プリキュア達は個人差があるが、転移/転生後に能力と記憶が覚醒すると、数日~数ヶ月以上の幅で、変身を解けないことがある。これは能力が転移・転生後の身体に馴染むまでのクールタイムのようなものであった。感覚を掴み直し、新たに戦うための準備期間のようなものと考え、その間に現役時代の感覚を取り戻していった。その後も、プライベートの時間をなんとか捻出するため、プリキュアの姿を余暇でも通す場合が多くなった。のぞみは(『本物のプリキュア』と認知された騒動以後は特に)公私を問わず、ドリームの姿を通すことのほうが多くなったが、それは騒動で『本物のプリキュアが軍人に転生していた』ことが知れ渡り、騒動が長引いたからである。
「上に泣きついて、あれこれ抗議してもらったけどさ。結局、転職は『なかったことにしてくれ』だよー?ふざけやがって」
「鬱憤溜まってるねー」
「たり前だって。先輩達にあれこれ頭下げて、実家の姉貴(錦の姉の小鷹のこと)に動いてもらったのにさ、政治の取引でパーだよ?」
「でもさ、いくら扶桑でのんびり教師するったって、軍人上がりはこれから嫌われるから、士官続けたほうがいいって」
「ふんだくってやったよ、補償金。お上にも勅を出してもらってたのに」
「で、件の連中の言い分は?」
「天皇が、一介の将校に便宜を図るはずがないって思ったからだってさ。事の次第を知った重臣たちが抗議したんで、途端に青くなったんだそうだ。アホかっつーの」
騒動は扶桑への侮蔑問題にもなりかけ、戦争の一歩手前になっていた。昭和天皇が問題の平和的解決を望んだ事は日本側を安堵させたが、日本に全面的な非があるため、彼らは扶桑の皇室に全面的に謝罪した。大臣は優に三人ほどはクビが飛び、関係部署の事務次官以下、トップ3までが辞任する事態にまで至った。ダイ・アナザー・デイの戦功第一であり、かの『プリキュア5』の中心戦士である将校の転職志願を一方的に握り潰したからで、結局、日本はのぞみに『危険手当等を数倍の金額に増額して、大佐までの早期昇進を約束するから、これ以上、政治的に荒立てることはしないでおくれ』と嘆願。事実上、転職を諦めさせる代わりに、『軍で好きにしていい』という趣旨の取引であった。のぞみも転生先の家族に迷惑はかけられなかったので、それをやむなく承諾。軍で高い地位を持つに至った。
「それで、少佐に上げるように?」
「転生先の家族に迷惑かけられないし、何度も転生してる先輩たちに比べりゃ、あたしのことは些細なことだからね。だから、あたしらは自動的に士官扱いになったわけ。1940年代の頃、大卒はトップエリートだしさ」
「21世紀の大卒はそんな偉くないけどね」
同じ時期に転生し、同じ釜の飯を食う仲となったキュアピーチ(桃園ラブ)が言う。この会話がなされている時の時間軸は遠征の合間のつかの間の休暇の頃。二人がいるのは、ススキヶ原に2017年頃に開店した、裏山のレストラン(学校の裏山の頂部を一部切り開いた後に建てられたホテルのレストラン)だ。
「で、プリキュアの姿で食事してるのは?」
「このほうが公務扱いで、経費落ちるんだよ。それに、普段の姿だと、却ってプライベートの時間取れないし」
「大変だよねぇ。全部がまるっと晒されてる世界で暮らすのも。あたしも、本当は芸能活動を主にしたいんだけどさ、日本の法律的にはNGだしさ、戦闘行為。だから、あたしもそのまま。ま、のぞみちゃんにつきあうためだけどさ」
「ほんと、ゴメン」
「何、長いつきあいだしさ、あたしら。今更だよ」
「大人のあたしのいる世界の調査はどうなの?」
「それがさ。そこのココが不義理やらかしてさ……」
「え?」
「5~6年も放置プレイかまして……」
「あたしだったら、アトミックサンダーボルトぶちかましてるわー……そんなことされたら」
「安心して。はーちゃんがサンダーブレークとスカーレットニードルでお仕置きするってさ」
「まったく、ウチのダンナと偉い違いだよ」
「仕方がないけど、そこのココはのぞみちゃん達の『解放』を望んだ。だけど、それは本人たちの望まない事だった。プリキュアとして生活すると、以前通りの暮らしなんて、もうできなくなるからね。ココはそこに気づかなかったのかな」
「エターナルを倒しても、悪の組織が消えるわけじゃないし、悪意ってのは、善意からも生まれることはあるからね。万一に備えるって思考がなかったかもしれない。大人のあたしは折角の若い時間をフイにしちまったことの後悔もあるから……」
「それで、あなたの代行を引き受けたんだと思うよ。はーちゃんにはエグいお仕置きを頼んどいたら?」
「乙女座の技も使って、恐怖のどん底に落としといてってメール打っといた。女にとっての18~25をパーにしてくれたことのお礼参りはしないと…」
と、大人の自分がせっかくの青春の後半期をフイにしたことは腹に据えかねたらしく、ことはに『おしおき』を指令していたのぞみA。ことははこの後、対面した後、小々田コージ(オトナ世界)を恐怖のどん底に突き落とすことになる。後日、『鳳凰幻魔拳を拷問目的に使った』と返事が来たが、流石にエグすぎる使用法であるので、ことはも相当に怒ったことが窺え、同時に『鳳凰星座の一輝の技を覚えた』ことが認知されたわけだ。
「乙女座は五感剥奪だよ?元は善人なんだし……」
「幻朧魔皇拳は強すぎるし」
「確かに。で?」
「それで、その後は鳳翼天翔?」
「たぶんね。幻魔拳使えるんなら、あれも」
「ま、一人の女の子の一生を狂わせた以上は……」
二人は辛辣だが、お互いに現役を終えた後に『大人』(能力は持ったまま)として生きた記憶持ちである故か、どことなく世知辛さも感じさせる。
「あたしはこれから、一人の女の子の夢を果たさせるように仕向けなきゃならない。この間、正式に依頼された。その世界に年単位で滞在することになるよ」
「入れ替えロープ使うんだね。運動神経悪いっしょ?」
「プリキュアの状態で入れ替われば、素の運動神経は反映されないよ。まぁ、訓練である程度は改善されたけどね」
神童も、大人になれば普通という常識を明後日の方向に吹き飛ばすこの発言だが、プリキュアとして活性化された状態の運動神経を使わければ、ウマ娘としての生活は出来ない。そういう結論であった。
「入れ替わる子の体は波紋法であらかじめ治療しておく。身体能力のピークが短いから、内面のガタが来てるだろうし」
「その上で、ナノマテリアルを?」
「ウマ娘ってのは、ピークの期間は長くとも数年らしいからね。あれを使わないと、生物学的な意味でのピークに戻せない。内面の損傷の蓄積が表面化し始めるのが、ピークアウトのように思われるのでは?ってこと。波紋法も併用してみる」
そうして、この後にのぞみAはブライアンと対面した後、23世紀の最新医療と波紋法を併用しての治療を施した上で、入れ替えロープを使ったわけである。また、のぞみがブライアンに選ばれたのも理由があり、夢を司るプリキュアであったこと、『三代目』(三冠をシービーからカウントすれば)であることなど、ブライアンが否応なしに背負わされた、世間的な期待などと合致する要素が多かったからでもある。それから、ウマ娘世界で二年ほどが経過し……。
ウマ娘世界では、ディープインパクトが今をときめくウマ娘となりつつも、海外遠征に乗り気ではない(ゴルシの言う通り)ことが世間に衝撃を与えていた。協会は『三冠の次は海外!!』と薦めているが、ディープインパクト自身は乗り気ではない。これは自身の前世由来であるので、協会に非はないが、彼らは『せっかくの海外遠征に足る実力者が出たのに』と大慌て。これにより、サトノ家が前々から進めていたプロジェクトが急速に具体化し始める。スピードシンボリやシリウスシンボリは『実力不足』であったし、ルドルフは行った先で『限界』を迎えた。そのため、ちょうど絶頂期に入りつつあるディープインパクトに行ってもらいたいのだが、ディープインパクトをしても、勝利が不可能であったのが、凱旋門賞である。日本馬が2020年代に至っても、手が届かぬ高み。だが、その凱旋門賞も相対的な魅力の低下で、2020年代には以前ほど目指す馬はいなくなっている。これはロンシャン競馬場の問題が多分にあり、サトノダイヤモンドは出走自体が『ピークアウト』のきっかけになる可能性が大きいなど、脚を『潰す』可能性も大きいため、出走を避ける動きも出ているなど、ウマ娘世界でも、避けられ始めている。これは新興のドバイのレースの賞金が凱旋門賞と比較にならぬ高額であるからで、2020年代以降に顕在化してくる問題である。
かくして、のぞみのウマ娘ぐらしもなんだかんだで三年を迎えようとしていた。久方ぶりの学生生活も悪くはなく、学業成績も(転生後の陸士卒の頭脳を用いたため)良好である。また、聖闘士の闘技を用いて、暴漢を制圧する事もある。普通の人間やウマ娘では視認できない速さ(例として、ヘビー級ボクサーの拳はかなりのものだが、それでも、一般人に見えない速さではない)のものだ。
「夢原氏、その闘技は黒江氏から?」
「そういうことになるかな。ウマ娘の動体視力だと、白銀聖闘士までは見えそうだから、黄金の闘技を使えって言われてね。あからさまに攻撃してるビジュアルだと、問題になりそうだし、光速なら、この時代の科学レベルだと撮影出来ないっしょ」
「私達は時速数百キロくらいは、普通に見えますから」
「あなた達なら、普通の車に轢かれそうな子供を普通に助けられそうだよね」
「普通に止められる者もいますからね。おそらく、カワカミやジェンティルなら、ダンプカーの突進でも、片手で止められるかと」
「普通にすごいって」
ルドルフは平均値は高めだが、パワータイプではない。そのため、自分に近い実力の者と競り合うと、負ける場合がある。最も、当代最強のルドルフに同世代で競り合える者はカツラギエースとギャロップダイナのみであったが。
「私は同世代の二人にしか、負けた事はありませんでした。後輩のミホシンザンもぶち抜きましたからね。海外で負けたのは、この脚が限界を迎えたからです。今となっては『老いぼれの戯言』と言われそうですが」
「あなたに匹敵する戦績を挙げたウマ娘、10人もいないでしょうに。ブライアンちゃんも、本来は五冠なんだし」
「本来はひ孫や玄孫の世代である者と同じ時代に生きている時点で奇跡といっていいでしょう。ですが、卒業を待つ身な以上、走りを見せる機会がないのが寂しいのですよ」
「もうしばらくは高校生相当の立場なんだし、シンザンさんにかけあってみるよ。社会に出たら、一歳でも上だと、相手に敬語使わないといけなくなるし、失礼だからさ。それも面倒だけど、大人の世界で過ごすにゃ、相手に下手にでないといけないよ。家名に頼ってたら、昔の華族みたいに、周囲に掌返しされるよ」
「ええ。わかっています」
のぞみAは就職済みの身の上であるので、ルドルフの振る舞いに釘を差しておく。シンボリ家は名家だが、分家筋のクリスエスが引退すれば(競走者として)後を継ぐ者はいなくなる。そうなれば、シンボリ家も斜陽の時代に完全に突入する。メジロ家が名家として遇されるのは、マックイーンたちの世代やその親たちの功績によるもの。その恩恵を受けた人間がいなくなれば、いずれは掌返しを受ける。かつて、国家的庇護が失せた後の旧・華族たちのように。
それに触れたのは、華族の存廃問題が、扶桑で急速に社会問題化したからだ。『華族の自然経過による身分解消』を目指す者たちの研究がなされていたが、皮肉なことに、強引に身分を解体された日本側での家宝の散逸や名家の断絶などの悲惨な顛末が伝わることで、その改革案はあっけなく、検討段階で霧散してしまった。また、昭和天皇が堂上華族(旧公家)を特別視していたことの判明は、扶桑皇室全体を揺るがすスキャンダルになってしまう事から、結局は華族制を百年単位の時間経過で『形骸化』させていくしか、(皇室の解体や追放などの)政治トラブルを避けた上で、できるだけ穏便な形で、華族身分の特権を解体する流れに導く『解決策』はなかった。黒江たちのように、元は士族・平民ながら、国家に抜群の功労を成した者たちへの永世華族化に代わる褒賞の問題が新たに発生したからでもあり、そこは華族を表向きの上流階級とした故の社会システムの限界であり、貴族階級が欧州で力を維持してしまい、ガリアが民主共和制の害悪を具現化したような四散ぶりを見せてしまった故の誤算であった。故に、ガリアの施政者らの権力闘争と、派閥抗争で、彼らは民主共和制の信奉者らに恨み節を吐かれ続けることになったという形で具現化していたからだ。
「これが某ブリテンの国なら、組織の衰退も楽しむものだ、なんて言うかもしれないけど、現実問題、名家が傾けば、組織の統制が失われてしまう危険がある。過去の歴史での大国が滅んだ後の民族紛争の激化のように。何らかの手を打たないと」
「ですが、今のメジロやシンボリに……有望な若い者は……」
そこまで言いかけたルドルフだが、言葉に詰まる。気まずくなったからだろう。
「あなたのところに、シンボリクリスエスという若者がいるでしょう?その彼女に現役を長めに勤め上げてもらって、その間に事業の方向転換を進めるしかないよ」
「夢原氏、我々『シンボリ』には、クリスエスがいます。ですが、今のメジロに有望な次世代の若者が残っていますか?」
「メジロベイリー。それがメジロ最後の大物だよ。彼女を育てて、事業の転換の時間を稼ぐ。それしか、メジロが今後もレースで食っていく手段はないよ」
この当時、シンボリ家は分家筋のシンボリクリスエスが台頭することによって、家業の継続の希望が出たが、メジロは(現在の現役世代の引退した後に)家を守り立てられるほどの実力を備える天才が現れる可能性が低くなっている。家の衰退が現実問題となったことに、マックイーン、パーマー、ライアンの三羽烏、その下の世代のドーベル、ブライトは強い危機感を共有している。マックイーンらが現役であるうちに、事業形態の転換を図る。メジロの主として君臨してきた『メジロアサマ』はディープインパクトの台頭した時期には、残念ながら、病魔に侵された。その娘であるメジロティターンは病弱であり、当主争いが激化しそうと囁かれているが、アサマは既に(ゴルシの手引きで)遺言を書き終えており、嫡孫のマックイーンを後継者に指名し終えていた。 もし、そのマックイーンに不測の事態が起こった場合、妹分のドーベルが当主を継ぐべしとも添えて。
「できるとお思いですか?」
「やるしかないよ。メジロはご当主の遺言があっても、親類縁者がゴタゴタ起こすのが目に見えてる。遺産相続ってのは、そういうもんだ。あたしも、前世でそういう目にあったから、あなた達が羨ましく思えるよ」
のぞみAは、前世で絵本作家として成功していた父親の遺産相続の際、親類縁者の骨肉の争いを目にしたらしく、後継者が既に決まっているシンボリ家が羨ましいようだ。
「私が『七冠』かつ、シンザンさんの御息女を叩きのめしたからですよ。気の毒なことをしたと思っています」
「栄枯必衰とよく言うけど、史実を考えれば、マックイーンちゃんは最高の遺産を遺したよ。オルフェーヴル、それとゴールドシップ。サンデーサイレンスとマックイーンちゃんの最高傑作と言っていい。名が消えても、血は残る。そのいい例だよ。だけど、レース界全体の状況を考えると、世間に名が通った名家のメジロに消えられたら、困るんだよ。なんだかんだで、欧州は『成り上がり』を見下す空気が残ってるからね」
「お仕事でご体験を?」
「ああ。もう随分と前のことだけどね」
自分達がダイ・アナザー・デイの際に、欧州の人間らに(多少なりとも)不愉快な扱いを受けた経験からか、『何かしらの権威の誇示』には思うところがある、のぞみA。それを考えれば、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが黒江たちにしたことはマシな部類。それに軽く触れた。最も、すぐにのぞみAは『逆に畏怖の対象になった』が。
「政治の話が絡むから、あまり触れないようにしてる。だけど、日本の超ヒロインだってんで、連中の鼻を明かしてやったのは事実だよ」
その証拠として、ダイ・アナザー・デイの際に撮影された写真を見せる。それは『前後を一刀両断され、見事に擱座した、M26重戦車』の前で剣(超獣戦隊ライブマンのレッドファルコンから借り受けた『ファルコンセイバー』。自前のフルーレは戦闘向けではないので、予備のものを借りていた)を地面に挿して、ポーズを決めている自分(キュアドリームとして)のものだ。
「この剣は誰から?」
「自前のはフルーレで、戦闘向けじゃなくてね。超獣戦隊ライブマンのレッドファルコンさんから、予備のを借りて、チャンバラに使った。サイズも手頃だったから。色々試したけど。のび太くんが交流があったとかで、呼んできてくれたんだ。先輩の要請で」
「随分と懐かしい戦隊をお呼びになられたんですね、野比氏は」
「ライブマンの皆さんが通ってた母校の再建に資金援助したんだって。詳しくはまだ聞いてないけど。結構、市井に紛れてるヒーロー多いからねー。あたしらも、人のこと言える立場じゃないけど」
ルドルフが現役を引退した頃(競走馬として)に活躍していたスーパー戦隊は光戦隊マスクマンと超獣戦隊ライブマンであり、その入れ替わりの時期であった。その関係で、超獣戦隊ライブマンのことを知っていたらしい、シンボリルドルフ。
「私が前世で引退する時期の戦隊ヒーローですね。テイオーの生まれる頃でもある……。そう考えると、本来、私やテイオーが現役である時代は昔のこと……。そうなりますね」
「そう考えると、この世界は『夢の舞台』のようなものかもね。本当なら、あなたはオルフェーヴルのことは知る由もないはずだし」
「ですな」
ルドルフは子供時代はテイオーによく似た性格の『やんちゃ坊主』だったらしく、スーパー戦隊シリーズの知識も人並みにあるらしかった。2010年代後半以降の時代の若者からすれば、昭和の終わりに活躍していたヒーローたる、超獣戦隊ライブマンは古典のようなものだからだが、ルドルフは競走馬・種牡馬として、その時代を生きた。その記憶から、彼らを知っていたのだ。
「私だってさ、まさか、自分の現役時代から20年も昔の戦隊ヒーローのモノホンと会って、戦闘の手ほどきを受けるなんて、思ってもみなかったよ」
プリキュア5の現役時代は2007年~2008年。超獣戦隊ライブマンはその20年も昔の1988年。本来は(現役時代の姿では)出会うはずはない年齢差がある。だが、いつの時代も戦いの基本は同じ。その理屈により、黒江やのび太の紹介で、レッドファルコン=天宮優介との面識を持ったのである。
「下手すれば、自分の親より上の世代の人に教えてもらうことになるから、緊張しちゃってさ」
「私が最盛期のシンザンさんやセントライトさんに教えを乞うようなものですね」
「そういう感じかな」
のぞみAが戦闘面で強いのは、歴戦の勇者である、歴代のヒーローの教えを受けたためでもあった。彼らの威光は『魔女の世界』でも効いた。その一例であった。
「あなたがテイオーを教えることに妬みを感じる連中がいたように、あたしらも大変だったわけ。暇な時に、この続きを話すよ。波乱万丈って感じで数年過ごしたから、ネタはまだまだあるし」
話のずれを修正しつつ、写真をしまう。
「写真は何のために?」
「騒動の後、日本の役人連中に怪訝そうに見られたから、ドラえもん君に頼んで、現像してもらって、証拠として見せるために持ち歩いてんだよ。連中ったら、子供でもわかるもんを知らない『世間知らず』が多くてね……」
ブライアンの姿でぼやく、のぞみA。騒動の際に、自身の名誉回復に一役買ったのがインターネットメディアであるように、彼女とて、2010年代後半以降の時代では『界隈では有名だが、世間的にはどうか』という塩梅の知名度のヒロインであった。その名誉回復に一役買ってくれた組織の一つが、ヒーローユニオンであったと明確に述べる。認知度も彼女とも桁違いのアカレンジャーやビックワンなどの大物が扶桑の重臣らを引き連れて、あれこれ動いてくれたのだとも。
「アカレンジャーさんやビッグワンさんには、頭を向けて眠れないくらいの恩があるんだ。賠償金の策定の時に、裏で圧力かけてくれたし」
「役人は青ざめたでしょうね」
「たぶん。ゴレンジャーやジャッカーは国連軍の特殊部隊の実戦部門。その隊長が直談判してくるんだから」
忘れられがちだが、秘密戦隊ゴレンジャーやジャッカー電撃隊はれっきとした『国連の特殊部隊』であり、その更に実働部門。彼らの意思は国際連合の意思も同然なのだ。更にいえば、捜査権も特別に与えられた『特別な世界的エリート』でもある。ドラえもん世界の日本政府が急に扶桑との協調に舵を切った理由には、彼らの存在があったのだ。