結局、扶桑軍の軍病院は満杯の状態が継続しており、その半数は精神をやられた者たちであった。その多くが下士官~佐官級で、現場の中核を担う層であった。日本はその穴埋めを自衛官で賄うことを約束させられ、Gフォースはそのための部署と揶揄されていた。最初は防衛省の厄介者を口減らしで送っていたが、扶桑の高学歴の熟練兵の減少に伴い、自衛官の派遣数は増大していった。さらに、扶桑の徴兵を禁じ、軍隊に入ることでの社会的メリットを減らしてしまった故に、全軍の志願数が目に見えて低下。その埋め合わせを求められるのは当然であった。日本政府は『軍人の法的な特権は禁じたが、自主的に行われる、慣例としての優遇措置までは禁じていない』という声明を出さなくてはならなくなったり、義勇兵の暴力取り締まりのため、扶桑の将官の内、史実で無能とされる者たちへ自主的な予備役編入を促すなどの措置で、暴力の防止をするなどの予防的措置を行った。また、生え抜きの参謀達の中央からの排除と、その代替となる幹部自衛官の派遣が行われた。これは日本の参謀への不信によるもので、扶桑の軍学校への信頼が大きく下がる理由にもなった。昭和天皇の発言(史実)が政治問題化するのも、ダイ・アナザー・デイの前後。結局、昭和天皇はこの問題の発覚で皇位を『長男に譲る』ことを口にする様になる。旧諸侯らから不興を買い、クーデターされることを恐れたからで、そこも日本がもたらしてしまった混乱の火種であった。
本来、航空兵は40を超えると、地上勤務を言い渡されるものであったが、扶桑と日本の人手不足により、その年代でも普通に飛ぶ者は増えている。特に、扶桑は民間航空が無きに等しい時代なので、航空パイロットの受け皿がないというやむにやまれぬ事情もあった。また、テスト部隊を兼ねていた横須賀航空隊がダイ・アナザー・デイから続いた失態で解体に追い込まれた事から、海軍航空隊の形骸化が急速に進んでおり、空軍の元・艦上機部隊が旧任務の継続を指令されるに至った。結局、この混乱の影響は極大であり、一時は零戦すらも艦上運用が困難に追い込まれた。また、元の局地戦部隊も雷電の一件と史実の本土空襲の有様の情報で精神的に打ちのめされ、使い物にならなくなる例が続出。結局、扶桑生え抜きの将兵より、義勇兵の方が多い状態に陥ったのである。
この埋め合わせは、九六式(扶桑では『九九式』であったが、書類の書き換えで、史実の名称に統一)艦戦すら残っていた状態から、大戦後期レベルの航空機への更新などでなされたが、性能面で扶桑生え抜きの将兵の手に余る機種も多く、多くは義勇兵の手に渡った。義勇兵は日本軍~自衛隊を渡り歩いた経歴持ちが多く、日本軍系の機体から『自衛隊の戦闘機』への乗り換えも容易であった。好まれたのは、格闘戦能力を誇る紫電改や五式戦であった。四式戦闘機の悲運はここにあった。同機は『完成型』の量産開始がダイ・アナザー・デイ最末期。完成型と言っても、武装構成を史実の末期型と同じにし、電子機器を搭載したものに過ぎず、エンジンの抜本的強化は遅れた。当時、紫電改でさえも『陣風』に置き換えが始まっていたため、四式の人気は目も当てられない有様であった。原型機の鍾馗も人気が低い部類であったのが災いし、四式戦は戦線に出回る事は殆どなかった。同名のストライカーも、武子の起こした事故を理由に使用数が激減。華々しい戦歴を記録することなく、静かに退役していったという。その逆に、F-86戦闘機はダイ・アナザー・デイ開始時、ノースリベリオン社の有志が試作機ごと亡命してきており、日本連邦が国家を挙げての開発の支援と資金援助をすることで、短期間での実用化に成功。ダイ・アナザー・デイでの決戦兵器として、短期間に大量生産された。
この時に生産されたF-86戦闘機の数は諸説あるが、万単位。艦上機型も用意されたからである。同時期に、地球連邦軍から自動工場が提供されたからからで、扶桑はそれをフル稼働させることで、航空戦力の消耗を補填したわけだ。ジェット機が急速にレシプロ機を置き換えたのは、こうした事情がある。とはいえ、ジェット機はおいそれと訓練を終えられるものでもない。その事から、日本連邦は超兵器での圧倒をドクトリンとして採用する様になり、超兵器で数を減らすことが常態となる。結局、航空兵器とミサイル兵器の高額化が原因で、超兵器と超人頼りになるため、のぞみへの対応は完全なる失敗であった。扶桑は兵器の物量合戦に応じるつもりであったが、日本側が強引に差し止めたため、超人と少数の超兵器の活躍に依存する方向となってしまった。これには内外の批判がものすごかったが、人命尊重と予算を盾にされては、何も言えなくなってしまった。のぞみが戦功第一になったのは、そんな状況に追い込まれたからでもあった。その立役者であったのに、ぞんざいに扱ったために、日本は『関東平野を火の海にされる』寸前に陥ったのである。警察関係者は『漫画で大和を戦闘不能に陥らせてただろ!』と、自衛隊に詰め寄ったが、自衛隊は『機銃と高射砲が現代基準以上になってる上、主砲も改造されてる状態だぞ!!それに、あんな使い方、俺達の来年度予算を吹き飛ばすわ!!』と知らされ、ショックで膝から崩れ落ちたという。近代化改修後の大和型は宇宙戦艦ヤマトに準じた武装レベルになっており、21世紀の自衛隊の艦艇を赤子同然に撃沈できる。その事実が判明したため、日本の対扶桑強硬派は一掃された。宇宙戦艦ヤマトと同レベルということは、21世紀のどんな兵器を使おうと、まともに傷をつけられない。そのことがわかったからである。その後の日本の官庁の態度の豹変ぶりは後世の日本人に嘆かれるほどで、以後、日本は扶桑に強く出られなくなってしまうのである。ただし、情報の伝播で、反感を持った旧諸侯らによるクーデターによる殺戮を異常に恐れる様になった昭和天皇が『皇太子に皇位を譲りたい』とぼやくようになり、それをなだめるのが、今後数十年の側近らの仕事になっていくため、扶桑に強い痛みをもたらしたとも言える。また、海軍航空隊も事実上の形骸化により、以前は忌避していた『突出した力を持つ個人を持ち上げる』政策を公式化。そうでなければ、面目丸つぶれであったからだ。しかも縋ったのが、坂本美緒や若本徹子。二人は以前から空軍への移籍を匂わしていたが、草鹿任一中将の懇願で、残留になった。この二人に辞められたら、海軍航空は完全に崩壊状態になるからであった。結局、旧特務士官出身者の増長を抑えるため、正規士官であった二人をヨイショせねばならなくなったあたり、海軍航空の空洞化の表れであった。
逆に、空軍は陸海の相対的予算削減により、豊富な予算を得た。人材も最も豊富であったが、機材の急速な進歩のほうが問題になり、急降下爆撃の陳腐化や対地掃射の重要性の増加、無人兵器の導入など、ブレークスルーが一気に起こった。また、ミサイル兵器の高額さにより、むしろ、空挺降下での敵拠点制圧がクローズアップされた。空挺降下のできる部隊は本来、陸軍の管轄だが、挺身部隊はクーデターへの加担の罪で解体されており、再建はせず、64Fにその任も負わせると、昭和天皇自らが裁定した。クーデターへの同調の責任を負わせられた陸海軍はこうして、空軍の設立と共に、単独作戦遂行能力が弱体化。空軍が重要作戦の戦力を担う始末であった。
こうして、行き場を失った挺身部隊の隊員は64Fの空挺降下要員、あるいは教官となる形で生き永らえた。流石に64Fになんでも負わせすぎだと、昭和天皇を自衛隊がなだめ、『戦争後に部隊を再建する』ということにさせた。魔女や戦車の軍事的立場の低下、空挺戦車の開発中止、MSの登場など、軍事上のブレークスルーが起きまくったため、なんでもこなせる64Fが英雄扱いされるのは、当然の流れであった。しかも、それがダイ・アナザー・デイ中から起こったため、額面上の戦力は全く宛にならなくなったのである。
のぞみAはそんな国家的なピンチの状況下で先頭に立つ事を強いられたわけで、現役時代の能力だけでは、とても手に負えない状況となった(プリキュアは基本的に、個人必殺技は一~二種類であったので)。また、ティターンズ残党の幹部層がよってかかって、暗殺拳の伝承者であったのもあり、黒江たちは本式にプリキュアたちを鍛え始めた。無論、プリキュアたちで手に負えない敵は、自分らで対応した上で。それでも、苦戦することは多かった。ダイ・アナザー・デイが終結した際に、無傷であった64F幹部も実は少ない。その教訓が、デザリアム戦役以降に生きるのである。のぞみAはダイ・アナザー・デイからの流れで、力を持てるのなら、持ったほうが賢明』との結論に至り、デザリアム戦役の前後で『射手座の黄金聖闘士』に叙任した。これは前任の篠ノ之箒が双子座にコンバートしたのと、星矢の回復が更に遅れる(神の呪いによるものであるので)見込みであったからだ。更に言えば、黒江が大決戦で『プリキュアの姿を保ったまま、射手座の黄金聖衣を纏った』事例を鑑みてのものでもあった。
―プリキュア5の世界――
「チートすぎない!?」
「私に言うな。聖闘士の資格持ちでもあるそうだから、現役時代の敵は『敵じゃない』そうだ」
「そんな状態のスペックを、あなたは難なく扱えるのよ!?なんて!?」
「私も別方面で何かを極めたからだ。一度は当代最強を謳われた身だしな」
ブライアンは『プリキュア5の世界』への滞在中、現地のミルキィローズに突っかかられることが多かった。のぞみの体を借りている事は(ブライアンの本来の立場上、仕方がないが)いいとして、現役時代の本人より普通に強く、別属性の技までも使えるというチートもいいところな状態であるからだ。
「それに、ガキの頃、親父に言われて、色々な武道をさせられたからな。ド素人のお前らよりは基礎はある」
さすがのミルキィローズもこれには押し黙る。プリキュア達は初代、S☆S…。その代々が『普通の女の子』が選ばれるため、仮面ライダーらやスーパー戦隊などに比べ、基礎的な格闘スキルはどうしても落ちる。それはこの動乱でも証明されている。ティアナにしても、管理局と扶桑軍、それと『前世の記憶』でプロ級の格闘技を持つので、普通に戦えば、自分らは手も足も出ない。その自覚があるからだ。
「私たちは鍛えたものをレースに特化させていますが、それを応用すれば、戦闘にも対応可能……。立場上、ある程度は護身術も仕込まれていますわ」
ジェンティルドンナは立場上、護身術も身につけているので、そのパワーは2020年代時点のレースウマ娘で最強クラス。彼女の登場で学園の備品も通常の金属では対応不可能となりつつある。
「あなた、どうして、アクアと?」
「私と属性が近く、なおかつ、相性のいいプリキュアは数人ほど。その中で、私とスケジュールも合っていたのが、水無月かれん嬢だったのです。それで入れ替わっていただきましたわ」
かれんとジェンティルは似通った属性も多く、かれんの戦闘スタイルもパワータイプに分類されるものであったので、ジェンティルが入れ替わっても、違和感がさほどなかった。むしろ、パワーは圧倒的に差があるが。
「あなた、どうやって……あのパワーを」
「私は普通のヒトより圧倒的に身体能力に優れる種族の中でも、上澄みのほうなのです。それが反映されれば、並の強度の金属などはベニヤ板も同然ですわ」
サラッと言ってのけるジェンティル。姿はキュアアクアだが、言葉づかいや振る舞いなどで差異がある。
「その上で?」
「元々、かれんが小宇宙を扱える程度には鍛えられていたので、その上限を引き上げるのは容易なことでした」
本来、セブンセンシズまで到達するのには、一定以上の才覚が必須だが、かれんの秘められた才能をジェンティルドンナは引き出し、彼女の肉体にセブンセンシズをもたらした。そのため、これ以降の彼女はセブンセンシズを扱えるようになるのだ(ジェンティルドンナも以後は『領域』の会得者になる)。
「なかなか『愉しめました』わ。最も、彼らのような輩に慈悲は不要……どうせ、時間を置けば、肉体を再生するでしょうから」
「……!」
「本来、私達は刹那の時に全てをかける種族…。ですが、それ自体が単なる『前世のロールプレイ』と知ってしまった。ならば、運命を超える。そのためには、どのような辛苦にも耐え抜く覚悟がありますわ」
ブライアンとジェンティルはウマ娘の中でも、前世由来の『運命』を超えるのを選択した者。ルドルフのように、自分の戦績自体の改変には興味がない者もいれば、オグリのように、自分の大切な友人と自分の運命を『少しだけ良い方向に変えたかった』者もいるし、ブライアンのように『自分に待ち受ける、残酷な未来を超え、別世界の自分の無念を晴らしたい』という強固な答えを見出し、運命に抗う者もいる。ジェンティルドンナはそれに同調したらしい。
「今回の出来事はその下地作りも兼ねているのです、ローズ嬢」
「…!」
ウマ娘たちの中でも、栄光が約束された者は少数。ブライアンのように、栄光から奈落に落とされた者さえいる。運命を超える事は、本来はそうでない誰かを奈落に落とすことでもある。ジェンティルドンナはまだいいが、ブライアンの場合、史実で『失意の後半生』であった分、因果律などの関係で、復活が厳しい。特に、ブライアンの活躍はサンデーサイレンス系の全盛期の訪れで忘却されたに等しいからである。
「それに、私達の接触した夢原のぞみさんは正式に『射手座の黄金聖闘士』になられました。ご連絡が入りまして」
「なぁ!?ご、黄金聖闘士ぉ!?」
「まぁ、素質は充分だし、黄金聖闘士は他の神々の軍団への抑止力を兼ねている。地上を欲しがる神々は多いからな」
黄金聖闘士は基本的に、他の神々の軍団の最高戦力より高い能力を持つ。それはカノンやミロの発言で確認されている。ハーデス軍は結界などでデバフをかけることで対抗していたが、それが失われた場合は脆かった。また、のぞみは現役のプリキュアであるので、結界を寄せ付けないという利点もあった。
「世界は妖精共や星の意思程度に左右されないくらいに混沌に満ちているということだ。故に、プリキュアであっても、さらなる力を欲するのは自然なことだ」
この時点で、ヒーリングアニマルのことは認知されていることがわかる。『地球の意思』であろうと、人間に仇なすならば、逆に彼らを滅ぼすことは、聖域でも協議されている。星一個の意思など、時天空にまつわる、世界自体の存亡の危機の前では『微々たるもの』だからだ。この時、のぞみAに、アテナ(城戸沙織)から『もしも、キュアアースが敵に回れば、聖闘士の全員に勅命を発して、全力で討伐する』という通達も発しられており、23世紀の地球の惨状を鑑み、人の浄化に踏み切れば、彼らはその瞬間に、オリンポス十二神の名のもとに、征伐の対象となるとも。
(しかし、ヒーリングアニマル…だったか。連中の過激派が先走れば、自分達より上位の理のもとに、種自体が討伐対象と見なされる。人がいなければ、生活が成り立たん生態系もあるというのに、それを顧みぬなど、高慢もいいところだ。もし、キュアアースという奴が人類の敵になれば……のぞみとことはが討たねばならんかもな)
キュアアースはあくまで、地球の意思の体現者であり、他のプリキュアとは異なる存在である。ドリームとフェリーチェに異能がもたらされたのは、彼女が敵に回った場合には打ち倒す。それが地球の意思をも超える、宇宙の神々の決定であることを示すためだろう。
「そんな存在になったとて、どうするつもりなのよ、そっちののぞみは」
「人類に仇なすならば、神々も打ち倒す。そのためだそうですわ。既にそうして、冥府神・ハーデスは討たれたそうです」
「!?」
「人間が怒れば、神々をも滅ぼす。その表れだろう。最も、星矢たちが以前にしたことだが、器となる肉体を滅ぼしただけらしい」
星矢世界で討たれたハーデスはその直後、魂の状態で未来世界でデーモン族を煽りつつ、ミケーネ・闇の帝王として、ミケーネ文明最後の皇帝を乗っ取り、そのまま『ミケーネ帝国』を作り、近代の頃に兜甲児の一族との因縁が生まれたという。
「故に、ヒトは宇宙の闘いに赴くそうだ。全ての宇宙の外の空間を支配する存在を打ち倒すために」
「何よそれ」
「私達も、幹部たちから聞いただけだから、なんとも言えんよ。最終目的はそうらしいんだよ。しかも、敵は神々が手も足も出ないほどの存在らしいという話だ」
黒江たちが転生を重ねられた末に、現状の超常さを手に入れる原因になったのは、神々が地球人類を『兵器』として生み出し、なおかつ、数回の転生で、その目標に近づいた者である故だと。星矢も遥かな前世(神話時代)に神に傷を負わせた咎で、神々に裁かれた聖闘士の転生であり、結局は因果応報で、オリンポス十二神クラスの神々が聖闘士に討たれる事になった。このように、星矢のように『ある神に愛されし者』が別の神をなぎ倒していくことも当たり前になりつつあるため、危惧を抱く別の神々が生物学的に限界まで強い『超生物』を差し向け、ある次元のプリキュアオールスターズを皆殺しにさせたが、それを知覚した何人かのプリキュアたちが『神々に対抗できる力』として小宇宙を求め、聖闘士になるという事態となった。のぞみは(メタ的意味合いでの『主役補正』&黒江による特訓もあって)黄金聖闘士に選ばれた。本来の資格者である星矢の呪いが(アテナの力でも)解けないからで、箒が双子座にコンバートした空きを埋めるという形で叙任された。これは『サガの乱』で聖闘士を従来支えていた体制がほとんど形骸化、あるいは滅ぼされた故で、更に聖戦で当代の黄金聖闘士の全員が死んでしまったため、こうした穴埋めをせねば、全平行世界の地球が守れないのである。
「それに、地球人類を守護するアテナを快く思わん派閥から刺客が差し向けられ、また別の世界のお前らは全員が討ち取られたそうだ」
「!!」
「その再来を防ぐため、プリキュア界隈も大わらわだそうだ」
「何よそれ!?本当なの!?」
「聞きかじりなんだよ、私達も」
ブライアンたちも聞きかじりだが、プリキュアオールスターズがどこかの世界で、その全員がことごとく倒されたのは事実。そうでなければ、マジンガーZEROが因果を見つけた理由の説明がつかない。
「だから、のぞみとことはは、いの一番に異能を求めた。光速で戦えるような…。それでいて、空間そのものを支配できるくらいのな」
「空間を支配……?」
「うむ。全ての異能の頂点に立つとも言われる能力だそうだ。それを目指していると」
空間支配。それはゲッターエンペラーの有する能力とも噂される異能であり、全ての異能の頂点に君臨するもの。かの『空間兵器ドグラ』をもチャチな代物と見なせるようになり、相手がどんな小手先の異能を持とうと、無意味となる恐ろしい能力。それを黒江達は最終目標としている。
「神をも超えるには必須であり、ゲッターロボの進化で究極と言える『ゲッターエンペラー』が持つ能力。それが我々の知り得た情報だよ」
「一号ライダー……」
「神々はヒトが神々をも害するに至ったことに危惧を抱き、その希望の象徴とも言える君たちや我々をまずは狙った。我々は上位の力を持つRXやJなどの奮戦で、それに打ち勝ったが、君等は残念ながら、ある世界で全滅してしまったのだ。80人ほどがいても、だ」
「そ、そんな…!」
仮面ライダー達は神と言えるほど強大な能力を誇る存在でもあるRXやJがいたこともあり、神々の攻撃に見事に打ち勝ったが、プリキュアオールスターズは残念なことに、全員が討ち取られた世界が生まれてしまったと、一号ライダーは伝えた。
「それだけの人数がいても、手も足も出ないなんて……」
「故に、我々の知る、君の友達は『神をも超える力』を求めたのだ。何を代償にしても」
「……私もですか」
「観測によれば、君は後輩の前で、無念の討ち死にをしてしまったそうだ。パワータイプで鳴らした君があえなく討ち取られたことで、後輩たちは次々と戦意を喪失していったと」
一号ライダーがドラえもんの力を借りて、観測した世界線では、神々の遣わした超生物に手も足も出ないまま、プリキュアオールスターズは全員が討ち死にしたとのこと。その事実を鑑みた、のぞみAたちは『神々に対抗できる力』を求めるようになったとも。
「君たちのいる、この次元にも、魔手が及ぶやもしれん。誰かどうかを守護として駐屯させておくことになる」
「私たちじゃ、戦力に数えられないんですか…?」
「『人である事』を捨てた我々で、ようやく対抗できるという事は、能力自体が奇跡の産物である君等では、対抗できる敵の度合いに限度があるということだ。残念ながらね」
「あなた達は無理くりに体を機械にされたそうですけど、どうして、人に戻ろうとしないんですか!?」
「そう願ったこともあるが、人々を狙う悪意は組織に限らず、いくらでもある。牙無き人々を守る力がある事は重要なのだ。いつの時代も。故に、私達は『仮面ライダー』であり続けているのだ。時代が望む限り」
「時代が望むかぎり……」
「光があれば闇がある。時代が望むかぎり、英雄は英雄でなければならない。自分が応えられる限りはな。私も前世で、王者であった故の悲劇に見舞われたんでな…そういう事は気にするんだ」
実際に、未来世界でのガンダムファイトで、『英雄』とされた故の苦しみに苛まされ、ついには死後も肉体を利用された『ジェントル・チャップマン』の例があるように、英雄は英雄であり続けなくてはならないという呪縛がある。オトナ世界のココはこの呪縛を知らなかったか、あるいはそれを承知の上で、敢えてそうしたのか?それは不明だが、大人のぞみがキュアドリームとしての自分へ強い郷愁を抱き、高・大の九年近くの時間を心から楽しめなかった原因であった。ブライアンも前世で『三冠』となってしまった故の苦しみを味わう羽目になった挙句に、次代の三冠が自分の生きた証を忘却の彼方に追いやってしまった経緯を持つため、そうしたことには思うことがあるらしかった。