――聖闘士の持つ力は絶大であった。それはシンフォギア世界の騒乱をたちどころに収めたことで証明されている。それは異能であるので、素質さえあれば、誰でも小宇宙の覚醒の可能性があることがわかっている。小宇宙は別の異能を高位存在に通ずるようにする土台にも利用できるため、覚醒は望ましいこととされた。のぞみはZEROとの融合で、それが開花したが、その一部に『1000年女王』、とりわけ『雪野弥生』(後の『ラー・アンドロメダ・プロメシューム』。機械帝国の支配者であった)が生身の肉体であった時代に発揮したとされる、強大な超能力を有するようになっていたため、彼女の先祖に『1000年女王、ないしはその血縁関係にあったラーメタル人がいたのでは?』という推測がなされていた――
――のび太が宿題を終えた次の午前中――
「真田さんと佐渡先生からメールがあった。君の遺伝子調査の結果だけど……30世紀のGヤマトのデータバンクにある『ラーメタル人』の遺伝子配列と一致した。つまり、君の一族はどこかの先祖の代で、ラーメタル人、それも1000年女王、ないしはその血縁者の血が入っている。そうでなきゃ、君が普段から、マゼンタピンク色の髪の毛を持つ理由が見当たらない。もし、運命がどこかで変わっていれば、君の一族から、次代の1000年女王が出ていたかもしれない」
「1000年女王、か……話に聞いた事はあるけど……この写真の人が?」
「ラー・アンドロメダ・プロメシューム。地球名は雪野弥生。最終的には機械帝国の冷酷非道の独裁者として、星野鉄郎に倒される運命を辿る、悲劇の人。確認された限りでは、最後の1000年女王」
1000年女王。代々に渡り、地球を裏で統治していた存在。歴史上の女王、ないしは妃達の複数はラーメタルから派遣された行政官のような存在であった。だが、ラーメタルからの監視は緩く、それが歴代の女王達が『ラーメタルの侵攻に備えられた』理由であった。雪野弥生はその最後の正式な女王であった。
「その前任者の誰か、あるいはその血縁者が君の先祖と交わり、君の代でその資質が発現したんだろうな。そのきっかけがZEROとの融合だよ。鍛えれば、牡羊座の闘技も充分に扱えるようになるだろう。君は、ね」
のぞみは少なくとも、オトナプリキュア世界とA世界では、『ラーメタル人の遺伝子配列と一致している点がある』肉体を持っていたこと、それは転生後も有効である事、転生後は遺伝子の『長寿命』因子が元から発現しており、覚醒しなくても、100年は生きれただろう肉体寿命を持っていた事が判明したと、ドラえもんから説明を受ける。ラーメタル人は数万年単位の寿命を誇ったが、死すると、個人の精神状態が死骸に反映されるのか、たいていの場合は醜悪な姿になってしまう。だが、1000年女王経験者であれば、生前の容姿が保たれるという。これは雪野弥生(プロメシューム)が世界線によっては、『地球を救うために死することになる』ことで証明されている。
「1000年女王の想いを継げって事?」
「端的に言えば、ね。クレオパトラ女王も、卑弥呼女王も『プロメシュームを止めてくれる者』を求めているからね」
「この人の運命は決まってるんでしょ?」
「ああ。だけど、彼女が雪野弥生として、真に願っていたことは果たされていないままだよ」
後の世、機械帝国の冷酷非情の独裁者として悪名が轟くプロメシュームだが、生身の人間であった頃は、娘のメーテルとエメラルダスに近い気質を備えていた、『儚げな印象ながら、気高き女王』であった。世界線によっては『暗黒太陽に特攻して果てる』という彼女だが、多くの場合は、機械帝国の女王として悪行三昧の日々を送り、かつての想い人に酷似した少年に引導を渡されるという悲劇的結末となる。その結末は『歴史上の超重大事』である故に変えられないが、彼女が若かりし頃に抱いていた想いは誰かが引き継げる。
「誰かの想いを引き継いで、後世に残す。それは君もやってきたことだよ。雪野弥生も……第二の故郷である地球を守りたかった。故に、彼女にはその身と引き換えに、地球とラーメタルを救う世界線がある」
それは希少な世界線ではあるが、歴史上有数の独裁者として名を残すより、1000年女王として死するほうが幸せだったかもしれない。そして。
「まほろばにいた羽黒妖さん。彼女はおそらく、その世界線におけるプロメシュームの後継者だろうね」
ドラえもんは『超時空戦艦まほろば』の幹部である羽黒妖は『プロメシュームが世界を救った場合の世界線での1000年女王としての後継者』(故に、その世界線には、メーテルとエメラルダスは存在しない)という説も浮上していると話す(つまり、彼女の『雪野弥生』としての意志を継いだラーメタル人である)。
「君は後継者が出現しなかった場合の世界線では『最後のプリキュアチームのリーダー』、出現している場合でも、『後輩らの精神的支柱の一つ』なんだ。相応の犠牲は覚悟しなけりゃならないってことだよ」
「わかってるさ。その世界のあたしはたぶん……」
「君との思考の同一化を受け入れるだろう。大人になってる分、往時の力への郷愁が強いだろうからね。言い方はあれだけど、君の端末みたいなことになるよ」
「あたしは世界線によっては『力を失う』わけか……」
「それは君という存在の辿る世界線の内の太い枝のようなものだ。だけど、あくまでも、可能性が高い未来の一つに過ぎない。コージくんとそのまま結婚して、王妃になる世界線もあるだろうし」
多元宇宙論が実証されているため、のぞみの辿る可能性のうちの『オトナプリキュア』の未来が起こる可能性が高いことは証明されたに過ぎないが、人々は『超常的な存在が力を捨てる事』を許さないだろうという集団心理があるのもわかっているため、皮肉なことだが、歴代のプリキュアには『何かかしらの力を持つ者には義務が伴う』という、一種のノブリス・オブリージュが否応なしに課されているに等しいのだと、キュアドリームは自覚している。
「ノブリス・オブリージュ、か……」
「君の転生先でのノーブルウィッチーズの事を思い出したのかい?」
「うん。今となっちゃ、連中は可哀想なことになったけど、市民運動で王制や貴族を否定した連中がだよ、国家存亡の危機にたどり着いた答えが『ノブリス・オブリージュの精神』ってのはねぇ……」
「何事も行き過ぎると、コミュニティ自体の破綻を来たすのさ。ガリアは民主共和制の醜いところを見せすぎた。ノブリス・オブリージュの精神を忘れてね。故に、カールスラントはドイツ連邦の『共和制への転換』の施策を撥ねつけたのさ。だから、ドイツは意固地になって、軍部や貴族を『独裁の苗木になり得るから』と解体しようとしたんだ。結果、自分たちがしっぺ返しを食らったけど」
「日本もこれから?」
「公になった後、一部の勢力が扶桑の『戦後化』を目論むのさ。軍国主義の温床になるからって、財閥や華族、軍部の解体を喚き散らしてね。でも、戦艦大和と武蔵の存在や、自衛隊が全軍を合わせても、扶桑の一方面軍以下の兵力数しかない事が示されてからは黙り込んだよ。大和と武蔵の破壊力が最強なのは、自分たちがよく知ってるからね。仮想戦記のみたいに、ミサイルで戦艦の砲弾を継続的に迎撃できるわけでもないし」
日本連邦構想は2006年以降に公にされ、保守勢力が中心になって実現に取り組むが、2009年の政権交代で革新政党が日本の科学力と経済力を根拠にしての優位性を、子供のように誇示したことで交渉が暗礁に乗り上げ、交渉が再開されたのは、政権再交代後の2012年。実現は2016年頃である。日本は扶桑の富と資源で経済復興を急速になし得たため、以後は国内の反扶桑論を抑えにかかった。警察の反軍勢力を中心に『なんとか、扶桑の中枢部を電撃的に制圧できないか?あわよくば、昭和天皇に人間宣言を出させ、国を戦後日本同様の平和国家に変えてやる』という図上演習が行われていたが、扶桑には魔女がいる事、しかも、その中に歴代のプリキュアが含まれていたことで破綻し、図上演習を放棄した。
「その官僚のやらかしの後始末に、日本は血眼だった。国家としての断固たる処罰をしてみせ、君に賠償をしたり、転職を潰した代わりに昇進させたろ?昇進に反対があったみたいだ。警察系の官僚から『いくらプリキュアで、国家の英雄といえど、規定の勤務日数に達していない!だいいち、その士官は10代の若造ではないか』ってね。でも、総理大臣が黙らせたそうだよ。『扶桑の戦艦大和に砲弾をぶち込まれたいのか?』って」
「まったく、扶桑の警察とも仲悪いのに、自分たちで敵を作って、どーすんだろう」
「警察系官僚は軍人が英雄扱いされるのが嫌なのさ。自分たちの仲間が殺された歴史があるからね。災害に無力なのに」
「まったく、扶桑警察のトップが聞いたら、その場で殴ってるよ」
「仕方がない。日本警察は戦前の恨みを未だに引きずってるんだ。海保は商船学校上がりが作ったし、警察は組織ぐるみで国防を病気と思ってるんだからね」
「まったく……これだから、全共闘世代は……」
「あの世代とその前後の数世代は学生運動に燃えてたからね。体制側になっても、個人の信条はその時のままってのも多い。そういう連中が日本連邦樹立の下ごしらえのトラブルメーカーなんだよ」
「自尊心は無駄に高いのに、みみっちいことをするし、集団行動で厄介なのが全共闘世代なんだよなぁ。前世での学校へのクレーマー、モンペアの次に多かったなぁ…」
「仕方がない。あの世代は戦後第一世代だったから、ものすごく自尊心はある。だけど、やることが定年で無くなったから、下の世代にケチつけることで溜飲を下げるのさ。のび太くんも苦労する事になるよ、職場で」
「上司が嫌な奴とか?」
「うん。パワハラ上司ってやつ。もっとも、のび太くんはすぐに裏稼業が政府に知られたから、別の部署の勤務になるんだけど」
ドラえもんとキュアドリームの会話は段々と実務にまつわることに切り替わっていった。
「そうそう。君の定期検診、する前にこっちに来ちゃったろ?かれんちゃんに連絡しておいたから、彼女がこっちに来るよ」
「分かった。でも、どうやって?」
「軽い診察だけだからね。となりの部屋を使えばいい。のび太君のおばあちゃんが亡くなった後は、家を取り壊す日まで、ずっと空き部屋だから。医療関係の器具は揃えてある」
「手が早いね」
「骨川コンツェルンの医療部門が回してくれた。プリキュアになってるとはいえ、疲労はするからね」
元祖野比家の間取りは世界線によって違うが、概ね『大山ドラ』と呼ばれる系列の世界では、のび太の部屋の隣に『元は祖母の部屋だった』空き部屋が存在し、プリキュアや魔女たちはそこを『のび太の少年時代』での根城にしていたのである。この時点では『調とことはの部屋』という扱いだが、適宜、他のメンバーも使うのである。
――ドラえもんは野比家を離れた後は、メカトピア戦役などの功績でスカウトされた、地球連邦政府のエージェントであるが、公には『統合戦争で行方不明になっている』ので、内部の名簿に名前だけが載せられている。内部の人間でも、その情報は掴めないように、名前は載せられているが、年齢、プロフィールなどはすべて架空のもの。容貌も壮年のフランス人男性のものが登録されている。野比家にいた期間がどのくらいかは定かではないが、少なくとも、のび太が学生時代のうちは滞在していたので、かなりの長期間に及ぶのは間違いない。また、のび太が少年時代の内に、エージェントとしての活動をしていることにもなるので、実は活動経歴をたどるのが難しい人物なのだ。その日の午前10時に水無月かれん(キュアアクア)が来訪。早速、定期検診が行われた。
「すっかり、板についてきましたね」
「まさか、プリキュアの姿で仕事につくなんて、思ってもみなかったわ。私は現役時代から連れてこられたから、計算すると……まだ、10代なのよ?ひどかった時期のカンボジアじゃあるまいし」
「でも、日本じゃ、一人前の医者になるまで、26歳くらいまでかかるんですから、その時間を考えれば」
「確かに、指導医にへーこらしたり、医局の派閥抗争に巻き込まれて、お偉方を接待することになるよりは、軍医とはいえ、真っ当に医者をやれてるだけ、マシかもしれないわね。それに、治癒魔法も多少は習ったわ」
「みゆきちゃんを考えちゃいけませんよ。あれの子は天才ですから」
「まったくだわ。あの子、昔はあなたに輪をかけてのドジだったのだけど」
「本人が聞いたら、ハッピーシャワー浴びせられますよ?」
「言えてるわね」
星空みゆき。つまり、転生後の宮藤芳佳だが、彼女は角谷杏を間に挟んでの転生であった故か、現在では、角谷杏の要素が強まっており、かなりの策士になったという。また、宮藤芳佳の行動力に角谷杏の立ち回り術と頭脳が加わったため、宮藤芳佳の姿であっても、上層部と交渉してくるだけの胆力を見せている。また、キュアハッピーの戦闘力に宮藤芳佳の世界最高峰級の魔力が加わった状態なので、『魔女の中で最強の魔力』を存分に治癒に回せる状態である。致命傷であっても、一瞬で全快にまで治癒できるほどのパワーを誇るので、彼女が参加した戦線での死傷者は大きく減っている。しかし、たいていの治癒魔女の力では『救命の応急処置』が限度なのだ。これは502統合戦闘航空団出身のジョーゼット・ルマール(ジョゼ)と宮藤芳佳の治癒力の差で証明済みである。
――ちなみに、彼女は(戦局の推移から)自由ガリア空軍義勇兵の教官になり、64Fには籍を置いているが、前線勤務では無くなっている。世界最高峰の治癒魔法の使い手である芳佳や、21世紀以降の高度で洗練された医学を教育されている水無月かれんがいる状況では『足手まとい』だと感じ、極天隊(教育隊)勤務を申し出、同隊付きの教官を勤めている――
「でも、みゆきと私で、医療業務がだいたい済んでしまうのよねぇ。自己治癒能力があるから、戦場での多少の怪我は気にしない幹部が多いし」
「だから、元502の子が引け目を感じちゃって、極天隊に異動を申し出たんですよ」
「でしょうねぇ。あの世界の通常医療は時代相応の水準だから、私達がわかるものがわからない。そのことで余計に引け目を感じてしまったのかもしれない」
「おまけに、みゆき(芳佳)ちゃんが本気出せば、致命傷であろうが、一発で全快。普通の治癒魔女にはできっこない芸当です。あんなの見せつけられれば……」
「治癒魔法学校に通った経験があったり、固有魔法を持つのなら、才能の差を余計に感じるのかもしれないわね」
と、夢原のぞみの状態に一旦戻り、キュアアクアの診察を受ける。結果は『プリキュアになっている状態が続いた効果か、肉体にあまり疲労が溜まっていない』という事だった。
「おそらく、変身で肉体の生命活動が活発化されるから、肉体が10代半ばの状態に戻っていると思うわ。現代医学からは、そう言いようがないわ」
「わかりました。ありがとう、アクア」
瞬間、キュアドリームに戻るのぞみ。
「診察終わったかい?ママがごはんだって。アクアはどうする?」
「電子レンジを使わせてもらえるかしら。コンビニのお弁当を買ってあるから」
「あ、アクア。のび太君のお母さんに会うから……」
「自己紹介が終わったら、白衣を脱ぐわ。普通にあなたの出身校の先輩ってことで……」
「白衣着てるから、医療従事者ってのはわかるでしょう。…たぶん」
キュアアクア(水無月かれん)は変身後のコスチュームの上から、白衣を重ね着をしている状態である。元から大人びている雰囲気なので、普通に成人ということで通るだろう。
「まさか、プリキュアの状態で外科手術までするとはね」
「でも、10代の有り余る体力でできるんですから、大人になってから、同じことをするよりは消耗しないはずですよ?反射神経も絶頂期のそれだし」
「確かに」
かれんは現役時代の時点(15歳)から連れ出され、実戦の現場で医療従事者として鍛えられた。一時はアルカディア号にいたため、以前よりずっと『気を抜ける』ようになっている他、キャプテン・ハーロックや有紀螢(アルカディア号の戦闘班長。地球連邦軍の在籍経験もあり、最終階級は大尉)に戦闘術を教えられたため、戦闘力も増している。別次元に『医者の仮面ライダー』(仮面ライダーエクゼイド)がいるので、『現在進行系で本業が医者である現役プリキュア』がいてもいいはずである(引退後になった例はある)。
――かくして、キュアドリームはうまいこと、キュアアクアを『学校のOGで、自分の先輩』であると、野比玉子に紹介し、一緒に食事にありついた。流石にドリームも精神的には成人後の状態かつ、職業軍人として生きてくれば、現役時代より胆力がつくのである――
「あなたたちは、綾香さんとどういう関係なのかしら」
「数年来、お世話になってるOGなんですよ。先輩は自衛隊にいくそうで……」
(口が回るようになったわね、のぞみ。そうでないと、教師してなかったわよね)
ある意味、嘘はついていない。世話になったというのも、先輩であるのも正しい。違うのは『軍隊で出会った』ことだけだ。のぞみ達が世間の脚光を浴びるのは、2010年代後期の事。この時代に彼女らが現れたところで、歴史への影響は『プリキュアのアニメとしての誕生を確実にする』程度だ。1000年女王であった雪野弥生(後のプロメシューム)が在任中に起こった戦いも公的な記録には残されていないが、1000年女王の存在だけは言い伝えが残されていたように。自分たちの存在が認知される時代にしても、2007年以降。歳)から連れ出され、実戦の現場で医療従事者として鍛えられた。一時はアルカディア号にいたため、以前よりずっと『気を抜ける』ようになっている他、キャプテン・ハーロックや有紀螢(アルカディア号の戦闘班長。地球連邦軍の在籍経験もあり、最終階級は大尉)に戦闘術を教えられたため、戦闘力も増している。別次元に『医者の仮面ライダー』がいるので、『現在進行系で本業が医者である現役プリキュア』がいてもいいはずである(引退後になった例は複数ある)。そのようなわけで、キュアアクアの業種は軍医なのだ。1000年女王であった雪野弥生(後のプロメシューム)が在任中に起こった戦いも公的な記録には残されていないが、1000年女王の存在だけは言い伝えが残されていたように。自分たちの存在が認知される時代にしても、2007年以降。つまり、自分たちがプリキュアになった年だ。
「あなた達も?」
「私は先輩に誘われているので。水無月先輩は医官コースに行くそうです」
「それで?」
「今は昔からの知り合いの病院の手伝いをしています。両親は音楽関係者ですが、私は医者を目指していますので……」
と、元の生徒会長らしく、玉子へでっち上げた話をぬけぬけと話すキュアアクア。嘘も方便だ。
(気が咎めるわね)
(でも、あたしたちがプリキュアだってわかるの、ここから10年近く後なんだから、しょうがないって。それに、平成の次の令和のプリキュアなんて、あたしたちが現役の頃に赤ん坊の計算なんだよ?はるかちゃん……キュアフローラも、2007年時点で五歳……)
(プリキュアにならなければ、同年代として会えないってことね……)
(そういう事だね)
のぞみとかれんにしても、実はお互いに異なる世界の出身であるので、お互いの記憶に違いがある。大まかには『同じプリキュアチームである』が、辿ってきた出来事に違いが多い。同じプリキュア5のメンバーであっても、異なる世界線から集められた事がわかる。のぞみは人生が一度終わった後に転生したが、かれんは『後輩たちがあれこれの手を尽くして、強引に現役時代の時間軸から連れ出した』という経緯で戦線に加わった。その事もあり、B世界があれこれ大変なことになるのだ。
――食事の後は居間でのんびりと、2000年当時の番組を楽しんでいたドラえもん、ドリーム、アクアであったが、番組が突然切り替わり、アナウンサーが臨時ニュースを伝える。
『えー……ただいま入ってきた情報によりますと、国連軍特別部隊『地球守備隊』充てに『大ショッカー』なる組織からの宣戦布告がなされました。30年前に猛威を奮った、ナチス残党の結社であったショッカーの残党だと思われ……』
80年代の『機械帝国ブラックマグマ』や『ベーダー一族』の襲来にあたり、それまでの『イーグル』を発展的解消し、後継となった部署が『地球守備隊』であった。サンバルカンやチェンジマンを管理運営する部署としても知られ、2000年当時には休止状態であった。
『全国の放送局に、大ショッカーからの宣戦布告のビデオメッセージが送られてきた模様です』
と、大ショッカーの宣戦布告の映像が流される。玉座らしき椅子に仰々しく座る暗闇大使、その傍らで護衛を務める三影英介/タイガーロイド、アポロガイスト(人間態)……錚々たる巨悪だ。その彼らに臣下の礼を取る壮年の年齢かつ、如何にも鍛えられた体を持つ女性がいた。明らかにショッカー系列の組織にはいなかった面構えだ。
「あ!!あいつは……嘘だろ、ベーダー一族の……アマゾンキラー!?ベーダー一族の女傑……暗闇大使め、生き返らせていたのか!?」
ドラえもんが腰を抜かす。本来、ショッカーとベーダー一族は関係のない組織のはずであった。だが、暗闇大使は『太陽戦隊サンバルカンと互角に戦った』実績を評価したのか、配下に加えていたのだ。
「あ、嵐山長官から聞いた事がある!バルカンベースを一度は爆破したっていう実力を誇った、ベーダー一族の行動隊長の一人!」
「強敵だよ。たぶん、あいつ一人で並のプリキュアチームをまとめて相手取れる。サンバルカンと互角に戦えたっていうからね。う、うぇ!?ヘドラー将軍もか!?」
ベーダー一族を担った二人が同じ場所で暗闇大使に臣下の礼を取る。ある意味では、所属の垣根を超えた悪の共闘だ。
「マドーのガイラー将軍……、フーマのヘスラー指揮官まで……あ、宇宙忍デモストまで!!にゃろうめ、ヒーローと互角に戦えた連中を集めてんのか!?」
悪態をつくドラえもん。
「これだけの陣容を集めたのは、我らに今一度の機会を用意してくれたのか、暗闇大使?」
「そういうことだよ、マッドガルボ」
と、暗闇大使がニヤリと微笑う相手は『マッドガルボ』。かつて、機動刑事ジバンを最後まで苦しめた『バイオロン』の一体。意外にも、性別自体は女なのか、怪物じみた風貌ながら、声は女性のものである。
「嘘だろ、こいつまで生き返らせてるのか、マッドガルボ……最強のバイオロン」
ドラえもんも言葉を失うほどの陣容であるのは、声の調子でわかるプリキュアたち。いずれも、ヒーロー達を苦しめた幹部級の実力者達であった。
「諸君のお手並みを『かの方』に示す絶好の機会。そういう事だ」
「ジェネラルシャドウ……」
デルザー軍団の雄にして、仮面ライダーストロンガーの宿敵『ジェネラルシャドウ』も現れる。そして……。
「……フ…。俺はRXと戦ええば、それでいい」
「そう焦るな、シャドームーン。プリキュアという小娘共と戦ったそうだが?」
「あのような小娘たちなど、俺の敵ではない。だが、今一歩のところで、輝煌帝を纏う青二才にしてやられたがな…」
「ほう、輝煌帝。伝説の鎧……実在していたか」
シャドームーンもいる事から、いずれも、各組織の最高幹部級の実力者らが集められている事がわかる。
「最強格だけど、勝ちきれたのが居ないんだよなぁ、詰めが甘いというか、なんというか」
「でも、名前聞いただけで、そんじょそこらの連中は裸足で逃げ出すよ?」
「まぁね。現役時のプリキュアの力じゃどうにもできないレベルの連中がズラリだからねぇ。」
「シャドームーンには、向こうのあたしの借りがある。今度会ったら、敵を取ってやる」
「意気込むのはいいけど、私の世界のあなた自身とちゃんと話し合うのよ?」
「はぁ~い…」
と、キュアアクアに一言注意され、肩を落とすキュアドリーム。戦闘は腕が鳴るが、別の自分のメンタルケアというのは厄介事らしい。実際に、のぞみBは光太郎(ブラック)の力になろうとしたが、光太郎(ブラック)は突き放した。彼はゴルゴム、ひいては世紀王同士の宿命に第三者が介入するのを強く嫌うと同時に、現地の少女達を自分の抱えている出来事に巻き込みたくはなかったのだが、その態度が却って不味かった。シャドームーンとブラックの戦闘に強引に割って入ったのぞみBであったが、世紀王であるシャドームーンの力の前では、現役時代のキュアドリームなど、『恐竜の前の蟻』に等しかった。それを自分、コージ、RXで救った。その出来事はAとBの間に横たわる圧倒的実力差が証明された出来事でもある。
「こちらのあなたと揉めてなかった?あの子が目を覚ました後に」
「うーん。大蛇薙の焔を使ったからだと思う。あたしは草薙流古武術使えるから」
「それが原因じゃ?」
「あれを使えるのは、たまたまなんだけどな。転生先の家が継承家だっただけだし」
と、些か自覚がないが、ヤマタノオロチを討伐した一族の末裔に転生したのは事実であるキュアドリーム。
「りんちゃんの領分を確かに犯してるけど、現役時代の力ばかりに固執してもいられないのは本当だから。だから、正式に継いだんだ。あたしにとっては……りんちゃんとの友情を忘れないようにするための灯火でもあるから」
草薙流古武術を継承した理由の一つは、りんの記憶を戻すためであった。そう明言する。錦は本来、自分が継ぐことは考えておらず、末妹の疾風にさっさと継承者の地位を譲る事を考えていたが、錦の立場に置かれたのぞみが最終的に継いだ。タウ・リンへ引導を渡す、最後の一撃も草薙流古武術によるものだし、キュアミラクルの金魔法による氷魔法を尽く打ち破り、心胆を寒からしめた力でもある。
「草薙流古武術はヤマタノオロチを討ったとされる剣の名を持つんだ。焔を扱うモノの中じゃ、最高峰に近い。その力は、キュアミラクルの金魔法による氷も寄せ付けない。その力をモノにした以上、下手な炎のプリキュアよりも、よっぽど強力な炎を扱えるよ」
ドラえもんも頷くように、錚々たる巨悪に対抗するには、出来得る限りの手段を持つに越したことはない。大ショッカーは既に、自らの系列組織以外の巨悪を蘇らせ始めているのだから。自分たちが西暦2000年にいるのを分かっていて、わざわざ大仰な宣戦布告をする。暗闇大使のねちっこい性格が表れているともとれる。
「大ショッカーめ、来るなら来い!プリキュアに戻った理由があいつらを地獄に送り返すためなら……あたしは阿修羅にも、なんでもなってやる!」
史実では敵を倒すことにこだわりはなく、『和解できるのなら、和解したい』という思考も持っているのぞみだが、のぞみAは弱肉強食の『魔女の世界』と『未来世界』で軍人をしているせいか、流竜馬や不動明の影響が濃い『容赦をしない』(情けはかけるが)思考に変貌している事、自身が以前と明確にメンタリティが異なる存在になりつつあるのを自覚しているのか、阿修羅と表現するほどに戦い抜く事を宣言する。これは現役時代と異なり、相手が『地球人類を滅ぼすのに何の躊躇いもない』集団であることから、話し合いなど通用しない事を分かっているからだ。のぞみは世界線によっては、二度は敵ボスと和解するのだが、大ショッカーは全滅あるのみというのはわかる。歴代ヒーローが戦ってきた幹部らを集めているのは、ヒーロー達を一挙に倒すため。ひいては世界征服。陳腐な題目だが、彼らは本気でするつもりである。その大元となるのが、世界征服を目論んだ『ナチス・ドイツ』であるなど、歴史の皮肉だろう。その彼らの防波堤にならんとするのが、ナチス・ドイツの同盟国であった日本で生まれた者達であるというのも、かつての日独の関係を考えれば、これも『運命の皮肉』であった。