、戦後日本の人間たちは『平和主義』を振りかざして、利敵行為を正当化する。扶桑の戦争がグダグダな原因である。

 

「あたしたちで、ホワイトハウスを抑えられない?」

 

「それほど、敵もバカじゃないさ。ティターンズは死の美学に酔いしれているけど、リベリオンの国力を削ぐことも目的だから、できるだけ戦争を続けさせたい。それに、ティターンズの幹部は南斗聖拳や北斗琉拳、元斗皇拳の使い手だから、あたしたちでも、下手に手を出したら、火傷するよ」

 

「漫画で聞いた拳法だ……実在する世界があったんだ」

 

「だから、あたしらは北斗神拳の継承者を探してるんだけどね」

 

 

如何にプリキュアといえども、南斗六聖拳や元斗皇拳などの使い手が相手では一筋縄ではいかない。プリキュアで『猛者として鳴らした』者を一蹴できる力を有するからで、ジャミトフ・ハイマンはおそらく、バスク・オムを粛清するために、意図して『裏の親衛隊』として集めていただろうとは、シャア・アズナブルの見解だ。

 

「見つかってないの?」

 

「南斗と元斗は陽の拳だからね。北斗は陰だから、継承者探しが難しいんだ」

 

確実に彼らを倒すには、元斗皇拳に対抗できる才覚を持つ、北斗神拳の当代伝承者を探すしかないということで、野比財団やアナハイム・エレクトロニクス社は北斗神拳伝承者を探している。

 

「ティターンズの総帥だった奴が、なんで集められたのかって疑問があるけど、ローゼンクロイツと繋がってたって話もあるからね」

 

ジャミトフ・ハイマンは裏社会と密接に関わることで、ティターンズの組織を築き上げた。その過程で、かつての中国に伝わっていた暗殺拳の数々を知り、当代伝承者らを配下に加えていったのだと推測されている。かの少林寺拳法すら戦乱と先代総帥の早世で衰退しているのに、暗殺拳は脈々と受け継がれていた点も疑問だが、彼らの力はダイ・アナザー・デイで証明されている。キュアドリームとキュアハートを(現役時代の最強形態であるのにも関わらず)容易くズタボロにしたからだ。

 

「スーパープリキュアの状態だったドリームとハートを、軽くズタボロにしてくる連中だからね。だから、あの二人も特訓してきたわけで……」

 

歴代でもトップ5の猛者とされた、その二人の最強形態を敵幹部は歯牙にもかけない。プリキュア界隈はこの数年間、その事実に震撼していた。ドリームの思考に、その事実が影響を及ぼしたのは間違いないだろう。

 

「あたしの今の故郷の世界にいる師匠(風鳴弦十郎)みたいな人が、他の世界にもいるんだ……」

 

「素で超人な人っているからねぇ…。未来世界には、MSを生身で粉砕できる格闘家のおじさんがいたっていうし」

 

「本当?」

 

「うん。あのドモン・カッシュさんのお師匠さんだったとか?」

 

キュアグレースはここで、素でプリキュアが霞むような超人たちの存在を知らされた。東方不敗もまさか、死後に『すごい格闘家のおじさん』として語り継がれるとは思っていなかっただろうが、若い頃はチャキチャキの日本人だったと噂されるなど、謎の多い人物だ。また、ドモンが普通にプリキュアを圧倒でき、聖闘士とも対等に戦えるように成長している事も語られた。

 

「え、ドモン・カッシュさんに会った事あるの?」

 

「うん。綾香さんの紹介でね。彼の奥さんが医者してて、その関係で会ったんだ」

 

ドモンはレイン・ミカムラと結婚した。結婚後は夫婦喧嘩が絶えないが、お互いに幼なじみであるのも大きい。みらいは蘇生後の身体検査などの関係で、カッシュ夫妻と面識を持ったと語る。『どんなプリキュアも、現役時代のスペックのままでは、敵に勝てない』。そのことを示唆するのだった。

 

 

 

 

 

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