ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百十一話「回想と説明 2」

――結果的に、カールスラントは政治的なドイツの思惑で内乱どころか、民族そのものの存亡の危機に陥った。ソマリアやカンボジアもかくやの地獄であった。結局、NATOの軍政は長期に渡り、1949年の段階では、東西出身者に生まれた対立が要因の殺し合いを鎮めたところ。この殺し合いは凄惨なものであり、NATO軍が街を制圧した際には住民の青年層の8割方が亡くなっていたという。このように、同胞同士の殺し合いが後を絶たないカールスラントは急速に国家としてのまとまりを喪失。国家機能の喪失による『滅亡』がNATOによって宣言された。共和制による再建も模索されたが、東西ドイツの対立の教訓と現地の有様から、結局は君主制の存続が決められた他、元の貴族層が失脚した穴埋めを気骨ある若手で埋めなくてはならないため、史実でナチズムと無関係であったバルクホルンやハルトマンはこうして、軍の最高幹部へ祭り上げられていくことになった――

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑も旧来の華族が影響力を大きく減じ、農村地域が瞬く間に衰退していった都合上、軍人の枠を超えて『俊英』と名高い黒江や黒田の政治力に頼らざるをえない状況になってしまった。黒田が軍務から退いたのは、華族身分そのものが存亡の危機に陥り、本家もお家騒動でガタガタになったことへの対処のためであった。華族は(日本が手を引いたことで)存続したが、それまでのように『先祖の力でふんぞり返れなく』なったため、黒田のような『功ある人間』を当主に添える必要が生じ、嫡男の廃嫡をしてでも前当主は自身の後釜に添えた。そのため、黒田は休暇を終えても軍務に戻れなくなった。そのため、自身の後継にのぞみを指名。自身の愛用した『斬艦刀』を送ることで、後を託したのである。

 

 

 

 

 

 

扶桑海軍は目まぐるしく変わっていく航空機の様相についていけなくなっていた。1000馬力にも満たないレシプロ発動機が主力であったのが瞬く間に3000馬力になり、気がついたらそれ以上の馬力換算のジェットエンジンが台頭してきたからだ。更に、零式艦上戦闘機が1943年の開発なのに1940年の開発と扱われ、旧型機と扱われることに海軍航空本部は大混乱。紫電改と烈風の開発を急がせたのに、日本側は『もっとすごいの造れ!!』であった。仕方がないが、日本側は『F8FとF4U後期型』の存在を異様に恐れており、それを更に圧倒せんとしていたからだ。結局、陣風は繋ぎ以外の何物でもない扱いとなり、短期間で『F-86の派生型』に取って代われ始めた。この革新のため、古参のパイロットの少なからずが淘汰され、代わりに自衛隊出身の義勇兵が後釜となっていった。ジェットエンジンはスロットルレスポンスがレシプロに比べて悪い部類に属する事から、スロットル操作を誤りエンジンを壊してしまう事例が相次いだため、ジェット機は扱いに手慣れている自衛隊出身の義勇兵に優先配備された。自衛隊は退職者を扶桑に送り込むことで、間接的に扶桑軍を助けていた。

 

 

 

 

 

日本連邦が樹立された段階で、学園都市は何らかの原因で管理組織が消え去り、かつての栄華は見る影もないスラム化した状態であった。常盤台中学も(日本警察が踏み込んだ段階で)完全に廃墟と化しているなど、すっかり秩序は消え去っていた。都市の治安組織も完全に機能しておらず、まるでセミの抜け殻のようであった。その時点で、御坂美琴らのいた時代から最低でも数年程度しか経っていないはずであったが、往時の見る影もないほど荒廃していた。だが、学園都市の有していた『裏の実力部隊の保有兵器』はブラックマーケットに多数が流れた痕跡があり、日本が扶桑との融和路線に舵を切ったのは、予想以上に学園都市のスラム化が進行しており、扶桑の異能者に対抗するどころではなかったという『日本政府に予想外の出来事の判明』もあった。この顛末はグンドュラ・ラルの前世とは別の学園都市での話であるので、ドラえもんたちと共闘した彼女らがどうなったか?その謎が残された。だが、御坂美琴のいた時代の記録はなぜか残っておらず、残存している常盤台中学関連の書類にも、彼女の名はどこにも載っていなかった。(御坂美琴の名は響き渡っていたので、なおさら不自然であった)大規模な証拠隠滅が図られたのか?それにしてはおかしい点もある事から、『何かが起こった』のは確か。このことの判明も、日本政府内の『扶桑への融和派』が強硬派を急速に追い落とす理由となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑陸軍は結局、戦時動員の差止めで議論がなされたが、結局は様相が総力戦のために、機械化の促進を条件に一定範囲の動員は認められた。とはいえ、旧式装備を廃棄し、新式に強引に置き換えを図ったことは完全に失敗であり、南洋軍の苦境の原因となった。仕方がないので、鹵獲装備の積極的な運用がなされ、敵味方共にM41軽戦車が多数運用される事態となった。これは在庫の75ミリ砲弾を使えることが大きな理由で、扶桑では特に重宝された。ガタイがいいことから、軽戦車と呼ばれるのに抵抗感を覚える将兵も多かったが、既に平均重量が1930年代までとケタ違いになっていたため、これでも軽戦車であった。主力は105ミリ砲から120ミリ。自走砲は155ミリへの刷新が図られつつあった。だが、兵器配備は本土が優先された都合上、南洋軍は地下秘密工廠での生産か、鹵獲装備の再利用という手段でしか『機械化を進める』手立てがなかった。このあまりの惨状に、日本も手立てを考えたが、扶桑の戦争への関与を避けよという世論は根強く、74式のライセンス供与を認めるのが精一杯であった。74式は『待ち伏せを前提に設計されているので、機動戦向けではない』という批判もあったが、日本政府としても90式以降の配備はGフォースに限定させたいという思惑があり、74式戦車の供与は精一杯の誠意であった。また、五式自動小銃の生産を差し止めた詫びに、戦後型の64式7.62mm小銃のライセンス供与などが図られた。これは怪異対策の観点から、89式以降の5.56mmNATO弾に不満を持つ将兵が多いからで、扶桑軍はこうして、装備の戦後型への刷新を進める。この細かな弾薬の刷新も、扶桑の軍事力の底上げに貢献していく。同時に日本から騒動の詫びとして、21世紀基準で精錬されたジェット燃料や高性能の潤滑油などが提供され、扶桑はそれを南洋に送り、戦線の維持に使うのだった。

 

 

 

 

扶桑海軍は結局、史実の日本海軍の敗北の記録で『小手先の不沈対策は無意味だった』事を思い知らされる事になり、戦艦や空母で進められた『不沈対策』は直ちに撤回された。それは内部の調度品や内装品の撤去などで、それが早くから進められていた武蔵は、日本の関係者の視察で『衛生環境の不備』などが指摘され、それを押し進めた先任士官が海軍精神注入棒での見せしめのリンチの上で、職を罷免される事態となった。その先任士官は退院後、自身の不明を詫びる遺書を残し、自宅にて失意の自刃。歴代艦長の責任問題になるのを恐れたためで、武蔵の兵たちの動揺も大きかった。この事件の政治問題化を恐れた扶桑軍は『不燃性素材での内装品の導入』、不燃塗料の導入を急いだが、瞬く間に政治的に『炎上』。結局は当時の軍令部総長であった及川古志郎の辞任表明に至った。軍令部はその一年後に組織が廃されたため、組織の名誉回復は成らずに終わった。この騒動もあって、扶桑海軍は内的にガタガタに陥った。特に、参謀を務める軍人の多くが(史実の失策を理由に)強引に罷免からの免職を食らった事は容易ならざる事態であった。特に、武蔵で空調が止められていたのは、その先任士官の『こんな贅沢で戦に勝てるのか?』という提言なので、兵たちの衛生環境や健康状態を考えていないとの批判はまったくの想定外であった。ましてや、連合艦隊旗艦でない一戦艦であるのに、との反論もあった。だが、新鋭艦であった大和型戦艦であるという不幸により、この事態の批判は海軍全体へ飛び火。結局は彼の自刃を受けた軍令部の緊急通達で、連合艦隊全体の衛生環境と健康管理は瞬く間に現代艦と同等以上にまで改善される事になった。これを契機にして続いた海軍全体のゴタゴタにより、空母機動部隊は瞬く間に形骸化。戦艦は逆に、馬車馬のごとく酷使されるという事態に発展した。日本政府はこれを『空母の大戦型からの刷新までの措置である』と言い訳したが、戦後型空母は大型化と複雑化により、大戦型のように『戦場で被弾しながら戦う』事は、半ば想定外である。結局、扶桑の新造空母は『装甲空母と戦後型のキメラ』として生まれる事になったが、それによって、建造工程は複雑化。就役は早くても『1952年以降』だという。つまり、64Fが支えなければ南洋軍はジリ貧というわけだ。黒田が急遽当主を継がせられたのは、政治的な側面からの支援を必要とする扶桑軍の意向でもあったのである。当人の他にも、黒田家の持つ財界とのコネクションを必要とされ、政治の世界に引っ張られた。ペリーヌと真逆だが、1940年代の扶桑の政治で成功するには、本人の人柄もさることながら、政財界とどの程度のコネクションを持っているか。それで決まる場合が多く、黒田は爵位、家柄、自身の武功共に満点であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

――のぞみAは黒田の引退を受け、完全に骨を埋めることを決めた。大人のぞみに送られた斬艦刀はのぞみAの計らいで調達されたものであった。その関係上、骨休みが必要と考えた黒江は、ブライアンの願いを使う形で、のぞみとの入れ替わりをさせた。ナリタブライアンは(自身が『衰え』を見せても、レースに固執したことで)父親と袂を分かつことになったものの、のぞみAの代行をすることで、ウマ娘世界での自分から『距離を置く』ことに成功。自身の本質が純真であったこともあり、なんやかんやで『キュアドリーム』としての生活を楽しんでいた――

 

 

 

 

――その過程で、第二の『プリキュア5の世界』を(のぞみの姿で)訪れることになったブライアン。その世界ののぞみが交通事故で瀕死の重体に陥ったため、その見舞いのために訪れたのだが、詳しい事情を知らぬ、りんCによって、学校の体育祭に駆り出されてしまったのである。すぐに結城丈二から事情を知らされたが、もう後戻り出来ないため、そのまま参加させざるを得なかったー

 

 

 

 

 

ブライアンの資質は体育祭向きであったので、(のぞみの現役時代を考えれば)信じられないほどの好成績をマークした。特に、人数合わせと見られていたリレーや徒競走では(中学生という年齢を考えると)信じられないような好走を見せた。ブライアンは相当に加減したが、ウマ娘でも最高級の瞬発力を誇り、末脚の速さも歴代随一であったのには変わりないため、徒競走では『陸上部の主将がガチで怯えるほどの殺気』(後に、その主将は『人生で初めて、死の恐怖を感じた』と述懐したという)を伴う末脚で見事に一位を獲得した。のぞみAの体が『ブライアンの要求に応えられる』スペックを持っている故の光景であった。

 

「あんた、あの医者の人の言う通り……」

 

「言っただろ、私はお前らの友だちの体を借りているだけだと」

 

「あなた、本当は何歳なの?」

 

「17くらいの高校生だよ。陸上競技の選手だがな」

 

「それで、あんなに速く……」

 

「ほとんどプロだから、高校生でもない連中とは比較にならん。それに、私は普通の人間でもない」

 

「どういうことなの?」

 

「競走馬が人型の体を手に入れて、別の世界で生まれ変わった種族なんだよ、本当の姿は。理由あって、お前らの仲間の体を『いれかえロープ』で借りている身の上だ」」

 

「ん、待ちなさいよ。それ……ドラえもんの」

 

「ああ、ガチで本物と知り合いでな。その関係で使えたんだ。ただし、声は『昔のどら声』だ」

 

プリキュア5ののぞみ以外の面々に、自分はウマ娘であり、ドラえもんの力を借りて、精神を別の世界におけるのぞみと入れ替えていることを説明するブライアン。りんはすぐに分かった。目つきが鋭い(キュアドリームとしてのそれと同じ状態)などの外見的な違いが出ていたからだが、他の面々は『プリキュアになってからの付き合い』であるので、細かい部分の違いになると、いまいちわからない。これはりんが幼なじみであるからだ。

 

「最近は声変わりましたからね~。って、本物に会ってるんですかぁ!?」

 

「そりゃ、別世界を行き交うくらいはわけないからな、彼にとっては」

 

「あなた、競走馬の生まれ変わりと言ったわよね。名前は?」

 

「お前らの年代じゃ、馴染みないと思う。小学校の時に『ディープインパクト』が走ってたの見てた世代だろう?あいにく、私はヤツより一回りくらい前の世代の競走馬でな。インターネットで調べるか、図書室で辞典を引けばわかるだろう。ナリタブライアンだ」

 

「ナリタ……ブライアン」

 

「ディープの先代の三冠だった。競走馬として最高の名誉だよ」

 

前世の記憶を得たため、以前と違い、三冠を獲得したことを誇りに思っていることを口にするブライアン。のぞみの体なので、当然ながら、声はのぞみのそれだが、トーンが更に低く、なんとなくドスが効いている。纏う雰囲気もまるで異なっている。

 

「さて……最後の競技が始まる。本気でやったら、世界最速の陸上選手よりも数段速い速度が出ちまうから、加減せんといかんな」

 

「その体、耐えられるの?」

 

「この体は『全ての世界で最強の戦闘力を得た』世界線の個体のものだ。素でケタ違いのスペックがあるそうだからな。余裕で私の全力に耐えられると、医学的にお墨付きを得てる」

 

のぞみAは単純な戦闘能力でいえば『全次元で最強』と言えるスペックを獲得している。当然ながら、軍人としての訓練も積んでいる状態であるので、基礎体力が他の世界とはケタ違いなのだ。また、周りに『超電磁砲』などの異能使いがゴロゴロしている環境なためと、一時的に黒江が体を使う事があるため、その気になれば、『超電磁砲』も撃てるという(ちなみに、プリキュアの後輩かつ、戦友のシャーリーは前世の都合で『原子崩し』であり、使用すると、口調がR-15以上確定の過激さになる副作用があるので、本人も使用を避けている)。

 

「私が全力を出せば、時速80~90近くは出る。それを数千は維持できるスタミナもあるからな。人間の最速はせいぜい45。ただし、私たちは若いうち、それも、15~17の期間でしか全力を出せんという制約があった。生物学的には、ヒトと同タイプの体での限界を超えたスピードを無理に引き出すから、肉体に『見えない損傷』が蓄積されるらしい。だが、私のように、前世で悔いのある者は納得できない。それを越えられる手段を異世界で探るしかなくてな。それで協力してくれたのが、彼だ」

 

ブライアンやタイシン、テイオーは現役のうちに、ドラえもんと出会ったため、有終の美が目標になり、引退済みの世代は『プロリーグの活性化』などを目標にするようになった。ブライアンは種族の宿命を強引な手段を講じて克服。その礼として、のぞみAの代行をしていると、説明していく。のぞみAは『幸せではなかった人生』を終えた後、別の世界に転生した。別の時代の別人として。だが、プリキュア変身者という因果により、夢原のぞみに『戻った』こと、戻った故に、その世界には事実上『いられなくなった』ことを」

 

「どういうこと?」

 

「姿が変わったからだ。それも、あんたらといっしょにいた頃の姿に。素体になった人物は若手の日本軍人……その世界では、女でも軍人になれるようだから、女軍人だった。だから、年齢もちょうど18歳に近かったそうだが、夢原のぞみとして、人々に記憶されていた姿に変容したそうだ。記憶と能力の蘇りと共に」

 

のぞみAは『現役時代の容姿』に超常的な力で素体の肉体が変容。更にその後の融合で、肉体の再加齢も起きなくなった。従って、身体的に全盛期の体を恒常的に保つというチートである。オトナ世界で『一定以上に加齢した肉体を無理に全盛期に若返らせると、その人物の寿命が縮む危険がある』事が判明したため、のぞみAのような変容は皮肉にも、『プリキュアとして戦うには最適』であった。オトナ世界のプリキュアの摂理が全ての世界に適応されるとは限らないが、一つの回答となる。この問題を神々は『肉体を変身に最適な状態に変える』ことで回避したという推測が立てられている。実際、のぞみ、ラブ、響(シャーリー)の三人は肉体的に『現役時代』の状態になっていたからだ。

 

「医学的に、この体は『2008年時点の夢原のぞみそのもの』らしい。だが、既にいくつかの戦いで変容した部分もある。現役時代には無縁だった『電気』の力が使えたりする」

 

ブライアンが入れ替わった時点で、のぞみAは異能者にふさわしいあり様になっていた。草薙流を会得したことで炎を、小宇宙を覚醒めさせた影響で『電気』。それぞれの力を行使できる。更に、一時に闇落ち一歩手前まで行った影響で、『ズワルト・ストナーサンシャイン』と『ズワルト・シャインスパーク』も撃てる。

 

「何よそれぇ~!」

 

「ま、私は素でビジョンとしての闇属性を出せるがな」

 

「なぁ!?」

 

「私たちは魂の力を引き出す際に、オーラを纏える。最も、前世で大レースを勝てた事がある者に限られるがな」

 

ウマ娘のうち、史実がある&その競走馬が『歴史に名を刻む』レベルであった場合は『領域』を会得できる。ブライアンの場合、前世での無念が作用し、闇属性である。

 

「じゃ、見せてやろう」

 

バトル漫画のような効果音が響き、紫色のオーラが現れ、瞳の色が変わるなど、ブライアンの特徴が色濃くなる。

 

「素で、こんな事ができるなんて……」

 

この状態となると、ブライアンの最大ポテンシャルを引き出せるため、加速力は並の自動車やオートバイなどは比較にならないレベルになる。

 

「この状態では、下手な自動車やオートバイより速く加速できる。肉体に負担はかかるが、別ののぞみの体は余裕で耐えた。素で超人だったからと聞いている」

 

「その世界ののぞみ……どうして、そこまで」

 

「本人が力を求めた結果だ。それも長い間……。本人から聞いたことがあるが、少なくとも、通算で数十年単位だそうだ。その間に不幸が続いたらしいが……断片的にしか語っておらんからな。推測の域を出んが……」

 

のぞみAはそれ由来で、『力を求める』傾向があった。また、大人のぞみは『教え子を戦禍から守る』という大義名分こそあれど、『青春時代の空虚感を埋められる』という下心もないわけではないなど、現役時代より世俗じみた本心を持つ。それはココ(オトナ世界)が負わせた『心の傷』でもあるため、彼が療養に入った事は『ある意味で幸運』といえた。

 

「転生した後も色々あったらしいが、プリキュアであることを公にできる環境になったから、プリキュアの変身が仕事着みたいになっている。私も、奴の素を見たのは、出会ってからしばらくしてからだった」

 

「何?あの子、仕事中は変身しっぱなしなの?」

 

「まぁ、お前らの戦いがアニメになっている世界に移り住んだようなものだから、面が割れてるそうでな。二昔前のアイドルのように、追っかけ回されたこともあったそうな。それで、上官のアイデアで『変身したままで日常生活を送る』ことにした。逆説的なアイデアだが、存外にうまくいったそうだ。仕事だと思われて、逆にプライベートを確保できたという話だ」

 

「なにそれ!!あとで説明しなさいよね」

 

「後でな」

 

ブライアンはそう言って微笑い、体育祭最後の競技へ出陣していった。まるで狼のような獰猛な瞳はのぞみ本来のものとは異なる。ヒトとは身体能力で決定的に違う種族の『要求』に耐えられる肉体へと変容してしまったのぞみAのことを、C世界のプリキュア5のメンバーへ説明するのは楽ではないが、『餓狼』と評された三冠ウマ娘としての実力の片鱗を見せるべく、ブライアンは徒競走(周りからは『人数合わせ』での出場と見なされた)へ出場した。

 

 

 

 

 

 

周りは『夢原さんが病み上がりで?どうせビリッケツよ』と公然と口にする。教諭らも体育教師などは『夢原は完走すればいい』と口にしていた。だが、ブライアンは(相当に加減したが)学生とは思えない瞬発力を発揮した。

 

(まぁ、ヒトのアマチュア、それも中坊なら、こんなものか)

 

ブライアンは相当に加減した上で、スタートを切ったが、それでも、他の出場メンバーの集団の真ん中あたりに食い込むくらいの瞬発力を見せた。そして。

 

(頃合いだな)

 

周りがスパートをかける段階で、ブライアンはその力の片鱗を見せた。瞳に炎を宿し、周りのランナーを畏怖させる威圧感を『放った』と同時に加速。瞬間的に最大速度を引き出した。ブライアンの(全盛期における)最大速度は時速80~90キロ前後。一般ウマ娘の最大速度が64キロ程度であるのを考えれば、ケタ違いのものだ。全盛期に『ラムタラに立ち向かえる可能性を持つ唯一の日本ウマ娘』と言われたのは伊達ではないのだ。この時の速度は『日本のトップアスリートが引き出せる速度』くらいで、ブライアンは相当に手を抜いた(本気で走れば、『惨劇』になるため)だが、アマチュア、それも運動部でない者も多い状況では、まさに神速であった。

 

(加減はするが)『ぶっちぎる!!』

 

一瞬とはいえ、ウマ娘としての物凄い末脚を使う。人間相手には、その一瞬で充分。それで対抗できないのは、聖闘士くらいなものだ。前を走る選手をごぼう抜き。瞬く間にトップでゴールインする。

 

 

 

「あれで加減してるですって…?」

 

「日本のトップアスリートくらい速いわよ」

 

「じゃ、あの子は、100mを10秒台で……?」

 

「9秒台で走れる選手は日本にいないわよ」

 

この当時(2008年)の日本の陸上選手は10秒台がせいぜい。壁を破れる選手の登場は2010年代後半以降を待たねばならない。それを考えれば、この時のブライアンは半分も力を出していないことになるが、中学校、それもスポーツ系ではない、私立女子校の平均レベルを考えれば、充分に『速すぎる』くらいである。観客席にいる面々は呆気にとられたという感じであり、半ば茫然自失であった。

 

 

(まぁ、私の力であれば、プロの陸上選手も相手にならんからな。中坊相手では、こんなものでいいはずだ。校内記録は塗り替えるだろうが)

 

と、加減に苦労した様子のブライアンだが、校内記録は塗り替えてしまうのは覚悟していた。のぞみCが後で(帳尻合わせのための)苦労を強いられることになるが、それは想定内であった。また、この時は万一の時用に『ゲッターノワール一号機(レプリカ)』を借用しており、C世界の敵が大型ホシイナーを使役して襲来した場合でも、対応は可能であった。無論、それは隠し玉だし、生身でも対応できるので、使わないに越したことはない。入院中ののぞみCは後日、この体育祭の顛末を聞かされ、驚天動地となる。また、帳尻合わせのため、『一時外泊中だった』ことになり、りんCは自分の親やのぞみの母親にどう言い訳しようか悩み、結城丈二が助け舟を出すことになる。

 

――競技の終了後――

 

「なりゆきで参加してしまったが、こいつはまだ入院中だぞ?」

 

「あ!!」

 

「親御さんたちへ、どう説明する気だったんだ?」

 

「しまったぁ~~!」

 

「仕方がない。結城さんに言っとくから、彼がうまいことやってくれるだろう。敵の動きは?」

 

「エターナルはこっちの都合を考えないわ。あなた、その体で…」

 

「精神が入れ替わっただけだ。変身には支障ない。大型が来たなら、ゲッターロボを使う。彼らが持ち込んでいるんでな」

 

「そういえば、そちらでの私たち、ロボットに乗るの?」

 

「そういう軍隊が敵なんだそうだ。最も、スーパーロボットは敵が多い時でなきゃ使わないがな。それと、昭和ライダーの敵が黒幕だそうでな。だから、敵も次元を越えて、動いているそうだ。お前らの敵ももしかしたら、傘下にあるのかもしれん」

 

「……!」

 

「少なくとも、別世界の日本軍はそれに巻き込まれた。別ののぞみはその世界に転生していたそうだ」

 

その通り、扶桑は結局複数の世界から狙われたため、本土防空と外地からの疎開などの問題を複雑化された結果、戦艦などで疎開をさせなくてはならない上、土地の広い北海道が望ましいとされたため、飛行機で輸送する方向で話が進んだ。船は史実の幾多の悲劇が伝わり、扶桑国民が忌避するようになったのだ。これが要因となり、扶桑の海運業界は斜陽となっていく。また、自由リベリオンの潜水艦乗りたちは(史実が史実故に)集団リンチを恐れ、所属を扶桑人に伏せている。当時、日本連邦は(後世の対潜兵器で)潜水艦を徹底的に狩っており(史実と違って、通商破壊用途の研究が進んでいなかったのもあり)、リベリオンは潜水艦の在庫が枯渇していた。自由リベリオンも(同士討ちを避けるために)潜水艦の行動を抑制しており、また、日本人の暴漢に潜水艦乗員がリンチされ、『再起不能』(ソナー員としての命である鼓膜を破られた等で)にされた事件も起こったため、事態を重く見た自由リベリオンは潜水艦艦隊の活用を諦めた。こうして、せっかくのガトー級潜水艦が完全に置き物と化す有様であった。日本の対潜網は(第二次世界大戦レベルの潜水艦からすれば)完璧であり、同士討ちの可能性を考えれば、敢えて使う必要がなかったからである。とはいえ、自由リベリオンも潜水艦の運用ノウハウの喪失は避けなくてはならない事から、日本列島周辺の哨戒任務にのみ少数が従事するのが通例となっていく。彼らは史実の功績が逆の作用をしてしまった例となった。

 

 

「その世界でのアメリカが太平洋戦争を意図的に起こしたのも、連中の差し金だ。お前らを巻き込むつもりはないが、連中に目はつけられていると思ってくれ。私が『こいつ』と入れ替わった目的の半分は『自分の世界に連中の興味がいっていないか』を確かめるためでもある」

 

「つまり、私たち……いえ、プリキュアそのものが?」

 

「正確には、プリキュアオールスターズそのものが目をつけられたというべきか。私も、りん……別の世界のりんだが……から聞いた話でしかないんだが……」

 

ブライアンはここで、C世界のプリキュア5に、のぞみAらが身を投じ、大人のぞみが間接的に関わる事になった戦いの根本的な原因に触れる。りんAから伝え聞いた『受け売り』であるが、のぞみAの運命を決定づけた出来事である。そして、プリキュアオールスターズが仮面ライダーらと轡を並べる事になるきっかけとなったとも…。

 

 

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