ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百十三話「説明と、近づく決戦」

扶桑軍は軍国主義のレッテル貼りによる粛清人事で、有力な将校の多くを失った。また、社会的地位も大きく下げられたため、志願数も壊滅状態に陥るなど、踏んだり蹴ったりであった。その詫びとして、それまでの軍人の社会的特権の多くは、極限された一部の将校に限られるようになった。64Fの幹部たちである。それは扶桑国民への配慮という形で認めつつも、功ある軍人に限るという条件をつけた結果、ダイ・アナザー・デイ以降の英雄である64Fの幹部層にそれが集中した。日本としては完全に予想外であったが、残された有力将校の大半が同部隊の幹部層であったのは紛れもない事実であった。そのため、同部隊は日本と扶桑の政治的暗闘の結果、『どこでも最高の戦果を』という責務を否応なしに負わされた。日本は史実で各統合戦闘航空団の一員であった将校の半数以上が元の国籍を問わずに属している事がわかると、異様に肥大化した陣容を認めた。最前線で使い倒す事を前提にしてのものであった。『魔女の技能は一族固有のものが多いので、他に教えられない』という事情も絡んでのものであった。

 

 

 

 

 

 

魔女の固有魔法は一定のフォーマットこそあれど、微妙に効用が違う事があること、大まかな使用法は学校で習うが、応用は完全に個人の技能に依存することは、近代的な軍隊では特に嫌われる類のものであった。つまり、『誰でも、その次元に到達するものではない』からだ。それも、近代化の過程で『不必要』と見なされた理由であった。同じような効用の魔法でも、国ごとに術式などが異なる場合が多いために、体系化がほとんどなされていない。それが近代軍隊では致命的と見なされた理由であった。かつての日本で行われた『人為的に超能力を発現させる』のと似て非なるものであるのもあり、魔法は以前ほどの隆盛を取り戻せぬ流れとなっていく。その一方で、そこから派生していった異能は逆に隆盛を迎えていく。同時に、異能も万能ではないということも周知されていくのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況を擬似的に体験している、ナリタブライアン。自身の衰えた闘争心を取り戻すためであった。自身は指導者には向いていないのを認識しているので、競技の引退後は解説者でもしつつ、副業で猟師をしようかと考えていた(史実で種牡馬として成功していないG1馬は『指導者には向かない気質である』というジンクスがある)。しかし、それは数十年は後のことだろう。ブライアンは総じて、裏方向けの気質ではないのだ。それはオルフェーヴルも同じだが。

 

「あんた、年食った後はどうすんの」

 

「口は回るから、解説者でもして食うさ。副業で猟師か。あいにく、子供や孫は走らん事は分かってるから、直系の後継は出せないだろうしな」

 

それは自らの直系子孫に自らの暴力的な速力などが遺伝しなかった『前世』の記憶によるものなので、実に切実である。実際、ブライアンズタイム系は孫世代になると、能力の遺伝率が大きく低下するという弱点が明らかとなり、2020年代現在は衰退している。また、ブライアン自身が史実でそうだったように、ピークが終わると、途端に能力がガタ落ちしてしまうという弱点が露見したことも、孫世代に至るまで、G1級を輩出できるサンデーサイレンス系に押されていった理由だ。

 

「セントライトやシンザンは、自伝でけっこう儲けたそうだが、私に文才はないし、絵心もそれほどない。そうなるとな。姉貴に回想録でも出してもらうさ」

 

「スポーツ選手でも、引退後に本業関連の商売で食えるのは、ごく小数って聞くけど、世知辛いなぁ」

 

「そういうものだ。口が回らんと解説者になれんし、一定以上の実績も必要だ」

 

 

ブライアンは引退しても、協会の理事、あるいは解説者という選択肢も持つが、これは幸運な方である。ブライアンは史実通りでも、理事になれる実績を持つので、贅沢ではある。

 

「この体だが、素でバケモノスペックに変貌していて、乗用車の突進を止められるそうだ」

 

「なにそれ、変身しないで、車を?」

 

「シンギュラリティポイントを越えたマジンガーと融合したせいらしい。本気になれば、列車も止められるとのことだ。それと、魔法つかいプリキュアがいるだろ、お前らの後輩の。あいつらの最強形態を圧倒できるそうだ」

 

「え、オーバー・ザ・レインボー形態を?」

 

「最強のマジンガーとゲッターの力が宿っているのをフル活用すれば、の話だが。」

 

C世界のプリキュア5からは信じられないが、魔法つかいプリキュアのオーバー・ザ・レインボー形態は歴代屈指の実力を持つ。それを蹂躙できる力。想像もつかないらしい。

 

「記録映像を預かってきてる。その時の大喧嘩の映像だ」

 

デザリアム戦役の末期頃に起こった、その大喧嘩。アレキサンドライトスタイルのキュアミラクルが神々しいスタイル(シャイニングドリームを更に滑らかにしたようなもの)のキュアドリームと戦い、一方的に押されている。未来世界の携帯式映像機器で再生される。

 

『プリキュア・エクストリーム・レインボー!!』

キュアミラクルが単独で最大技を放つが、かざした片腕だけで弾く。しかも無傷で。

 

『ライトニングプラズマ!!』

 

反撃がこれであった。如何に超プリキュアと言えど、常人の域の『感覚』を越えたわけではない。のぞみAはZEROとの融合で『セブンセンシズ』以上の『感覚』に至っていたため、放つ事ができたのである。

 

「うわあぁぁっ!?」

 

ミラクルはこの閃光雷撃に反応すらできず、光に滅多打ちにされていった。そして。

 

『ライトニングフレイム!!』

 

放電がアーク放電となり、更に焔を起こす。その劫火はアレキサンドライトスタイルの防御力をも越えていく。次いで。

 

『咆極煉皇!!』

 

ZEROが聖闘士世界を観測していたことで、のぞみに放させた技。それは鳳凰星座の一輝が将来に会得するはずの『鳳翼天翔』の黄金聖闘士(獅子座)バージョン技。鳳翼天翔と違い、炎属性が強まっており、アレキサンドライトスタイルのコスチュームを焼き払う。コスチューム自体は魔力で再生しているが、炎による焼損に追いつけず、一部が焼ける。

 

『ゴッドサンダー!!』

 

宇宙空間にもかかわらず、雷を起こし、キュアミラクルに直撃させる。よく見てみると、マジンガーZEROの幻影が透けて見える。この時のキュアドリームはZEROによって、『闘争心を増大された状態』なのがわかる。 

 

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ!こ、これ……」

 

「見てのとおりの大喧嘩だよ。のぞみが受け入れたパワーアップにみらいが反発した結果らしい。だが、力の差が出たらしい」

 

「嘘、アレキサンドライトスタイルのミラクルが手も足も出ないなんて……」

 

「この状態ののぞみは『闘争心を高められていた状態』でな。理性が薄れていた。みらいも必死だが、最強の状態でこの有様だ」

 

ブライアンの解説通り、キュアミラクルは最強形態でありながら、手も足も出ない有様に陥っていた。いかなる魔法も通じず、全ての属性の攻撃をカウンターされる始末。

 

『キュアップ・ラパパ!!』

 

ミラクルは宇宙空間であることを活かして、最高位に近い氷結魔法を使うが……。

 

『な、何……あの構え……!?」

 

みらいの驚く声が入る。のぞみの構えは如何なプリキュアの技でもないものであった。両腕を組み、天空に掲げる。すると、蒼き閃光が走り、宇宙空間でありながら、冷気を発生させる。それが一点に集中されていき……。

 

『オーロラエクスキューション!!』

 

それが振り下ろされた瞬間、凄まじい凍気の奔流として、それは放たれた。ミラクルの魔法の冷気を更に凍結・粉砕するという現象を巻き起こしながら。みらいはとっさに、最高の防御魔法を展開するが、それでようやく相殺できたあたり、オーロラエクスキューションの力のほどがわかる。

 

『全部の属性で上をいかれる……この姿で……!?嘘だッ!!』

 

『お前の力は面白い……。だが、容赦はせぬぞ』

 

この時はマジンガーZEROの自我意識が体を動かしていたらしく、のぞみ本来のものよりもだいぶドスの効いたハスキーボイスを発していた。

 

『アトミックサンダーボルト!!』

 

みらいはこの一撃を防ぎきれず、ズタボロにされていく。さすがのキュアミラクルも光速を超える速度での乱打攻撃(遠距離では、雷弾を乱射するようなビジュアルになる)は反応すらできず、滅多打ちされていった。

 

「な、なに……さっきから……」

 

「ミラクルの魔法を上回る攻撃と、あの子が反応もできないなんて……あの姿で……!?」

 

『ほう。アトミックサンダーボルトをまともに食らっても、まだ立てるか。その意気や良し』

 

ここからは二人の取っ組み合いと近距離での殴り合いとなった。少女アニメの主人公かしらぬ絵面に、C世界のプリキュア5は絶句する。ラッシュ攻撃からの取っ組み合い。みらいは必死に食い下がるが、地力の差は明らかであり、振り絞って繰り出した全力のパンチのぶつかりあいによる衝撃波で、パンチした方の拳は手袋が破け、血まみれ。コスチュームの片袖も同時に破ける。のぞみも手袋から血は滲ませるものの、顔色一つ変えない。それどころか、肉体の傷が瞬時に治っていった。

 

『ふむ……我に『自己修復』を使わせるとは。いるではないか、プリキュアにも、骨のあるお嬢さんが』

 

ZEROの意識がのぞみの肉体を動かしているためか、体の動かし方などが男性のそれになっている。皮肉にも、それはZEROが『生体パーツ』にしてきた『兜甲児の全盛期における癖』の再現であった。

 

「この後、どうなるの?」

 

「のぞみの意識が覚醒めるが、みらいはお構いなしに喧嘩を続けた。頭に血が上ってたんだろう。のぞみもそれで喧嘩を続けて、最終的に、月のクレーターがいくつも増えたそうだ」

 

「それで?」

 

「騒ぎを聞きつけて、駆けつけてきた仮面ライダーにこってり叱られたんだと。今の会話の後だが……」

 

「彼らって、宇宙で活動できるの?」

 

「宇宙空間で恒常的に活動できるのは、実は少ないそうだがな。これでも、威力を抑えていたそうだぞ」

 

「あれで!?」

 

「正確には、ヤツと融合した存在が手心を加えていたと言うべきだな。本気なら、惑星は軽く粉砕できるから」

 

ZEROがもたらした力は、のぞみに『上位の黄金聖闘士と同等以上の戦闘能力』を与えた。最強形態を持つ世代のプリキュアに『ほとんど何もさせない』ほどに。普段は隠れているが、思考面の影響はどこかで生じたと見られている。どことなく好戦的になったからだ。

 

「自己再生や自己進化をこなせるようなマジンガーと一つになったから、性格に影響が出て、好戦的になったらしい」

 

「なにそれ……」

 

「マジンガーZEROは破壊神みたいな存在だからな。むしろ、そうでなければ倒せなさそうな敵が出てくるんだ」

 

「いるの?」

 

「オリンポス十二神級の神々とか、北欧神話の神とか、仮面ライダーの歴代暗黒組織の首領……各異星人の大艦隊……。あれでトントンくらいの敵がズラリだそうだ。おまけに北斗の拳の暗殺拳が実在しつつ、世界が滅びなかった世界線だそうでな。そいつらともやり合ってるそうだ」

 

「漫画みたいね」

 

「それはお互い様だろう」

 

のぞみAは戦うべき相手のスケールがインフレしている。そして。

 

「ん、別の世界の別の時間軸のお前らは宇宙に出発するそうだぞ。今、連絡があった」

 

「何、その早口言葉みたいな」

 

「成人後の時間軸だそうだからな。そこでも、お前らは戦いから逃れられなかったそうだ。一度でも、戦士になると、個人の意思はある程度捨てなくてはならんということだな」

 

オトナプリキュアの世界は滅びへ向かう世界線のはずであったが、同時に、のぞみがラーメタル人の末裔であったため、彼女が1000年女王を継ぐ事になるという凄まじい経過を辿っている。地球人類の存続のために。

 

「見ろ」

 

「う、宇宙戦艦ヤマト!?」

 

宇宙戦艦ヤマトを中心にした地球艦隊が各地から離陸し、宇宙へ向かう様子の動画がメールに添付されていた。

 

「土星空域で異星人の大艦隊を迎え撃つための遠征だ。お前らはそれに同行している。とは言っても、お前ら(プリキュア)関連の近隣世界に飛ばされた異星人の残党の始末だが。数が問題なんだ」

 

「数ぅ?」

 

「天文単位に近いとか。億とか兆の問題じゃないそうだ。だから、無数の無人コントロールのラジコン艦を波動砲の砲台代わりに特攻させていく作戦で、有人艦の消耗を抑えるつもりらしい」

 

「それだけの数が集まるの?」

 

「無人兵器の規制論が強まってた時期だから、艦隊を組むにも、船は造れても、人がいない。そこに天文学的物量で来られたもんだから、あっちこっちから無人兵器をかき集めてるそうだ。爆弾や波動砲の砲台代わりに使い捨てる前提で」

 

 

 

白色彗星帝国の残存艦隊はそれだけの規模を誇っていた。プリベンターも、流石にそれだけの物量を有人兵器だけで捌くのは無理であると認めたため、特攻兵器同然の扱いで無人兵器を使うのを認可した。使い捨てる前提で。スーパーロボット達をあまり動かせないのも、この決断に至った理由だ。

 

「猫の手も借りたい状況らしいからな、向こうは。それでいて、地球連邦はスーパーロボットを大規模に動かせる余裕がない、内憂外患の有様。そんな状況でも、艦隊戦力の半分以上を博打同然の作戦に費してくれる。普通なら、国家規模の組織はそんなことはしてくれん」

 

オトナプリキュア世界で決戦が近いこと、地球連邦軍は『いるべき世界の都合』で、本来の実力には到底及ばないことなどが解説される。また、オトナプリキュア世界は(地球人類が環境破壊で滅んでいくため)破滅の世界線であったが、その世界ののぞみがそれを止めるために、自分の人生を犠牲にして、祖先が担っていた使命を果たす選択をしたことも伝えられた。つまり、プリキュア経験者達の死後、地球人類が自業自得の形で滅んでいく世界線こそが『オトナプリキュアの世界』なのである。

 

「いくら、自分たちの世界の不始末だとしても、だ。お前たちや私たちには直接の関係はないが、敵はいつでも現れるし、それに対抗するべき力はあるに越したことはない」

 

未来世界での戦争の歴史から何か考えさせられたか、ブライアンは元の世界で引退した後、猟師を副業でしようかと考えているようである。

 

「それは頭に入れてとけ。他のプリキュアが延々と戦い続けているのを認識しているのなら」

 

備えあれば憂いなしというが、ブライアンはこの入れ替わりで、『備えなしでレースに臨んでいた自分』を恥じたらしく、姉のように『準備魔』に変貌し始めているようであった。

 

「もっとも、私が言えたものでもないがな」

 

そう言って、微笑む。どこか自分への戒めのようにも取れるのは、前世の記憶があるせいだろう。

 

「大人のあたしたち、これからどうなるの?」

 

「土星空域で大艦隊線と言ったところか。北米を解放した段階で、敵本隊が太陽系に近づいてきた事が分かったのと、基地の設営が完了したんだろう。土星までは、巡航速度で数日程度かかるから、そこに防衛線を張る。土星とその衛星群はしばらくは戦場になるだろう。四割が帰還できれば御の字だな」

 

「よ、四割……」

 

息を呑む、C世界のプリキュア5。

 

「宇宙戦艦同士の戦いなら、ビームやレーザーが飛び交うもの。巡洋艦以下はほとんど還らないでしょうね」

 

「向こうの艦艇は地球の平均より大型で、火力も高いそうだ。水雷戦隊による撹乱は不可能に近いだろう。地球側は唯一、練度に勝る空母艦載機での奇襲に乾坤一擲をかけるそうだが、これとて襲うタイミングが重要だ」

 

地球連邦軍は大国に比して、数に劣る。その分を奇抜な思考などで補わなくてはならないという宿命を背負っている。そんな事情で多用されているのが『空母艦載機による奇襲攻撃』である。ヤマトの航空隊などが実際に得意とする戦術であり、かつての『フェーベ航空決戦』を勝ち抜いたという実績がある。

 

「まるで、旧日本海軍の真珠湾攻撃ね…」

 

「地球連邦軍は、それを宇宙で再現しようとしているんだ。下手すりゃ宇宙のミッドウェー海戦かマリアナ沖海戦になりかねんくらい、地球連邦軍に余裕はない。別世界のお前らと、のぞみの働き如何によるな……」

「なんか、SFみたいで現実味ないわね……」

 

「まぁ、お前らに直接の関係はないことだからな、これは」

 

 

 

オトナプリキュア世界が第二の土星決戦へ向かい、B世界が平和を取り戻しつつある状況。C世界には直接の関係はないが、のぞみAや大人のぞみが力を求める理由の一端となる出来事をブライアンは教える。C世界でも高確率で起こり得る出来事を。

 

「私の知る『ヤツ』が何故、ここまでの力を求めたのか。その最大のきっかけになった出来事が、ヤツの前世の現役時代の末期頃に起こった。お前らも高確率で遭遇するだろうということで、教えていいと、月影ゆりさんから許可が出た」

 

「ゆりさん……ムーンライトが?」

 

「あの人、地球連邦軍の軍医の資格持ちなんだと」

 

キュアムーンライトからのことづけであると、注釈を入れた上で、ブライアンは語りだした。それはのぞみAが戦い続けていた理由であり、トラウマの根源の一つだと。

 

 

「お前らのずいぶん後の後輩の時代のことだ……宇宙から例によって、侵略者がやってきた。その時代には80人近くになっていたプリキュアオールスターズは全員で迎え撃ったが、尽くが敗れ去っていったそうだ」

 

それはシュプリームとの戦いであった。のぞみAのいた世界においては『その時代の現役であった、キュアスカイを含め、ごく少数の戦闘力の高めのプリキュアだけが生き延びた』という経緯を辿った。のぞみA曰く、『りんが自分を犠牲にして、逃がしてくれた』とのことで、アニメより凄惨な光景が繰り広げられたことを断片的に語ってきたという。

 

「そんなにいて…!?」

 

「ああ。りん、あんたはのぞみを生かすために、身を挺してかばって、消滅させられたそうだ」

 

「!?」

 

「その時の光景が頭から離れなかったと、ヤツは言っていた。そのエンカウントの時に生き延びた面々の組み合わせが、転生、ないしは転移してきた順とおおむね一致した。ドラえもんも私も、偶然の一致じゃ?と言ったんだが、考えようによっては……な」

 

「その戦いはどうなったの?」

 

「最後は逆転勝利だったそうだが、一回でも敗れ去ったという結果が生まれた事には変わりはない。のぞみはそのことを起こせる『神々に類するようなパワーを持つ敵』に対抗するための術をずっと求めていたそうだ。だから、転生した後の立場も、異能も、すんなりと受け入れたんだろう」

 

ブライアンなりの推測であったが、のぞみAがその戦いで『強いトラウマを負い、その傷は転生しても癒えていなかった』ことが示唆されたことで、のぞみAのデザリアム戦役での暴走の理由の解明に繋がった。彼女はその戦いで、キュアルージュ(夏木りん)を目の前で失うという体験を強いられたこと、シュプリーム相手に、自身の持てる全てが無意味であったという絶望を味わったという。故に、転生後、黒江達の神をも想定した異能へ羨望を感じ、それを手に入れようとした。その結果がAの『変容』なのだ。

 

 

「その結果が?」

 

「私にはなんとも言えんが、おそらくはな」

 

「……」

 

Aにとっては相当に重い話である。そして、その出来事がその後の人生をも左右してしまい、後輩との関係悪化をも招いたのは確実だろう。

 

「大人ののぞみは力を失くした後は空虚感に支配されていたそうだから、あいつはいうなれば、普通の人間に『戻れなくなってる』。そう考えておけ」

 

一同は顔を見合わせる。のぞみは複数の世界でそれまでの人生がダメダメだった事から、ドリームとしての自分に愛着を抱いている。Aが前世で後輩達と揉めた理由は、そこにあるのではないか?周囲はそこに答えを見出しつつある。ある意味では、プリキュアの力の残酷な側面だと言え、C世界の面々は複雑な表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

こうしてC世界の面々は、別の世界の自分たちは『大人になっても、宿命から逃れられない』し、のぞみは『そうあることを望んでいる』事を知らされる事になった。また、大人の自分たちは宇宙戦艦ヤマトの戦いに同行し、土星空域に赴くという事実は、たとえ偶発的な事故であろうと、戦いは起き得ることを示していた。そして、別の世界のために命がけで戦おうとしている宇宙戦艦ヤマトの勇士たちに、なんとも言えない感情を抱くのだった。

 

 

 

 

 

 

『オトナプリキュア世界』。地球に僅かな監視用兵力を残し、地球連邦軍は遠征を実行した。ヤマトは空母機動部隊の旗艦として、第二の白色彗星帝国との戦闘に参戦することになった。その際の出陣の様子を、ブライアンは見せたのである。不思議なのは、水上艦を宇宙に浮かべたような艦容のものが大半だということだが、これは地球型惑星の内、海を持つ惑星に着水するための機能性のためだという。戦艦や空母は特に色濃く面影を残している他、戦艦と空母をかけ合わせた『戦闘空母』も参陣している。これは地球連邦軍の置かれた状況では、純然たる空母の建造が難しいため、ハイブリッド艦で忍ばなくてはならないという事情によるものである。空母部隊の中心であるのが、主力戦艦の改造型とは別のモデルで、ベクトラ級戦闘空母である。グワダン級戦艦をモデルにしている都合上、上層部への受けは悪かったものの、空母不足を補うために、二番艦以降が緊急で増産された。つまりはできたてホヤホヤの新鋭艦である。ヤマト艦隊に合流し、空母部隊の一翼を担う。なお、一番艦と違い、波動エンジンの登場後に改設計されたモデルであるので、波動砲が搭載された。

 

「ベクトラ級の改良型?よく認可降りたね」

 

「ブルーノアまでの繋ぎ目的らしいですよ。アンドロメダ級の空母型の第二案がポシャったんで、場繋ぎで造船されたとか?」

 

「全長はキロ単位?」

 

「そのはずです。波動砲を積むために、艦内容積を増やした分、伸びたそうで」

 

ベクトラ級は元々、単艦で戦線を張れるくらいのMS搭載量を想定していた。それが更に伸びた艦であれば、数十のMS、数百の戦闘機を両立できているはずだ。ましてや、MSの小型化がある程度は普遍化した状況である以上、機数は増えているだろう。

 

「無人機を?」

 

「規定の半数は積んでるでしょうね。かき集めたそうなので」

 

「近頃は連邦も人手不足っすからね」

 

ヤマトの甲板(ヤマト以降の恒星間航行用艦艇は甲板を空気の膜で覆える上、人工重力も働くため、宇宙でも甲板に出れる)にいる、大人のぞみ、シン・アスカ、ルナマリア・ホークの三名はヤマトの隣に陣取る巨艦の威容を観察していた。ヤマトよりも遥かに巨大ながら、要員の練度の問題から、ヤマトが空母機動部隊の旗艦にされた。それはヤマトがある意味、非地球系国家への地球の力の象徴と見なされている故でもあるが、現状、個々の艦の練度で最高峰を誇るからだ。

 

「無人戦闘機は自爆させるとはいえ、数万はいるよ。どこから集めたの?」

 

「元の中国とロシア地域の航空機工場でデッドストック化していた個体を全部引っ張ったそうっす。弾切れしたら、自爆特攻させるプログラムを入れた上で。移民星にやるって選択肢はなかったんすか?」

 

「政治屋の多くは反無人兵器だしね。まぁ、トレーズ・クシュリナーダや東方不敗マスター・アジアの受け売りなのさ。その二人の亡き後、彼らに匹敵しうる腕前のパイロットなり、ガンダムファイターはそう出てないっていうし。一説には、東方不敗マスター・アジアは日本人説があるそうだけど……」

 

「どうなんでしょうか、そのあたり」

 

「世界線によるそうな?第七回ガンダムファイトのファイターの年食った姿がそうだって説が有力だけど。あれでぎりちょんで50手前だったそうな?」

 

「まさかぁ」

 

まさか、『死後に、若者らの話のネタにされる』とは、東方不敗マスター・アジアも思うまい。また、ドモン・カッシュ曰く、東方不敗は死亡時に49歳だが、不治の病に侵されていたせいか、49歳という割には老け込んだ容貌であった。」

 

「あたしだって、物理的に若返ったけど、戸籍上はアラサーだしね。そっちのあたしと違って。羨ましいよ。戸籍もめんどくさいの記載されなくなるしさ」

 

「こっちののぞみさんはのぞみさんで大変でしたよ」

 

「記憶は共有してるけど、その役人、ぶん殴ってやりゃ良かったのに」

 

「あなたが本気出したら、普通の人は泡吹いて、病院送りですって」

 

「確かに」

 

大人のぞみは、自分であれば、件の役人は一発はぶん殴っていたであろうことを口にする。冗談めかしてはいるものの、半分は本気であった。彼女は生徒に真摯に向きあう事から、児童からの人気はあった。だが、今どき(21世紀には)珍しい熱血漢であった事から、同僚の間では『浮いた』存在であった。ある意味、それがのぞみの理想とはかけ離れた『教師の現実』である。それに激しく失望を抱いていたのも、プリキュアの力を求めた理由である。ある意味、『大人の社会の酷薄な側面』に嫌気が差したとも言える。

 

「今の立場になって、正直うれしいところもあるんだ。大人になって、大学出て、教師にはなったけど、指導役からは『大人になれ』と言われるし、生徒の家庭環境に口出しするわけにもいかないのに、つい口出ししちゃって、児童の親に文句言われてさ…。正直、目標を見失ってたんだ。だから、今回のことで、力が戻ったの、すっごく嬉しくて……」

 

 

大人のぞみは『夢を叶えたけれど……』という人生を辿ったため、『教師には戻っても、小学校の教諭には戻らないかもしれない』と考えていた。モンペアへの対応、嫌味な上役との付き合いに疲れていたからだ。小学校の段階では部活はないものの、教師は根本的に多忙であり、理想論だけではやっていけない。大人のぞみは志がなまじっか高かった分、挫折感を強く感じていたのだ。

 

「それで、その姿を?」

 

「そっちのあたしみたいに、職業軍人として鍛えてたわけじゃないからね。デスクワークも多かったから、腰痛が出る時あったし、生物学な『アレ』も重くて……」

 

「あれっすか……死んだ妹が愚痴ってたっけ……」

 

のぞみAは職業軍人として鍛えた体を持つのと、転生後の体は『女性特有の現象』も軽い体質なので、特段の問題はなかった(魔女は『それが軽い』という特徴があるため)が、大人のぞみは『プリキュア経験者』ではあるが、それ以外はまったくの普通の体質であったので、それが本格的になった後は『重い』らしかった。シンは亡き妹の関係で知っているので、大人のぞみをなだめる。

 

「まだ26歳っしょ?本当は。まだまだですって」

 

「25超えると、色々大変なんだよ?ま、今となっちゃ、気にしなくていいけど」

 

実年齢はアラサーであるため、のぞみAに比べると、色々と『疲れている』発言が多い。仕方がないが、軍の激務に『なまっている体』では耐えられないため、ここのところは変身しっぱなしである。若返っても、体を鍛えていなかったのは充分にハンデになる。そこは超人化した肉体に至ったAが羨ましいようである。

 

「月を通過します」

 

「月を通過すれば、火星はすぐですよ」

 

「火星はそっちだと?」

 

「地球連邦軍の世界じゃ、テラフォーミングが成功してます。急速にナノマシン技術が進化したおかげだそうで。海ができたんすけど、その関係で居住可能領域が狭いとかで、あまり移住には適さないと見なされたそうっす」

 

「火星は小さな星だからね。地球連邦軍の世界だと、隣の太陽系にエデンがあるんだっけ」

 

「ええ。地球より大きいとかで、近距離移民船団が複数移民して、そこからの移民も出てきてます。開発スピードが早かったとか」

 

惑星エデンは23世紀世界での重要な地球の拠点である。火星はそこへの中継地点になった時期もあるが、今は位置の割には『割に寂れた』惑星だという。これはジオン系の住民が多く、ジオン軍残党同士の内紛で火星自体の開発が停滞してしまったせいである。エデンはバード星のある太陽系の更に隣の太陽系にあったが、移民星の中では(地球からの距離の近さもあり)良質な統治がなされている。波動エンジンなどの登場で、感覚的に『近場』という感じに変遷。かつての日本から見ての台湾のような感覚である。

 

「この世界だと宇宙移民なんて、数千から万単位の時間を使うんだろうね」

 

「仕方がないですよ。技術的ブレークスルーが重なることで、未来世界は短期間に『宇宙のフロンティア時代』になったんですから。基礎が違います」

 

未来世界が超弩級に特殊な速さで発展しただけで、普通は23世紀くらいで『恒星間航行が当たり前になる』わけではない。ルナマリアに言われ、ふとそれに気づく、大人のぞみであった。

 

 

 

 

かくして、三人の乗艦する宇宙戦艦ヤマトは月を通過しつつあった。白色彗星帝国艦隊の本隊が太陽系に近づいてきた故の出撃であった。土星空域の要塞化が急ピッチで進むものの、白色彗星帝国は強大である。参加戦力の6割の損害はあらかじめ勘定に入れられているが、なるべく有人艦の温存を図りたい地球側は無人艦隊を『使い捨てる』前提で、特攻兵器同然に使い潰すつもりであった。そんな地球側の涙ぐましい努力をよそに、プロキオン方面などから、確実に『ナグモー』艦隊は圧倒的物量で以て、太陽系に接近しつつあった。偵察艦の報告では『戦艦は前衛だけで数万、空母は少なくとも数千から一万は前衛艦隊に確認された」とのことであり、駆逐艦や水雷艇は無数にいると思われた。それに対抗するには、敵旗艦とその僚艦の『火炎直撃砲』をどうにかして封ずるしか手はない。波動砲を上回る射程と、回避不能の特性を持つ同兵器は重大な脅威である。無人兵器を生贄に捧げ、如何にして波動砲の射程に引きずり込むか?強大なる空母部隊をどう無力化するか。艦隊総司令の山南は先輩の土方竜と同様に、航空決戦での撃滅を選んだ。その証が、この時点の地球連邦軍では最大級の艦載機搭載数を誇る『ベクトラ級戦闘空母』の投入であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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