扶桑皇国は結局、日本による粛清人事で多くの人材が失われた。また、膨大な適齢期の軍馬の問題も出ていたため、結局、軍馬は警察の騎馬隊に譲渡されたりして、育成施設は払い下げで競走馬の育成に転用された。この時期に軍馬としてはタブーであった芦毛も(純然たる競走馬の育成には関係のないことである)導入されていった。軍部がモーターリゼーションを理由に、軍馬生産から手を引かせられたため(1946年以降、軍馬が一部の儀仗目的以外に入手できなくなった)、その代わりになる乗り物として、オートバイと自動車の導入が一気に進められた。とはいえ、怪異に探知されにくいという理由で、軍馬を求める偵察部隊も多く、妥協的に『通達までに適齢期を牧場で迎えていた個体は領収する。ただし、以後は農耕馬・競走馬の生産に転化すべき』という通達を出す形で、老馬となっていた個体を若い個体と入れ替えるという形の救済策が取られた。この時期に、困窮に喘ぐガリアの牧場主が扶桑に名馬を次々と売却する事態となり、ガリア国家が国家を挙げて、馬を買い戻すという珍事(良質の産駒を必ず売却するのを条件に、買い戻した)も発生した。この珍事により、扶桑は早期に競走馬の質の強化を推進できることになり、日本の過去の記録よりも早いうちに、海外レースを総なめしていくことになった。軍人(国籍・兵科・階級を問わず)への暴力も、連合軍が侵攻を含めた制裁を示唆したことで、日本がようやく差止めに入るという顛末を迎えた。外国の軍人にも再起不能レベルの怪我を負わせたからで、日本が発生するであろう損害賠償の負担を恐れたからだ。その頃には、軍部の志願数はめっきり減ってしまっており、多くの分野で自衛官を入れなくてはならなくなった。いくらでも代わりはいると、扶桑軍人を責めた日本人が扶桑の軍人の志願数の減少に驚くというのは、これ以上ない皮肉であった。
兵器の開発プロジェクトも軒並み中止された影響で、技術者の就労意欲も大きく低下。これにより、完全新規の技術開発が停滞してしまうことになった。これにより、自由リベリオンの技術開発担当者の責任は重大になった。アメリカの技術提供もあり、1946年以降は自由リベリオンの開発した兵器関連技術が日本連邦陣営のスタンダードとなっていった。また、超重爆の迎撃が防空部隊の責務に制定されたため、陣地高射砲の大半は最低でも、三式12cm高射砲の改良型(近接信管の導入や射程の延長、射撃測定等の電子化など)に統一された。接触時に最新鋭とされた『五式15cm高射砲』も電子装備等の刷新と近接信管の導入がなされた上で、増産された。扶桑は戦闘機の不足から、陣地防空部隊を重視していたが、今度は局地戦闘機の不足を罵られるという有様であった。結局、旧来の機種はダイ・アナザー・デイで消耗していたため、F-104Jとドラケンが当座の局地戦闘機とされた。既に、試験的に生産ラインが構築済みであったためだ。既に空中給油機も、余剰の戦略爆撃機を転用する形で用意済みであった。ジェットの時代になり、以前ほどに航空基地を建設・維持できない時代を迎えていたため、宇宙戦艦は移動拠点を兼ねる運用がなされていった。
史実の遣独潜水艦作戦の失敗から、日本連邦は欧州からの技術援助を空輸で受け取るようになった。ガルダ級を使うことで、たいていのものは運べるようになったからで、ダイ・アナザー・デイで事前に空輸された物資を64Fが消費しきらなかったのは、プリキュアの登場で、ストライカーユニットの使用機会が減り、旧来の備蓄弾薬を譲渡した代わりに、代わりの弾薬一式と当面の燃料(高精度のジェット燃料は専用のものが必要である)を手配したためである。ダイ・アナザー・デイは激しい消耗戦であったため、扶桑は大陸奪還計画のために備蓄していた戦力の一切を消費した。そこからの立て直しが遅延していたところに、太平洋戦争ときたものだから、扶桑軍が組織だっての行動が出来ぬのは当然であった。特に機甲兵力の刷新と配置に苦慮した扶桑は結局、重要拠点である南洋(地盤の硬い&インフラが整っている)に重戦車を、本土は当面の間、軽戦車(以前の中戦車相当の火力)で忍ぶことにしたが、一部の参謀(大陸領出身者)の強硬な反対で配備が遅延している間に、太平洋戦争が開戦を迎えたわけである。史実と違い、南洋は大陸級の島と意図的に作られた新島群が固まった位置にあり、硬い地盤を持つ。したがって、機甲兵力の円滑な運用が可能である。大陸領出身者は故郷への帰還が遅れるのを危惧して行動したが、太平洋戦争は国家自体の存亡の危機である上、既に重臣たちは大陸領の施政権の放棄を極秘裏に決めており、無駄骨を折るだけであった。また、大陸領の住民は南洋で引き受ける手筈であり、南洋は是非がでも死守すべき場所であった。故に、64Fを配したのである。
連合国の体制の形骸化により、日本連邦の一人勝ち状態になりつつある『魔女の世界』。カールスラントが軍事的に無力化し、ブリタニアも財政的に限界に達したため、扶桑は同じ世界の諸外国からの支援は期待できず、逆に国内を含めての利敵行為に苦しめられていた。それを補うためにも、トップレベルの魔女たちの集中運用は是非がでも実現させるべき事項であった。当初は『各地に分散させたエースが有望な若手を育てる』方法が有力視されていたが、そのテストケースを兼ねていた501とその他の数部隊が失敗してしまったために頓挫。次善の策で、既存のエースを一つに束ねての『超精鋭部隊』を一つの戦線に置く事が決議された。その方針はミーナが失敗を犯したことが発覚する前の段階で『実行』の採決を待つだけであった。ミーナの愚行はその施策の実行の大義名分に使われたわけである。魔女たちの失敗は『新世代は前世代の交戦データが得られているので、必然的に世代が新しい者が強いのだ』という先入観を持っていたことで、黄金世代は前後の後の世代の及ばぬ実績を残したからこそ、『黄金世代』と呼ばれるのである。その摂理を忘れた者はすべからく、不幸な結末を迎えるのである。
軍に残留していた『扶桑の黄金世代』のトップたちが『異能者』にジョブチェンジしていた事は、ある意味での福音であった。どんなに強くとも、平均で数年しか前線勤務が出来ない魔女と異なり、異能者は加齢による能力の衰えが起きない。魔女は育成費に見合わぬ『活動期間のばらつき』が財政上の課題であったので、異能者は普通に鍛錬をすれば、『普通の兵士が有象無象のような戦闘力』が担保される事も、政治的に好まれた。魔女の力は一般的に、15~18歳が全盛期、19歳で急速に力を失う。育成期間を省いた場合、事実上は数年しか戦力にならない。近代軍には不向きな能力特性であることがクローズアップされた結果、その特性が疎んじられる対象となったのである。異能者はその中から、特異な前世などを持ち、その時の能力、記憶、特性等を引き継ぎ、覚醒させた者。以前は『Gウィッチ』と呼ばれた集団だが、主力となる異能が(魔女の世界の)魔法と別種の能力であることから、日本側が言い換えを提言した。扶桑軍は公文書の再度の書き換えになることで、難色を示したが、クーデターを鑑みて、最終的に了承した。クーデター軍の魔女たちの言い分は『連中が自分たちの界隈の秩序を乱したから』という身勝手極まりないものであったが、それまでの体制で立身出世してきた者達が『体制を一新しようとしている者』を敵視するのは、古今東西の変革期にありがちな光景であった。それを鑑みての『言い換え』であった。
かくして、1949年の夏を以て、64Fの幹部層は『異能者』と位置づけ直された。全員がなにかかしらの分野で超人かつ、一騎当千であったからでもある。その中で、移籍組でほぼ唯一、幹部に食い込んだ『セラ』は正真正銘の猛者であった。確かに、生え抜きの扶桑軍人で間違いないが、空戦の腕前は万能。世代は黒田と同世代、のぞみ(正確には、その素体となった中島錦)の士官学校での二期先輩であった。その関係もあり、大人のぞみの様子を確認するのを兼ねて、オトナ世界の決戦の増援として馳せ参じた。
「おーっす」
「セラ先輩、来てたんスか」
「この世界での貴様の様子を確認しにきたのさ。1000年女王になったそうだね?」
「ええ。のび太くん経由で、メーテルとクイーン・エメラルダスに了解を取る予定です」
「あの二人も、母親の持っていた地位に即位する気はないだろうから、第三者に渡すだろうさ。因果な話なこった。機械になったせいで、若かりし頃の人間性を失ったプロメシュームのしてたことは、かつての自分の母親と同レベルのことで、しかも、自分はそれ以上の悪行三昧。最後は愛した青年の面影を持つ(後に、本当に雨森始の末裔は星野鉄郎と判明)少年に殺されたんだから」
「別の世界だと、暗黒彗星に特攻して果てたっていいます。この世界での彼女は『そうなった』かもしれません」
「なにかの証拠が見つかったのか」
「国連の管理する、アメリカのビルに彼女が写っていた写真があったんですが、目つきが柔らかいんですよ。つまり、メーテルと違いがあるんです。ドラえもん世界の彼女は瓜二つだという話なので……」
「どういうことだ?」
「別個体でしょうね。その後に帝国を作る場合の彼女が現れたとも取れる写真がありますから。ただし、彼女は大抵の場合、地球を離れた後、暗黒宇宙からの侵略の兆候を掴み、すっかり怯えきった。そこを悪人に漬け込まれてしまい……という道を辿りますから、ある意味では、雪野弥生として死ねたほうが、彼女は幸せだったかもしれません」
「機械帝国の所業と、星野鉄郎に倒される結末を考えるとな」
64F幹部の間では、機械帝国の勃興と、プロメシュームの死に伴う、あっけない滅亡は周知の事実であった。それに伴い、地球連邦はその時代に蔓延した退廃を抜け出し、再度の中興へ向かうことも。
「複数の世界、複数の時代の流れが絡み合った結果、お前が『プロメシュームに変貌しなかった場合の雪野弥生』の後継になったのか」
「その場合、セレン……プロメシュームの妹で、メーテルとクイーン・エメラルダスのおばですが……は生きていますが、姉の後を継ぐことはないでしょう。大抵の場合は彼女が先に召されてしまいますし」
セレン。メーテルとクイーン・エメラルダスのおばであり、プロメシュームの実妹(姉とも)にあたる。雪野弥生が散華した世界線では存命したが、ラーメタルの王位と1000年女王の座を継ぐことはないと見積もられている。これは彼女は母の横暴さに反発し、盗賊になっていたからで、その生き様は姪であるクイーン・エメラルダスが受け継いでいる。その場合、セレン自身は『1999年に戦死した』ことになるが。
「確かに。とりあえず、黒江先輩たちからのプレゼントがある。直に、みらいもインストールされるだろうからと、イカルガの予備機だ」
「みらいちゃん、泡吹きますって。別の自分が魔法技術を機械技術と組み合わせて、とんでもないバケモノ生み出したってのは」
「こちらでは、時空管理局が魔力が主力の機械文明を築いた上で、通常の機械技術を極限まで発達させた未来世界と接触したからな。こちらのみらいは、二つの世界の技術を組み合わせて、ラノベの機体を再現しちゃったツワモノだからな」
時空管理局の魔導炉は建造物サイズ以上であると、特別な処理がない場合、重大事故を引き起こす事がある。アリシア・テスタロッサの死亡した世界線(接触時のあった世界線では、花咲つぼみの転生体であった関係で、死亡を免れている)での事故の原因となった炉心がそうであったように。時空管理局(接触のあった世界線の)はこの事故があった世界線ではアリシア・テスタロッサの死で、プレシア・テスタロッサは発狂し、フェイトを『生み出す』要因になったことを知らされ、大規模魔導炉心の危険性を認識。徐々に通常科学での動力へ電力供給を切り替えている。イカルガは時空管理局にとっては『ここ100年の技術発展を否定されたくない』という思考から、技術協力した計画であった。つまりは技術協力は『炉心の製造技術の維持のため』ということである。機動兵器のエンジンサイズであれば、安全性が確立されている故に、通常動力とのシンクロも問題ない。
「魔法少女に、バリバリの機械兵器を整備させろ、か。人手不足も極まってるなぁ、連邦軍」
「しゃーない。戦争しすぎで、熟練の整備兵が不足してるからな、連邦も。民間軍事会社から、かなりを徴用したっていうわよ」
「うへぇ……」
地球の民間軍事会社は(デスラーの発言の影響で)かなりの人的・資金的損害を被る羽目となった。みらい(A)のように、パイロットと整備を両立している人材は是非がでも確保すべき逸材なのだ。
「それと、カールスラントの義勇兵をかなり連れてきたわよ。例の粛清の影響で、戦前からの将校の多くがクビにされたから。ひどいのだと、集団リンチの末に、はんだごてで焼き入れられたりしたそうな」
「やりすぎですって。これだから、ドイツ人は……」
「両極端なのよ、あの民族は」
カールスラントが暗黒時代となったのは、ドイツが戦前からの将校・下士官を排除しようとしたからであった。軍事国家化していたカールスラントを無理に民主共和制にしようとしたからである。この影響で、多数の優秀な軍人が路頭に迷う羽目となった。その結果、日本連邦の尖兵になる者が続出している。軍人としての名誉を保障してくれたからで、結局、カールスラントはドイツが手を引いた後に、ベテラン軍人の呼び戻しに躍起になり、恩給も保証すると宣言したが、財政的に不可能に陥っており、目論見は失敗。ほとんどは日本連邦の義勇兵として参陣してしまった。
「ベテラン軍人をクビにしたら、穴埋めをドローンか何かで埋めようとしたんでしょうかね?」
「多分。でも、ミノフスキー粒子の事を連中は知らない。あたし達はメタ情報で知ってるけれど、ガトランティスに二度通じるとは思えない」
「二段構えってことですね」
「そう。それと、あんたのダンナから、烈火刃と剛烈刀を預かったから、使いな」
「超弾動は使えますけど、この世界だと、別れそうなんですけどね、まだ独身だし」
「そうなったら、連邦軍で当分は食うんだね。この世界の地球は当分の間は復旧しないし、東側諸国と第三国がきな臭いし」
「そのつもりですよ」
セラから、二振りの刀を受け取る大人のぞみ。とはいえ、姿はキュアドリームのそれであるので、のぞみAと違いはほとんどない。
「あんた、軍人として暮らすんだし、鍛え始めたら?」
「若返ったし、始めますよ。それに、素の外見も17歳に戻っちゃったんで、職場復帰出来なさそうですし」
大人のぞみはこの日以降、出撃と訓練の合間に、自主的に筋トレを行うようになっていく。素の状態では、職業軍人のAに、到底及ばないことを自覚していたからである。プリキュアの状態では同等の能力を発揮できると言っても、素の肉体は『疲れている社会人』のそれ。若返ったことで得たのは回復力だが、素が運動不足では、変身を解いた後の反動もきつくなる。故に、変身を解かずにいるのだ。
「先輩は何に?」
「ハミングバードを持ってきたわ」
「あれを?過激なの、好きですねぇ」
「マシンはじゃじゃ馬のほうが乗り回しがいがあるわよ?航空決戦に備えて、23世紀の民間軍事会社にいる知り合いにも、片っ端から声かけたわ。直につく」
「恩に着ます」
「何、見知った顔がいたほうがやりやすいでしょ?うちの他の中隊の連中も連れてきたから」
「ああ、維新隊」
「ええ。連中は手空きだったから」
セラは64Fの幹部級代表で参陣したのだが、大人のぞみの詳しい調査も兼ねていた。とはいえ、基本が一緒であるのと、オトナ世界の事情で大人の世界に疲れていたためか、大人のぞみが気安く接してきたので、調査の手間は省けたと言える。
「それと、あなたの義父さんから伝言。2025年のプリキュアはアイドルだそうよ」
「ふぇ?アイドル?」
2025年度のプリキュアはアイドルであり、変身態で芸能活動をしている。そのことが、その時代ののび太から連絡されたことが伝えられた。
「ますます年食ったなぁ、あたし」
「しかたがないでしょ。あんた、2019年で26って事は、その時代には32でしょう?」
「やめてくださいよ、ますます来ますって……」
大人のぞみはその手の単語に敏感になっているようである。自分が『歳を重ねた』自覚があるからで、Aにはない要素だ。
「26なんて、まだまだ若いって。あんたがいる時代じゃ、そうでしょ?」
「世間的にはそうですけど、あたしのいた業界じゃ、そろそろ若造扱いされなくなってくるんですよ。それで、鬱屈した気持ちあったんで、戻れたことは嬉しいですよ?仕事はクビになりましたけど」
「対外的には、自衛官に転職したと言っときな。あんたの年齢なら、まだ色々と間に合うはずだし、今回のことが終わったら、そう親御さんには言っときな。外国語ができるようになってて、銃の扱いに長けるようになってるなんて、どう説明するのよ」
「た、確かに」
「ドラえもんがラブといっしょに、防衛省に手を回してるから、近日中に隊員としての雇用の記録は『でっち上げられる』。四葉財閥に上層部を買収させておくから、追求されることもないわよ」
「ありすちゃんが後輩で良かったぁ~…こういう時。あ、先輩。後輩の一人からの参戦の確約が取れたんで、黒江先輩に報告しといてください」
「キュアプレシャスでしょう?ラブに伝えといたから、黒江先輩は知ってるわよ。それがこの世界線での最新だと言うことは……キュアスカイはまだいないわね。つーか、歴史が前倒しされているわね、数年分は」
「どういうことです?」
「説明するわ。令和プリキュアのことは、まだ聞いたばかりでね」
この世界線では、令和のプリキュア戦士が同時多発に出現しているのでは?そう、セラは推測した。令和以降では、のび太も壮年にさしかかる年齢となるが、プリキュア戦士の調査は続けていることが知らされたわけだが、キュアプレシャスは本来、2022年あたりに出現するので、数年は前倒しされていること、ゆい達の生年も数年は前倒しされていることが濃厚である。そうなると、他の令和プリキュアも既に現れている可能性がある。
「プリキュアの集まり具合はどうなの?」
「あたしら第一世代は呼ぶしかない子もいますし、第二世代はチームごと不参戦のほうが」
「それは仕方がない。ゴープリはトワだけだな。はるかはまだ訓練途上だし」
「みなみちゃんは?」
「竹井は、都合がついたら向かうと。こっちのを呼び寄せるわよ」
「トゥインクルは?」
「今、宇宙刑事ギャバンに捜索を依頼したところ。プリキュアの力が戻ってる可能性もあるから。それと、この世界線のはるかはどうなの?」
「現役時代に連絡先は聞いといたんですが、世代が違うの気がついたの、引退した後でしたし、今住んでた家が燃えちゃって……」
「それじゃ、本人に聞きなさい」
「え、先輩。持ってきたんですか、タイム電話」
「ドラえもんが用意してくれたのよ」
セラは、ドラえもんから借り受けたタイム電話のボタンをプッシュし、魔女の世界で療養中の春野はるかに連絡を入れる。
「事情は知ってるから、あんたから話しなさいな」
と、促す。大人のぞみは緊張しつつも、久方ぶりに春野はるか(現役時代の)と会話を交わすことになった。
「はるかちゃん?あたし。……と言っても、別の世界線ののぞみだけど…。……久しぶり。あのね、実は……」
と、大人のぞみは切り出す。はるかAは実家の住所を教えた。現役時代は寮生活であったからだ。
「たぶん、実家の和菓子屋を継いでると思う。世界の危機だから、キーが手元に戻ってると思うけど、応じてくれるかは、自分でもわからない。生活があるし、従業員を食わさないといけない身の上だし。いざとなったら、あたしがいくから」
「ありがとう。ドリームの姿で行ったほうがいいかな?」
「それが確実だと思う。私の代になると、生きてる時代が大きくずれるから、大きな戦いの時にしか会えなかったもの。普段の姿ののぞみちゃんを見た記憶ないよ」
「そうだよねぇ。逆に、みらいちゃんのほうがあるって言ってたし」
「いやぁ~…。ほんとごめん、力になれなくて」
少し後にわかるが、それははるかの記憶違いで、実際には一回だけ、私服姿のプリキュア5を見ていた。だが、普段ののぞみはおとぼけキャラであったので、キュアドリームとしての勇猛果敢な姿とのギャップが大きすぎて、結びつかなかったのである。
「セラ先輩が一番速い空間四駆(23世紀以降の地球連邦における高速連絡機の通称)を手配してくれたから、急いで地球に戻るよ」
「ワープブースターは?」
「フォールドブースターの改造個体でどうにかする。このあたりの空域はガミラスとの宇宙戦争の名残りで、亜空間に世界線のいくつかに跨いでる規模のフォールド断層があって、ワープのほうが速く行ける。できれば、後輩の一人を連れて行くよ。りんちゃんは今、即席講義を受けてるところだし」
「スマイルはどうする?」
「あの子達には声はかけないでおこうよ。戦いはあの子達の本意じゃないだろうし」
「なぎささんたちは?」
「昔に聞いた連絡先に電話してみたら、留守だった。海外に行ってると、家族には言ってあるようだけど……」
スマイルプリキュアは引退後に力を失った線が濃厚かつ、今一度戦えと言っても、気乗りしないだろうという推測から、大人のぞみは声をかけるのを見送った。また、なぎさたちが行方をくらませている事も気になっているようである。
「普通に歳を食ってたら、なぎささんたち、そろそろ結婚して、子供もいていいくらいの年頃だからなぁ」
「えーと、1990年くらいだから……」
「アラサーだよ。まぁ、昭和以前なら、確実に行き遅れ扱いだよ。あたしの年代で『大年増』扱いされてたっていうし。江戸時代なら、尼にされてるよ、30歳で未婚だと」
「うーん。昭和以前の価値観って…」
「仕方ないよ。昔は人生50年って言われてたからね。子供は遅くても、35~40のうちに産めとも言われてたくらいさ」
例として、連合艦隊司令長官であった山本五十六も、自分の親に『恥かきっ子』と扱われ、それが成長後の人生に悪影響を及ぼしたと思われるなど、昭和初期以前の価値観では『子供は若いうちに儲けろ』という社会的圧力があったのは事実だ。はるかAはドン引きしているが、彼女は21世紀になってから生まれた世代の若者だからだろう。
「こっちのはるかちゃん、実家にいるかなぁ」
「ご時世的に、家にいると思うよ。そろそろ高校を出てるか、行ってれば、大学生くらいになってると思う」
「わかった、ありがとう」
こうして、大人のぞみは生年月日から計算して、高校~大学くらい(現役時代に中1~2年であったのを考えると)に成長したであろう、自分の世界においての春野はるかを迎えに行くことにした。家業を継ぐにしても、21世紀の時代には、せめて大学くらいは出すという認識が当たり前になっている。昭和以前のように、中~高卒では、21世紀の世の中では、まともに扱ってもらえない。大学の全入時代というのは、そういうものだ。
こうして、大人のぞみは、都合のついた後輩の誰かを連れ、『オトナ世界における春野はるか(キュアフローラ)』に声を掛けるべく、地球にいったん戻ることにした。味方は多いほうがいいからだ。その一方で、スマイルプリキュアであったメンバーに声をかけないように決めるなど、気づかいも見せる。これは春野はるか達は『いざとなれば、戦う』という気持ちを持ち続けているのが確実なのに対し、星空みゆき達は『闘いには戻りたくない』気持ちになっているだろうという推測によるものだが、どっちみち、プリキュア経験者達は今回の動乱に複雑な思いを抱いているはずであった。