ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百七十三話「西暦2000年のある日 2」

――大ショッカーは日本の法の間隙を突く存在であった。国家組織の残党であるという事実は『戦後日本の治安維持の法令』では対応が難しい案件であった。法的に消滅した国家の残党の相手など、戦後日本の法令は想定していないからだ。ましてや、二次大戦中は友邦であった国の残党。いくら、戦後世界では『極悪非道』の烙印を押されていようと、だ。このことは2000年時点で既に、治安当局に問題視されていたが、結局は実害がなかったのもあり、その対応の議論が政治的に許されたのは、2016年以降の事であった。その間に学園都市が政治的に『崩壊』し、ブラックマーケットに学園都市製兵器が多く出回ってしまったからであった。つまり、日本の政治家と官僚は16年もの月日を無駄にしたのだ――

 

 

 

 

――この『実害がわかってからしか、対策に予算をほとんど回さず、いざ実務側が失態を犯すと、鬼の首を取ったように騒ぐ』という悪癖は日本連邦樹立後、扶桑側からも問題視された。実際、軍の再編を主導した日本側の不手際で、海軍航空隊が形骸化(扶桑海軍は空母機動部隊よりも基地航空部隊を重視していたため)してしまう結果となり、元の基地航空部隊と空母機動部隊所属部隊に旧任務を命ずる有様であったからだ。その流れで、ジェット戦闘機の普及を理由に、『魔女の運用装備』は空母型の艦型をしている強襲揚陸艦に移管され、強襲揚陸艦の制空運用の要とされた。日本は扶桑との国家連邦を組む事で、全ての面で多大な政治的メリットを得るのにも関わらず、国内に反対論があったのは、扶桑皇国を、日本の過去の姿であった『大日本帝国』と同一視する風潮があったからである。結局、お互いの歴史の差異が大きい(坂本龍馬が元老になった、織田信長が幕府を開いた)ことが認知されるのには、2013年までの時間が必要であった他、日本の経済状況が目に見えて改善され、扶桑由来の高い軍事力が外交力の向上に直結することが示されたことで、日本連邦のメリットが一般人に広く知れ渡るのを待たねばならなかった――

 

 

 

 

 

 

 

――日本の政治家達は政治的理由で、扶桑のみに純然たる『攻撃型空母』を持たせるつもりであったが、自衛隊の現場の不満も大きい事が認知されたため、いずも型護衛艦の空母改装を認めた。とはいえ、いずも型は戦後型空母への習作であるのは事実。扶桑に大型正規空母を持たせ、自分たちは空母を持たないという整備構想は情勢の急変で瓦解したのである。とはいえ、空母の戦後の革新は扶桑にとっても信じられないものであり、大和型戦艦の船体を流用してさえ、『役者不足』と言われるのは完全に予想外。更に、ダイアナザーデイで『魔女が通常の戦争の戦局に寄与してくれない』という事実もあった。更に、海軍航空隊そのものは戦略空軍に片足を突っ込みつつあり、逆に、陸軍の重爆部隊は戦術特化のドクトリンで進化してきた。これに日本の官僚はそれぞれの旧上部組織のトップにヒステリーを起こしたが、陸海の独自のドクトリンで整備されてきた航空隊を一つにまとめただけでは、空軍として『まともに機能しない』ことの表れであった。富嶽、連山などの大型機は空軍にそのまま管理を移管。開発完了間近であった『パラサイト・ウィッチ母機』型は北方戦線の要望で、生産ラインにそのまま載った。空中給油だけでは、旧来型ストライカーユニットは戦闘可能時間を伸ばせないからだ。カールスラントの一部部隊で使われていた『魔導タンク』が時空管理局の技術で改良され、機体と一体化の方式も開発中であるが、問題は『練度の低い魔女にまで回していい装備か』という一点であった。日本特有の貧乏性だが、魔女は『戦前の与太話』と見なされていた(東條英機が組織していたという事も『眉唾物』扱いであった)ため、日本では戦前の資料が原爆で焼失してしまっていた事もあり、完全に忘れ去られた存在であったため、日本はその運用に四苦八苦する羽目となった――

 

 

 

 

 

――魔女は兵科としての価値をダイアナザーデイでの政治的失態で自ら貶める事になった。64Fの働きは獅子奮迅であったが、逆に言えば、一部の精鋭しか戦局に寄与しない事でもある。日本は予算削減を主導したが、魔女訓練校は小学校からの進学が半ば前提条件であったため、1945年時点で12歳以下の候補生の扱いに難儀した。13歳以上であれば、工科学校に改編させた幼年学校生を横滑りさせられるが、9歳~12歳は政治的に厄介者であった。黒田の時代は、7歳で幼年学校に行かせられたが、それは扶桑においても『昔の話』だ。昔と違い、外国軍との共同作戦が常であり、それなりの教養が必要とされた都合上、1940年代には『13歳で入隊後、15歳で任官』というのが、たいていの場合の道筋。民間からヘッドハンティングで魔女になった事例は芳佳が旧体制での最後ということになる。(のぞみ、シャーリー、ペリーヌなどは既に士官教育を済ませた魔女が素体になったため、改めての士官教育を施す手間がかからなかった)。大まかには、時空管理局を手本にしながらのカリキュラム変更となったが、時空管理局も色々と改善点は多いため、最終的には『地球連邦軍の士官教育+時空管理局の魔導師育成カリキュラム』が基本となり、独自要素を入れる構成で落ち着く。また、ストライカーユニットの技術革新が遅れ気味かつ、激戦の時代に入ったため、撃破後の生存率向上の訓練が熱を帯びて教育された――

 

 

 

 

――ティターンズの幹部層が南斗聖拳の最高位たる『南斗六聖拳』の使い手であった事もあり、魔女の優位性は脆くも崩れ去った。それに対応するかのように、扶桑で与太話扱いであった草薙流古武術の実在も確認された。、キュアドリーム/夢原のぞみが転生した『中島家』が継承家であった。ダイ・アナザー・デイ当時は継承に至ってなかったが、戦いの中で技能を磨き、デザリアム戦役で完成した。本来、錦は職業軍人気質であったので、草薙流古武術の継承に興味はなかったが、その立場に置かれた夢原のぞみが図らずも継承したのは、運命の悪戯であった。その力は南斗六聖拳に劣らない強大なもので、デザリアム戦役の中盤から真価を発揮した。のぞみは『灯火』と表現するように、夏木りんの記憶を呼び覚ますために使い始めたのは事実だが、魑魅魍魎が跋扈する未来世界を生き抜く力をもたらしたのも事実である。ダイ・アナザー・デイはそのきっかけとなった点でも、ターニングポイントであった。大きな流れとして『魔導師であろうと、プリキュアだろうと、やられる時はやられる』という事を目の当たりにした上層部の切実な使命感からのカリキュラム変更の大鉈』であり、既に任官済みの者も訓練が施されることになった。(魔女の現場からは反対論も強かったが、すぐに助けにいけない状況はよく発生したのも事実である)また、リネット・ビショップのような『気質が対人戦闘向けではない』者が戦局の推移で淘汰され始めたのも、1945年であった――

 

 

 

 

 

 

――扶桑皇国陸軍にとっても、ダイ・アナザー・デイは軍備刷新のいい機会であった。元々、史実の数倍以上の工業力があるため、四式中戦車と五式中戦車の早期実用化に成功していたが、ダイ・アナザー・デイはそれらすらも旧式化させるのに充分な戦であった。五式中戦車は戦前日本式では最新最強の戦車であったが、それも設計の不備を指摘され、結局は90ミリ砲搭載の改良型へ移行。M動乱とダイ・アナザー・デイはこれとセンチュリオンのハイローミックスで乗り切った。いずれ、120ミリ砲が標準化する時代が来る事を知った扶桑陸軍機甲本部は大パニックであった。カールスラントの義勇兵が持ち込んだ『レーヴェ』戦車は扶桑基準では『超重戦車』であり、105ミリ砲を旋回砲塔に積んでいたからである。更に、ブリタニアの新鋭戦車『センチュリオン』も同様であったため、国内技術育成のため、センチュリオンを大量購入して急場を凌ぎ、然るべき時に国産車に全面的に切り替えるという方針になったが、これは日本の意向で74式戦車のライセンス生産に切り替えられ、後に10式戦車となる。銃器はアメリカ経由でライセンス生産と国産銃器が入り混じる状態が1949年に至っても続いている。これは軍需産業と現場の要請であると同時に、一般人の銃器の所持規制を日本側が要請していたこととの兼ね合いであった。軍刀については、怪異戦に有効なのと、戦後式のサバイバルナイフやアーミーナイフへの不安が多かった(史実では、圭子がナイフの使い過ぎで筋を痛めている)事から、実戦装備として残され、地球連邦と時空管理局の技術での新式が主流となった――

 

 

 

 

 

 

――制式拳銃については、『1943年以前の入隊の将校に限り、私有の拳銃の任務での使用を認める』という規則が明文化され、日本側の求める『拳銃の種別統一』と扶桑軍隊の慣例の両立が図られ、後に『功績充分の将校に限り~』の条文が追加される。扶桑の将校は国産銃器よりも外国産銃器を持つことが、一種のステイタスとされていたからである。史実では銃器を持ち歩かない芳佳も(転生による気質の変化が起こったことで)最初期はモーゼルC96を、次いでルガーP08(いずれも、自衛用にと、バルクホルンから渡されたもの)を持ったが、日本連邦樹立後は年式のより新しい『FN ブローニング・ハイパワー』に切り替えている。また、のぞみは『ベレッタ 92』を私費で購入している(曰く、『先輩たちが使ってるから』)。元々、ベレッタは圭子が事変当時から使用していたことで、扶桑軍で高い知名度があり、圭子の武勇にあやかり、当時の現用モデルを購入した若手も多かった。ベレッタの購入は扶桑のエースパイロットの間でのムーブメントとなっていたわけだ。その流れを危惧した者たちが九四式拳銃を増産させたが、史実と異なり、設計の不備が製造中に判明したため、(軍需産業のために)生産はされたが、殆どがデッドストック化する有様であった(8x22mm南部弾が軍用として、瞬く間に駆逐されてしまったのも大きい)――

 

 

 

 

 

 

 

――制式小銃は既に量産間近であった『四式自動小銃』(M1ガーランドのコピー品)を全軍に配備する予定であったが、結局はより世代の進んだ銃である、89式小銃や64式小銃のライセンス生産で済まされた。機関銃については、旧来の九二式重機、九九式軽機関銃がそのまま使用された(自衛隊の機関銃が何故か、欠陥品続きなため)。全てを短期間に置き換える体力が扶桑になかったからだが、結果として、機関銃と使用弾の製造精度向上による威力アップが起こった。これらの装備更新と精度向上は扶桑軍を近代化していった。とはいえ、それらの保有数自体は日本主導で規制論が噴出しており、それが扶桑を超兵器へ傾倒させた理由であった――

 

 

 

 

 

 

 

――超兵器は具体的には『海底軍艦』、『モビルスーツ』、『コンバットアーマー』などであった。海底軍艦の生産体制は1945年までに整備され、各国用の個体も用意されていたが、日本側が『技術漏洩の心配がある』のを理由に輸出を強く拒み、大問題となった。結局、海底軍艦を予定通りに受領した国は米英系の国のみ。その他の国は色々な事情で受領を延期せざるを得なかった。日本も扶桑の信用問題になるため、その代替措置には気を使ったが、ガリアはペリーヌ・クロステルマンが独断で断りを入れたことに国内が紛糾。結局、海底軍艦を『1950年代以降に受領する』ことで手打ちとなり、ペリーヌは『理想主義者』と陰口を叩かれることとなった。ペリーヌは『自分たちの手での復興を成し遂げてこそ』と考えていたが、鉱物資源が食われた土地となったガリアは昔年ほどの余裕はなく、ペリーヌの理想通りにはいかなかった。元々、ペリーヌは貴族の家柄であったが、天涯孤独の身となった。その事も過度に個人を顧みない理由となっていた。(なお、戸籍上の出生名は『ピエレッテ=アンリエット・クロステルマン』であるが、女のピエロ(道化)の意味であるので、本人はいずれ、正式に『ペリーヌ』に改名する予定である)1946年以降のガリア共和国大統領『シャルル・ド・ゴール』との対立で政敵が多く、七度も暗殺未遂に遭っているなど、苦難の道を歩んでいた。これは『ガリアという国と国民の自尊心の高さ』に由来するものであり、ペリーヌ・クロステルマンは一連の誹謗中傷で、国土がズタズタになっても、周囲に居丈高に振る舞う(そうしなければ、かつての欧州随一の強国であったという誇りを保てなかったが……)本国に嫌気が差し、公には『慈善活動に傾倒していき、表舞台から遠のいていった』とされた。だが、実際には別人格の一人である『紅城トワ』に体を貸し出し、キュアスカーレットとして、太平洋で戦っていたのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――その彼女はしばし、ジャンヌ・ダルク、キュアエトワールと共に調査についていたが、それが一段落した段階で、別命を受けたジャンヌ・ダルクと別れ、エトワールを連れ、ドリーム、アクアと合流した――

 

「プリキュアの状態を保てと言われてもなぁ……」

 

「いいんじゃない?気分転換にもなるし。これが2020年以降なら、歩いてるだけで、ファンが集ってきちゃうんだし」

 

「言えてますわね…」

 

変身した状態でそれぞれ、野比家の居間で思い思いにくつろぐ五人のプリキュア。奇しくも、プリキュアのほぼ全ての属性(色)が揃った形だ。ピンクと青はその元祖たる二人だが、その他は必ずしも類形が確立されていなかったりする属性であった。

 

「でも、ドリームがまさか、わたし達『HUGっと』より12歳も上なんて」

 

「あはは……。つまり、あなた達が現役の頃、あたしらは本当は25、6ってことだね」

 

「本当の年齢差かぁ……。お互いに姿が中学生だと、気がつかないね」

 

「そういうもんさ」

 

「ドリームは転生先で軍人?」

 

「転生の素体になった子がしてた仕事を引き継いだのが始まり。元は償いのつもりだったけど、いつの間にか板についちゃってね。もっとも、大真面目に法を当てはめると、戦闘行為が違法だからっていうのもあるけどね」

 

キュアエトワールにそう答えるドリーム。変身しているが、非戦闘時なので、居間の床で寝っ転がっている。

 

「と、なると……本当の年齢差は……うん。それでも、はーちゃん先輩が若いことになりますよ、アクア」

 

「それは当たり前よ。フェリーチェはみらいとリコの子に等しいから」

 

「私は転生先でいえば、昭和3年前後。貴方方の時代まで生きていれば、普通におばあさん。紅城トワとしては、2002年ですが」

 

「ややこしすぎません?」

 

「仕方ありませんわ。転生先は選べませんし、私は地球人に転生したものの、フランス人ですし」

 

キュアスカーレットはペリーヌの別人格の一つという形で転生してきたので、転生先では『昭和の初め』の生まれ。転生前は2002年の生まれ。転生先でも『のぞみよりは年下』であるのには変わらない。

 

「普段はあの世界にいるとして、思いっきり『時間軸』とか無視してません?」」

 

「それは仕方ありませんわ。ドラえもんさんがタイムマシンをお持ちである以上は使わない理由はありませんわ」

 

「おぉ、さすが、ノーブル学園在籍経験者で、元王族(紅城トワは『ポープキングダム』の王女であったため)……」

 

「転生先でも貴族の出ですから」

 

優雅に紅茶を嗜むキュアスカーレット。地球で通っていたのもお嬢様学校であり、元から一国の王女であったのもあり、紅茶は転生の補正無視で嗜んでいるようだ。食べ物の嗜好が未来世界との交流で現代人のそれに戻ったのはキュアドリームなり、キュアメロディ(シャーリー)だが、転生先が米国系の国であったキュアメロディは生前からの変化は比較的に少ない。

 

「スカーレット、うちで出せるの、スーパーの特売品のパックなんだけど、よかった?」

 

「構いませんわ。銘柄云々にこだわるのは上流階級の常ですが、缶やペットボトルの紅茶も美味しいですもの」

 

「そう言ってもらえると、助かる。スカーレットのその格好見て、うちのママが畏まっちゃって」

 

「欧州の何処かの王族で通るもんね、スカーレットは」

 

少年のび太が出した紅茶はもちろん、家にあった特売品のありふれた茶葉パックで作った紅茶である。20世紀も末になると、その類のものでも、一般大衆が普段飲む分には充分に美味なものが出ているので、キュアスカーレットを満足させられたようだ。

 

「普通にスカーレットはプリンセスだしなぁ。でも、アクアも一応、資産家の令嬢でしょ?」

 

「ええ。私たちの現役時代とそれほど離れてない時代だから、売ってるものは殆ど変わらないはずよ?」

 

「私達が小学生の頃だからねぇ。2000年だと、プレイステーションも『2』が出るか出ないかでしょ?それも初期型が」

 

「ぼくはタイムマシンで中期型以降を買うけどね。ごく初期のあれは値段が高いし」

 

「あー!それずるいって~。あたし、前世であれを買うのに、親父に拝み倒してさ……」

 

「うちの場合はそれでも無理だったからね。ママがそういうのに興味無くてね。叔父さんがまとめてくれたお年玉でやっと買えたくらいさ」

 

のぞみ(キュアドリーム)はプレイステーション2の全盛期頃に物心がついた世代であるのと、父親が名の通った絵本作家であるため、2003年前後の時期に買ってもらえたようだ。のび太の場合はTVゲームの本体を買うこと自体が難儀であったので、叔父ののび郎のくれるお年玉を頼りにしないと不可能であり、それでも、2000年当時に出たての頃の値段は手が出ず、普及した後の時代で買ったらしい。

 

「切実ですわね…」

 

「今は子供だからね。月の小遣いは500円から1000円前後。親の時代と違って、この時代は物品自体が高いからね。500円や1000円ははした金だよ」

 

子供の小遣いは2000年前後の頃であれば、そんなものだ。小学生でありながら、月に10000円以上を使えるスネ夫が(子供基準で)大金持ちかがわかる。のぞみは中学以降、私立に通っていたので、中学生以降は(学食や購買で買う必要から)それ相応の金額をもらっていたが、のび太は高校までは区立(もしくは都立)の学校であったためと、両親が倹約を重んじていたこともあり、贅沢が許されるようになったのは、高校生からである。故に、子供時代は節目節目にドラえもんなどがプレゼントを用意するなり、買ってやるのがお約束であった。

 

 

「駄菓子屋、この近くにあった?」

 

「公園の売店にある程度かな。ドラえもんはこれを見て、隣町まで遠征に行った」

 

「どれどれ。どら堂・冬のセール……どらやきが一個……安っ」

 

「あれ、この時代、消費税は10パーセントじゃないんだ……」

 

「エトワール。消費税が上がるのは、2010年代の話だよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

かーっと恥ずかしくなるエトワール。彼女は元はフィギュアスケーター。史実ではプリキュアを引退した後に現役に戻り、26歳時点ではトップスケーターであった。物心つく頃には既に、消費税が五%ではない世代なので、この時代のものの値段は安く感じたらしい。

 

「それに、この時代の一般のコンピュータのメモリ量、ギガに届いてたかどうかだからね?」

 

「う、嘘……」

 

「昔にいるってのは、そういう事」

 

一般に流通するコンピュータの性能は1990年~2020年の30年で長足の進歩を遂げている。2010年代になると、携帯電話が小型コンピュータを兼ねる進化の道を辿り、HUGっとの現役時代の若者は『本式のPCに触ったことがない』者もいるというのだから、その進化のほどがわかる。

 

「この時代の人に『アイポッド』とか見せても、笑われるからね」

 

「え、それも出てないの……」

 

「第一世代のアイポッドが来年だっけか……。スマホなんて、ここから10年近くも後の事だよ」

 

「えぇぇ~!?う、嘘……」

 

「君の本来いる時代の文化の下地ができるくらいの時だからね、エトワール。携帯音楽プレーヤーの主流がまだ、ウォークマンの頃だしさ」

 

「……カセットの?」

 

「いやいや、いくらなんでも。この時代はMDとかのはず」

 

元々の仕事の関係上、音楽プレーヤーについては最新のものを持っているキュアエトワールからすれば、ウォークマンと聞くと、ごく初期の頃のイメージが思い浮かぶらしく、『昔に流行ったもの』というイメージらしい。(ウォークマンそのものはメディアの変遷はあれど、2020年代にも健在である)

 

「……ゴメン。MDって……何??」

 

「同じく…」

 

「!!」

 

のび太、ドリーム、アクア、フェリーチェの四人はその瞬間、雷に打たれたような衝撃を受け、思わず固まってしまう。その反応に、エトワールとスカーレットは何がなんだか分からず、お互いに顔を見合わせて、『キョトン』としてしまう。

 

「そっか、10年代のプリキュアのエトワールとスカーレットには、MDはわかんないかぁ……」

 

「あたしは世代じゃないけど、親戚の連中が使うの見てたから……」

 

「私も……」

 

「私はこの時代にいることが多いですけど、驚きです……」

 

MDがなにかわからない、キュアスカーレットとキュアエトワール。その一方で、MDがまだ現役の時代にいる事も多い、キュアフェリーチェもに衝撃であったようだ。ドリームとアクアはMDの衰退期に子供であったが、自分より10歳以上年上の『若めの親戚』が使うのは見たことがある世代であったので、ジェネレーションギャップを痛感していた。

 

「こ、これがジェネレーションギャップなのね……」

 

「ど、どんまいですよ、アクア……」

 

最も、精神ダメージを受けたのは、アクアなようだ。キュアアクア(水無月かれん)は1992年生まれ。MDが流行っていた90年代後半に幼少期を過ごし、自分の親が若い頃に実際に使っていた(かれんの両親は音楽家であったため)のを見てきたためだろう。

 

「のび太くん、実物持ってたっけ?」

 

「母方の従兄弟から前にもらった、録音用のが……確か……」

 

ドリームに言われ、居間の物置のふすまを開け、物置を調べるのび太。

 

「あった!MD~!」

 

1999年製の録音用MDを見つけたのび太。母方の従兄である五郎からもらったはいいが、肝心のレコーダーを持っていないので、宝の持ち腐れであった。その関係で玉子に言われ、居間の物置に一年近く、しまいこんだままであったものだ。

 

「この時代には、こんなのが音楽プレーヤーのメディアの先端だったんだ……」

 

物珍しそうな目でMDを見る、キュアエトワール。彼女の本来いるべき時代では、既に衰退し、姿を消した代物だからだろう。

 

「うーん、久しぶりに見たなぁ」

 

「私もよ」

 

キュアドリームとキュアアクアも『久しぶり』らしい。音楽プレーヤーの発展の歴史では、プリキュア5が現役を『引退した』後に登場するスマートフォンが音楽再生・ダウンロード機能を備えたために、デジタルオーディオプレーヤーも斜陽の時代を迎えていくわけで、ある意味、五人のプリキュアは『音楽メディアの盛衰の歴史』を実感したのだ。

 

 

 

 

 

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