ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百六話「のぞみCの入院生活とコズミック・イラ世界」

――のぞみCは思いの外、入院生活が長期に及んだ。昏睡状態に陥っていた時間が長かったのと、大手術を受けた関係で、集中的なリハビリを受ける必要があったからである。いくら若いと言っても、生死の境を彷徨ったために、体はすっかりなまりきっており、日常生活を送れるようになるにも、かなりの時間が必要であった。そのため、戦闘はもちろんご法度。対処はプリンセスプリキュア、ライダーマン、ブライアンの三者が代行することになった――

 

「昭和ライダーがあなたの仲間なの?」

 

「怪我の治療で世話になったし、私の世界への被害を未然に防ぎたいんでな。それもあって、お前ら……といっても、別世界の……と盟約を交わしたんだ。いうなら、ガードマンみたいなものだと思ってほしい」

 

「それで、どうやって体を入れ替えてるの?」

 

「仮面ライダーらの世界は、ドラえもんが実在する世界でもあってな。その彼と関係を持った関係で使わせてもらえた」

 

「あー……って、本当にいる世界あるんだ!で、声は?どんなだった?」

 

「そこか?」

 

「だって、ドラえもんマニアには、重要な要素だよ?これ」

 

「少なくとも、この時代の現役の声じゃないぞ」

 

「ああ、大人世代におなじみの……」

 

「そうだ」

 

のぞみCはAやBと違い、ドラえもんに幼少期は夢中であったようだ(AとBは『人並みに』見ていたくらいである)。本人が聞けば、大喜びだろう。

 

「ドラえもん本人曰く、その声の個体とニアミスしたと言っていたぞ」

 

「対消滅とか起きない?」

 

「漫画や小説でよく見るネタだが、お前と私の借りている肉体が同じ場所にいることは、どう説明する?」

 

「た、確かに」

 

「ドラえもんから聞いた話、お互いに出会った段階で、世界線の分岐が起きるんだと。したがって、遺伝子的には『よく似た別人』の扱いになるとのことだ」

 

「ほえ~……」

 

「リハビリは長くなるぞ。時間はドラえもんの力で圧縮できるが、それでも、外部の時間で一ヶ月は覚悟しておけ。退院しても、免疫力の低下で、通院は必要だからな」

 

「事故にあった以上はしゃーないかぁ……」

 

「戦闘はもちろんご法度。こっちでプリキュアを都合するから、当面は後輩たちに任せておけ。ブラック達はこちらでは観測されていないがな」

 

「え、なぎささんたち、いないんだ」

 

「いるはずだが、何かしらの要因で連絡がつかんらしい。キュアブルームは来たんだが」

 

「なんでだろう?」

 

「わからん。まぁ、この世界で、宇宙から敵が来れば、宇宙戦艦ヤマトを呼んで、波動砲でぶっ飛ばしてもらうと、のび太さんはいっているがな。退院の予定日は?」

 

「上手くいけば、1ヶ月後の今頃だって。つか、宇宙戦艦ヤマトがいる世界なんだね」

 

「オリジナル版基準だから、しょっちゅう侵略者が来まくるそうで、地球連邦も参ってるよ。それで、移民星が野心を持ち始めてるそうでな」

 

地球連邦がまとまるようになったのが、皮肉な事に、異星人との戦争であった。しかも、ことごとくが絶滅戦争であったため、敵対した者たちは波動砲で本土が消し飛ぶ事態に陥っている。ウィンダミア王が地球との戦争を避けたのは、波動砲を持つ艦が何光年も先から波動砲を撃ち、狙い撃ちで本星を破壊する可能性が高いからである。宇宙戦艦ヤマトの武勇は近隣の別種族への戦争抑止力になっていたわけだ。だが、若者の多い武闘派が戦端を開いてしまった時、彼らはそれが天国に思える『地獄のような光景』を出現させてしまう。その光景こそがウィンダミア王国の終焉の始まりであったりする。

 

「で、狙い撃ちで地球が狙われるから、波動砲が多数必要になったんだそうだ。敵の本国をぶっ飛ばすことにも躊躇しなくなったのは、そういう国家が敵だったからだそうだ」

 

ウィンダミアの蜂起は後年に『自縄自縛』と冷ややかに見られている。地球連邦とて、末端はバカであっても、本国は改革が進みつつあるため、本星と交渉すれば、国境付近の連邦軍に処罰が下っただろう。だが、ヴァールシンドロームを意図的に広げ、その患者に非人道的扱いを強いていた事は銀河連邦の制裁対象である。さらに、地球の殲滅を口にした事で、ゲッターエンペラーの介入を招いた。ゲッターエンペラーのあまりの強大さが完全にウィンダミア人の心を折ることになるのだ。

 

「それで、ガンダムはあるの?」

 

「種は別世界だが、それ以外の殆どは同一の世界にある。お前自身も、ガンダム乗ってるぞ。最も、ウイングゼロとかのイカれた代物以外だが」

 

「あんなの、タフガイじゃないと無理だって……見かけはお母さんが好きだって言ってたけど」

 

 

「あれはデザインはきれいだが、中身がイかれた悪魔だからな。TV版の機体を改造した結果かどうかは聞いてないが」

 

「あ、そっか。設定上……」

 

「そうだ。スーパーロボットに近いとも評されたが、軍の管理にない機体だから、プリベンターと交渉しないといけないのが面倒だと、参謀本部は愚痴ってるそうだ」

 

ゼロシステムの存在から、『天使の皮を被った悪魔』と言われるガンダムである『ウイングガンダムゼロ』。メカトピア戦役では、いいところはあまりなかったが、開発者たちがデータを残していた追加装備が建造中という(メカトピアがエネルギー兵器に耐えられるバリア技術を有していたためだったとのこと)。

 

 

「種の世界にウイングゼロを行かせたら、国家の二つや三つは数日で滅ぶかもしれんと言われてるからな」

 

「だってあれ、造られた金属も、他のガンダムの比じゃないっしょ?」

 

「単に、21世紀よりすごいチタン合金でしかない、他のガンダムと違って、本当に並大抵のことじゃ傷もつかないからな。下手な特殊装甲よりすごいそうだぞ」

 

ガンダニュウム合金は世に出た段階で『ガンダリウムγが玩具扱い』の性能を持っていたが、要求技術レベルの高さにより、その生産数は希少であった。さらなるレアメタルであるコスモナイトと更に組み合わせることで、更に性能が向上した世代のものに換装されたとのことであるので、フェイズシフト装甲に連邦軍が魅力を感じなかったのは、普通の合金で実用上の限界を度外視した性能を達成していたからである。

 

 

「フェイズシフト装甲やフェムテク装甲が別の世界にあるが、そんな小手先のテクニックより、ガンダニュウムでゴリ押ししたほうが、相対的に安いそうだ。おまけに、反応速度もバイオセンサーやサイコフレームで上げられるしな、未来世界」

 

フェイズシフト装甲は、地球連邦では実用性実証実験の域を出ないだろうとも、ブライアンは言う。重量と必要電力の割に、すぐに防御力の飽和状態に達する上、現地修理が不可能に近いという難点がマイナスであった。そのことから、地球連邦も実験的に作ってはみたが、ガンダリウムなどを代替するほどではなかったのがわかる。むしろ、並大抵の攻撃を破損無しで乗り切れるガンダニュウムが異常なのだ。

 

「物理的にかったーい金属を装甲にすりゃ、そりゃ強いわ」

 

「マジンガーの頃からの法則だが、攻撃する側も、星を軽く壊せる武器があるからな。その一方で、大量生産品の装甲の質は現在と大差ないそうだ」

 

「なにそれ」

 

「雑兵より、一騎当千の強者に金をかけたいんだろう?連邦も人手不足だからな」

 

連邦軍は度重なる戦争で、人員の質が両極端になってしまっているので、ロンド・ベルなどの精鋭にとにかく高級機を回し、雑兵にはジム系で済ますというドクトリンに変貌していた。皮肉なことに、一年戦争直後は疎んじていたニュータイプの戦闘能力にすがったわけだ。白色彗星の情け容赦ない戦闘ぶりが地球連邦を戦闘国家に変えてしまったのである。

 

「白色彗星帝国やら、宇宙怪獣やらの天文学的物量の連中と戦うには、人員と兵器の質を上げなくてならなくなったそうだが、内輪もめも続いたから、人員の質が上がんなかったそうでな。それで、選んだのが、精鋭に最高の機体を与えるってやつらしい」

 

それまでは民間軍事会社に追い出していたような問題児たちが動乱の時代で必要とされ、民間軍事会社の肥大化を抑えようとする世論と勢力の台頭で、軍に戻されるようになったものの、動乱で事なかれ主義者の上層部は死んでいったので、現場主義の者たちの思うがままになった。だが、その筆頭格の土方竜はあえなく戦死。揺り戻しがまた起こるが、精鋭に有事の責任を負わせるという風潮となった。それを実現させるため、強力な兵器の開発を推進するという『本末転倒』となった。

 

「なにそれ」

 

「普通は違うが、億単位で人が死ぬと、そういう思考になるんだそうだ。それで、元は反体制派の作ったガンダムであっても、地球の旗印に祭り上げてるそうだ」

 

「Zガンダムとか、ウイングゼロとか?」

 

「そうだ。ゼロは『彼』しか乗れんがな」

 

「あんな悪魔みたいなシステム、彼以外には使いこなせないって」

 

のぞみCはBと異なり、隠れアニオタであったらしく、ブライアンと普通に『踏み込んだ』会話をしてみせた。Aは仕事でその知識を身に着けているので、BよりはAに近い存在である事がわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑で恐れられたのが、『扶桑では起きていない出来事で、罪人のレッテル張りを受け、財産も名誉も、全てを剥奪される』という噂であった。無論、日本政府の公式な政策ではなかったが、日本の民衆の暴走に近いもので、主に、戦前の支配階級と見なされた高級軍人や華族、政治家、官僚などが暴力のターゲットになった。家財の全てを強盗同然に奪われる事例も相次ぎ、それで没落してしまったた華族も生じた。文化大革命時代の紅衛兵まがいの暴走に、とうとう、日本政府も重い腰を上げざるを得なくなった。左派は『戦前の支配階級への補償の必要なし!!』と宣ったが、彼らは『そうであって、そうでない』存在である。その大原則さえわからないくせに、紅衛兵まがいの暴力と破壊を起こした。まさに利敵行為である。日本政府は2021年からの数年ほど『事務的外交』で扶桑との交流を済ませ、日本人の渡航を制限したが、こんな行為が頻発したからである。また、起こした張本人らが悪びれず、『国民をどうせ数百万は死なせる気だから』と言い訳していたことは(扶桑の怒りを買うので)伏せられた。それは扶桑軍人に限らず、連合軍全体に影響が及び、ヤルタ協定のせいで、オラーシャへの復興支援が完全にご破算になり、オラーシャはまともな復興もできないまま、世論がティターンズ寄りになり、東西冷戦の主役の一つに祭り上げられていく。だが、史実より国土が悲惨な状態で陣営を鞍替えした事は、その後のオラーシャ帝国が財政破綻を来し、ティターンズの自然消滅後の時代に貧困国へ転落してしまう遠因となった。また、自由リベリオンは実質的に『弾除け要員』扱いの日々を過ごすが、そうでなければ、生存権すら得られなかったためであった。列強であった国々の衰退で、日本連邦はやむなく『自由民主主義・資本主義』の盟主に担ぎ上げられることを容認。左派がこだわっていた台湾の扶桑からの切り離しについては、元来の保有者である中華国家が文字通りに数百年前に滅亡していること、中華民国(台湾)に『もう一つの台湾』を支配する余力はないこと、扶桑がアジア太平洋唯一の近代国家である事から、結局、『中華民国軍の交流目的での駐留は認めるが、地域の施政権は日本連邦が持つ』という妥協的な方針となった。左派も『中華国家が明朝の段階で完全に滅亡した』のは完全に予想外で、隋と唐の存在すらも、欧州は忘却の彼方という有様に愕然としたという(欧州の軍人は中華国家への無知を日本の役人や政治家に公然と嘲笑される羽目になり、過去の国家を勉強する羽目となったというオチが付いた)。この一連の騒動により、軍人は文民統制の名のもとに、各国で肩身が狭くなり、士官の転職も相次いだという。扶桑でも、前線配置ではないと、無知な大衆に後ろ指をさされるようになってしまうようになったため、嫌気が差した下士官以下を中心に、転職者が相次いだ。問題と同時に、日本人の隠れた悪癖である『暴走しやすい集団心理』が問題ともなった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本政府には、扶桑軍人を社会的に追い込むつもりは毛頭なかった。だが、太平洋戦争の記憶を拠り所にして、軍へ敵愾心を持つ大衆、とりわけ戦後直後の生まれの人々を中心にした『暴走』は黒江をして、『奴らは文革の紅衛兵を気取ってやがるのか?』と吐き捨てられるほどの残虐非道ぶりであり、扶桑の那覇が大損害を負わせられ、軍の駐留で得られるはずの収入をパーにされるなどの悲惨な結果をもたらした。日本政府は(当然ながら)顔面蒼白に陥り、扶桑への損害補償を断行した。那覇が一歩間違えれば、たった数体の大型怪異により、史実沖縄戦様に『壊滅』していたのだから、当然であった。沖縄本島の外周部に一定数の艦艇を張り付かせなくてはならなくなったのも、彼らの反軍運動の結果であり、扶桑の人々には迷惑千万であった。その尻拭いをしたのが、歴代のプリキュア戦士であった。キュアフローラ、キュアエトワールなどは、その仕事が事実上の(扶桑での)『初陣』となった。その功績により、プリキュア戦士は扶桑の老人層の信頼を完全に勝ち取ったのである。また、扶桑軍隊の教育的な都合もあり、ステゴロだけで戦うのが議論になったので、武器を使うように通達が出されたが、大半のプリキュアは『武器らしい武器を持たない』ため、ドリーム、エース、スカーレットなど、心得を持つ数名がプロパガンダに起用されるようになり、デザリアム戦役の直前に、『冷艶鋸』らしき青龍偃月刀を入手したハートも加えられた。その施策は日本で議論を呼んだが、『現役時代の能力だけでは戦い抜けない』現実は既に報じられていたため、意外とすんなり受け入れられた――

 

 

 

 

 

 

――この一連の騒動は義勇兵の暴力沙汰とセットで語り継がれることになり、士官学校卒の士官の面目は丸つぶれとなった。結局、士官が部下の人心掌握をするには『前線で手柄を挙げるか、現場勤務を長くこなすしかない』という事態になり、必然的に激務になるため、士官になりたがらない者が増加。また、幼年学校卒の軍人は出世できなくなるという流言も飛び交うなど、扶桑はとにかく、史実の戦後の反軍感情に、防衛の基盤をことごとくズタズタにされたのである。64Fの常設化は、そんな日本の大衆の独善から、優秀な若い人材を守るために推進されたのである。海軍航空隊は史実で343空や芙蓉部隊という『武器』を持っていたのに(魔女の世界では、それらは書類上の存在に近かったため)なんら活用できず、組織風土そのものも否定されてしまい、対立していたはずの陸軍航空を祖とする、空軍へ急速に取り込まれていくのである。また、大衆の意向で大型艦艇を酷使したが故に、大型艦のほぼ全艦がオーバーホールのためのドック入りを強いられる珍事が発生するなど、日本の失態というべき事態に陥っており、海軍は(事変以来の不祥事の発覚などで)政治的に追い詰められていた。指揮官先頭を実践しようにも、艦艇のことごとくがオーバーホールのドック入り。それが扶桑国内の情勢であった――

 

 

 

 

 

――ウマ娘たちの存在が知られると、『史実同様の運命を辿ってしまった』者たちへ同情が出るようになった。不思議なほど、史実の戦績に合致する行く末を辿った者が多かったためだが、それを乗り越え、未知なる道を歩もうとする者もいる。ブライアンがその筆頭格であった――

 

 

 

「あなたの目的は?」

 

「競走馬としての心残りを晴らしたい。前世は前世、今は今のはずだが、私たちはそれに縛られていることに無自覚だった。からくりに気がついたからこそ、それを超えたいが、私は色々な要因で『前世超えができるかもしれない要素』の多くが潰れてしまった。それで、最後にすがったのが超科学であり、お前たちの加護だよ」

 

「それで、別の私と交換条件で……」

 

「そうだ。もっとも、お前にも、学生生活をもう一度味わいたいって思惑があったようでな。それもあって、条件を呑んでくれたよ」

 

ブライアンは自身の不調で、個人トレーナーを解雇させられた挙句、理事会では(副会長職にありながら)一向にスランプから抜け出せないのを揶揄されるなど、史実の晩年を反映した悲運さであった。それを打破する最終手段だと、ゴルシに薦められたこと、年齢的にピークアウトが目前に迫っていた事から、それを受け入れ、ゴルシの仲介で施術を施され、その直後に波紋の呼吸を会得。これにより、ピークアウトによる身体能力の急激な低下(史実の晩年に低迷した者などは、能力低下が強く起こるらしい)を避けることに成功。この時点では、のぞみAの尽力もあり、『シニア級の王者』に返り咲きつつある。また、低迷期の際の仕打ちにより、本人はメディア嫌いになっているが、のぞみAが人当たりのいい対応をしたおかげで、メディアからの評判も良くなっている。

 

「その交換条件で、お前の仕事を代行しているわけだ」

 

「いいの?」

 

「私は意に沿わぬことをしたせいで、親父に勘当された身だ。前世である名馬の名誉に傷をつけず、なおかつ自分自身の汚名返上をするには、多少のチートはやむを得ん。ひいては運命を変えてやりたい同期もいるんでな」

 

少しさびしそうな口ぶりであるのは、史実の非業の最期もそうだが、自身の不振で家庭が崩壊寸前に陥った事への悲しみもあった。また、サクラローレルに待ち受ける理不尽な顛末への憤慨も同時に抱くなど、複雑な心境にあった。

 

「私たちは10代の数年しか輝けん宿命を背負っている種族だ。かといって、それ以外の事をやれと言われても、私にはできん。なまじっか、当代最強と言われるとな……」

 

ブライアンはウマ娘の本能が強いゆえに、自らに待ち受ける宿命に抗う事を選んだ。だが、代償に家族との関係が犠牲になった。ブライアンの悲劇は『全盛期に最強と持て囃されたために、怪我で能力に陰りが見えると、家族を含めた周囲に見放された』ことである。それに歯止めをかけられなかった事にルドルフは責任を強く感じており、それも、ルドルフがのぞみAの生活に協力している理由であった。

 

「あなたはどうするつもりなの?これから」

 

「高校を出たら、適当に大学で実業団に入るつもりだ。私たちはヒトより外見の老いは遅い種族なんでな。五輪のウマ娘部門にでも出るさ」

 

ウマ娘は基本的に、トゥインクルシリーズが華だが、引退後に五輪のウマ娘部門の声がかかる事もある。また、TVのバラエティ番組に出る事もある。ブラリアンが生前、それで名を馳せたことから、ブライアンもその路線を目指しているらしかった。

 

「TVに適当に出て、生活費を稼ぐのが大学以降の進路だな。そのためには、現役のうちに実績をつまんといかん」

 

ブラリアンの入れ知恵に内心で感謝しつつ、ブライアンは文字通りの復権を目指している。それがもとで、父と袂を分かったが、無念の引退を選んだ姉、そして、レースで大成できない運命にある長妹のために。ブライアンはその二人の仇討ち、自分の前世由来の無念を晴らすために走る。それがブライアンが見出した、自分の今の生への答えであった。

 

「スポーツの世界は大変なんだね」

 

「私たちは競走馬の生まれ変わりであるためか、アスリートとしての全盛期が一年半から二年しかない。私のように、前世の記憶を持ってしまうと、その運命に抗いたくなる。故に、別世界の異能や、お前たちの加護にすがったんだ。私には後がなかったからな……」

 

「大変なんだなぁ、スポーツの世界は」

 

ブライアンの世代はこの時期、17歳から18歳ほど。アスリートとしての盛りを過ぎつつある年齢になり始めている。人間であれば、これからが全盛期だが、ウマ娘の場合は『ロートル』と言われ始める。だが、それは世代交代が早すぎて、スターが定着しないという弱点を抱えることになる。競走馬の世界であれば、一年半から二年で次の世代に代替わりするのは当たり前である。だが、ウマ娘の場合はわずか4~5年ほどで、史実の競走馬の十年分以上の世代交代が起きている。ルドルフとオグリの幼少期がスピードシンボリやハイセイコーの最盛期であったというので、そこから十数年ほどで、史実の40年分以上の世代交代が起こった計算だ。これでは、トゥインクルレースの集客力に陰りが見えるのも当然であった。皮肉なことに、テイオーやブライアンが今後に引退しても、その後を継ぐべき人材は台頭してきているが、史実を考えれば、ディープインパクトは早期の引退は確実。その事も、ブライアンの復権が求められた理由であった。

 

「ディープインパクトという馬は聞いたことがあるな?私の後釜になった奴だが、ヤツは馬主の都合で、早期に現役を退いた。私の世界でも、そうなる可能性は大。それも、私が王者に返り咲くのを望まれてる理由でな……。協会の都合さ。まったく……」

 

「そうか、ディープが引退しちゃうと、王者って言えるのは、あなたのいう、オルフェーヴルって馬まで出ないんだったっけ…。それ、おとーさんにいったら、なんかぼやいてたな」

 

「お前のオヤジさんに言いたいよ。三冠馬はそうそう出んよ。スターホースだって、数世代おきくらいの割合なんだぞ。それに、キタサンブラックにしろ、ドゥラメンテにしろ、三冠ではないが、当代のスターだったんだが。あ、お前の時代からは先のことか」

 

「今はウオッカって馬の時代だって、おとーさんが」

 

「私の姪だ。齢の離れた弟の子……。前世では会えなかったが」

 

「ってことは……?」

 

「私は種牡馬になったはいいが、子供をろくに残せないうちに亡くなったんでな。後継ぎになる子供も作れんうちに、病気にかかってな。」

 

競走馬としては成功したが、種牡馬としては夭折により、事実上の失敗とされるナリタブライアン。数年の種牡馬生活のうちに、自身の後継ぎとなれるほどの子を成せなかったからで、ウマ娘としても、本格的な指導者向けの気質ではないと自覚している。

 

「不思議な気持ちだよ。自分を慕ってる後輩がだ。前世では姪っ子で、自分の身内だというのはな……」

 

ブライアンズタイム(ナリタブライアンやタニノギムレットの父)系の衰退により、2010年代半ば以降になると、同系統の血を持つ競走馬が活躍することは無くなり、クロフネ、キングカメハメハ、サンデーサイレンス、トニービン。この四つが主なハイブリッド元となり、競馬界のエリートとして君臨。それ以前の系統はほとんど淘汰されている。マルゼンスキーも直系は一時の隆盛が嘘のように衰退しているし、シンボリルドルフとトウカイテイオー、オグリキャップ。現役時にトップクラスの人気を誇った馬の血統も21世紀には風前の灯火も同然の有様。ミスターシービーやシンザンに至っては、平成中期までにラインは絶えてしまっている。そのため、最高傑作と言われつつ、その血をつなぐことも叶わずに夭折した故の無念が魂に刻まれ、異世界に行くことをきっかけに(似た状況に置かれることで素地は整えられていた)蘇ったのだ。

 

「前世の無念もあるからこそ、私は現役にこだわったんだが、親父に反対されてな。それで大喧嘩になって、勘当された。姉貴に家を背負わせてしまうことになったから、後に引けなくなったというわけだ」

 

「そのための鍛錬ったって、ガチの戦場を選ぶなんて」

 

「お前だって、帰宅部してたくせに、通算で二年もドンパチしてきてるだろう。お互いさまだ。人命救助もお鉢が回ってくるから、医療講習を受けさせられたと言っていたぞ?」

 

「え~~!?」

 

「公的機関に属する以上、医療知識もある程度は必要なんだと。それに、お前がよちよち歩きの頃の関西の大地震で問題になった『クラッシュ症候群』の事がある」

 

「なにそれ」

 

「地震で瓦礫に埋もれたり、崩れた建物から助け出された後に、突然死んでしまう事があるだろ?関西の大地震で世に知られるようになった。ここから数年後、世の中がすっかり変わってしまうようなレベルの大地震が東北で起きるから、その時に人命救助を行えるよう、勉強しておけよ」

 

「うーん……そう言われても。その頃、私は高校くらいだよね?それまで、プリキュアでいられるかな……」

 

「お前に後輩ができているなら、お前らが世界に必要にされてるってことだよ」

 

オトナ世界と異なり、後続のプリキュアが断続的に生まれていく事が確定している上、絶えまなく敵が現れるため、プリキュア戦士は必要とされる。なんとも理不尽だが、ある意味、オトナ世界は『本来は人類がいずれ滅ぶ世界線』であったことの証明であった。この時のブライアンの言葉通り、後日にブライアン自身がC世界の未来をタイムテレビで調べたところ、プリキュア戦士たちは『東北の大地震の人命救助などで大活躍している』事が判明。その時代に新人であった『スイートプリキュア』のデビュー直前での出来事であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――未来世界では、人型機動兵器関連の技術が発達しているため、管制OSの技術も概ね、コズミック・イラを凌駕している。だが、意外とバグ取りの技術は停滞(性能向上にのみ技術が注がれたため)しており、キラ・ヤマトは二次大戦後、アナハイム・エレクトロニクス社の委託を受け、その仕事を委託されていた。これはコズミック・イラで設立予定の国際組織に地球連邦の援助を得るための交換条件であり、キラは元々がコンピュータオタクの毛があったので、これを承諾。大人のぞみとメールでやりとりを交わしつつ、彼女用に新造された初代フリーダムガンダムの管制OSの微調整を行っていた。シンが間に入って、連絡を取るという形である。キラは自分の機体に愛着はそれほどないほうだが、まさか、クライン派の象徴のような扱いにされているとは露とも思わなかったらしい――

 

 

「少佐は、なんで軍に?」

 

「君と似たようなものだよ。成り行きで入ることになったってやつ。こっちも、君の使った機体に乗るとは、思ってもみなかったけど」

 

「そちらのガンダムは正規軍以外にも、色々あるんですよね?それを取り寄せることは?」

 

「考えたけど、どれもクセが強いんだよね」

 

アナザーガンダム系、とりわけウイングガンダムやその系統機は普通のガンダムより強力だが、高性能の機体だと、ゼロシステムがついて回るので、大人のぞみの(大人になったことで、弱気になった面が生まれている)精神力では扱えないとされた。ウイングガンダムはバスターライフルを最高で六発(カートリッジ式なので)しか撃てないという弱点があるので、早期に見送られた。そのため、戦術的火力を充分に備えるフリーダムガンダム系が脚光を浴びたわけだ。

 

「フリーダムのフレーム強度は?」

 

「最新世代を除けば、一、二を争うはずです。第一次大戦後半当時の最高技術で造られたはずですから。なんで、そんな事を?」

 

「上が、普通のビームライフルじゃ、火力が心もとないと言い出したらしいんだ。こっちの高火力モデルの反動に耐えられるかって問い合わせてくれって」

 

ビームマグナムやバスターライフルを持たせたいと、大人のぞみはチャットで続ける。資料映像を添えて。コズミック・イラでは、高性能MSのビームライフルは『量産品用のランチャー以上の火力』とされるが、未来世界では、高火力の重火器が多くラインナップされている。それらを持たせたいのだろうと。

 

「……なんですか、このバスターライフルっていうのは」

 

「こっちのガンダムでも、五本の指に入る強さを持つ機体が使う『イカれた』火力のものさ。MS単体としちゃ、究極の逸品」

 

ウイングガンダム用のバスターライフルでさえ、『半径150mに及ぶ激烈なプラズマ過流と数十Kmに及ぶ灼熱の奔流を巻き起こすので、超合金Z級の装甲材でもなければ、耐えられない』とされる。ウイングガンダムゼロ系統のツインバスターライフルはその更に倍以上の出力であり、MSの持てる火力としては最高峰である。

 

「その最高峰の代物だと、星の形が変わるってさ」

 

「……は?」

 

「パワーが違うよ、パワーが。こっちは核融合炉、それも第三世代のものだから。レーザー核融合とは桁違いの、ね」

 

M式核融合炉も第二世代を越えようとしている時代なので、数値上の出力以上に余裕を持つモデルが多い。ウイングゼロなどの『動力源』は特別製で、3800kw級の出力しかないように見えるが、実際はZZやV2と同等以上の出力を誇るという。また、アナハイム・エレクトロニクス社のそれが三基で7000kwなのに対し、一基で実現可能である。スペック上は(オリジナルの)フリーダムガンダムの原子炉は8000kw級だが、武器や装甲などの必要電力が高いため、実際のパワーは未来世界の第二世代型MSとさほど変わらないという計算も出されている。これはフェイズシフト装甲の必要電力が多い故で、第二次大戦後の時代には、採用するメリットが減少しているはずだが、通常の装甲研究が停滞したせいか、採用が続いているという。

 

「フェイズシフト装甲の改良は進んでるの?」

 

「元になるマテリアルを変えるそうです。元になるマテリアルが重かったそうなので」

 

フェイズシフト装甲の難点は重量が増加するという点で、未来世界では、軽量級では10トン未満だが、コズミック・イラでは、平均で60~80トン級と重い。そのため、未来世界の機体には見えないところで不利であり、デスティニーとインパルスが同時にかかっても、ハイν(サイコフレームとマグネットコーティングあり)に手も足も出なかったのは、そうした『見えないところでの性能差』も関係している。

 

「例のフェムテク装甲だけど、こちらのビームは原理が違うから、そのまま貫通する可能性が高い。一般的なものでも、固有の粒子である『メガ粒子』だしね」

 

「そうか、そちらはビームの原理が違うんでしたね」

 

「うん。それと、ものすごく硬い合金もあるから、こっちのほうが装甲の研究は進んでるかも」

 

未来世界は皮肉なことに、宇宙戦争の頻発で、装甲関連研究も進展。コズミック・イラでは停滞状態の装甲技術も大きな差がある。ガンダニュウムとコスモナイト、硬化テクタイト板の存在がそれを証明している。

 

 

「量産品でも、精錬技術の進んだチタン合金で、重量は40トン級だしね」

 

「軽いですね……」

 

「ビームには、量産品の装甲は気休めだけどね」

 

「それはこっちもですよ」

 

とはいえ、コズミック・イラの量産機の装甲は、最新型でも『ジムのチタン合金やザクの超鋼スチール以下の強度』であったので、それに比べれば、ジェガンのチタン合金セラミック複合材は(ガンダリウムβ相当の耐弾性能はあるので)遥かに頑強である。連邦軍がプラントと連合の双方を蹂躙できた理由は、MSのOSの完成度の差、連邦軍の介入した部隊が百戦錬磨の猛者であったこと、互いのガンダムタイプの性能差によるものである。

 

「そちらの情報、どこまで宛にできます?」

 

「大まかなことは合ってると思うよ。だから、ブルーコスモスの残党の掃討を当分はしていていいと思う。プラントの過激派も動くだろうけど、史実より打撃を被ってるから、ろくな兵力は確保できないとは思うよ」

 

「プラントの艦隊はもう、50隻も残ってないはずですからね……。いくら額面上の兵力を大型空母で補っても……」

 

「プラントはこっちの艦艇を恐れてるからね。アンドロメダもそうだけど、普通のドレッドノート級にしても、拡散波動砲を持ってるから」

 

「形自体は、連合のネルソン級とそんなに変わらないような、古めかしいデザインなのに、一隻で複数の連合のネルソン級をアウトレンジできるのは信じられないと、こちらの技術士官が」

 

「光速で飛びかって、攻撃しあう世界の量産型だしね。あれは古い型だから、次世代型が開発中だそうな」

 

「陽電子砲が普通の艦砲扱いなのは、なんでかと言ってます」

 

「昔はフェーザーが最強の主砲だったそうだけど、異星の恒星間航行艦に効果なしだったから、ショックカノンに取って代わられたそうな」

 

ショックカノンは技術的には、陽電子砲の発展技術に相当する。未来世界のそれは大艦巨砲主義時代の砲塔のような形状であり、機能面でも同様。それでいて、実体弾をちゃんと撃ち出せるなど、外観通りの機能を持つ。波動エネルギーの膨大な出力による威力は強大。より強力な技術の『パルサーカノン』の実用化まで、地球系艦艇の矛として君臨していく。

 

「基本的に、量産型は三連装三基、旗艦タイプだと、それが五基から六基ほど。ヤマトやドレッドノートはフォーマットの確立のためのヤツだから、必要最低限の数なんだって」

 

「ますます、大昔の大艦巨砲主義ですね」

 

「仕方ないよ。地球は常に寡勢で宇宙戦争を強いられてるからね。だから、決戦兵器を駆逐艦に至るまで積むなんて発想が生まれたのさ」

 

「空母決戦はないんですか?」

 

「あるにはあるよ。だけど、こっちはやること多いよ。対艦戦闘しながら、同時に制空権の確保なんてザラ。大抵は戦闘機で来るから、楽っちゃ楽だけどね。だから、戦闘機も重装備なわけ。それで、普通にドッグファイトするから、そっちのモビルアーマーなんて、いいカモなわけ」

 

「フラガ大佐がそっちの戦闘機に試乗したがってるんですよ。あの人、元々は戦闘機乗りなんですよ」

 

「サンプルに、コスモタイガーを送っとくよ。大佐の腕なら、一回の出撃で戦艦を5隻は落とせると思うし」

 

「ありがとうございます」

 

MSでも、戦艦を一回の戦闘で複数を撃沈できるのは、よほどの腕っこきのみ。シャア・アズナブル曰く、『一回の戦闘で落とせる戦艦は平均で三隻前後だ』とのことだが、普通は一隻を撃沈するにも労力がいる。アムロやシャアが異常なのだ。戦闘機で常に数十隻を一方的に撃沈してきた『宇宙戦艦ヤマトの艦載機隊』も。

 

 

 

 

 

――このチャットはこの後、キラと大人のぞみの双方で、複数の人物が割り込んできて、情報交換を好き勝手にしまくる事態に発展。完全にお開きになったのは、お互いに三時間半経った後であった。キラは史実と異なり、地球連邦軍の援助により、休憩時間を充分に取れるため、精神状態は安定へ向かっていた。また、ラクス・クラインも、自分以上にカリスマ性を発揮する『リリーナ・ドーリアン』外務次官(地球連邦)が連合、オーブ、プラントの三者を向こうに回しての大立ち回りを見せ、国際組織の設立の了解を取り付けてくる大活躍をしてみせたため、自分から『歌姫』を演ずる必要がないことに安堵していた。ミーア・キャンベルのこともあり、責任ある立場につかざるを得ない自分に嫌気が差していたからで、生まれながらのカリスマといえる、リリーナが剛腕ぶりでコズミック・イラ世界の諸勢力をまとめ、新組織を作る流れにしてみせたことは、政治に興味がないのに、父親が元の議長だっただけで、周囲に後継ぎと担ぎ上げられることに、本心では飽き飽きしていたラクスには福音であった――

 

 

 

 

 

 

――キラとアスランが後日、大人のぞみに語った話によれば、ラクス・クラインは『父親が議長というだけで、否応なしに政治の世界に放り込まれた』人生に嫌気が差していたが、二次大戦で『ミーア・キャンベルが死んだ』一件に責任を感じ、一時は要職につく事も考えていたこと、プラント最高評議会も、先々々代議長の子にして、その気になれば、プラントの政治をいつでも乗っ取れる立場と力を持つラクスの扱いに困っていたため、新組織の総裁という(半分以上は名誉賞だが)地位に押し込めたこと、キラを守るために、未来世界の進んだMS技術を欲していることが伝えられた。地球連邦軍はこれにマグネットコーティングやムーバブルフレームの製造技術の伝授などで応じ、ラクスの要請で、モルゲンレーテ社はストライクフリーダムガンダムを(未来世界からの)提供技術の検証機に流用することにし、同機をオーブに搬入させようとする。これが次なる動乱の序章になる事件を引き起こすことになるが、事前にその黒幕を知らされた彼らにとっては『予定調和』。ストライクフリーダムガンダムを徹底的に改良するための大義名分が立つことになる。また、キラとラクスの関係に気がついたリリーナ・ドーリアンの計らいで、その組織にプリベンターが協力することになるという成果がもたらされ、先行して、あるガンダムが送り込まれた……――

 

 

 

 

 

――コズミック・イラ世界の地球連合軍・ブルーコスモス派の基地――

 

月夜に照らされた某地の基地で、複数のダガーLとウィンダムがド派手に切り裂かれ、爆散する。基地の守備隊は大慌てで戦線を展開するが、敵の姿を探知できず、懐に入りこまれ、多数が同時に切り裂かれる。

 

「こちら、デュオ!ブルーコスモス派への奇襲に成功!!撤収までに斬って、斬って、斬りまくる!」

 

アナザーガンダムのパイロットのムードメーカーとされる『デュオ・マックスウェル』、その愛機のガンダムデスサイズヘルである。ビームシザースと頭部バルカンしか装備がない『漢な仕様』だが、接近戦での強さは(通常のMSとしては)折り紙付き。また、未来世界でも最高峰のマテリアルの一つ『ガンダニュウム』で作られた部材による恩恵の超高出力ビーム刃をブンブン振り回せるデスサイズヘルにとって、コズミック・イラのパターン化した動きしかできぬ、地球連合軍製の量産MSなどはかつてのリーオー以下の『オモチャ』にすぎず、ビームシザースを一回振るうだけで、複数のダガーが胴体から真っふたつの有様である。

 

「あのMSに攻撃は当たってるのか!?」

 

「当ててますよ!!ですが、あのMSは、どんな攻撃を以てしても……」

 

「馬鹿な、フェイズシフト装甲であろうが、瞬時にダウンさせるほどの飽和射撃なのだぞ!?普通の装甲などは…!?」

 

地球連合軍の基地の司令部は怒号と悲鳴の飛び交う、阿鼻叫喚の場と化していた。基地のあらゆるMSと通常兵器の全火力を集中させているはずなのに、敵はその全てをシャットアウトしているのだから、当然であった。陸上戦艦の艦砲にすら怯みもせず、何ごともなかったように歩いているのだから、当然であった。対して、当のデュオは……。

 

「なるほどな。この世界のMSは大半がバッテリーで動くというけど、その割には、出力はあんな。この程度のパワーだと、ガンダニュウムには傷一つ入んねぇが、気分のいいもんじゃねぇな」

 

ガンダニュウムは未来世界でもMS用の装甲として最強クラスに君臨しているので、ダガークラスのビームライフルやカービンは完全にシャットアウトできる。そのため、わざと拳を開き、ライフルのビームを真っ向から受けきるという行動をしてみせる。

 

「わりぃが、俺はあんたら全員を倒していくほど、暇じゃないんだ。木っ端共は道を開けな!」

 

と、機体を突撃させるデュオ。元々、彼らのガンダムは短時間で決着をつけるために『決戦型』と評されるほどの能力を与えられているため、文字通りの一騎当千を可能としている。コズミック・イラの量産機相手では『一騎当万』と言っても過言ではない。とっさに殴りかかってきたダガーの腕を引きちぎるなど、力の差は歴然としていた。

 

「雑魚はすっこんでろと言ったろ!」

 

果敢に挑む砲撃戦仕様のダガーLを蹴り飛ばし、沈黙させる。

 

「ん、体当たりする気か。その心意気は褒めてやるが……」

 

ジェットストライカーの推力を全開にして、体当たりを実行した、一機のウィンダム。だが、パワーがあまりに違い過ぎたため、その前に、普通に阻止される。押し出そうと、ジェットストライカーのエンジンが激しく吠えるが、デスサイズヘルは微動だにしない。逆に再燃焼装置を全開にし続けたジェットストライカーのほうが、エンジンのオーバーロードで自壊を引き起こし、そのショックでウィンダムは沈黙し、糸の切れた人形のように、その場で崩れ落ちる。

 

「かわいそうだが、こっちも仕事なんだ。とっとと、ケリをつけさせてもらうぜ!!」

 

ここで、デスサイズヘルはその真骨頂と言える機能を発動。周囲のあらゆる探知を無効化する『ハイパージャマー』である。これにより、地球連合軍は目視以外の機械的な探知手段を失った。司令部がその様子に沈黙した瞬間、彼らは『天国行き』となった。ビームシザースで建物丸ごとを斬られたからである。

 

 

 

――このように、アナザーガンダムの一体に軍事基地が蹂躙される事が起こるのである。元々、アナザーガンダムは地球を制圧する目的で開発されたため、MSとしては究極の領域の攻撃力を与えられていた。その証明である。元々、フリーダムガンダムとジャスティスガンダムもそのような運用想定であったが、それはパトリック・ザラの『絵に描いた餅』であった。だが、アナザーガンダムはそれを単騎でやってのける。接近戦特化のガンダムデスサイズヘルでさえ、地球連合軍を『赤子の手を捻るが如し』の威力であった。地球連合はロゴスの崩壊、ブルーコスモス派の離脱で、もはや有名無実の組織になりつつあったので、ブルーコスモス派は相当の軍事力を蓄えていったが、アナザーガンダムの登場で、蜂起への計算が狂う事になった。また、プリベンターの介入で、ブルーコスモス派に兵器を流す高官や軍需産業のCEOの摘発が始まったため、史実より遥かに早い速度で、ブルーコスモス派の軍事力は縮小していく。ファウンデーション王国はこの予想外の展開に焦り、蜂起の準備を早める。だが、彼らはアナザーガンダムの威力の全貌を知らない。ハイνすらも霞むような破壊力を誇るなど――

 

 

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