ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百三十九話「二つの世界にて 16」

太平洋戦争までに、軍隊内部の慣習のかなりが否定され、規則が明文化された。その一環で、扶桑海軍出身者はダイ・アナザー・デイ以後、肩身の狭い思いを強いられた。日本義勇兵からの猛抗議によるものである。他国にとっても、軍令承行令の即時廃止による軍規の即時変更は衝撃そのもの。それに伴い、史実で芳佳がベルリン攻防戦で受けたような扱いは『重大な軍規違反』とみなされるようになった。ミーナの降格は事後、書類上でそれが表向きの理由付けに使われたわけである。この衝撃を利用し、司令部は人事管理の手法を変更。現場裁量権の若干の縮小(人員の昇進と降格に司令部の許可を必要とすると改定。ただし、64Fに限り例外とされた。)を断行した他、扶桑海軍に特務士官の廃止を即座に実行させた。これにより、海軍士官になっていた服部静夏は困惑(特務士官と正規士官の境界が無くなる=正規士官が偉いとする従来の認識が否定されたため)する羽目になった。

 

 

 

ダイ・アナザー・デイにて

 

「軍令承行令が無くなって、海軍の士官連中が困惑しとるぜ」

 

「特務以下、他兵科に威張れる根拠を否定されたからな。今後は新米の士官は怯える日々だろうが、正規士官は慣習もあって、指揮序列は一位のままだ。特務出身の扱いが良くなるだけになる。昔のティターンズみたいに他の兵科に威張る連邦軍がいたから、法的根拠を失くしたんだ。それで、兵学校から送り込まれた服部のガキは怯えてるが」

 

「ああいう親子三代で海軍って家系の連中は非兵科や特務に威張るのが当たり前と考えとるからな。それを否定された以上、怯えてもらわんとあいつの今後に差し障る」

 

黒江と圭子はダイ・アナザー・デイ中に、日本連邦軍としての初の軍政改革について、そう評した。史実より早いタイミングで戦闘に駆り出された服部静夏には、『史実との差異』が大きい点がある。芳佳の『変貌』により、飄々とした振る舞いに不快感を抱いている(服部静夏は堅物であった故だが、海軍軍人は本来、ユーモアを介さなければならないのだ)。扶桑陸軍の英雄とはいえ、魔女としては高齢である七勇士の三人が既に佐官になっていた坂本を子供扱いするのかという不満を抱いていた。また、三代続けて海軍に奉公してきた家系であるので、一代で全軍を束ねる権限を持つ最高幹部にまで成り上がった三人に強い対抗心があったのである。

 

 

「『教育』すんか?」

 

「史実で坂本の後釜になるガキだが、堅物にすぎるからな。お前、いっぺん連れてけよ。あたしじゃ、教育にわりぃかんな」

 

圭子はアウトロー全開(元の姿では温厚そうな風貌だが、『今回』は色々と『ゲッター線に魅入られている)なため、こういう時にオーソドックス寄りな黒江は重宝される。智子は戦間期に教官になる話はあったが、素が教官向きでない『気弱』な質であったこともあり、固辞している。とはいえ、服部は(史実で活躍できたために)黒江たちに(なんとか)ついていけるだけの才能はあったため、時たまの実戦装備をした上での飛行訓練をこなしていった。

 

 

 

――その日のこと

 

「お前の教え子だろ?あの子」

 

「そうだ。と言っても数週間だけだ。教官は性に合わんからな」

 

「堅物で、俺達に対抗心持ってるようだぞ?」

 

「あの子は三代続けて、海軍に奉職してきた家柄の出だ。あの子の先祖だが、お前らの先祖より若干高い役職にあったらしい。それもあるんだろう」

 

「幕府の時代のことだろ?面倒くせぇ」

 

「お前らは事変で名を挙げたろ、公には」

 

「ああ」

 

「それで、お前らは元は陸軍だろ、航空兵だけど」

 

「あー……もしかして」

 

「事変からというものの、予算上はお前らのおかげで陸軍航空のほうが優遇されてきたからな。史実と違って練度が高いわけでもないしな、海軍航空は。せいぜい数百時間の平均だ。だが、日本海軍在りし日の絶頂期は2000時間超えすらいた。それと比べられてもな…。お前らくらいしかおらんのに、1000時間超えは」

 

静夏の妬みの原因は元の所属組織故の劣等感も絡むものであったが、魔女の生涯飛行時間は600~800時間程度。平均で5~7年、長くとも8年ほどしか飛べない上、怪我などで伸びないからである。芳佳の一族は特異体質であり、普通はそのくらいで『戦士としての寿命』が尽きるのだ。それを教育されてきた故に、それを気にする必要のない者達が多い環境では、腐ってしまうのだ。

 

「生真面目すぎても今後は生き残れんし、マスコミ受けも良くないからな。ゆっくりと教育していくか」

 

「この環境に慣れれば、体質も変わるだろう。ケイのおかげで基地の発電用に、臨時設置のゲッター線増幅炉を使えてるしな」

 

64Fは最初期、501統合戦闘航空団の基地をそのまま引き継いでいたが、電子機器や医療設備の近代化で消費電力が劇的に増大してしまった。その臨時の解決策が『ゲッター艦隊から送ってもらった、発電用のゲッター炉心を設置する』というもの。核融合炉以上のキャパシティがあるため、それに耐えられる伝導管なども必要であったが、1940年代の技術での通常発電の発電量では『需要に追いつかない』危険が大きかったためであった。

 

「通常発電の増強もさせているが、爆撃されそうだな」

 

「陸軍が蒸気機関で装甲列車を造らせたのもそこだ。だが、装甲列車自体が時代遅れとして、日本は廃止させたがってる。だが、この世界では需要が残っているからな。地球連邦軍に頼り切りだと、今度は国内の輸送部隊が拗ねるとくる。仕方ないが、連邦軍のはミデアで数百トン、ガルダで10000トンくらい平気で運んでくれるからな。この時代のどんな手段よりも、はるかに有効だ」

 

第二次世界大戦中の輸送機は数千kg、輸送艦で数百トンほどなので、ミデアとガルダは(技術レベルの差が大きいが)圧倒的な輸送量を誇っている。ミーナが愕然としたのは(可変戦闘機の燃料効率の良さもそうだが)、これだけの量の物資を一回で届けられる補給量であり、既に黒江が(ロンド・ベルの隊員の権限で)手配済みであったことだった。

 

「ミーナは何を前提に、考えていたんだろうか」

 

「おそらく、この時代の輸送艦と輸送機の補給量で考えていたんだろう。おまけに、コスモタイガーとか見てんのに、燃料効率をMe262かなんかと一緒くたに見てた。それが運の尽きだ。燃費なんてのは、技術革新が起こりゃ、だいぶ良くなるのに」

 

ミーナ自身も(元の人格が)書き残しているが、(おおよそ数百年後の技術なら)燃料効率が遥かに良くなっていることに思い至らなかったのは、自分の不徳の致すところだったとしている。

 

「あいつはお前のように、根っからの軍人ではない。平和であれば、我々とは無関係の商売についていたであろう人間だ。故に、そこに思い至らないのも当然だろう。ましてや、正規期間で座学を受けておらん。日本の連中は『戦バカ』と嘲るが、この時代、裕福でない一般人が教養と技能、金を得るには、軍歴を持つのが一番だというのにな。あいつの不幸は大尉以下の階級でなかったこと。これに尽きる」

 

ミーナの失態は、他の魔女の出世に差し障るほどの軍規の変更を起こした。坂本美緒はそれをひっくるめて『不幸』だと評した。シビリアンコントロールの名のもとに、無知な政治家などが軍を便利屋代わりに見なす風潮に嫌悪感を抱いているからで、故に彼女の最終階級は(政治的理由で)大佐(兵学校出であるので、そこで出世が差し止められた。しかしながら、引退後の2000年頃に名誉昇進で少将になる)であった。

 

「お前、そういうこというと、出世できんぜ」

 

「将官は柄じゃないから、お前らに任すよ」

 

と、坂本は将官に興味がないと明言する。そもそも、大佐まで出世できれば、本来は現場で必要充分な権限があるからだ。

 

「お前らがおかしいんだよ。陸軍出身なのに、連合艦隊を動かせる権限を持つんだぞ?それも、お上の名のもとに、だ。おまけに、Y委員会の委員と来ている」

 

「そうでないと、俺らは睨まれるんでね。普通の魔女からすりゃ、俺達は突然変異体だ。普通は『出る杭は打たれる』されるが、事変の戦果とお上のお気に入りってことで、43年以降は手出しされなくなったがな」

 

黒江らは1945年時点で既に、『扶桑軍で最高の実権を持つ』。服部静夏が三人に敬服するには、『かつての伝説通りの戦闘能力を証明する』必要があった。また、のぞみら『プリキュア』すらも超える戦闘能力を有することは黄金聖闘士の継承者であるという事実が証明していた。

 

「おまけに、黄金聖闘士だろ、お前。普通、そこまで行くか?」

 

「スタンド能力ないだけ、まだマシだろ。波紋は覚えたが」

 

「チートの重ねがけしてどうする」

 

「何が役に立つかわからんからな。今後のためだ」

 

と、この時に話していたことを、部下ののぞみが実践する形になり、結果的に『プリキュアを代表する戦士』となる。これは初代の三人が不在であった状況である故に強いられたものであったが、スーパーヒーローたちの助力により、次第に戦士としての能力を高めていった。扶桑軍ではこの時期、シビリアンコントロールを理由にしての受難が続いていたことから、黒江たちを目立たせて、その間に軍隊を再建しようとした。だが、日本側が『軍国主義者の国家からの排除』へとひた走り、せっかくの人的資源を激しく減らしてしまったことから、扶桑軍は大規模な行動を封殺される形になってしまった。日本側は少数精鋭を大義名分にしたが、国家総力戦では、その理屈は無意味であり、なし崩し的に増員を認めることになる。その時期に大量の軍関係者や政府機関、科学者などが失職し、引き継ぎもされなかったため、結局は一部を(皇室の命令という形で)復職させたり、史実で数十年後に活躍するはずの若手技術者を抜擢するなどの緊急措置を講ずることになる。義勇兵が数的主力になるのは、扶桑の生え抜きが排除される空気が強かった故で、これにビジネスチャンスを見出したカールスラントは、1945年からしばらくは、熟練者等による傭兵稼業で外貨を獲得する形で、再建に必要な資金を集めることになる。特に、熟練の士官と下士官が(政治的な意味合いの強いリストラで)不足した扶桑軍を支えるようになっていくのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本側は(技術流失を恐れて)扶桑側の軍事計画の多くを潰したが、それが日本への批判に繋がったため、結局はGフォースの大規模増強という形で認めざるを得なかった。特に、甲巡の旧式化に対しては、超甲巡を巡洋戦艦に改良して対応するのと、新型を開発し直すという二通りのプランを通させたが、高雄型重巡洋艦は老朽化。利根型の存在意義であった水偵は時代遅れ……などの要素が積み重なった結果、デモイン級対抗の新型の開発し直しと、場繋ぎとしての伊吹の巡洋艦としての完成がなされた。だが、伊吹型の二転三転する計画にキレた造船所がストライキを起こしてしまったことから、伊吹型は完成した時には『旧式巡洋艦』と揶揄される身の上となってしまった。1949年の完成では、もはや時代遅れに等しかったが、M動乱で大量に軽巡などを喪失した扶桑海軍には貴重な戦力であった。逆に、旧来型軽空母の存在意義の喪失による、既存艦の持て余しも問題になっていくのである。

 

 

 

 

 

 

そんな問題がクローズアップされるきっかけはダイ・アナザー・デイであった。雲龍型航空母艦でさえも『旧式のポンコツ』扱いされるようになったのは、敵方が270m級のエセックス級を量産してきた事による日本型空母の艦容の見劣りによるもの。しかも、露天駐機で機数を増やしていたため、ますます艦政本部は面子を潰した。扶桑は露天駐機を嫌っていたが、この圧倒的陣容に、航空本部も、艦政本部も肝を潰した。さらに、大鳳を圧倒的に超える性能の空母『ミッドウェイ』の登場により、地球連邦海軍からの空母の貸与が行われた。

 

 

「通常戦闘機は自動工場で増産に入るが、パイロットは本土の全員をかき集めようと、日本側の求める数には届かん。ましてや、飛行時間が四桁など…。ドラえもん氏に連絡を取り給え。この小沢治三郎が会いたいと言っていると伝え給え」

 

当時に連合艦隊司令長官への就任から間もなかった「小沢治三郎」は直々にドラえもんに当時の旗艦であった『戦艦信濃』(大和型三番艦)で面会。協力を要請した。ドラえもんは『ドラえもんズ共々に協力する』と確約。こうして、日本の太平洋戦争期を含めて、各時代からパイロットをかき集める方法が取られた。そうでなければ、零戦や隼はともかく、雷電、紫電改、烈風、疾風、五式戦などの後期型レシプロ機を自由自在に操れる腕を持つパイロットは確保出来なかったのである。扶桑生え抜きパイロットが教官級でも戦力外扱いされたのは、実戦経験の過小さ、飛行時間の短さが理由であった。日本側は『開戦時~ガダルカナルまでの百戦錬磨の練度でなければいけない』と説いたが、扶桑には、そんな飛行時間のパイロットは、黒江たちしかいなかった。その結果、空母部隊のパイロットの大半が義勇兵で占められる事態となった。扶桑側はせっかく完成した『紫電改』や『烈風』に生え抜きを乗せられないことに不満を見せたが、『そちら側がパイロット育成を怠ったほうが悪い』と言われ、返す言葉もなかった。その結果、扶桑生え抜きのパイロットたちの不満がクーデターという形で、1946年頃に爆発するのであった。

 

 

 

 

 

しかしながら、日本側としては、物量で絶対に勝てない以上、事前にミサイルや魚雷で空母や護衛艦を減らす戦法を取るという前提があった。扶桑のパイロット達は『正々堂々』にこだわり過ぎたのである。近世以来の武士道精神を否定された彼らは自暴自棄に陥っていき、ついには暴発し、国家への犯罪者として裁かれる結末を迎える。扶桑軍は以後、魔女を含めてのパイロット育成をアメリカ式の大量育成に切り替えたため、戦前期の徒弟制度じみた育成を経験して成長したのは、服部静夏の世代が最後になった。大量育成でも、アメリカに容易く追い詰められたのが史実なので、古い世代はそれにショックを受け、次第に育成に関わるのをやめていった。そのため、黒江たちが五年近くもかけて、近代的な育成制度を確立させなければならなかったという経緯がある。ダイ・アナザー・デイはまさに、『扶桑軍に残る、武士の時代からの慣習が消えていく』きっかけとなったのだ。

 

 

 

 

 

その一方で、史実と異なり、馬車馬のように酷使される戦艦部隊はその酷使が理由で、1949年に『大和に代艦が必要となる』ほどの有様となった。船体に疲労が蓄積してしまったのが原因であった。対外的な意味合いから、水戸型の第二生産ロットに大和の名を引き継がせることが決定されたのである。

 

 

 

――1949年 中秋――

 

「なぜ、戦艦を作り続けるのです」

 

「他国が維持できなくなり、その一方で、ミサイルより確実に対地火力を担保できるからです。巡洋艦のものはたかが知れていますからな」

 

扶桑も戦艦の保有理由の半分以上は『対地支援』目的であったのが伺える。だが、M動乱以降は本来の用途に供している。

 

「敵が戦艦を造ってくる以上は持たざるをえない。万が一、そちらでいうゴジラが現れた場合、一撃で重傷を負わせられる兵器といえば?核はゴジラには無意味ですぞ」

 

日本側も、戦後間もない時期、ゴジラらしき怪物が大暴れし、結局、かつての戦艦の砲弾をありったけ打ち込むことで重傷を負わせたという記録が残されていたため、ゴジラの映画通りの再来を恐れた自衛隊は戦艦の再建造を目論んでいた時期もあったという。その計画はスーパーXやメカゴジラの計画に合流していったのも周知の事実である。結局、日本側も(不死身の生命力が想定される)ゴジラを引き合いに出されては、ぐうの音も出なかった。こうしたやりとりにより、戦艦の保有枠は(全盛期より減少したが)『核兵器が拡散するよりは……』と妥協的な形で維持された。紀伊型戦艦の残存艦が航空戦艦にされたりしたのは、この議論との兼ね合いである。また、大和型も軽武装の誹りを受けるようになったため、扶桑の新型は対モンタナ級戦艦を意識した重武装設計に変遷していった。また、小さく造ったところで、ミサイル等の現れた戦場では『誰も褒めてくれない』ので、結局は大艦巨砲主義が肯定されたのである。

 

 

 

 

 

 

21世紀のアメリカが現代型戦艦を模索しだしたのも、日本連邦が古式ゆかしい戦艦を大量に保有している故であった。21世紀の常識では『戦艦サイズの船体』はせせら笑られる存在でしかなかった。だが、結果的に日本が、大戦艦を大和型の後継が完成した世界から持ち込んだ結果、アメリカは政治的に戦艦を必要としたのである。既に完成済みのモンタナ級戦艦のレンタルというのが有力であったが、時の大統領の鶴の一声で新造となった。21世紀のアメリカは造船業が斜陽であり、完成は疑問視されていた。モンタナ級戦艦のレンタルはその保険であった。

 

 

 

 

 

 

 

扶桑連合艦隊は連邦成立後、主力艦の数割を日本との交流目的に駐屯させていた。意図的に、史実では存在しない艦艇も選出されていた。超甲巡がそれで、日本の軍事関係者からは『シャルンホルスト級戦艦のパクリ』だの言われる有様であったが、アイオワ級との交戦を懸念した防衛官僚らの提言により、55口径41cm砲に強化された。結局、本来の『甲巡を超える巡洋艦』ではなく、『金剛型代替の巡洋戦艦』としての役目を担わされた形であり、史実では見送られた魚雷発射管の搭載もされた。結局、長門型戦艦以上の船体を理由に『ありとあらゆる武装』を施した巡洋戦艦と化してしまい、扶桑の造船関係者を落胆させたわけだが、乙巡や両巡が時代遅れとされた以上は仕方がない『万能化』であった。元は巡洋艦枠で整備されていたため、巡洋戦艦枠を復活させ、それに充てがわれた。従来の戦艦枠が大和型を祖とする『重戦艦』で占められたためであった。相対的に旧式になった大和型だが、46cm砲九門の威力は未だ健在であり、対抗できる戦艦のいない21世紀世界では、海軍力のプレゼンスに大いに貢献していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2026年。日本連邦体制が10年目に入った年にあたる。扶桑軍駐屯艦隊は大和型と播磨型を二隻づつ駐屯艦隊に回していた。空母が割けない都合であったが、21世紀には失われたはずの大艦巨砲主義の申し子であったため、嘲笑の対象と思われた。だが、地球連邦軍の手で『宇宙戦艦ヤマトに使われる技術で改造済み』ということが公表された上、播磨型の主砲口径が51cm砲と正式に判明すると、野党も、冷遇でくすぶる保安庁も大人しくなった。51cm砲といえば、史実では、ドイツしか実現しえなかったと言われる規模の砲。それを艦砲にしえた(実は日本海軍も、まほろばの艦砲として生産できていたが、記録が残されなかったため、与太話扱いになっている)となれば、威力は推して知るべしであった。

 

 

「あんな大戦艦が主砲まで近代化済みなんて……!しかも宇宙戦艦ヤマトの技術!?」

 

「地球上のどこにいても、理論上は狙撃可能な射程じゃないか……。しかも、波動カートリッジ弾の供与を受けているなんて……」

 

扶桑がダイ・アナザー・デイで勝利できた要因の一つが波動カートリッジ弾であった。宇宙戦艦どころか、要塞に大ダメージを容易に与える超兵器。自分たちがカス扱いの技術レベルである。また、戦艦が主砲を振りかざすだけで、違法漁船が蜘蛛の子を散らすようにトンズラすることは、ある意味で砲艦外交の理想例であった。結局、学園都市が解体前にロシアを打ちのめしたおかげで、ロシアが騒乱を起こすことは(当面の間は)なくなったが、中国の台頭が進み、日本連邦の仮想敵になりつつある時勢であった。これは統合戦争という形で後に実現してしまい、中国とロシアの用いた『超・電磁パルス兵器』が地球文明を大きく歪めることになる。

 

 

 

「これからは、ゆっくりと統合戦争へ向かうわけだね」

 

「そうさ。それが結果的に、23世紀への布石になっていくわけさ。統合戦争とガミラス、白色彗星帝国、ゼントラーディのおかげで、地球にいた人たちは大きく目減りする。23世紀には、元の主要都市とかを維持するのに必要な人数しかいなくなるのさ。元のアフリカとかには、ティターンズ残党、カラバやエゥーゴを離反した過激派、ジオンの方面軍の残党しかいなくなる」

 

23世紀の地球は統合戦争の名残りもあり、旧主要国の主要都市の一部以外は荒廃してしまっている場合が多く、日本は各都市の地下化に成功していたため、比較的に生き残った日本人の人数は多い。また、ジオンが日本びいきであったため、スペースノイドの名家にも、意外に日系が多い。

 

「僕と倅、孫の三代が生涯をかけて、日本の各都市の地下の開拓を行ったおかげで、日本は比較的に主要都市が残った。結果的に、忘れ去られていた1000年女王の遺産も見つかったし、良しとしよう」

 

のび太もアラフォーを迎えたこの時代には、野比家の居候は入れ替わり立ち替わりだが、ノビスケがなついた関係で、ナリタタイシンは常駐に近くなっていた。タイシンは(出会った時には)既に史実での『盛り』を過ぎていたが、ゴルシに連れられ、別の世界線(ウマ娘世界)をのぞいた際に、従妹のブライアンの夭折が『起こり得る』ことを知ってしまった故に、その世界線のハヤヒデの懇願に応じる形で、現役を続けている(史実では、ライスシャワーの悲劇の影で、ひっそりと引退している)。シニア級になっているので、レースに出走する事は減っている上、高等部卒業に必要な単位を全て取得しているからである。

 

「日本が地球連邦の中心に?」

 

「相対的にね。統合戦争で北米やユーラシアは荒れ果てるし、オセアニアは田舎だからね」

 

調は仕事からの帰りであったので、ギア姿である。黒江との見分けをつけるためでもある。

 

「不思議な感じ。この時代、多くの世界線だと、私はまだ生まれてないから」

 

「それが世界線の分岐さ。なのはちゃんの様子はどう?」

 

「竜馬さんのおかげで、酒飲みは落ち着いてきたよ。元々、腫れ物扱いになったショックだったみたいで、なのはさんより強力な魔女は時空管理局にはいなくなったからってので……」

 

「動乱で、管理局は解体されてもおかしくなかったけど、これまでの秩序が完全に崩れると、それはそれで面倒だろう?それで、地球連邦も『間接統治』に決めたんだ。ハラオウン提督を長に添えて」

 

時空管理局は人材が動乱で、致命的に枯渇状態に陥ったことから、質量兵器の解禁をなし崩し的に認めざるを得なかった。また、次元航行艦隊の権威が凋落したことを『地球連邦軍の兵器』の『技術交流』を名目にしての購入で誤魔化すなど、節操ない方法での再建を選ぶしかなかった。なのはは一連の出来事で、時空管理局を去ることも考えていたが、組織側に慰留され、結局は階級も(昇進に上限ができたとはいえ)上がっている。

 

「それで、ティアナさんも?」

 

「生存がわかれば、ね。彼女が旧体制での最後の執務官になる。権限的意味でもね。本当は彼女も完全に抜けたかったけど、不名誉な扱いを受けてたお兄さんの死後の名誉回復と引き換えにするって条件で戻ったそうだよ」

 

「アコギなやりかただね」

 

「あそこも必死なのさ。今の実情がバレれば、あそこはしっぺ返しをくらって、一気に攻め込まれる。だけど、地球連邦軍の庇護下にあれば、その心配はない。表向きは同盟、実情は地球の植民地。だけど、他の世界に思い上がることは無くなったから、結果的には平和になるだろう。バダンとの冷戦も続くだろうけど」

 

 

ミッドチルダは結局、自身が管理外世界と見なしていた世界に逆に頭を垂れる事になり、以後は地球連邦の実質的な植民地として存在していく。M動乱で、時空管理局に首都を奪還する余力がなかったことが原因であった。また、次元航行艦が実体弾に脆いことは最高機密とされた。第二次世界大戦レベルの艦砲で容易に致命傷を負うというのは、実にまずいからだ。それを誤魔化すために、地球連邦軍から譲渡された艦を対外的には『次期主力のテスト』と偽るなど、時空管理局なりの面子があるのがわかる。ミッドチルダは新暦になって、100年も経過していない。それで体制の実質的な再転換を経験するのは、戦後の日本と似通っていく。また、今更の詭弁であるが、以後のミッドチルダは対外的には『我々の管理下に入る=犯罪の抑止力や防衛の手段でもある軍事力の完全撤廃及び没収ではなく、各世界の事情に応じて、必要最低限の(雇用の維持に必要な)独自戦力の整備は認めている』という、それまでの振る舞いからすれば、詭弁じみた解釈を押し通すようになる。これは時空管理局の保守派の巻き返しによるものだが、M動乱後のミッドチルダに、全次元世界を統括運営できる力など残っていないため、妥協的な解釈変更であった。

 

 

「カミさんには残酷だけど、シドニーとキャンベラはあと数百年以内に消えて無くなる運命だ。オーストラリアには、かわいそうなことになる。この世界は時天空を倒す可能性があるそうだけど、それを担保する犠牲ってことだろうけど……」

 

「静香さん、大人しめの外見とは裏腹に、キレると手がつけられないからね…。ますます関わらせるのはなぁ……」

 

静香は子供の頃から、環境保護に熱心であった。それはジャイアンもスネ夫も知っている。だが、22世紀の末期に起こった一年戦争で、21世紀以前の取り組みはご破算になる。のび太が妻を財団その他に関わらせないのは、静香の内に秘める激昂心が問題であった。特に環境汚染を躊躇しない組織である、ティターンズやジオンの残党に凄惨な拷問を加えた事もあるからだ。

 

「前にジオン残党がノビスケを狙ってきただろ?その時に、カミさん、兵士に拷問加えたみたいでね……。公安警察が表沙汰にしていないが、多分、士官層は相当やられただろう。本来は『存在していない』から、法律で禁じられてる拷問もできる。法律を適応しないでいいからね。古代中国の肉刑に近いこともやっただろうな、公安。表向きは自爆死しただの言えばいいからね」

 

二人は帰宅の途につく途中、このようなことを話し合った。のび太も公安警察の恫喝じみた『尋問』には引いているからで、ある意味、前身たる特高警察の残滓と言える、強引な手法である。

 

「ジオンとティターンズの残党はナチスと同レベルのレイシストに近いとはいえ……公安警察は手柄を焦ってるのか?ミッドチルダより露骨にすぎる」

 

「うん」

 

と、のび太が公然と訝しむほど、日本の警察組織は国家規模の手柄に強く焦っている。それは調も思っているらしく、同意の頷きをするのだった。

 

 

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