日本としても、旧時代の遺物たる戦艦や巡洋艦の自前での運用は不可能なので、扶桑軍隊の維持を望んだ。左派のいう『装備だけを接収する』というやり方は、過去にどこの国も失敗したやり方である。さらに言えば、宇宙戦艦ヤマトを運用できる文明が改造し、原型が艦影以外にない艦も多い。そんなものは手に負えない。結局、バックについているのが(宇宙戦艦ヤマトが生まれた世界線の)地球連邦軍ということを認識した日本政府は部内の強硬論を封じ込めることを選択。波動砲など、御免被るからだ。
扶桑も、評判の悪い憲兵の縮小改編を実行するいい機会であったため、大量にリストラ。一部の者を公安に転職させた以外は警察などへの転職を促した。行政警察権を無くすのもあり、多くの人数を抱えることが必要なくなったからだ。この経過措置として、64Fに憲兵の代わりとしての軍内警察権も付与された。憲兵は目の敵にされ、日本人による『焼き討ち』も増加しており、辞めたがる者も続出していたのも理由とされた。だが、軍警察は必要であるので、自衛隊の警務隊を参考に、縮小改編することとされた。それを終えるまでの経過措置として、64Fの幹部層に軍内の警察権を付与した。これは黒江が自衛隊で勤務中に、司法試験に何故か受かっていたことを理由にしている。もはや、何でも屋であるが、一般部隊の将校は(教育精度の低さで)使い物にならない者が多く、現代的な軍事教育を受けていたのが、64Fの幹部層しかいなかったという事情もあった。こうして、憲兵は多くが一般警察や裁判官に(十年単位の時間をかけて)次第に転職していった。完全に警務隊に移行するのは、1954年を見積もられた。また、前線の風紀低下は警務隊や64Fの人員で対応することとされた。そのため、64Fは(あらゆる任務に対しての特権が認められているため)本土部隊が弾除けにするために、外郭独立部隊としたという陰口が叩かれることになった。
とはいえ、本土の部隊は大半がクーデター後の粛清人事などで『使い物にならない』練度であり、出征可能な部隊は九州方面や北海道の極一部の高練度部隊のみであった。その部隊も装備が総じて旧式であり、新式に変えるには、五年単位の時間が必要であった。ダイ・アナザー・デイで余力を使い切った扶桑軍に、太平洋戦争で自前の援軍を出せる力は殆ど無くなっていた。士官をクーデター後に大量に予備役編入にしたせいであった。そのため、南洋軍は自給自足体制を構築するしかなかったのである。さすがに、そう仕向けた日本の治安当局も相当に気まずくなり、Gフォースの人員増加などを容認。結局、1949年度中に、本土部隊の出動態勢は整わないので、Gフォースを更に増強するという妥協案が採択された。この時に活躍したのが、Gフォースの航空部隊であった。骨川コンツェルンの尽力もあり、超兵器の製造に成功。それで以て、リベリオン本国軍を返り討ちにしていた。
――扶桑の鎌倉――
「日本は科学技術と軍事ノウハウで大いに利用価値がある」
「いいのか?」
「波動砲と海底軍艦で、充分に脅せた。それに、暗号機はいずれ、使い物にならなくなるのはわかっていたことだろう」
扶桑の重鎮達は裏で『未来世界の超兵器で戦争を生き残る』ことを決めている。北方領土の殆どの放棄も既に内諾を得ていた。だが、公にはできないため、1990年代辺りに事後の公表をするつもりであった。この時の扶桑皇国に、北方を取り返したとしても、それを維持する力は残されていなかったのだ。
「放棄はいつ?」
「1995年を見込んでいる。その頃には、大人たちは死に絶えているだろう?」
「出身者も代替わりすれば、親の生まれ故郷などには興味もなくなる。95年は不安だが……」
「それまでに、なにかかしらの優遇制度を打ち出せ。北方など、太閤の気まぐれで得たにすぎん土地だ。遠すぎるし、広すぎる」
この時、はっきりとウラジオストクより先の北方領土は1995年度までに施政権を放棄する予定であることが明示された。問題は国連がそれを認めない事もありえるので、委任統治領という形で、国連に託す案がこの直後に出される。人類の生存圏の維持のためには仕方がないことだった。結局。正式な放棄はもう五年後の2000年にずれ込んだと、後世の記録には記されている。理由はその当時の内閣がこの案の公表で倒れてしまったことによる。結局、既に国際条約を結んだこと、代替の施政地域として、ハワイまでの太平洋の施政権を得ていることを正式に公表する羽目に陥った。結局、自由リベリオンの租借していた南洋新島地域の一部の返還もセットにすることで、扶桑の大衆は渋々と鉾を収める。扶桑はそれを以て、大陸国家であるのを捨て、海洋国家へ変容したのであった。
また、石油の取り過ぎによる地盤沈下を心配する声から、早期に大型艦艇の動力をM式核融合炉へ転換を始めていた扶桑軍。だが、偽装として『煙突状の構造物』の設置は続けていた。時代的に核融合炉の実用化など不可能とされている時期だからだ。そのため、ディーゼル機関を積んでいると誤解を受け、燃料備蓄の少なさを罵られるという想定外の出来事が起こった。結局、史実との地政学的条件の違いにより、燃料備蓄は史実よりも数段多い量が求められ、ブリタニアなどの売り出す石油の殆どが買い占められるという事態に陥る。これは民需用の燃料備蓄を想定したのだが、既に民需用は坂本商会が事前に(史実の燃料備蓄分を)購入済みであり、日本の左派は独り相撲をしていただけであった。また、軍用もガスタービンなどの登場で、必要な燃料が変化しており、旧来の重油の需要は減じていた。
「この戦争は、1950年代一杯はかかりそうだぞ」
「下手したら、昔の李氏朝鮮の跡地に怪異が現れる。荒涼地帯になってるので、今更の価値はない。彼の民族も既に、我らと同化してしまったからな。彼らとしても、口出しはすまい」
「だが、21世紀の彼の国が欲しがるやもしれんぞ」
「あの土地に潜在力はない。金属資源は根こそぎ食われたはずだ。あそこで文明的暮らしはできんよ」
その事が、扶桑が早期に宇宙開発に狂奔していく理由であった。鉱物資源の枯渇が試算されていた故に、別の星に移民しようとしたのである。火星と月がその候補であった。
「魔女はどうするのだ」
「希少な人種である以上は保護せねばなるまい。進化が起きるにしろ、それが根付くのは、今の世代の子か孫の世代だろう。引退しても、死ぬまで戦わす風潮が生まれてしまった以上……」
「多くの秘伝は失われてしまうだろう。坂本少佐の取り組みを支援するのがいいだろうな」
「だが、華族も末端は路頭に迷うのが出る。どうするのだ」
「仕方ない。今後の時代に、男爵や子爵はあまり必要とされんだろう。名家中の名家だけが、華族であるのを誇れる時代だ。お上はクーデターの可能性に怯え、ここ最近は引きこもっておられる」
「ロシア革命のことで、お上は怯えてしまったからな。先のクーデターで情け容赦なく極刑に処したことに疑義を呈しただけで、あれこれ言われて、気が滅入ってしまわれた」
「これで、内閣に統帥権が移譲される上での大義名分は立った。お上も統帥にご興味を無くされた。今のうちに……」
「うむ」
こうして、昭和天皇がクーデターで残虐に殺されることの可能性に恐怖し、政治などに興味を無くしてしまったのを好機とする形で、軍の統帥権などの近代化が断行された。これにより、皇室の軍事的役目は儀礼的なものに転じ、Y委員会が実質的に『円卓会議』的な地位を得るに至る。結局、この時代の農村部の子女が空気の変化に振り回されたために、十数年後に反国家・反組織的な風潮の旗手になってしまう。それも、黒江たちにおんぶにだっこな状態の継続の原因になってしまうのである。その彼女らの更に子供世代がその逆の思想を持ち、この時代の勇者らの後継となっていくわけで、時代の皮肉であった。
こうした歴史の流れで、扶桑は次第に地球連邦政府の樹立を志向していき、陣営を率いての『統合戦争』を覚悟していく。国連体制の継続を望むガリア、オラーシャ中心の陣営と、地球連邦の樹立による『統一された人類による宇宙進出を図る』扶桑陣営との対立が2010年代に表れ始める。結局、地球の鉱物資源の枯渇問題が世界に認知され始めるにつれ、日本連邦の大義名分が補強されていくが、それは1949年からは半世紀以上も未来のことである。
23世紀の地球連邦では、サナリィが不祥事の発覚で縮小改編の憂き目に遭い、アナハイム・エレクトロニクス社がMS開発の花形に返り咲いた。同時に、ガンダムタイプ=地球連邦軍の象徴という認識の復活を図るべく、レビル将軍は純正のガンダムタイプの前線運用をロンド・ベルなどのエリート部隊に全面的に容認。余った試作ガンダムは64Fに回した。フルアーマーガンダムマークⅢが64Fに回されたのも、その施策の影響である。また、アナハイム・エレクトロニクス社が試作していた『Ξガンダム』も従来のガンダムに近いデザインラインの外観で採用されている。小型機を敢えて普及させる意義が薄れたためであった。また、コスモタイガーのような高性能戦闘機が登場したため、MSの存在意義が揺るがされた。それにより、MSの存在意義の証明のため、歴代のガンダムを最高のエースパイロットに与え、無双させる。技術維持のために、ガンダムを旗印にする。ある意味、宇宙戦闘機と人型ロボットを兼任できる可変戦闘機の登場で、存在意義を揺るがされたMSの存在意義の証明のため、大型・大火力化が推進される。ある意味、行き過ぎた小型化の弊害であった。ガンダムタイプの運用解禁は、スーパーロボットの際限なきパワーアップへの懸念に対応するためでもあった。
とはいえ、アナザーガンダムのように、トンデモ火力があるMSも現れたが、最高の技術を結集させた『ワンオフモデル』の特権のようなもの。故に、MSの新規開発は(ジェガンの代で、機械として完成してしまった故に)下火になり始めていた。ジェガンの新規製造自体は停止したが、パーツ供給は続いている。そのこと自体が、MSという兵器の限界を示していた。
ーーある日のこと。
「うわぁ……すごぉーい」
「君にも見せるように言われてね」
いくつかのスーパーロボットを含む、超兵器が64Fの格納庫に置かれている。
「ガンダム?」
「うん。色々な世界のガンダムのごちゃ煮。メインはU.C系だけど」
地球連邦系の組織の内、旧エゥーゴ系を含むガンダムタイプの複数が保管されていた。ガンダムタイプはアナハイム・エレクトロニクス社のブランド扱いであった時期もあるが、本来は地球連邦軍の象徴である。その当事者であるレビル将軍の意向もあり、現存するガンダムの管理はロンド・ベルに委ねられた。ZガンダムやZZガンダムのバリエーション機も多いが、比較的に残っているガンダムタイプはグリプス戦役以降のガンダムであったからである。
「こんなのが造られる世界線かぁ……」
「人同士の戦争のために造られたけど、今は宇宙の大航海時代で、外敵が多いから、その目的で使用されてる。マジンガーとかゲッターとかはイカれすぎて、選ばれた人間しか乗りこなせないからね」
「それ、最近のは専用機っぽくなってきてるからなぁ」
「君、知ってんの?」
「実家の近所に、ロボアニメオタクのお兄さんが住んでたんだ」
「なるほど」
キュアフローラも(現役時代からの転移であるので)周囲の環境で、ロボアニメに一定の知識があるようであった。また、ガンダムもオカルトじみたパワーを誇る機種が増加しているので、どっこいどっこいだが。
「真ゲッターロボよりヤバいゲッターも出てきたんだそうだ。多分、星を軽く壊せるよ」
「うへぇ……」
真ゲッターロボも世界線の違いで、強さがだいぶ変わるものの、未来世界は『原作』寄りの強さを持つ。それより強い=イカれたパワーという認識である。
「まぁ、僕らにレンタルされるのは、ゲッターロボGクラスまでさ。それでも、僕らでないと、フルポテンシャルでの運用は無理。君用には、これが用意された」
「ねぇ、スポンサーの人、メタってない?」
「軽はずみな口効けないよ。フェリーチェの義理のお兄さんだから」
「えーーーーーーーー!?」
「一応、渡しておくよ。Gアルケイン。動力は普通に核融合炉。ブラックボックスまみれのフォトン・バッテリーなんて、造る意味も、使う意義もないからね」
「知ってんだ……フォトン・バッテリー」
「未来世界も、動力の刷新の試みで、あれこれ模索したけど、マジンガーの光子力エネルギーがある以上は、フォトン・バッテリーの研究はする意味はないってことになった」
光子力が安全性と高パワーを両立してしまったが、炉心の量産性に欠けていたことから、その廉価技術として提案されたが、光子力よりも根本的に大パワーを持つ新エネルギーである陽子エネルギーの実用化に軸足が移ってしまい、フォトン・バッテリーの研究は放棄されたと、キュアミューズは話した。
「作ろうとはしたんだ」
「スマホのリチウム電池みたいに、扱いをミスった場合に爆発するっていうのが嫌われたんだ。リチウム電池だって、それで社会問題だろ?」
希少資源を必要とする光子力の廉価技術として提案されたが、結局は安全性への懸念を払拭出来なかったらしいフォトン・バッテリー。試作品自体は造られたが、折しも、単独での行動可能時間を必要とする時代の到来と、かつてのリチウム電池の起こしたそれと同じような社会問題化への懸念を払拭出来なかった顛末は哀れですらあった。
「慣らし運転はしといてくれ。装備は多くが製造途中だから、ゼータのハイメガランチャーを持たせてある。それと、いきなり操縦桿をガチャガチャするのは無理だろ?地球連邦でも、実験段階の新技術で動かせるようにしといたって」
「どういう技術?」
「火星で普及してた『イメージフィードバックシステム』を別方向に改良したもの。ナノマテリアルを注入せずに済んで、ニュータイプでなくても、体を無理に強化しなくても、思い通りに機械を動かすために研究されてたもの。元は医療目的で研究されてたけど、熟練パイロットが減った軍隊が軍事目的に転用したそうだよ」
地球連邦軍がパイロット育成の手間を省くために、医療目的で研究をされていた技術を転用する形で、予てから実験している技術。バイオコンピューターなどと同系統の技術を大規模化させたものを、機動兵器の制御に転用したわけだ。
「火星?」
「未来世界は宇宙の大航海時代だからね。火星はとっくに改造されてるさ。論より証拠。動かしてみなって」
「わ、わかった」
と、いうことで、のび太が用意していた『Gアルケイン』に乗り込むキュアフローラ。思いっきりメタっているが、件のシステムを起動させてみる。操縦桿による操縦から切り替えて。
『感覚器官をコンピューターに接続させてんの?』
手を握ったりして、機体の動きを確認してみるキュアフローラ。
「サイコフレームとか、バイオセンサーとかはニュータイプの才能ありきだし、ネオサイコミュは処理が必要ときてるからね。普通の人達がニュータイプに、反応速度で追いつこうってがんばる過程で生まれたシステムだって」
『プリキュアの状態の能力は反映される?』
「アイテムを使う技は使えないよ。君の代はアイテムが必要な必殺技が多いからなぁ。ま、ガンダムタイプはゴリ押し効くけど」
『あたしたちは必殺技にアイテム使うんだよなぁ。ま、MSの武器でゴリ押し効くから、いいかなぁ』
「高出力のジェネレーターは積んだらしいから、バスターライフルもドライブできるそうだよ。予定より頑丈に造ったそうだし」
『フルドレスは造ってる?』
「アニメで使った装備はあらかた製造中だって。サーベルは規格品を流用してるけど、リ・ガズィ・カスタムのハイパービームサーベルの改良型を装備させてるって」
『細い刃じゃないの?』
「クロスボーンの研究してた、粒子加速技術を取り入れてるんだって。その関係らしい」
そのことから、波動エネルギー研究の副産物と、過去にクロスボーン・バンガードやサナリィの研究していた『粒子加速技術』を合体させ、連邦軍の懸案であった『ゾロアットのシールドを正面から突破するサーベル』が実用化された事が示唆された。これはタキオン粒子の実用化が大いに関係している。また、地球連邦軍はサーベルの基礎的な出力を強化することに血道を上げており、以前に『ハイパービームサーベル』と呼ばれたようなものを基本ベースに、改良を重ねていることが示唆された。
「未来世界……ドラえもんのいた世界の延長線の未来だから、便宜的にそう呼んでるんだけど、そこじゃ、ZZガンダムみたいなバ火力の武器が(対外戦争の増加で)必要だから、どしどし造られてるんだそうな」
物理的に高威力の剣も造られているが、MSのトルクや機体強度では(ガンダムタイプであろうと)振り回せる質量に限界があるため、原則的に圧倒的パワーと強度を持つスーパーロボットの専売特許となりつつある。
『スーパーロボットみたいな、でっかい実体剣はないの?』
「MSのトルクやフレーム強度的意味で、振り回せる質量に限度があるんだって。おまけに、機体のモーションの最適化も手間がかかるから、そういう武器はスーパーロボットに任すことになったんだそうな」
コズミック・イラで流行の対艦刀は色々と手間がかかる上、スーパーロボの剣という上位互換があるため、未来世界でのMSの武器としては普及しないことが示唆される。キュアフローラは(メタ的意味で)自分の機体と言える、Gアルケインを(新技術で)試運転しつつ、機体の反応と自分の感覚とのズレの有無を確認しつつ、キュアミューズと会話をしつつ、ハンガーの武器を見てみる。
『ロングライフルはZガンダムの?プラモで見たことある』
「あの系統のは扱いやすいんだよ。取り回しも楽だし」
幹部層が可変MS、それもゼータ系を好むことから、同系統用のロングライフルやメガビームライフルが多めに置かれている。専用武器が完成するまでの繋ぎであるが、Gアルケインに持たせる火器のセレクトは需要であるので、機体越しに片膝立ちし、機体に持たせる武器を吟味するのであった。