ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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五百六十七話の続きです。


第五百七十話「西暦2000年の暮れ」

――プリキュアという存在が現れたのは、2004年以降の事。美少女戦士セーラームーンの元祖TVシリーズが終了してからしばらくが経った時代のこと。元々はセーラームーンへのアンチテーゼ的な存在という立ち位置であったプリキュアがその歴史を重ねていく内に、セーラームーンに寄ってしまうのは歴史の皮肉であった。故に、独自性が残っていた第一世代から第二世代のプリキュアが2010年代に人気を誇ったのは当然の結果であった。のぞみは2000年にタイムマシンで赴き、プリキュアが影も形もない時代を過ごすことで、その事を自覚していた――

 

 

 

 

 

 

 

――西暦2000年の暮れ――

 

この時代、日本は平成不況からITバブルの時期に移り変わる頃。のぞみは生年から計算すると、まだ7歳頃の年齢である。ポケベルから携帯電話に世の中の通信機器の主流が移りつつあったり、CDが売れていた時代の最後の時期に当たる。野比家はそんな情報機器の革新にこの頃は無縁で、家の電話が黒電話からプッシュホンに変化したくらいであった。この頃、野比のび助は新宿に本社のある『そこそこの商社』の課長であり、実は出世コースの上にいたが、家が借家であった事もあり、あまり贅沢をしない性分になっており、妻の玉子も(OL時代がバブル期であった故か?)旅行嫌いであり、のび太はそんな両親にもどかしさを感じていた。

 

「のび太くんは?」

 

どらやきを買いに行っていたドラえもんが言う。

 

「のぞみさんやはーちゃんと出木杉さんの家に」

 

「ヒャア、珍しい。のび太くんが自分から宿題を?」

 

と、完全にのび太を馬鹿にしているが、悪気はない発言のドラえもん。

 

「はーちゃんの手前、はりきってんだよ」

 

すっかり慣れたか、調は気にせずに返事を返す。

 

「だろうなぁ。あと数年もすれば、あの子はのび太くんの妹になるからね」

 

「すっかり慣れたけど、君もシンフォギアを敢えて維持してるよね」

 

「師匠に言われて、修行中だしね。この時代の仕事のやり残しあるって言うから、今はこの時代にいるよ」

 

調もシンフォギア姿でくつろいでいる。黒江からの言いつけを守っているわけだ。

 

「どういう仕事?」

 

「日本連邦のお膳立ての下準備だって。革新系の政党が政権をとっても変えられないように、省庁内に協力者を作っとくとか。自衛隊の戦闘機部隊に入るための規則改定も含めて、内々に源田司令を連れてきて、この時代の空自のお偉方に会わせてるそうな」

 

「司令を?」

 

「史実じゃ、元の幕僚長でしょ?それで、防衛庁のお偉方はひっくり返ったそうな」

 

「そうか、防衛省になるのは、2008年以降のことだっけ」

 

「うん」

 

黒江は源田の指令で、日本国自衛隊に潜り込む任務を仰せつかっている。それは日本連邦のお膳立てのためで、山本五十六や源田実などの高官らの密命であった。黒江は実際にこの時期に防大に入学、2003年に任官され、その更に数年後にカミングアウトするのである。

 

「のぞみちゃん、この時期を子供とはいえ、生きたはずだから、生活に支障はないはず」

 

「まだ、券売機で切符買う時代だけどね」

 

「そうそう。まだ昭和の名残りが色濃かったもんな、この頃」

 

コンビニエンスストアなども根付いたものの、のぞみの現役時代ほどは文明の利器が登場しておらず、列車の『Suicaカード』や『PASMOカード』もまだ生まれていない。携帯電話もススキヶ原では、まだ物珍しいもの扱いなので、公衆電話ボックスが至る所に設置されている。

 

「駅の伝言板、この界隈だと、2010年代まであったなぁ」

 

「ここらへんの再開発はずいぶん後の事だからね」

 

と、二人は時間軸を無視した会話をする。別の時代にしょっちゅう行っているからだろう。

 

「今日のご飯、どうする?」

 

「ママさん、今日は生け花教室で隣町でしょ?私が作るよ。元々の世界での歴史じゃ、私は炊き出し担当だったし」

 

調は階段を降り、台所に行く。ドラえもんも同行する。冷蔵庫を開け、材料のチェックをするのである。人数が増えた事、調が家事をこなせたことから、玉子の負担が減り、習い事に通える時間が増えた関係でもあった。

 

「それに、コージから聞いたけど、のぞみさん、どうやって自炊してたんだろう」

 

「それねぇ。別の世界じゃ、外食で済ませてるっていうから、多分、自炊できないのは変わってないと思うって」

 

「りんさん曰く、お粥すら焦がすとか言うもんね……」

 

そのことから、コージは調のことを『姉さん』と呼び、姉のような存在と見ている事がわかる。また、オトナプリキュア世界で『食事を外食で済ますようになっている』ことの連絡がディケイドとキュアピーチから行っているようである。

 

「で、教師になった世界線だと、酒飲みになってるから、ラブちゃんは肝臓の数値を心配してるってさ」

 

「どんだけ飲んでるの…」

 

呆れる調。Aは酒は嗜む程度に抑えているが、大人のぞみは酒飲みになっているようだと、調査報告がされてきたのを教えられれば、そうもなろう。大人のぞみのことは(ZEROの力で)自覚はできているだろうと、ドラえもんは言う。のぞみAが酒をあまり飲まないのは、そのせいだろうと。それは当たっていた。(職業柄)

 

 

 

 

 

――出木杉邸を出て――

 

「ドリーム、それは?」

 

「ああ、荒れてた時期に酒を煽ってたけど、先輩に諌められてね。気を紛らすために持たせられてんだ、ラムネ菓子」

 

「そういえば、ひどかった時期はとても」

 

「うん。我ながら、醜態だったよ。りんちゃんの記憶が無くなったことのショックもあったんだけど」

 

デザリアム戦役を自嘲気味に振り返るキュアドリーム。魔女の世界では飲酒をしていたためか、ショックで酒を煽るようになっていた時期があるからだ。

 

「そういえば、君は転生先だと、もう酒飲めるんだったね」

 

「向こうの世界じゃ、13歳以上は酒飲めるからね。魔女の界隈だと、風紀の緩い部隊だと、13以上になると、酒飲めるんだ。あたしも自我意識が戻る前は付き合い程度に飲んでた」

 

「のび太くんは?」

 

「大人のぼく、あまり飲まないだろう?うちの家系は酒に弱くてね。独身時代は飲んでたけど、結婚してからは控えるようになる。倅も生まれるしさ。さぁて、出木杉くんから本は借りたし、後は図書館で補足を入れればいい。この時代、まだインターネットは家庭に普及しきってないし、ダイヤルアップ接続だしさ」

 

2000年という時代はそんなものであった。パソコンもウィンドウズ2000かMeの時期、通信回線もダイヤルアップ接続が主流であった最後の時代。野比家にPCが置かれるのは、のび太が大学に入った後の時期だ。

 

「時間的に、図書館寄ったら、夕方だしね。ママは夜になるって言ってたし。パパは残業」

 

「え、残業?」

 

「この時代、残業は当たり前さ。パパは真面目だからね。だから、この後に重役になれるんだけど」

 

のび助は重役に目をかけられる程度には有能な商社マンである。故に、20年後には問題になりそうな『休日出勤』や『遅くまでの残業』も当たり前。のび太はそれを嫌い、公務員を目指すのである。

 

 

「それに、僕の成績は悪いだろ?クリスマスに欲しい物を買って貰えないこともザラだったからね。これからは違うけど」

 

のび太が成人後、自分の子に『好きなものを誕生日やクリスマスに買ってやる』のは、少年期に(玉子が教育熱心であった故に)めったに好きなものを貰えない環境にあったからだというのを知り、早い時期に『サンタクロース』を信じなくなった故の寂しさがあった事を知ったキュアドリーム。

 

「のび太くん……」

 

「サンタクロースを信じる年頃でもないけど、クリスマスくらいは、自分の欲しい物をもらいたいもんさ。もらえるうちは、ね」

 

青年期以降に通じる、シニカルな一面を見せる少年のび太。ドラえもんのおかげで、自分が欲しい物をもらえる事も増えたものの、玉子が教育熱心なあまりに『ものを安易に買い与えない』方針を取っていた弊害により、意外とがっくりなクリスマスを過ごした事が多い。そのコンプレックスが成人後のカーレースなどの趣味に繋がっていくのだろうか。

 

「ちょうど、軍の給金が入ってるし、クリスマスになったら、なにか欲しいの言って」

 

「いいの?」

 

「ここんとこは戦闘続きで、まともに使う機会がないからね。100万単位で溜まっちゃってるんだ」

 

かつての自分も似た経験(のぞみの両親は共働きであったため)をした事があるらしく、キュアドリームはのび太に一つの提案をした。のび太はこの提案に喜び、ドリームに一つの頼み事をした。ドリームはこの後、このことで黒江に相談をし、黒江のツテで購入に成功するわけだ。

 

 

 

 

――この提案は、のび太が後々に『趣味の王様』の一つである『鉄道模型』に一定の資金を費やしていくことになるきっかけの一つになった。何故かというと、のび太は少年期の頃は幼なじみのスネ夫に強い対抗心を持っていた。スネ夫はクラスメートに自分が買ってもらったものを自慢する癖があり、のび太はその事にコンプレックスがあったからだ。なんだかんだで、この頃は12歳の少年なのだ。とはいえ、当時の流行りであったポ◯モンやデ◯モン、遊◯王、ベイ◯レード、たま◯っちなどではなく、ラジコンやプラモデルなどの比較的に高年齢層のハマる趣味に傾倒しているのは、スネ夫とその従兄のスネ吉の影響が大きいと言えた。スネ吉は骨川コンツェルンの血族らしく、多趣味の大学生であった。その彼の作品を間近に見てきたからか、二人は自然と(当時としては)ハイティーン向けのホビーに傾倒していったわけだ。無論、スネ吉はその財力に物を言わせてのフルスクラッチもお手のものであったが――

 

 

 

 

 

 

――2000年当時、ハイティーン用のプラモデルは制作が難しい部類に入るため、スネ吉はものすごい制作技能を持っていたことになる。のび太は自身の『プラモデル制作の技能は低い』ことは自覚しており、完成品(半完成品含む)を集める方向になっていくのである。折しも、のび太が青年に向かっていく時期は造形技術の向上で、『子供が背伸びをすれば、買える』程度の値段でも、一定のクオリティを持つ(航空機や戦車、艦艇などの)完成品模型が登場し始める時期であり、分冊百科なども出始めるまで数年もない時期であった。手先がぶきっちょなのび太でも、一定のクオリティを持つ模型が持てる時代がやってくるわけだ。スネ夫はそれを馬鹿にした時期もあるのだが、造形技術が向上し、以前のように『模型を汗水垂らして作る』ことが子供や青年層の間で敬遠されはじめると、作り方の簡単な模型が現れ始める。幼少から、プラモデルに親しんでいた世代が高年齢になってきたり、技術革新なども大きい。のび太、ジャイアン、スネ夫はこうした理由で『ハイティーン向けのホビー』に傾倒していったのだ――

 

 

 

 

 

――この時代はまだ、のぞみの現役時代より、冬が寒い気候であった時代である。プリキュア化しているとはいえ、冬の冷たい風は堪えるのか、身震いする。

 

「おぉぅ。数年も南方にいたせいかな。プリキュアになってんのに、冬の風は堪える……」

 

「家に帰ったら、こたつで温まろう」

 

「うん……」

 

「ですね」

 

 

この時代の冬は堪えるらしいキュアドリーム。本来は20世紀末よりも冬が厳しい時代に転生しているはずだが、史実でのミクロネシア連邦に相当する地にある『南洋島』に赴任している都合(ミクロネシア連邦付近は史実に近い気候だが、魔女の世界では、夏の晴れが多いらしい)か、日本の冬の寒さは久しぶりであった。のび太は単に寒がり、フェリーチェは元が妖精であった都合、本当に寒さに弱いが。

 

「ジャイアンとスネ夫も、宿題でぼくに構うどころじゃないようだ。もっとも、ジャイアンのことだ、今頃はスネ夫を脅してるだろうけど」

 

のび太は幼なじみである分、ジャイアンの行動パターンをいつの頃も把握している。調べ物の場合はスネ夫を巻き込むのが常である。

 

「創世日誌の時もそうだったけど、あいつはいつもスネ夫を巻き込んでは、最後はぼくたちにのっかるのがパターンなんだよな」

 

「あれ、本当にあったんだ」

 

「ああ。ここからちょっと前の夏の事さ」

 

のび太は創世日誌にまつわるのできごとが、97~9年までのどこかの夏で起こった事だと示唆する。ドリームは子供の頃に、創世日誌のできごとはアニメとして見ていたので、お互いがどう存在するか。それが世界の違いで反転しているという事実でもあった。

 

「ロンド・ベルの慰安旅行に銀河超特急を、大人のぼくが勧めてるよ。今度の作戦と遠征が終わったら、どうかって。23世紀にも、会社はあるようだし。ぼくの一族の名前出せば、運賃はタダだって」

 

「あー~、野比財団?」

 

「うん。あそこに出資してんだよね、ぼくの一族」

 

野比財団が23世紀以降、潰れかけていた天の川鉄道に出資し、観光用列車で経営が黒字になった後の時代、一時は半官半民化され、27世紀前後に『銀河鉄道株式会社』として民営化。ハーロックの時代に至るまで存続している。元々はドラえもんの時代からの交通手段であったが、どこでもドアに駆逐されかけた。だが、どこでもドアが統合戦争でロストテクノロジーになると、逆に銀河鉄道が復興し、30世紀に至るという。ある意味、どこでもドアは一時の流行で終わるわけだ。

 

「でもさ、お互いにアニメとしてあるわけじゃない?あたしはなのはの言う通り、2007年にならないと、プリキュアとして認知されないんだよね」

 

「うん。なのはちゃんも言ってたでしょ?」

 

「うん。と、なると、なのはって、あたしの3歳下?2005年で九歳ならさ」

 

「そうなる。少なくとも、ぼくより七歳若いことになるね」

 

「なんか、生年月日を聞くと、来るものあるよ」

 

「ドラえもんなんて、2112年だよ」

 

「た、確かに」

 

「私は2016年ですよ」

 

「うわぁ……来るなぁ」

 

ズゥンという雰囲気が似合うほど『どよ~ん』なキュアドリーム。『彼女』の感覚としては、自分は現役を引退したプリキュアなので、予想外の後輩の若さに『来る』らしい。

 

「あ、自動販売機だ。買ってこ」

 

「うぇ、瓶コーラ!?あたしの時代だと、逆にレアだよ!?」

 

と、驚きつつも、瓶コーラを買い、自販機に備え付けの栓抜きを使い、三人で飲む。

 

「あ、昔にお父さんが言ってたけど、コーラの瓶って、味が違うとか……」

 

「有名な都市伝説だね。パパとママは信じてたけどね。それと、骨が溶けるってのも有名だったよ」

 

「あー!それ、前世で母方のばーさまが言ってた」

 

「その辺の世代、割に信じてんだ。ぼくも時々、親から牛乳を飲めと言われてね。ぼく、174cm前後になるんだから、気にする必要もないと思うけどね」

 

「確かに……」

 

のび太は成人後は170cm台の長身に成長するので、少年期(150cm台)から20cmは伸びることになる。のぞみも大学生以降は170cm台の長身に成長する事がすぐに判明するので、背丈の伸びしろは二人共、かなりあるのだ。

 

「君だって、ラブちゃんとディケイドが調べてる世界じゃ、170cmくらいになってるそうだよ」

 

「おぉ~……前世じゃ、165くらいだったからな~。5cmも高いんだ……」

 

「後で、ドラえもんのタブレットでメールを見るといい。どうやら、最初のオールスターズの短編のルートを辿った世界らしいから。で、君たちの後続のプリキュアが出なかった世界らしいよ」

 

「そんな世界、あるんだ」

 

「うん。今はその隣接世界に行ったみたい。そっちだと、普通に後続のプリキュアが出たみたい。一連の世界は君らが大人になってる世界線だから、『オトナプリキュアの世界』ってカテゴリを設けるって」

 

「何それ……安直なような……」

 

仮面ライダーディケイド/門矢士の協力により、明らかとなった『オトナプリキュアの世界』。大人のぞみが戦うことになる世界は『最初に発見された、オトナプリキュアの世界線』の隣接世界線であることを、ディケイドは伝えていたようだ。のぞみAは安直な名付け方だとずっこけるが、特徴を表す言葉としては最適解であった。

 

「でも、その大人ののぞみちゃん、別の若い自分がニュータイプにもなって、その気になれば、νガンダム系やF91にも乗れるって言うの信じなさそうだね」

 

「実物をデーンと動かしてみせないと、無理ですって。B世界ののぞみさんを納得させるためとはいえ、FAガンダムMk-Ⅲを持ち出した事ありますから、私」

 

「それもフル装備の。大人のぼく、乾いた笑いが出たってさ」

 

「す、すみません…。そうでもしないと、パイロット兼任と信じないものですから。それに、りんさんが『でかけりゃいいってもんじゃない』と言ったので、カチーンと…」

 

「えーーー!?」

 

「連邦軍の造ったフルアーマーの中でも、最高傑作の呼び声高い機体だしね、あれ。操縦性も素直だから、マークⅡとリック・ディアスさえ動かせれば、すぐに動かせるし。あれをナッツハウスの前に立たせたもんだから、向こうののぞみちゃん、腰抜かしたそうだよ」

 

「そりゃねぇ……」

 

「それで、大きさに見合わさそうな高機動のデモンストレーションしましたよ」

 

「あれはフルアーマーでも、高機動用に転用できるしね」

 

「ガンダムXはあなたがGコンを持っているので、持ち出せなくて」

 

「ごめん、普段はしまってあるんだ、あれ」

 

ガンダムX系統はGコンが起動に必要なので、のぞみがしまってある。有事になれば、取り出すのだが。

 

「ケイさんはゲッターノワール1を見せっか?って言ったそうだけど、あの人が来ると、子供の教育に良くないことになりそうだから、大人のぼくが止めたそうな」

 

「先輩、教育によくない風貌だしなぁ…。あれって素なの?」

 

「猫かぶりをやめた素に遊びを入れてるけど、八割方は地だねぇ……」

 

と、圭子は元々、智子と馬が合う程度には血気盛んな気質であったが、年齢が高かった事により、『まとめ役』を江藤にやらされていた。その後も『包容力のあるお姉さん』役をやらされてきたため、嫌気が差していたのだと、少年のび太は説明する。圭子のキャラの変化は『遊び』要素も強いからだろう。

 

「元々、マルセイユさんに手を焼いてたから、それで、ある時にぼくに相談してね。その時にはキューティーハニーと知己だったから、いっその事、容姿も変えちゃえと言ったんだ。それがたぶん、原因だと思うよ。で、それを『繰り越した』後の事変当時の写真をもらってる。えーと……。あった。手帳に挟んでたんだ。これ」

 

「あ、元々の容姿の先輩、初めて見た……。目つき悪いけど」

 

『繰り越し』後の圭子の初期状態が写る写真は貴重であった。その状態でも、既に目つきが『三白眼』になっている。銃も、事変当時には『存在しないはず』のベレッタM92だ。

 

「先輩、この頃から、ベレッタを使ってたの!?」

 

「うん。経験が繰り越しの状態だからね。いつからか、あの人はベレッタ党なんだ」

 

「日本軍の官給の拳銃は質が落ちますからね」

 

圭子は世代的に『将校に官給品が配られる』以前に将校になった。智子と武子の代を最後に、拳銃は自分で買い揃えるものという規則が消えたが、事変世代であれば、改定後も容認されている。圭子は公然とベレッタを愛用していることを述べ、国産品を『程度の悪い玩具』とまで言い切ったという逸話が言い伝えられるほど、軍の輜重兵には嫌われ者であった時期もある。仕方がないが、扶桑といえど、国産の近代的拳銃の製造の知見は史実と大差ないのである。

 

「仕方がないって。日本は外国と違って、どこの世界でも、ガンスミスよりも刀鍛冶が栄えてた国柄なんだし。君も自我意識が目覚める前は南部十四年式を持たされていたろ?」

 

「うん。自我意識が目覚めた後、先輩に『十四年式拳銃なんぞ、博物館の肥やしにしとけ』って酷評されたけど」

 

「あの人は面倒見はいいよ。元からね。そうでなきゃ、バルクホルンさんに……いや、他人に反抗的なマルセイユさんが尻尾を振るかい?」

 

「言えてる」

 

「マルセイユさん、ケイさんがああなった後は大人しめだからね。まぁ、ある時に猫かぶりやめたら、勝手にブルりやがったとは、あの人の談」

 

「マルセイユさん、何かと割食ってますからね。聞いた話だと、書類仕事をやらせようとしたら、虫の居所が悪くて、睨まれて失禁しかけたとか……」

 

「先輩だからなぁ」

 

圭子の評判は『猫かぶりをやめた』途端に外国で高まり、501赴任の話が出たら、その武勇を将校らから大いに喜ばれたほどには『エースパイロット』として名を知られていた。何故、ミーナがそれを知らないのか?という話になったのが『ミーナの事件』の発端であった。

 

「宿題が一段落ついたら、ミーナさんの事件の説明をしておくよ。大人のぼくからの頼み事だからね」

 

「あたしは『あの人がいなくなってから』だもんな。お願い」

 

「そもそも、ドリームの素体の子は、あの人の指揮下じゃなかったでしょ?」

 

「部隊も違ったしね。何度か会った事はあるけど。あたしに『なってからは』あの出来事が最初で最後かなぁ」

 

「だろうね」

 

 

――家に帰るまでに、頼まれごとを説明する、少年のび太。以前より段取りが上手くなった様子を見せ、年相応のところと、大人びているところが同居しているのも、少年期ののび太の不思議なところであった。また、同一人物である『別時間軸の自分』との会話も躊躇なく行うなど、ある意味、SF的な場面に場馴れしているのが彼であった。とはいえ、これから、三人は夕飯時まで、のび太の宿題を完成させるのに必死に取り組むのである。図書館で借りた資料(出木杉お勧め)を紙バックに入れ、両手で持ち、長時間かかるのを覚悟するのび太、時間短縮のために魔法を使うつもりのフェリーチェ、元々が本職の教師であった性分の疼くキュアドリーム。三者の思惑は微妙にずれていたが、ともかくも、のぞみの『西暦2000年』での第一歩はこうして刻まれていった――

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