ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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決戦の準備での地球連邦の苦労の説明回です。


第二百一七話「地球連邦軍の憂鬱」

――結局、日本は度重なる暴力の報いにより、支援が扶桑側にカウントされないという屈辱を味わった。あまりに暴力が凄惨すぎたせいである。憲兵の手をトンカチで叩き、手を使い物にならなくするのは序の口、村ごと焼き討ちにする、猛獣処分を叫んだ東京都長官(事件の当時の役職は都知事ではなかった)を集団リンチして、病院送りにしてしまう(程なくして辞職)などの私刑が横行したためだ。特に、軍部への仕打ちは苛烈を極め、Y委員会に軍の行政機関の執行権が委託されるほど、機能不全に陥っていた。これは中堅軍人たちのほとんどが病院送りにされた挙句、その多くが業務に復帰不能な重傷(半身や首から下の不随もザラ)であったためである。この穴埋めは『支援』に数えられなかった。扶桑の国民をなだめるのが優先されたためである。日本としても、カールスラントを滅亡寸前に追い込んだことに罪の意識があり、それを同位国で繰り返すわけにはいかなかったのだ。こうして、黒江たちに手柄が集中してしまう流れが醸成されていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本としても、扶桑の戦争には深入りしたくないが、妙な使命感に燃えてしまった国民の暴走により、否応なしにそうせざるを得なくなった。その事は扶桑には、『自業自得』と見られ、せっかくの支援が『支援と扱われない』状況となっていた。扶桑は中堅(佐官級)の軍人を尽く、使い物にされなくされたからである。一部の国民の身勝手な暴走によるものだと、政府は謝罪しているが、扶桑としてはたまったものではなかった。また、前線で華々しく死んでこいと罵られば、士気はだだ下がりになってしまう。結局、前線で指揮が取れ、自分も戦場で強い者のみが昇進してしまう流れが出来てしまう上、国家組織として健全な有様ではないので、多数の自衛官を送り込んだ上で、兵站部門の権限拡大と旧・輜重科の兵士の権利改善が進められた。また、軍関係者の旧仙台城(扶桑でも、軍用地化されていた)からの即時退去と、旧跡の復元作業の開始が決められた(駐屯していた師団の将兵が暴力による恐怖で、退去を要請していた事による)。結局、仙台城旧主の伊達本家は『史跡を荒らした』として、日本主導で、侯爵から伯爵に降格されるわ、大衆の誹謗中傷により、当代当主が病に臥せってしまうなど、まさに踏んだり蹴ったりであった。結局、華族制度の(魔女の人数確保という軍事上の理由が作用した上、貴族制の存続する国が史実より多かったという実務上の理由で存続した)形骸化の進む時代を迎えていく中で、彼らは先祖の起こした伊達騒動さながらの様相を呈し、黒田家に次ぐ『お家騒動で屋台骨が揺らいだ華族』として、扶桑の歴史に刻まれた。

 

 

 

 

扶桑華族はこの流れで、ノブリス・オブリージュを実践できる者(軍人の魔女)を当主に添えることが増えていく。この流れは戦争が続いていた故であったが、形見が狭くなっていく華族階級なりの生き残り策であった。黒田は(両親は泣いたが、本家当主の命により逆らえなかった)こうして、否応なしに本家の当主となった。継承後は家全体の財政の引き締めを強めつつ、財団を設立。以後はその運営で成功していく。これに習い、魔女の当主が増えていくが、黒田ほどでなくとも、なにかかしらの戦功を立てていることが暗黙の条件になってしまったため、以降の時代の華族達は特に、代替わりの際に、多大な苦労を強いられる事になってしまうのであった。

 

 

 

 

 

そんな有様ながら扶桑と日本の関係が破綻しなかったのは、日本政府がきちんと損害賠償等に応じ、扶桑が軍事的に欲しがるものを与えていたからである。特に、高オクタン価ガソリン(21世紀基準の技術で作られた燃料は扶桑純正の技術で製造された燃料より数段いい性能を持つため、レシプロ機の多かったダイ・アナザー・デイでは重宝された)や日本産電探やソナー、各種の部品はレシプロ機の近代化に使用された他、扶桑戦車の足回りの改善に寄与した。扶桑の産業育成のためには、扶桑の現地工場で生産させるほうが望ましかったが、日本の一部の者たちが技術流出を恐れたため、現物の提供に留まったという経緯がある。だが、日本以外の国が21世紀の技術を自国の同位国に提供し始めたため、結局は戦後技術を提供するしかなくなった。始め、扶桑はブリタニアを介する形で、史実の戦後世界の技術を手に入れていたが、日本が1948年に『勘弁してくれ』と折れる形で、技術を提供し始めた。アメリカにその態度を咎められたためだろう。こうして、アメリカは軍事兵器のライセンス料で見事に一儲けすることに成功するが、日本は兵器輸出への反対論のせいで、扶桑への兵器の販路開拓もうまくいかない始末。アメリカの成功を見て、日本も追従を決めるが、二転三転する状況にうんざりの扶桑からは冷ややかに見られたという。

 

 

 

 

魔女たちは伝播技術の恩恵に預かれる事は少なかった。日本は魔法が(表向き)迷信扱いの世界であったため、魔導技術が存在しない(裏ではあるが、魔女の世界とは根本で異なるものであった)。その一方で、過去の名残りで、強力な異能を持つ者は多かった。皮肉なことに、日本は戦前、魔法の研究が(江戸幕府から引き継ぐ形で)ある程度の段階に到達していたが、その資料の殆どが(広島への)原爆で失われてしまった事、東條英機が本土決戦で魔女を戦場に駆り出すつもりであったことが判明。超テクノロジーに開戦前から懐疑的であった、東條なりの護国への一縷の望みであったかもしれないが、オーバーテクノロジーの活用も、魔女の登用も、連合艦隊の無力化がほぼ決定したマリアナ沖海戦の敗北直後からの着手では、『全てが手遅れ』であった。その重大な事実の判明で、扶桑の魔女の登用に異論を挟めなくなった日本。問題は(何の処置もしない場合)10代の終わりと共に、能力が消失するという点であった。日本での僅かに残された記録では、そのような事はなかったとのことなので、『魔女の世界』特有の現象であると推測された。黒江たちや芳佳のような体質は、一族としての突然変異と『ゲッターエネルギーによる進化』であろうという推測が主流となった。(早乙女博士の登場前の時代でも、ゲッターエネルギーの研究者はいないわけではなかった。だが、彼らはエネルギーを証明できる決め手を持たず、机上の理論止まりであった。それを『実のある研究分野』に進歩させ、研究自体を確立させたのが、かの早乙女博士である)

 

 

 

 

 

 

魔女関連の諸理論の発達は時空管理局からの供与と吾郎技師のメタ情報の双方が必要であったが、金属精錬技術の発達などの素材製造技術の発展も必要であった都合上、通常兵器のような急激な発達は望むべくもなかった。できることと言えば、重装甲脚の小型化くらいであった。陸戦魔女の火砲には魔導触媒が仕込まれており、中装甲脚までの場合は手持ちサイズの火砲に封入された魔導触媒のサイズで武器の威力が決まるのだが、流石に同じ人間同士との戦争では(装甲弱体化効果が起きないので)不利は否めず、重装甲脚の機能を小型化する方向での強化が急務とされた。だがメタ情報があろうと、魔導理論を実現できる強度の素材が開発されなければ『絵に描いた餅』にすぎないので、それを待つ必要があった。故に、素で通常兵器を圧倒できるISやシンフォギアなどの装備が重宝されたわけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女の世界での文化財保護は(生存のために)顧みられなかったが、デロス島事件でエディタ・ノイマンが失脚したことをきっかけに、法整備等が緊急で行われた。彼女ほどの魔女が有無を言わさずに罷免された上、本人が暴力で大怪我をし、病院に入院しているのに、ドイツ主導で軍法会議が開かれ、銃殺刑の一歩手前に行ったことは、現場を激しく萎縮させてしまったからだ。デロス島事件は直後のダイ・アナザー・デイでのサボタージュの直接の原因となったが、そのサボタージュが魔女の社会的信用を地に落とすという最悪の結果を起こした。この結果に責任を感じたエディタは自殺も考えたが、マルセイユが必死に弁護をしている事を聞かされ、思い留まった。退院後は数年ほど勤務した後に、ひっそりと退役。彼女はコンドル軍団の出身であるのもあり、退役の発表は一行記事のみと、寂しいものであった。退役後は軍と関連の薄い機械産業の企業家へ転身。以後はそれで成功する。彼女のそんな顛末は、魔女の政治発言力の減少の始まりと、後世に記録された。軍の魔女職の世間的な人気もそれと同期するように、急速に低下。各国の魔女運用部門の行政府が企図していた『魔女の個人技能を一定のレベルで均一にする』目論見はエディタの失脚、政治的後ろ盾であったガランドの退役、ミーナの不祥事の発覚で、儚くも潰える形で事実上の幕引きとなる。そればかりか、文化財保護関連の話題に魔女が(黒江たち以外の魔女という意味である)口出しができなくなるきっかけともなってしまった。カールスラント軍の未来を担うことが期待された二人の突然の失脚はカールスラント空軍の凋落の象徴とされたわけだが、扶桑との外交問題を起こしかけたミーナは特に、公の場でタブー視された(偽りの動向を公式見解とせざるを得ないほどに)。故に、扶桑海以来の逸材が多数温存されていた、扶桑空軍が彼らの代わりに、連合軍の主力として祭り上げられていったのだ。

 

 

 

 

 

 

大規模な補充が効かない上、勤務可能年数に個人差がある魔女たちの軍事的地位が低下するのと入れ替わりに、魔女から生まれたが、それ以外の異能を手に入れ、強大なパワーを得た者たちが軍部の中枢に食い込んでいった。当初は社会通念上の都合で『Gウィッチ』という造語が充てられたが、ミーナの一件と、のぞみの騒動で『それに代わる概念が必要だ』とされたため、1949年度からは『異能者』という単語への言い替えが進んでいる。これは歴代のプリキュア変身者が続々と加入した関係による。しかしながら、それを以てしてもティターンズの超人たちは強大であり、ダイ・アナザー・デイで数人は倒せたものの、下級から中級の南斗聖拳や華山系の拳法の使い手であった。最高位の南斗六聖拳の伝承者の大半が敵方にいるのも、連合軍の脅威であった。特に、一個大隊のコマンドー部隊が手も足も出ずに皆殺しにされていた事が判明したのは、64Fがなんとか勝利した後のことであり、同部隊に防衛を委託するのが欧州諸国の方針となった。よりすぐったコマンドー部隊が手も足も出ない有様では、戦闘訓練自体が簡略化された魔女が手も足も出ないのは当たり前であった。だが、歴代プリキュアは(現役時代の経験等で)そんな彼らに喰らいつけた。日本連邦がGフォースと64Fの編成の常設化を決定したのは、ダイ・アナザー・デイに勝っても、5年以内に太平洋戦争を仕掛けてくるのが目に見えていたからである。

 

 

 

 

 

 

魔女たちは自分たちの既得権益と伝統の保護を理由に、評議会とすぐに対立したが、近代兵器の発展での怪異の脅威度の低下と『人同士の戦争に用いる意義の無さ』を浮き彫りにしてしまう形となり、政治的敗北を喫した。サボタージュが事後に報じられた事も、世間体的な意味での痛手であった。そのため、俗に言う『欧州戦役従軍記章』の提示が彼女たちの(誹謗中傷からの)防衛手段であった。部外には明らかにされていないが、記章には等級があり、一番低い位で『その時点での所属部隊が参加予定であったが、実際には参加が叶わなかった者』向け、真ん中で『サボタージュした部隊にいたが、部隊の方針転換で後半期に戦った者』、最高位が『全期間を通して参加した勇者』というわけだ。64Fは当初は501の後釜となる国際部隊の受け皿を目指されたが、連合国の連携が崩壊状態に陥ったために、統合戦闘航空団に代わる『連合軍の最精鋭部隊』とされた。その関係で、第一航空戦隊共々に『勇者』と扱われたわけである。しかしながら、のぞみの転職は(素体となった人物が陸軍の『少年飛行生制度』からのルートで軍人になっていたことで)理不尽に潰されてしまう結果となり、政治問題化。最終的に、日本政府が土下座する形で解決を見たが、彼女の転職はこれ以降はまったくの不可能に陥った。その詫びとして、『自由勤務権』が認められた。本来は64Fの幹部層のみの特権として構想されたものだが、前線要員の全員に付与された。憲兵がすべき仕事までも背負わされた関係であった。この依存ぶりは、扶桑の国防体制に日本が(後先考えずに)大鉈を振るっておきながら、平時を前提にした制度しか考えていなかった上に、連合軍の責務を片手間程度にしか見ていなかった故であった。結局、事なかれ主義の末に、人員補充も何もあったものではない有様であるので、人材の温存がされていた64Fに全部やらせようと考えるあたり、戦後日本の暗黒面を煮詰めたような発想であった。結局、Gフォースの拡充が本格化するのは、開戦後。メカゴジラやMOGERAなどの兵器の使用が名実共に解禁されたのは、1948年の冬。部隊単位での搬入は翌年の夏という始末。戦術単位では無敵だが、戦略的影響自体は無きに等しいのも、日本らしいといえば、日本らしかった。また、海軍参謀出身の源田実が出世した事に反感を持つ一部から、『彼の子飼いである64Fの増長を招く』という意見もあったが、同部隊は最前線を支えていたし、源田以上に実務の実績のある航空参謀出身者は扶桑軍におらず、問題児である菅野を完全に制御できる司令官も、彼以外にいないため、結局は据え置かれた。カールスラント空軍のように、組織の空洞化を恐れたからでもあった。

 

 

 

 

 

 

結局、『陸軍悪玉論』の悪影響により、扶桑陸軍は組織自体がガタガタであり、一部の極限されたエース級の人員に現場を回させる』有様。海軍も海軍で技術音痴と空母機動部隊軽視が責められたが、日本が空軍に人員を移籍させてしまったため、空母機動部隊が形骸化してしまう有様となった。結局、元の艦載機部隊は旧任務の継続が指令され、艦載装備を据え置くように通達されたが、伝わった段階で既に多くの部隊で装備が自主的に外されており、部隊長と整備長の多くが呼び出され、統合参謀本部で公然と叱責を受ける羽目になるなど、現場としても踏んだり蹴ったりであった。この騒動は海軍航空隊の風土の駆逐の理由付けに利用されたが、めぼしい人員を奪われた彼らに昔日の威容はなく、諜報上の理由で『空軍の作戦行動の隠れ蓑に使われる』事になった。空軍も呉越同舟の有様であったが、激戦でそれどころではなくなっていく。1949年度には、空軍が主力の軍隊と見なされるようになり、海軍は単に艦艇の管理部門という扱いに落ちぶれていった。結局、空軍も空母着艦技能を磨かなくてはならない他、海軍航空隊も技術音痴を責められて、士気が地の底を這うまで落ちる有様。その反動により、扶桑軍は追随不能な技術差を追い求めるようになり、F-14戦闘機を1940年代のうちに採用するという(ウルスラ・ハルトマンの懸念を意に介さず)行動に至った。ウルスラ・ハルトマンは『順を追っての発展』を重視していたものの、連合国最後の砦である扶桑に倒れられるわけにもいかなかったので、行動を容認するしかなかった。扶桑はこうして、官民双方が『技術チート』を推進する方針で一致。史実の敗戦の記憶がそうさせたとしか思えないほどの狂奔であると、数十年後の官報で評されたという。

 

 

 

 

 

 

その一方で、仮想戦記さながらの海軍整備を容認するところに、日本の二面性があると評された。日本としても、史実と違い、戦艦が多く存在する世界線な以上、戦艦の維持は仕方なしという結論が出された。紀伊の撃沈は『八八艦隊型から新世代への世代交代』の大義名分に使われたわけだが、後の解析の結果、紀伊の装甲板(残されていた交換用の装甲板への試射)は『テックスペックを発揮出来ない劣悪な品質であった』と判明した。当時の海軍工廠の装甲板製造班の経験不足が原因だと思われたが、紀伊の建造は1930年代初頭であり、当時の人員は誰も残っていなかったので、責任の追求のしようがなかった。そんなところにリベリオン最新のSHS弾を主砲塔天蓋に喰らえば、ひとたまりもない。つまり、紀伊は撃沈されるべくして、撃沈された事になる。しかしながら、それで大和型以降の新世代の増加を推進できたのも事実である。ヒンデンブルクとモンタナの両艦は図らずも、大艦巨砲主義を復活させたのである。かつての全盛期に比べれば、ささやかであるが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本としても、乗員を多く必要とする旧世代艦を省力・電子化の進む新鋭艦に交換させたかったため、旧世代艦の交代については寛容であった。重装甲の戦艦にミサイルは有効とは言いがたい上、現代艦は『一発でも被弾すれば、お陀仏になる』ので、迂闊に雷撃も行えない。おまけに、戦後の兵器類は戦艦との交戦など想定外である。それで、戦艦を沈めるには、戦艦が一番(魚雷は潜水艦のものであっても、最後の世代の戦艦には、最低で六発以上が連続して命中する必要がある)であるという『大艦巨砲主義』的な考えに行き着いたからである。これは航空兵器の高額・少数化も絡んでの事であった。八八艦隊型の戦艦が軍事的にほぼ無価値に落ちぶれた(対地支援には有効だが、主砲口径がありきたりである上、設計年度の都合で、新世代の砲弾に対応できないとみなされた)後、大和型を量産しようにも、同艦級を46cm砲の実験艦と位置づけていた扶桑にとっては、艦内配置などの未洗練を理由に、そのままの量産に反対する意見が多数派であった。だが、モンタナとヒンデンブルクの脅威がそれらを一掃。地球連邦軍の手を借りての近代化と増産を並行して行いつつ、扶桑の当初の構想通りの『戦闘用に洗練された艦内配置を持つ艦』を製造してもらった。それで生まれたのが播磨型であった。

 

 

 

 

 

 

 

近代化改修や新造の際に問題になったのが、大和型戦艦を基礎とした場合の装甲の厚さであった。対艦戦闘しか想定していない史実通りのままでは、無為に沈められるだけだと、日本側は述べた。扶桑は日本帝国と違い、対空戦を想定した護衛艦を戦艦につけられるだけの余裕があったので、一隻の艦に万能性を求める日本側の気持ちに疑問があったが、扶桑にも民需優先の時代が訪れつつあったため、日本側の提案を受け入れた。この結果、M動乱後の扶桑の新鋭戦艦たちは(それまでの想定では信じられないほどの)厚さの装甲を持たせられた。これは政治と大衆向けのパフォーマンス的な意味合いと、原爆や水爆に耐えるためという現実的な意味のあるものであった。また、整備性を向上させるために、新造艦の基本構造を未来世界の宇宙戦艦と同等のものにするなどの措置も行われた。その結果、旧来の戦艦の多くを置き去りにする性能を誇るバケモノが誕生したのである。

 

 

 

 

 

これは日本の大衆が『連合艦隊旗艦=前線で先頭に立つもの』と、21世紀時点でも認識している故の政治的判断による使用用途の都合も大きかったが、常に軍事予算の不足に悩んできた戦後日本にとって、生え抜きの扶桑海軍の上層部を前線に引っ張り出す口実に使えることから、異を唱えなかっただけであった。実際、豊田副武や宇垣纏には、史実が史実なだけに、『前線で華々しく死んでくれ』論があるからだ。彼らからすれば憤慨ものだが、日本から見た『太平洋戦争当時の指導層』への認識などはこんなものである。そのため、将官が前線で指揮を取る事などは当たり前であった。連合国としては『将官に死なれると困る』のだが、大和民族にとっては『指揮官は敗北すれば、華々しく死んだほうが良い』とする武士的価値観が残っている。故に、史実で虚しく敗北した指揮官ら(南雲忠一など)に冷酷なのである。その一方で、名将と言われつつも、兵が惰弱であったために敗北した者(小沢治三郎)に同情的であるので、扶桑軍としても、現場の士気が低くて困るのだ。それを実現させるには将兵の練度が必要だが、あいにく、扶桑の将兵の全体的な練度は高い方ではなかった。それも、日本側が現存艦隊主義を取らせる理由であった。悪く言えば、史実ほど戦争に関わり合いを持たなかった故に、豊富な実戦経験を持つ将兵が少なかったからだ。また、扶桑はベテランを後方で教育に関わらせる方針であったが、前線のエース不足で怪異に負けて、大陸領のほとんどを失陥したと勘違いしている大衆の圧力で、手持ちのベテランの全員を前線に出すしかなかった。それが退役済みの古参兵を呼び戻す理由であった。結局、この同調圧力で、扶桑は自前の装備テスト部隊や教導部隊を戦中に再建することを諦める事になった。

 

 

 

 

日本からのこうした圧力で、扶桑軍隊は旧城趾から追われる事になった外、史跡をぞんざいに扱ったとして、いくつもの陸軍師団が強制的に解散となった。この私刑的な決定で、軍に土地を提供していた旧城主たちの萎縮を招いてしまったのも事実であった。仕方なく、ドラえもんに扶桑政府が泣きつき、各地の天守をドラえもんの力で復元する方法が取られた(現存の場合は内部の修復)。修復は安土城(織田家が覇者のままであったのと、明智の反乱が怪異のせいで大事件とならなかったため)、名古屋城、広島城、姫路城、大阪城(豊臣一族が存続したため)、江戸城(火災で三代目天守は史実通りに失われたが、史実と異なり、ある時期に再建された四代目天守が建っていた事が確認された)、首里城などが該当した。これは財政破綻状態の江戸幕府と異なり、織田幕府は国家規模の交易ができたために、資金の余裕が末期でもあったからである。扶桑国民はカールスラント軍人たちの理不尽な更迭劇を目の当たりにした影響で、文化財保護の動きに神経過敏になっており、日本の人々に泣きつく始末であった。ドラえもんはそんな扶桑に力を貸す事になったわけだ。また、駐屯地を追われた軍は史実の自衛隊の駐屯地と同じ場所に押し込まれたり、南洋防衛のためと称しての外地への配置転換が行われた。しかし、イベント開催での民需が優先された影響で遅れ、開戦時には、予定の60パーフェクトも兵力が配置されていなかった。二年近くが経過した現在になると、その兵力さえも地味にすり潰されつつあり、それをGフォースと64Fの奮戦で持ちこたえさせているという有様であった。その報告を地球連邦軍の本部で受けていたのが…。

 

 

 

 

 

――地球連邦軍本部 ギアナ高地――

 

「魔女の世界の戦況は?」

 

「ハッ。64FとGフォースの奮戦で持ちこたえていますが……」

 

「21世紀の日本の連中は、扶桑陸軍を全滅させたいのか?」

 

「でしょうね。少なくとも、統制派と皇道派、あるいは史実の関東軍の連中は派手に死なせたいでしょう。公にしないだけで」

 

「昭和天皇陛下も困っておいでだろう。別の自分がこう言ったからと、軍部の粛清の口実に使われるとは」

 

「ええ。横のつながりを断ったら、今度は中央の統制が効かなくなるなどとは思ってもなかったようです」

 

「日本人はコミュニティの秩序を重んずるからな…。故に、それを乱すものを敵視する。出る杭は打たれるというからな。黒江くんたちがそうだろう」

 

「ですが、結果としては良かったのでは?」

 

「彼女たちが異能者として生きる権利を得たのは喜ばしいことだが、それで、周囲がおんぶにだっこになるのはいかんよ。あの時代の日本人は他力本願にすぎる」

 

「日本人は臭いものに蓋をするクセが、どこの世界でもあります。戦後はそれが、より顕著になります。戦争に負け、それまでの全てが否定されたトラウマによるものです。特に大日本帝国に似た体制の同位国を見つけたがために、『軍国主義に嵌まり込む前に、軍人と華族、財閥を粛清してでも、矯正する』という、妙な使命感を持ってしまった。扶桑には大迷惑ですよ」

 

レビル将軍は21世紀の日本人の受動的態勢を批判し、副官は扶桑の境遇に同情していた。それほど、日本連邦の名のもとに行おうとした、日本主導の施策が稚拙かつ、太平洋戦争時代の国家指導層への敵意に満ちていたからだろう。

 

「我々が裏で圧力をかけた甲斐があったというべきかね?」

 

「夢原少佐への明らかな差別的な言動は大問題ですからね。グレートマジンガーとゲッタードラゴンでの国会議事堂襲撃を示唆してやりました。連中は失禁しましたよ」

 

「ゴジラが来るよりはマシだがね」

 

ここで、地球連邦軍はゲッタードラゴンとグレートマジンガーでの国会議事堂の襲撃を21世紀日本に示唆することで、警察関係者の心を折ったことを口にした。日本の外務関係者の言動に、扶桑へのあからさまな優越意識が見えているため、扶桑が『灸を添えてほしい』と頼み込んだのである。ゲッターロボとマジンガーの『初代より強力な第2世代モデルの実在の示唆』により、日本の警察は『扶桑制圧計画』を破棄したのだ。

 

「鈴木貫太郎閣下の要請でしたが、彼も大胆なことを」

 

「彼は日露戦争の生き残りだ。21世紀の日本の多くの政治家よりは、民のことを真剣に考えているよ。それに、彼女は転職を希望していたのだぞ?それを潰した以上は、それなりの制裁を示唆しなければ、我々としても、彼らに顔向けできんからな」

 

のぞみ(A)はダイ・アナザー・デイの終了後、本来は予備役編入からの教職への転職を希望していた。日本の官僚が独断で話を潰したために、日本と扶桑とで外交問題が本気で起こりかけた。それを裏で仲裁し、騒動を鎮めたのが、地球連邦軍であったのだ。

 

「それで、日本はなんと言っていた?」

 

「最初から、そう明らかにしてくれれば……と散々に愚痴っていたと、扶桑から通達がありました。炎上対策の言い訳でしょうね」

 

「ネットが盛んな時代に、なにかかしらの不祥事を起こせば、組織全体が火消しに追われるからな。その官僚の独断といえばいいと思っていたのだろう」

 

「加東少将がマスコミにリークし、大事にしたことで、日本への意趣返しには成功しましたが、少佐も気の毒でしたな」

 

「文科省や日教組は『軍人あがり』を教職にしたくなかったんだろうが、彼女は扶桑でなろうとした。日本でなるとは、一言も言っていない。そこがミソだ。扶桑の法律では合法だし、予備士官の少なからずは教職が普段の仕事だ。『なかった』ことにすれば、いいというものでもあるまい」

 

日本と扶桑が大揉めとなった、のぞみAが当事者となった騒動。結局、地球連邦軍の助力で、扶桑は日本へ特大の意趣返しに成功したものの、のぞみAの願いは(日本の政治的都合による取引で)潰される形で幕引きとなり、否応なしに、のぞみは軍に在籍を続けることとなった。中島錦の人事記録を正式に改変する(肉体的には同一の存在であるので)形で、夢原のぞみ名義の軍籍が作成され、防衛省も扶桑軍の人事記録を改めて共有するという協定も結ばれた。この協定により、人事記録の発掘が進んだことで、黒江たちの事変での撃墜記録は全面的な訂正がなされ、統合参謀本部も正式に『英雄として広報する』ことにした。それはそれで、魔女の世代間闘争を引き起こしてしまったのだが。

 

「彼女らは今?」

 

「少佐は別個体が別世界で、ガトランティスの残党狩りに参加したと」

 

「残党狩りと言っても、別働隊が丸ごと生き残っていたのだろう?艦隊の動員率は?」

 

「第七、第三、第二、第一、第十二外周防衛艦隊が合流し、巡航空母艦隊も直に現地の土星に到着の見込みですが」

 

「有人艦隊のストックをありったけ使うよう、統合参謀本部に指令したまえ。連中は生半可な無人兵器では止められんぞ」

 

「ハッ」

 

「場合によれば、キャプテンハーロックやクイーン・エメラルダスに助力を乞う必要も出るだろう。私が連絡しよう」

 

ギアナ高地の戦闘指揮室のモニターには、オトナプリキュア世界に遠征している地球連邦軍の主力艦隊の集結状況が映し出されているが、いかんせん再建途上の艦隊であるので、有人兵器の数が足りなさすぎるのである。

 

「プリベンターのアナザーガンダムは?」

 

「彼らも、そう連絡はとれんとのことだが、ダメ元だ。プリベンター・ゴールド(レディ・アン。元・OZの特佐で、亡きトレーズ・クシュリナーダの腹心)に私が要請しよう。だめなら、外務次官のツテを頼ろう」

 

レビル将軍も、できるだけの増援を送れるように、策を練り始める。アナザーガンダムは『元々の開発目的の都合で、通常のガンダムタイプより遥かに強大な力を持つものの、基本的に短期決戦型である』という泣きどころがある。ウイングゼロなどが特に顕著であり、本体のエネルギー容量とフレーム強度の都合で『ツインバスターライフルの最大パワーの多用は難しい』という課題があった。それをクリアするため、フレームの重要部をガンダニュウム以上の頑強さを持つコスモナイト合金に置き換え、機体ジェネレーターの新式への換装を伴う、内装部品の新造品への取り換えが行われているという。

 

「コズミック・イラに送り込むつもりであったとのことですが?」

 

「あそこはデスサイズヘルだけで、充分におつりがくるくらいだそうだよ。ウイングゼロは戦略兵器に等しい。要塞クラスの大量破壊兵器を、自前の武器一つで粉砕できる。メカトピアとは相性が悪かったが、コズミック・イラの軍隊相手であれば、デスサイズヘル一機でも、戦線を支えられるだろう」

 

コズミック・イラ世界の技術レベルであれば、未来世界の軍用高級MSが玩具扱いに近いアナザーガンダムを一機でも置いとけばいい。そう判断されるほどの力を持っていた。

 

「ガンダムエピオンが残っていれば良かったが……」

 

「残骸は回収されたそうですので、レストアの計画は立案されているそうです」

 

「あれも、ゼクス・マーキスしか扱えんからな。とはいえ、MSとしては最高レベルの白兵戦能力は捨てがたい」

 

 

レビル将軍は、かつてのゼクス・マーキスが『ミリアルド・ピースクラフト』として用いた『ガンダムエピオン』の存在に触れた。白兵戦能力などで魅力的だが、トールギス系を乗り潰せるほどのパイロットが必要であるなどのネック(トレーズ・クシュリナーダは『(通常の)兵器として建造してはいない』と述べたという)から、『復元してもなぁ…』と技術陣も及び腰であるようだが、スーパーロボットに引けを取らぬ白兵戦能力の高さは魅力的であると明言する。回収されたという残骸はどの程度の損傷具合か?機体のデータは取れたのか?それはまだわからないが、かつての記録にある『宇宙要塞ぶった切り』の功績から、MF(モビルファイター)を除けば、初代ガンダムから続く技術で構成された産物としては最強クラスと評価されている事がわかる。とはいえ、それらはヒイロ・ユイかゼクス・マーキスでなければ、使いこなせないであろうともされている。ゼロシステムとそれに類するものが積まれているからで、それが同機の復元が躊躇われる理由であった。

 

 

 

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