ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きと回想です。


第二百八話「オトナ世界でのキュアフェリーチェの活動、ダイ・アナザー・デイ直後の回想」

――これは皮肉たっぷりな事実だが、ココ(オトナ世界)はのぞみたちの使命からの『解放』を(その世界では復活した)ドリームコレットに願った。だが、それはプリキュアから『危機に対応する力』を奪うことに繋がり、大人のぞみの人生をも歪めてしまった。それをキュアフェリーチェに責められた結果、彼の心は(のぞみと会わぬように、王の職務を優先していた事もあって)脆くも崩れ去った。押し殺してきた罪悪感が爆発したせいでもあり、宇宙刑事ギャバンの手引きで、バード星の療養施設に入所させられた。これはナッツ(オトナ世界)に知らされ、フェリーチェが代わりに会っていた――

 

「フェリーチェ、どういうことだ?

 

「お知らせした通りです、ナッツさん。ココさんのことをあなたに知らせる必要が生じたので、私が伝言役を仰せつかったのです」

 

「わざわざ、北米から日本に戻ったのか?」

 

「私は飛べますから」

 

「そ、そうか」

 

ナッツは(ココのことを知らせる必要が出た事もあり、地球に来れた)人間態で、キュアフェリーチェと会っていた。ただし、オトナ世界のことは自身ではないが。

 

「お前……ずいぶんと……その、なんだ、垢抜けたな」

 

「色々とあったんですよ、こちらは」

 

そう言って、お茶を濁すフェリーチェ。プリキュア姿で姿を見せたのみならず、その姿で普通に、カフェでカフェラテを飲んでいる。いくら、キュアフェリーチェの時は『精神年齢がティーンエイジャーの外見に釣り合う』とはいえ、現役時代では考えられなかった光景だ。

 

「お前、ちゃんと代金は払ってるだろうな?」

 

「心配しないでください。あるところの仕事を引き受けているんで、金ならあります」

 

と、そこで、机に現金(紙幣)入りの袋を見せる。それは軍の給与なので、普通に大金である。

 

「お前、いつの間に……!?」

 

「知り合いから、こづかいもらってきたのと、バイトの給料を足したので……」

 

「普通に、サラリーマンの数ヶ月分の金額だぞ?みらいは知ってるのか?」

 

「みらいが大学生になってるのに、私もなにかしないと、怪しまれるんで」

 

「それにしても……すごいぞ」

 

「ハ、ハハハ~…」

 

ことはAは現地の自分自身と違い、20年もススキヶ原に滞在しているため、精神年齢も素で高校生くらいに成長している。ナッツに全てを言う必要は(この時は)ないので、嘘も方便であった。

 

「ココはどうした?」

 

「かれんさんが知り合いの精神科医に診察してもらうとかで、病院に連れていきました。あの調子では……のぞみさん、ショックで別れるとか切り出しかねないですよ」

 

「うむ……。あいつには悪いことをした……。だから、やめろと言ったんだが、ココは盲目的だった」

 

ナッツはココの行為を諌めたようだが、ココは『恋は盲目』を地で行く有様であり、耳を貸さなかったと述べる。フェリーチェは想像がついたのか、ため息をつく。

 

「プリキュア5と、はっきり願ってなかったと?」

 

「おそらく。たぶん、他のプリキュアにまで影響が及ぶのは考えてなかったんだろう。お前たちの例もあったしな……」

 

「それで、この有様ですか」

 

「仕方あるまい。あいつはのぞみのことしか頭になかったし、何も、のぞみが戦わなくとも……と考えていたんだろう」

 

ナッツはココを諌めたが、ココは善意で『願った』事が明確になる。ココが壊れたのは『のぞみは『キュアドリームになること』自体が青春であった事を知った事によるショックであり、自分が願ったことで、「5」以外のプリキュアも影響を受けていたことで、地球を危機に晒したことを知った故だ。

 

「当分は入院させておきましょうか?」

 

「それがいい。のぞみ(大人のぞみ)と会っても、今は最悪の結果しか生まんだろう。かれんには、迷惑をかけたな、と」

 

「伝えておきます」

 

ナッツはココの不誠実さを咎めようと思っていたのか、ココの擁護は最低限に留めていた。

 

「パルミエ王国も、色々とあってな…。お前たちを羨ましく思う事がある」

 

「直接統治ですからね、あなたたちの国は。議院内閣制に移行させればいいのでは?」

 

「ミルクがそんな事を言っていたが、あれは民が充分な学識を持つのが前提だ。パルミエの民は、そこまでに達していない。性急な改革は動乱を生む。地球での過去に例があるだろう?」

 

「フランス革命とロシア革命……ですね」

 

「そうだ。あれでどうなった?血で血を洗う動乱の日々だ」

 

「確かに。一方はソ連を生み、もう一方はナポレオンを皇帝にしてしまいましたからね」

 

ナッツは王国への議院内閣制の導入を考えていたが、民が充分な学識を持つ時代の到来を待つつもりのようだ。また、ミルク(美々野くるみ)がその導入を具申した事がある事を明確にした。パルミエ王国の統治論にまで話が広がり、二人は思わず、苦笑するのだった。

 

 

 

 

――オトナ世界の動乱は結局、21世紀の地球の文明レベルでは手も足も出ないため、地球連邦軍やプリキュアに戦闘を依存する事になった。この時点では(軍事上の重要な拠点がある)北米に主戦場が移っており、日本は落ち着きを取り戻したものの、決起しなかったプリキュアへの誹謗中傷も起こっていた。仕方がないが、(この世界線では)力が失われたプリキュアもかなりに上るので、全員が参加したプリキュアのほうが少ないのである。参加できた者も、成人までの数年は変身していなかったため、ブランクで戦闘能力が大きく低下していた。そのため、別世界の個体の記憶と能力を移植された者たちが中心格にならざるを得なかったという――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――魔女の世界での「連合国」は事実上、1945年時点で組織は空中分解していた。日本とドイツの介入で数カ国がシッチャカメッチャカにされたからだ。オラーシャは内戦に入り、スオムスは史実の『鞍替え』を咎められた挙句に政治・経済的な制裁を受け、国家存亡の危機に陥っていた。ロマーニャはダイ・アナザー・デイまでに実質的に軍事力を壊滅させられ、赤ズボン隊も戦闘不能に陥るなど、散々であった。後半の主戦場であったヒスパニアに至っては、フランコ将軍の失脚で国内が大混乱。軍事力も実質的にゼロに落ちているため、ブルボン朝の復興はなったものの、かつての栄光は影も形もない有様であった。ティターンズになびいた国も生じたため、連合国は実質的に統制力を失い、瓦解寸前であった。カールスラントを衰退させたことで、離反の抑止力が失われたためで、日本連邦は失策のツケの支払いを要求され、日本は史実の行いの記録を武器に、他国の軍人を連合国の名のもとに軍法会議にかけ、適当な理由で処刑したり、政治家なども失脚に追い込んだわけだが、それで連合国は瓦解寸前に追い込まれた。元々、カールスラントの軍事力を母体にしていたためで、そのカールスラントが事実上の解体を迎えたため、結局、連合国は日本連邦とその友好国中心の体制へと様変わりする。ロンメルやグデーリアンなど、有能ながらも、政治的な理由で日本連邦に亡命し、所属先を変えた将も多い。(グデーリアンやロンメルなどの将帥を客将に迎えた事は)ドイツやイスラエルから文句が出たが、1940年代の日本陸軍の将官は『機甲戦力の運用』をまったく理解していないことは世界的に有名であるので、アメリカも妥協的に容認した。1940年代のドイツ陸軍は最も先進的なドクトリンを誇っていたのは事実であったからだ――

 

 

 

――ペリーヌ・クロステルマンはガリアの復興に心身を捧げたが、ガリア国民の心変わりで疎んじられたと言ってよかった。ペリーヌは自国の軍事的・政治的地位よりも、国土そのものの復興を優先していた。娯楽すらも犠牲にして。だが、それが民衆の反感を買った。ペリーヌは財産の全てを復興財団に寄付するほどに復興に熱心であったが、ガリア(フランス)人の気質は基本的に、日本人のように生真面目ではなかった。それがペリーヌが疎んじられ始めた理由である。後年、本人は『復興さえ終われば、遊びはいつでもできる。そう考えていたのですが、青臭い理想論でしたわ……』と述懐している。これにより、自国を追い込んだ日本連邦との戦争へ、ガリアはひた走ってしまう。だが、ガリアの技術レベルは1930年代レベル。日本連邦は比較にならないほど進歩している。無論、軍人は警告しているが、ダイ・アナザー・デイ後のガリア世論は(植民地喪失による鉱物資源枯渇の恐怖により)尖鋭化しており、彼らの警告は無意味であった。だが、ガリアはもはや既存軍備の整備すらもままならない状態であった。そのため、10年単位の時間を準備に費やすわけだが、太平洋戦線で精強無比になった日本連邦に歯向かうのは、『風車に突撃するドン・キホーテ』並の無謀さであった――

 

 

 

 

 

 

――その日本連邦、とりわけ扶桑は、日本による軍縮の圧力を跳ね除ける事に成功はしたものの、士官・下士官に不足を来たした。粛清人事と戦死で、戦線の下士官以上の人材が不足したのである。実戦経験のある人材は自衛隊の人材で埋めようがないものである。自衛隊の厄介者を送り込んだはずが、ジオン残党の襲撃を潜り抜けた猛者達であったので、却って扶桑の戦闘効率を高めるという結果であった。当時は扶桑陸軍の機甲戦力は時代遅れと扱われ、それを新型の少数配備で置き換えようとしていたが、国家総力戦と化したことで数が必要となるという有様であった。戦車の運用に必要なインフラは後で整備するという緊急決定がなされたが、その頃には外地部隊はセンチュリオン、コンカラーといった『外国製戦車』を独自の裁量で調達する有様であった。さすがに『チハやホニで、M26以降の高性能戦車に立ち向かえと?』な有様は忍びなかったのか、部隊の独自購入は結局、評議会で事後承諾がなされた。一応は西側諸国の規格の戦車であったためだ。また、扶桑軍は対戦車火器がお粗末であったので、日本や地球連邦軍から(大慌てで)購入した。戦後の第二世代以降を想定したものなので、オーバーキルという指摘もあったが、対戦車槍や蛸壺地雷に比べれば、遥かにマシであった。また、カールスラントが放出したアハト・アハトやパンツァーファウストを追加購入する案もあったが早々に没にされ、代わりに『01式軽対戦車誘導弾』の供与、『カールグスタフ 84mm無反動砲』、FH70(155ミリ榴弾砲)の生産などが決議された。陸軍の装備は全体的に旧態依然としていたため、1947年度から急速に戦後世代へ刷新されていった。同時に兵の教育の手間がいるようになったので、自衛隊への出向や当時としては最も先進的な装備であったカールスラント陸軍の出身者に講習をさせるなどの方策がなされた。皮肉なことに、ドイツが切り捨てた『戦前からの軍人たち』が扶桑陸軍を近代戦に強くしていくのに貢献していったのである――

 

 

 

――それと同様、1948年以降、プリキュアを含めた転生者の増加で、Gウィッチと呼ばれる集団は魔女の枠を超えた『異能者』にカテゴライズされていった。魔女の権威が凋落したのは、カールスラント軍の軍事的意義優先の思考による不祥事が次々と起こったせいである。日本の外交官が(免職を承知の上で)顔がめちゃくちゃになるまで殴り続けたり、プロレス技で背骨を折られ、半身不随に陥った魔女も複数生じた。その被害者はカールスラントで名うての魔女、ないしは、かつてそうだった参謀らであった。同時に、それを大義名分にしたドイツによる大規模リストラによりカールスラント軍は瞬く間に霧散し、同国の秩序は崩壊した。その代替を求められたのが、日本連邦を中心に発生した「異能者」であった。魔女が転じて生まれた事から、『Gウィッチ』という造語が生まれたが、魔法と異質の力が主体なことから『異能者』という言葉のほうが次第に主流となった。一騎当千の強者とされた者たちに生じたため、カールスラント軍の人材が霧散した以上は、彼女らに頼るしか方法はなかった。のぞみが数年で佐官になったのは、損害補償もあったが、カールスラントの有能な魔女の『代替』が求められたためであった――

 

 

 

 

――1948年の年末――

 

この年の年末、連合軍統合参謀本部の大半のポストは日本連邦、ブリタニア、リベリオンの軍人がカールスラントの軍人に取って代わる形でついた。最高司令官はドワイト・アイゼンハワー、海軍司令長官は小沢治三郎といった具合である。当初はチェスター・ニミッツが有力視されていたが、リベリオン国民の反対で潰えた。小沢治三郎は日本からは『あ号作戦の敗将』と侮蔑されていたが、魔女の世界では起きていないので、とやかく言われる筋合いはない。さらに言えば、航空戦力の運用に長ける日本の提督はそれほどいないために、ある意味で『妥協』された。

 

 

 

 

――表向き、ペリーヌ・クロステルマンの隠棲先とされる別荘――

 

 

「小沢くん、リベリオン国民の反対で、ニミッツ提督の代わりに、君が推挙された」

 

「長官、私がそのようなポストでよろしいのですか?」

 

「山口くんを兼任させると、今度は国粋主義者どもがうるさいからね。君をつけたほうが『お情け』と解釈するのだ。井上では、戦下手だと言われるからね」

 

扶桑海軍はこの頃になると、長老達が晩年期に入りつつあったため、年齢的に現場へ影響力を行使できる人材で最右翼とされたのが山本五十六であった。軍令は無能と言われているが軍政は大得意であるので、今や扶桑海軍での『御前』的地位にあった。

 

「艦上機の部隊には苦労をかけるが、日本も今更、所属の変更は出きんということだ。だが、残った部隊が二線級な以上、元の艦上機部隊には旧任務を指令せねばならん。俺が直接現場に出向き、不満を抑える。大西が失脚した以上、俺しかできんからな」

 

山本五十六は自分や井上成美が『敵の多い』身の上であることを承知しているが、大西瀧治郎が事実上の失脚をした以上、現場を従えられるカリスマ性を持つ『航空屋の大家』は自分しかいないということで、積極的に現場の説得に赴いていた。

 

「今度は大鳳の部隊を説得せねばならん。日本の無知のせいで、所属先まで変更されてしまい、現場が腐っているからな」

 

「連中は何を考えているのでしょう」

 

「自分達の先祖が陸海で争っていたから、独自作戦能力を奪うことで、強引に統一した行動を取らせるという魂胆なのだ。だが、現場はそう安々と統一できん。故に、彼女らの力に頼るしかないのだ」

 

机上の理論通りに事は運ばない。ダイ・アナザー・デイがそうであった。64Fの奮戦がなければ、欧州はティターンズに蹂躙されていただろう。そのため、64Fは臨時から常設の扱いになり、『特別編成飛行軍』に落ち着いた。本来は専門部隊が担うべき、別の任務までも背負わされたからである。江藤敏子は一連の流れの発端となる事案の責任を追求され、若き日の『個人戦果の未公表』で天皇直々の査問を受ける事態になったが、艦娘・陸奥の執り成しで、難を逃れている。扶桑軍は空軍の設立後は(褒賞制度の改変もあり)個人戦果の記録を厳格に記録することが求められたため、海軍系の魔女が特に固執した、『全体主義的思考』はあっさりと切り捨てられた。これにショックを受けた『1945年当時に中堅世代であった魔女ら』は、ダイ・アナザー・デイの際、命令を偽装してまで64Fを孤立させたが、64Fはその圧倒的な戦闘力で敵の攻勢を見事に食い止め、黒江らが上層部と太いパイプを持っていたことで命令の偽装はあっさりバレ、軍全体の不祥事となった。その影響は開戦後も尾を引いている。

 

「全ては東條の金柑頭が個人戦果の報道を規制したことから始まった。奴さんも厄介な置き土産をしていったものだ」

 

「連合艦隊の日本駐留艦隊の泊地がバラバラになるのは勘弁してほしいと、現場の要望が出ていますが」

 

「日本に打診はしたが、海保が対抗意識を燃やしていてね。だが、学園都市の起こした戦争で組織としての機能に支障が生じた海保の現場は、我々に肩代わりを懇願している」

 

「なんと返答を?」

 

「検討すると言ったよ。海保のメンツ論に付き合うほど我々は暇ではないが、彼らの現場が疲弊しきっている以上はな。表向きは練習航海という名目で行うことになるだろう。大和型が砲を振りかざせば、違法漁業者などは蜘蛛の子を散らすように退散するだろう」

 

後日、山本の指令通りに扶桑の日本駐留艦隊は『練習航海』の大義名分を用い、海保の業務を実質的に肩代わりした。法的にはかなりグレーだが、海保はロシアの攻撃で巡視船を大量に失った上、学園都市が極東ロシアを占領していた関係で領海警備すら困難な有様。その兼ね合いで、扶桑艦隊がその任務の多くを肩代わりした。大和型や超甲巡などの大型戦闘艦が睨みを効かせたおかげで違法漁業は蜘蛛の子を散らすように減り、大衆からも歓迎された。政府としても海保の再建までの時間確保になるため、扶桑艦隊の活動を容認。特に、大和型戦艦が違法漁業者を追っかけ回すのは、ロシアに代わる東側諸国の雄たる中国をも尻込みさせ、やがて、『統合戦争』までの間、彼らを『眠れる獅子』にしておく効果を発揮したという。

 

 

「日本は警察活動も強引には出来ないということですか」

 

「民主主義とコンプライアンスの時代ということだろう。だからこそ、日本の法に縛られない我々が政治的に必要とされるのだ」

 

日本連邦の繁栄は、扶桑の活力によるもの。それにコンプレックスを持った日本だが、日本は人口の多い第二の世代が1990年代からの不景気で次の世代を儲けられなかったことで国家そのものが衰退期に入っていたため、仕方がないことであった。扶桑の軍事力で国際的地位も戦前に近いレベルに回復した(バブル期は『西側諸国の金づる』扱いであったので)事から、中国を仮想敵国にしていく時代を迎えた、21世紀も四半世紀を迎えた頃には、(世代交代と世界情勢のさらなる悪化で)『一定の軍事力の確保は仕方がない』という考えが主流になったため、『扶桑の軍事力の解体論』は風船のようにしぼみ、代わりに『現状維持』論が主流になった。扶桑の軍事力が予想以上に巨大であったため、日本が逆占領される(特に、大和型が近代化され、現代兵器への抵抗力を備えている事は左派には特に衝撃であった)危険を悟ったからでもあり、能力者が新規に補充されなくなった日本には、扶桑の『異能者』を止める手段は存在しない。それも、活用論が台頭する理由であった。その影響は扶桑自身にも大きく生じた。

 

 

 

 

「ちょうどいい機会だ。お上には気の毒だが、東條さんに『事変からダイ・アナザー・デイまでの軍事的失敗の全責任』を負わせ、派閥の残党は前線で死なせる。それが日本の世論を納得させられる選択だ」

 

「よのしいので?」

 

「仕方あるまい。国を破滅に追い込んだ張本人とされている以上、大陸領失陥の責任も負わせたが、国外追放にしただけでも、充分に温情だよ。日本の左派の尖鋭化している層は罪人としての市中引き回しと火あぶりを要求したそうだが、連中はイカれとるよ。だが、彼が歩兵至上主義であった事が、我が軍の近代化に大きく味方してくれる。たやすく要求が通るからな」

 

 

 

――こうして、東條とその腰巾着たちに、事変以来の軍事的失敗の全責任を負わせる風潮がある扶桑軍。そうしたほうが、近代化の予算獲得の大義名分を得られるからだ。とはいえ、魔女の政治的地位を擁護していたとの記録もあるように、貧弱な機甲戦力は魔女に補わせるつもりであったのは事実である。だが、機甲戦力の急速な強力化は彼らの想像を遥かに超えており、ティターンズが促したとはいえ、M26パーシングは魔女の世界の各国の重戦車を圧倒する性能であり、ティーガーにはない生産数が武器であり、エンジンと砲のグレードアップも容易である。90ミリ砲はリベリオンの冶金技術で、一撃でティーガーを撃破可能の火力を誇っており、連合軍は国単位で陸軍を蹴散らされる有様だった。また、自由リベリオンの戦車駆逐車は大戦中期型相当の代物であり、『使い物にならない』。それも連合軍の機甲戦力の瓦解に繋がった。日本は大慌てで74式戦車と16式機動戦闘車を提供したが、戦後日本の第二世代戦車は『大戦型の機動戦』に向かない特性であり、その効果は疑問視された。とはいえ、日本の戦中型戦車は『ブリキ』と揶揄されるような代物である事は子供でも知っている。その事から、恩を売りたい日本の防衛閥の意向で提供された(実際には、扶桑の機甲戦力は史実日本帝国より、だいぶマシであったが)。この時に五式砲戦車『ホリ』は日本の技術などで『155ミリ砲を搭載する』改修と追加生産がされ、自走榴弾砲を兼任する車両に生まれ変わり、少数使用に終わった『ヤークトパンター』や『ヤークトティーガー』を実質的に代替した。元々が『砲戦車』なので対戦車用の徹甲弾が用意されており、(直撃すれば)現代型戦車でも鉄くず間違いなしの威力を誇っていた。戦後日本の難点は『重巡以上の戦闘艦艇の砲塔を自分たちでは手がつけられない』(ロストテクノロジー)ことであるので、扶桑から『逆輸入』する形でしか戦艦や重巡の砲塔と砲身の製造ノウハウを取り戻せなかった事に、ロストテクノロジーの悲しさがあった。ただし砲弾については、21世紀日本でも(要は大きい砲弾なので)製造は可能なので、扶桑純正の砲弾より遥かに貫通力を持つものが製造され、共通規格とされた。これは戦艦や重巡に『手がつけられない』事に造船業界が憤慨したからだが、戦前型の『装甲持ちの艦艇』を一から造るノウハウなど、日本からはとっくの昔に失われているし、史実の大和型戦艦以上の大型艦を受け入れられる港など、戦後日本であっても限られている。それも、日本駐留の扶桑艦隊の配置がバラバラにならざるを得ない理由であった。また、連合艦隊の重要泊地であった柱島泊地は戦後には放棄されて久しく、扶桑に提供するにも、国内世論の反発を恐れた日本政府が早々に再整備を諦めている(海底に史実の陸奥の残骸がある事から、縁起が悪いのも要因)――

 

 

 

 

 

――Y委員会の会合での初期の議題は『夢原のぞみの取り扱い』である。ダイ・アナザー・デイ中に『自我意識の上書きと、それに伴う肉体の変異を起こしたからであるが、記憶は保たれていたので、混乱を避けるため、最初期の段階では『中島錦』の人事記録に追記される程度の記述に留まっていたが、肉体自体が完全に変異していること、日本とのトラブルを期に夢原のぞみとしての戸籍が作成され、書類上はのび太が50歳代の時点で彼と『姻戚関係』である。外交トラブルは別の問題も起こした。のぞみは本物の『プリキュア変身者』である。現役時代の行動の全てが身バレしている状況なので、プライベートの時間が逆に取れないという状況に陥った。そこで、のび太と黒江は逆説的な日課を課すことにした。キュアドリームの状態を普段の生活でも通させることにした。これは黒江とことはのケースを鑑みてのアイデアで、のび太の発案であった。それを後押ししたのが、格闘家でもある流竜馬であった――

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの直後。トラブルの収束が成って間もなく――

 

「Y委員会の沙汰も下った。お前、普段からキュアドリームでいろ」

 

「えーーーー!?ど、どういうことですかぁ!?先輩ぃ!?」

 

「よく考えろ。のび太の世界は、お前らがアニメになってる世界線だ。と、いう事はだな」

 

「?」

 

「お前の現役時代の全部がバレてるってことだ」

 

「うわぁ~~!!そ、そうだったぁ!」

 

「中学の小テストで40点台だったり、部活出禁だった事もな。つまり、プライベート?ナニソレオイシイノ状態だ」

 

「うん。だから、プリキュアでいたほうが、プライベートの時間を取れると思うよ。はーちゃんがそうだしね」

 

二人にそう説明され、自分のあらゆる事が世の中に晒されている状態であることを実感したのぞみは、恥ずかしさと驚きで、顔を真赤にし、湯気まで出していた。

 

「君の元いた世界と違って、プリキュアのあれこれの縛りを考える必要はあまりないしね。異能者としての責任はもちろん課されるが、自分が必要と思えばいつでも力を奮える。それと君たちは変身したら軽い興奮状態になってるようだから、それを取り払うために今の体を変身に慣らす必要もある」

 

「俺は飛ばされた先で否応なしにそういう状況だったから、この姿にも慣れた。お前もそういう状況にあるってことだ」

 

黒江の元の姿を知っているため、月読調と背丈以外は同じ姿になっているのは(この時ののぞみには)妙な感じであった。しかも、ご丁寧にシンフォギアまで使っている。これは聖闘士の道を選んだものの、黒江の秘書業務もこなしていた都合上、調は(この時期は参戦間もない新参者であるので)ギアを手元に持っている必要はなかった。従って、この時に黒江が使っているギアは『オリジナルのシュルシャガナ』であった。

 

「だからって、シンフォギアを起動させる必要あります?」

 

「聖衣をいちいち使ったら、怪異相手じゃオーバーキルだろう。俺は黄金だから、本気で技を撃ちゃ、あたりの地形を普通に変えちまう。欧州は特に遺跡が多いから、ケイのほうが加減が効く。聖衣使っても、仮面ライダー三号は普通に光速に追いついてくるぞ」

 

「うへぇ……」

 

「それと、もう一つ理由がある。調と切歌が気まずくなってるから、二人を一組で戦力に組み込める状況(当時)でもなくてな。当面は別行動になる上、調に社会勉強をさせるから、ギアは俺が預かる事になった。俺も元の姿は割れてるから、欺瞞も兼ねて姿を使ってるわけだ。スパイみてぇなこともさせられてるからな。元の姿は、式典の時と帰省の時くらいしか使わんよ。聖闘士ならシンフォギアからのアレコレを気にしなくていいから、体の防護目的で使ってる。元々、魔女としてのシールド強度は高い方じゃなかったしな」

 

シンフォギアでの長時間の活動は本来、(第一種適合者でも)体への負担がかかるが、普段から聖闘士である者であれば、その心配はない。聖衣自体が『完全聖遺物』であり、それを使いこなせるという事は、ヒトの領域を超えているということ。

 

「向こうから言われません?」

 

「調がのび太のとこで、20年近くも歳を食わないで過ごしてることも含めて教えたよ。相当に気まずかったよ、お互いに。お前も大変だぞ、江藤隊長に事情説明を頼んだが、中島家の親類連中はお前を疎んじるだろう。プリキュアの姿はこの時代(1945年)の田舎の老人連中から見りゃ、『西洋かぶれ』でしかないからな」

 

「いるんですか、この時代に」

 

「いるんだよ。田舎の連中ほど、国粋主義にはまりやすかったというしな。それに、医学的にも別人に変わっちまった以上、故郷(くに)には帰れんだろう」

 

「は、はい」

 

「うちに下宿するといい。G機関がマンション自体を買い取ってるから、部屋はいくらでも空いてる。みらいちゃんとリコちゃんも忙しいから、はーちゃんの面倒は常に見れないし、調ちゃんも多忙の身。はーちゃんが寂しがるが、僕も妻も共働きで、まだ若いから、あまり休めなくてね。倅もまだ小さい(28歳時点から呼ばれたため、その当時のノビスケは幼児である)と上司には言ってるが、古いタイプの人で休ませてくれなくてね」

 

「この姿じゃ、故郷には帰れないのは重々承知してます。行く宛もないし、ついていきます」

 

「軍服姿じゃなく、キュアドリームの姿になっとけ。うちの陸軍の軍服は日本陸軍と同じデザインだから、のび太に迷惑がかかるぞ」

 

「え、2010年代も後半になってるのに?」

 

「智子が前に、それでえらい目に遭ってな。プリキュアの姿のほうが角が立たん。あいつ、ボケ老人の発狂に出くわして、杖で力任せに殴られて、何針か縫うくらいの怪我を負わせられてな。それで警察に相談したら、宝くじ級のレアケースだって言われた。俺も、自衛隊の仕事で嫌な思いは何度もしたことあるしな」

 

その事案により、扶桑陸軍に在籍経験のある者は空軍設立後も『戦闘服姿での勤務』が推奨される事になるのである。のぞみたちの登場で、スーパーヒーローのコスチュームの法的位置づけも真面目に法務省などで議論される事になるわけだが、扶桑陸軍の軍服が旧日本陸軍と同じデザインなことで、戦争経験者の老人らに理不尽に暴力を振るわれる事案が相次いだ事が同時期に発覚したことから、外交問題を避けるために扶桑陸軍の軍服を陸上自衛隊と同デザインのものに改定させる案が提案され、太平洋戦争の開戦前に目処も経っていたが、扶桑の青年将校たちや大衆が猛反発したこと、すぐに戦時状態になったことで一時棚上げ状態となるのである。

 

「さて、そろそろ、ドラえもんが迎えに来るよ。変身しときな」

 

「戦闘以外で変身したの、現役時代はほとんどなかったなぁ。あたしらの時代」

 

「それは時代の変化だね」

 

「そっかぁ」

 

こうして、のぞみ(A)は野比家に居候の身となった。プライバシーが(たいていは『アニメの中の登場人物である』都合だが)ほとんどないも同然の世界で暮らすため、『夢原のぞみ』の姿では(却って)過ごしにくい状況であったので、普段からキュアドリームの姿を取ることになる。のび太の息子・ノビスケが小学校の高学年を迎える時代、彼の部屋に飾られている集合写真でもっとも古い日付のものは、『この時期』に撮られたものになる。のぞみは黒江の薦めで、のび太の世界でカルチャースクールなどに通う事になるわけだが、『前世での14歳当時の容姿をベースにした変身』で日常生活を送るという奇妙奇天烈さに戸惑いつつも、心の傷を少しづつ癒やしていく。ことは(キュアフェリーチェ)との疑似的な姉妹関係も始まるのだが、2016年以降のプリキュアを知る層からは、チームも、世代も違う二人が共に行動することが不思議がられたのは言うまでもない。

 

 

 

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