ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百七十一話「西暦2000年・宿題のノーリツチャカチャカ」

――M動乱で『聖王のゆりかご』はその正体を晒した。正体は文明の勃興期の古代ベルカに漂着した、宇宙戦艦ヤマトの機能テスト艦の一隻だったのだ。その名を畝傍。プロトタイプヤマトの一隻であった。公には『吉野』とされているが、これは対外的に『畝傍』は『黎明期の日本海軍がフランスに発注し、日清戦争での戦力にしようとしたが、回航途中で行方不明(亡失)となった艦』である故、その名をつけたことには誹謗中傷が多いからだ。その顛末がどうなったのか?――

 

 

 

 

――帰り道――

 

「のび太くん、M動乱の『ゆりかご』、結局どうなったの?」

 

キュアドリームは覚醒前最後の戦であったM動乱の結末が気になっていたようだ。

 

 

「大人のぼく曰く、あれはコア部分が地球連邦の軍艦だったってのがわかったから、管理局に貸与されたそうな。元々がテスト艦だったからね。機能も復旧させたそうだから。ただ……」

 

「ただ?」

 

「名前がねぇ。縁起悪いんだ」

 

「名前が?」

 

「畝傍」

 

「う、畝傍ぃ!?!?あの、回航途中でボカチンしたっていう!?」

 

「うん。だから、はやてちゃんが改名を提案して、連邦も認めたよ」

 

「だろーねぇ……。外観は?」

 

「艦首以外はヤマトだよ。テスト艦だから、八割くらいの大きさだけどね」

 

聖王のゆりかごの中枢は『地球連邦のプロト・ヤマト』であった。少年のび太曰く、地球連邦はアニメよりはガミラス戦で戦局に多少の余裕があり、試作艦がテスト航海する余裕があった』とのことで、何隻かが建造され、ワープ機能テストに供され、亡失認定がされていた個体であったのだと。

 

「テスト艦だったから、今の実戦で使うには心許ないんだけど、はやてちゃんとクロノ提督が戦力化を希望してね。公には『ドックで眠っていたヤマトの試作艦を再利用する』体裁で貸与式がなされたってさ」

 

「いいの?」

 

「管理局も欲しいんだろうね、波動エンジンとショックカノンの技術。たとえ、ブラックボックス化されようとも、ね」

 

「威信がクソの肥溜めに落ちてるしなぁ、あそこ。なりふり構わないってことか……」

 

「動乱で首都が落ちたままだからね。しかも、魔導師の多くが向こうについた。管理局の人たちにとっちゃ、隠したい屈辱なんだよ」

 

「空母も数隻を供与するってのは?」

 

「人員不足だからね。魔導師の人材不足は極まってるっていうし。非魔導師も戦力化しないと、追っつかないのさ」

 

魔導師の高練度層は非管理世界に差別的な者も多く、それが動乱の泥沼化を招き、管理局の醜聞を顕にした事から、はやてとリンディ・ハラオウンは非魔導師主体での組織の再建に着手。管理局は『名前は変わらないが、実質的には地球連邦の傘下』として再建の運びとなった。管理世界に独自の軍事力を許してこなかったツケが回ってきたのだ。リンディが動乱の停戦時に発信した(政治的建前として)『我々は大量破壊兵器の保有は確かに禁じているが、戦車や航空機などの非魔導師用の武器の保有までは、組織として禁じていない』という趣旨の声明は、その事への自嘲と自戒を兼ねた事実上の解禁令であった。管理局の方針転換は組織維持のためのやむを得ない選択であると同時に、『地球連邦の軍門に下った』現実の公認であった。

 

「あそこ、事実上の地球連邦の植民地さ。そもそもの成り立ちに、漂着した地球人が関わったって、わかったじゃん?それもあって、アイデンティティを無くしたんだろうね。まぁ、1000年女王…、いや、ラーメタルとプロトカルチャーが成り立ちに関わった地球人も同じだけどね」

 

繁栄を謳歌する地球も、自らの成り立ちにはプロトカルチャーとラーメタル、ゲッター線が絡む。それをポジティヴに捉えられる地球と、自分たちが『次元世界の先導者』と信じていたが、それが脆くも崩壊したミッドチルダは意気消沈の有様で、(状況の違いはあれど)気質の差が大きくあった。古代ベルカと違い、国と組織があるだけマシなのだ。

 

「ゆりかごの中身が宇宙戦艦ヤマトのプロトタイプなんて知れたら、ミッドチルダの築いた秩序は崩れるからね。対外的には撃沈ってことにしたらしいよ」

 

「グダグダだねぇ」

 

「政治だって」

 

「政治ねぇ…」

 

と、M動乱は結局、政治の都合で『大規模テロ』という体裁で管理世界へ報じられ、表向き、時空管理局の組織は独立性を保っている体裁になっている。だが、それを含めての地球連邦政府の意向であり、地球連邦の次元世界進出の隠れ蓑に時空管理局は使われていくわけである。

 

「で、君の別の同位体との事は?」

 

「視覚したよ、ZEROの力でね。26になっても独身で、酒飲みかぁ……あたしがあったら、ターボスマッシャーパンチ撃ってただろうね」

 

「君とは別の道筋を辿った大人の君自身。向こうも君の存在は見えたはずだ。おそらく、近いうちに存在が同一化する」

 

「26でプリキュアに戻るの?」

 

「いや、おそらくは1000年女王たちが調整とるでしょ。アラサーでプリキュアはねぇ」

 

「2019年。スタートゥインクルプリキュアがいる時代だから……げ、直に27だよ……ああ、頼むよ、1000年女王達……」

 

星の位置からの概算であったが、コンピュータに計算ミスが有り、実際はその数年後の2022年前後であったとの事。そのため、大人のぞみの正確な年齢は29歳前後であろう。

 

「たぶん、ガトランティス残党狩りはその君がやることになる。提督から『その場合に備えての許可は取ってくれ』と言われてるから、後で書類にサインして」

 

「いいの?」

 

「ぼくに時間軸の違いは無意味だしね」

 

「今度は大人の自分か。しかも、ZEROと一体化した後だから、直に自分自身の端末みたいになる、か…。シュレディンガーの猫みたいな話だ」

 

「逆に言えば、大人の君は1000年女王がインストールしてくれるだけで、下手な黄金聖闘士も霞むような力が手に入ることになる。しかも、恒常的に。神代三剣の力が聖剣に上乗せされてる状態で」

 

「神代三剣かぁ……。草薙、布都御魂、天羽々斬……。我ながら、すごい状態だよねぇ」

 

「風鳴翼ちゃんが泣いて悔しがってるそうだけど、君のは正真正銘、宝具の霊格そのものだ。先史文明のマガイモノとはわけが違う」

 

シンフォギアのもとになったモノは先史文明期のオーパーツであり、他世界で言うところの宝具ではない。その事実が互いの戦力差に大きく関わっている。機能を模した武器の残骸が元になったため、通常兵器には強いが、聖闘士の攻撃を視認できるわけではないので、為す術は殆どない。

 

「綾香さんは分霊を咄嗟に込めて、適当な武器に上乗せするのを得意にしてた。君も同じ芸当はできるだろう。だから、あの世界(シンフォギア世界)の流れを変えるのは容易だった。まぁ、思わせぶりな態度は良くなかったけど、最後は上手くいったから、結果オーライ。そう言ってる」

 

「あたしも、今なら、B世界で似たような事する自信あるからなぁ。今度の世界は時間軸がズレてるから、別枠扱いなの?」

 

「真田さんの調査だと、プリキュア5・GOGO!!から分岐した未来らしいからね。大人だし、君と揉めることはないと思う」

 

「B世界は現役の頃だったからなぁ。それで、敵が敵だ。バダンやゴルゴム残党。現役の頃のあたしら『プリキュア5』の手に負える相手じゃない。それもまずかったかもね」

 

「ブラックの光太郎さんは影のある性格だからなぁ。それもまずかった」

 

「ブラックの光太郎さんは一人で戦おうとするからねぇ。RXになってないと、性格に差が出るんだね」

 

「秋月家の親類の家に転がり込んで、普段はヘリパイロットしてるからね、RXの光太郎さん。それで本来の性格に戻れたんだろうね」

 

南光太郎本来の性格は、RXとしての南光太郎を知ることでわかる。RXの光太郎は環境が大きく変わり、仲間を大勢得た事もあり、精神的にリラックスできており、快活な印象を与える好青年である。おそらく、南光太郎という存在が辿った道では、もっとも救いのあるものだろう。ただし、ブラック時代では他の仮面ライダーの存在が『伝説』扱いであった事などが原因で周囲を突き放す事が多く、B世界ののぞみは彼のそんな経緯を知ると、力になりたいと申し出た。ブラックの光太郎はそんな彼女を敢えて突き放したが、結局は彼女を焦らせ、重傷を負わせる有様であり、非難を浴びる羽目になるなど、女子心理に疎い。

 

「向こうのあたし……あたし自身にコンプレックスでもあるのかな」

 

「あると思うよ」

 

「……だと思った」

 

「まぁ、向こうの君は良くも悪くも、現役の頃の君ってことさ。今度の世界の君は大人だ。君の存在をどう思うだろうね」

 

「その時はその時さ。ケイ先輩も言ってるけど、世の中、なるようになると思うよ」

 

「まさか、プリキュアの姿でベレッタを使うとは思うまいね」

 

「言えてる。ケイ先輩ほどはカスタムはしてないけど」

 

「大人のぼくは『ハジキは見せびらかすもんじゃない』って言ってるから、召喚して使う隠しコマンドみたいなものにしておけって言ってるんでしょ。どんな感想だい?」

 

「大人ののび太くんは裏世界で稼いでるからね。見せびらかすものじゃないって分かってるんだろうね」

 

「まぁ、現役時代の時点で、サマーソルトキックできる柔軟性のある君だからね。ハジキは最後にとっとくだろうけど」

 

「子供の教育に良くないし、昔の月光仮面だか、忍者部隊月光みたいなもんだね」

 

「昔、日本人が外国行ったら、タバコを咥えろとか、ヒゲを生やせとかの謎マナーがあったろ?ハジキはそれみたいな感覚で捉えればいい。職場の他の部隊との交流の時に、自分の使うハジキのことを言えれば、だいたいは一目置かれるよ」

 

「敷島のジジイやケイ先輩に見積もってもらってるんだけど、どれ持っていいのか」

 

「あくまで、最終手段の自衛用だろ?ボブキャット勧めるよ。ケイさんに調達頼みな。敷島のじいさまがよく仕上げてくれる。大人のぼくなら、デイブ・マッカートニーに紹介するだろうけどね」

 

「芳佳ちゃんは元々が持たない質だったから、今は適当にしてるけど、君は顔役に近いから、ちゃんと定める必要がある」

 

「芳佳、拳銃を持ち歩かない事が多いもんな。刀を差してるのは見かけるけど」

 

「私は暗器も使いますね。銃はその場凌ぎで拾うのが多くて」

 

「うーん、フェリーチェが暗器?ス◯イファミリーじみてるなぁ。2022年行ったら、見てみるかな…」

 

魔女の世界では『恩賜の軍刀』や拳銃が国家に貢献した魔女への報奨の確約のようなものであり、その後の身分保障のような扱いであった。芳佳は異名の都合もあり、軍刀を賜ったが、ロマーニャ王室からは『黄金の銃』を送られている。プリキュア達にも、形式的にだが、王室のある国から『恩賜の銃とサーベル』を送られており、報奨を与えるための大義名分代わりとして機能している『近代の魔女としての最高名誉』である。部屋の肥やしになってもいいので、とにかくもらうこと。それが合言葉である。他の部隊にとっては『現役期間にありつけるか怪しい』くらいの確率の名誉だからだ。

 

「もうすぐ、うちだ。夜までに目処をつけて、飯にありつこう!」

 

「けって~い!」

 

「お、久々にいったね」

 

「最近は空気的に言えなくてさ。あたしのアイデンティティみたいなもんだしさ」

 

久しぶりに現役時の決めセリフを言い、気分を整えるキュアドリーム。かくして、帰宅すると、のび太達はドラえもんと調も駆り出し、一丸となって『のび太の宿題』に取り掛かった。のび太一人では『朝までかかる』作業だからだ。

 

 

――野比家――

 

「みんな、作業に入る前にこれを」

 

「ノーリツチャカチャカ錠か。前に使ったやつだね」

 

「僕の時代、作業を迅速に終えるために薬を使うことが多くてね。これなら、のび太くんが六時間かかる仕事も数分で終えられる」

 

「ドーピングだけど、いいの?」

 

「そうでもしないと、終わんないからね」

 

ドラえもんが作業効率を最大化するための錠剤を渡す。薬でスピードを引き上げるのである。すべての能力を引き上げるという観点から考えるに、擬似的なクロックアップと思考加速を実現させるのだろう。中々にすごい効能だ。こうして、道具を服用した一同はものすごいスピードで作業を進め、時計にして数分で、資料からコピーした写真を紙に貼り、レポートとする作業に入る。

 

「うん、長安ってさ、だいぶ内陸にあったんだね、ドラえもん」

 

「古代の中国は長安と洛陽、開封あたりが栄えてたからね」

 

資料をまとめていると、のび太はかつての長安が現在の西安という街にあったことに気がついた。

 

「そういえば、北京や南京が歴史に出てくるのは、ずいぶん後の話だっけ?」

 

「唐が滅んだ後の動乱期以降に姿を見せるんだ、北京や南京は。それまでの中国の都会は長安や洛陽とかさ」

 

ドラえもんは中国の歴史にも、そこそこ詳しいようだった。地名は時代とともに変わるが、長安、洛陽、開封などを抑えておけば、小学生レベルでは上出来だ。

 

「なんで、ある時から長安が寂れたの?」

 

「あー、なんか前、師匠が言ってたような。長安は元々、食料を多く確保できない土地だったんだって。全盛期の時点で、食料問題が深刻になってたんだそうな。唐が滅びたら、都の地位を追われたのは当然だって」

 

「食料かぁ……」

 

「大量輸送が難しい時代だし、水運で運ぼうにも限界があるからね。その点、平安京や江戸は幸運だったよ」

 

一度は世界帝国の首都になった長安の盛衰。日本で都が移動した時は変事、あるいは権力者の意向などが大いに絡んでの事。平安京も疫病などで衰え、江戸中期には、100万都市になった江戸に事実上は取って代わられている。

 

「日本も、平城京の前の首都ってあったの?」

 

「うーん。色々模索はされたらしいけど、はっきりしてないと思う。遺構はあるんだけど」

 

キュアドリームもその辺りは学生時代に聞きかじった程度の知識しかない。とはいえ、はっきりと首都の機能を持っていた都は絞られる。近代以降になると、日清戦争時代に明治天皇が広島に大本営を置いた事により、首都機能が一時的に移っていたが、それが最初で最後である。

 

「戦後は地震や火山の噴火に備えて、首都機能を分散しておくって議論もあるから、いつの時代も都を一つだけにするのか、そうでないかは議論があるんだよ。松代も史実だと、機能を移す案あったし、魔女の世界じゃ、日吉の防空壕が放棄された後も松代は大本営の予備機関を置く想定で整備が続いて、結局、国防省の予備機関が置かれる手はずになったし」

 

魔女の世界での松代大本営は結局、日本の意向で『中止』が検討された時には『大和型戦艦の砲弾に耐える』という触れ込みの防弾設備が防空壕に備え付けられ終えた段階にあり、もはや、そのまま作ったほうが早い状態であったという。仕方がないので、対地中貫通爆弾、核・化学兵器への防護対策の追加工事が施され、設備を21世紀以降の水準に引き上げての『国防省・松代分署』という名で運営が始められた。有事の臨時指揮所という形で完成したわけだ。大本営が制度として廃された後も『松代大本営』は同地を現す単語として使われ、皇室を有事に移動させるための『マルゴ車』もそのまま残され、偽装目的で近衛連隊に留め置かれ、実際の要人護送は21世紀以降の形式での護送車両で行う事になった。また、東京により近い地の掘削工事が始まり、大谷石鉱山を指揮所のバックアップにする計画が熱を帯びている。扶桑は有事が多いため、可及的速やかにバックアップを設ける必要がある。それも複数の地に。

 

「でも、軍事的必要があるからって、どうやって皇族を避難させるの?」

 

「そのために、九四式軽装甲車を要人護送用に改装したのがあったんだけど、ベースが旧式も旧式だしなぁ。ほんと、どうすんだろう」

 

扶桑の要人護送は新たな局面と言っていい。皇居の地下を掘り、列車を通すのか、装甲車で強行突破か、航空機で極秘裏に輸送するのか。結局、近衛連隊も答えが見いだせぬままで、有事たる太平洋戦線となったわけだ。

 

「近衛の連中も困ってるはずだよ。マルゴ車を使ったところで、M26とかに来られちゃ、おしまいだし」

 

「時代の流れだね」

 

「うん」

 

結局、これらの問題は『関東一円に広大な地下都市を築く』というアプローチでの解決が図られ、そのまま『関東一円』そのものを『都市宇宙船に改造していく』という壮大な計画へと変貌し、超長期の極秘計画となる。波動エンジンという、宇宙時代でも有数の強大な機関を得たことによる発想だが、未来世界の関東一円が実際に都市宇宙船に改造済みという実例が、扶桑にその計画へ突き進めさせたといえる。

 

「よしっ。あとは…っと」

 

レポートも数千字は書いてあるので、小学生の宿題としては充分な量である。小学生離れしたレポートを出してくる出木杉は特別としても、のび太が在籍していたクラスは『小学生としては質の高いレポートが続出する』のである。(振れ幅は大きいが)

 

「協力として、出木杉くんの名前を書いてっと……」

 

レポートの骨子は出木杉がアドバイスしているため、彼の名をレポートの末尾に『制作協力』として記す。本人の了承済みだ。

 

「ふう。これで提出できる……。みんな、ありがとうね」

 

「なんで玄奘三蔵とかを?」

 

「僕たちは彼に実際に会ったんだよ、ずいぶん前の冒険でね」

 

のび太は過去の冒険で孫悟空に扮し、西遊記のルーツになると思われる戦いを経験した。その体験が今回のレポートを思いついた原動力だと話す。

 

「あーーー!!こ、子供の時に見た覚えあるーーー!!え~とぉ……ぱ、パラ……」

 

「パラレル西遊記だよ」

 

「それだよそれーー!!その時、しずかちゃん、三蔵法師のコスプレしてたよね?」

 

「そうだよ。たぶん、そのことの伝承が玄奘三蔵を女性が演じる上での根拠だったりしてね」

 

「ぼくはなんも記録されてないけどね」

 

「こう言っちゃ、なんだけど、見かけがたぬきじゃねぇ…」

 

「うぬ!!う、うーん~……」

 

パラレル西遊記の冒険はのび太らの不始末がきっかけで始まり、自分たちの手で始末をつけた冒険であった。三蔵法師の旅で、ドラえもんらしき存在に関する公式の記録は見つかっていないが、ある地域の民間伝承という形で『三蔵法師は女で、お供に青狸を連れていた』という伝説が言い伝えられている事が23世紀に判明するように、ドラえもんは素人目に見れば、10人中の8人までが『タヌキに見える』と言うだろう。その当時の唐王朝に猫がいないわけではなかっただろうが、俗世から遠く離れた仏寺で、僧になるための修行に明け暮れていた玄奘三蔵が『猫』という動物を知っていたかは定かでない。西遊記の雛形になったと思われる伝承の出処は『妖怪どもに西遊記のコスプレで立ち向かうのび太達』が実際には多くの人々に目撃されていたこと、三蔵法師の弟子になったであろう、妖怪唯一の生き残り『リンレイ』(紅孩児)が後世の人々に向けて、多くの伝承を残したであろう事、実際にジャイアン、スネ夫、のび太の三人は『かの有名な西遊記のドラマ』さながらの大立ち回りを素で演じていた事であろう。

 

「ねぇ、君たち。ぼくって……たぬきに見える?」

 

『うん』

 

キュアドリーム、キュアフェリーチェ、月読調の三者に面と向かって言われてしまえば、普段は『誰がたぬきだって!?』と息巻き、口を酸っぱくして、まくしたてるドラえもんだが、今回ばかりは『自分がアニメとして存在する』世界の住人である三人に、はっきり言われてしまい、返す言葉もないほど打ちのめされ、しゅんと落ち込むドラえもん。

 

「で、でも、それだけ可愛いってことだよ~あ、アハハハ~……」

 

「ドリーム、フォローになってませんよ…」

 

「言えてる……」

 

かなり苦しまぎれのフォローなのが丸わかりなので、キュアフェリーチェがツッコむ。フェリーチェは(素のことはとしては)自分がツッコミを入れられる側だが、フェリーチェになっている状態なので、ツッコミに回っていた。調も続く。ドリームは現役引退後も、素の性格はそれほど変わらなかったようで、現役時と同じように、かなり苦しいが、ドラえもんにフォローを入れようとしている。慣れている事とはいえ、ドラえもんは三人の美少女に『たぬき』と言われてしまったのがショックなのか、茫然自失に陥っていた。

 

「こりゃ、しばらくは立ち直れないな。調ちゃん、ママがそろそろ戻ると思うから、ごはんの支度を」

 

「分かった」

 

調は台所へ向かっていく。

 

「ど、どうしよう~!のび太君~!」

 

「いつものことだから、気にしないでいいよ。ドラえもん、好きになったネス猫に『たぬきさん』って言われるたびに、その場で固まるんだから」

 

オロオロと、慌てふためくキュアドリームに、いつものことだと説明するのび太。それに苦笑交じりにうなずくキュアフェリーチェ。すっかり慣れているようだ。ドラえもんはショックで固まっているが、一過性のものだと、のび太は看破している。ドラえもんは以前に『いつも、タヌキ、タヌキと失礼な!!ぼくはネコです!!』と憤慨したら、本物のタヌキに『タヌキがなんだって?』と怒られ、言い訳に終止する珍事に遭遇したように、付託のない他人から見れば、『タヌキ』にしか思えないのだろう。

 

「どらやき、今から買ってきますね」

 

「すぐに日が暮れるから、飛んでいきなー」

 

「はいっ!」

 

キュアフェリーチェがどらやきを緊急で買いに行く。時間が遅いので、のび太の部屋の窓から飛んでいった。ドラえもんはブツブツとつぶやくなど、完全にショック状態。気まずそうなキュアドリームだが、のび太はいつものことだということで、気にしない。

 

「うぅ、気まずいよぉ」

 

「ドラえもんの奴は意外に打たれ弱いんだ。ある時……」

 

のび太の保護者ポジションと見なされがちのドラえもんだが、彼個人は意外に繊細な一面があり、好きなネコのことで『思い詰めるあまりに自傷行為に走った』事があるなど、かなり女性心理が強い。のび太が逆に励ます事もある(とはいえ、のび太自身も24歳時にしずかが話す『婚約の理由』はかなり情けなかった)。

 

 

(久方ぶりだな、戦闘がない一日ってのは。夢原のぞみとしてじゃなくて、キュアドリームの姿なのは置いといて…肩の力、少しは抜けたかな)

 

 

こうして、ドタバタ風味が強いが、戦闘と無縁の一日が久方ぶりに過ごせたキュアドリーム。プリキュアの姿で平和な日常を過ごすのは妙な感じだが、『現役時の日常とは違った感覚』を感じ、黒江が課した修行の意味を少しづつ理解し始めるのであった。

 

 

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