軍事的に連合軍の屋台骨であったカールスラントの没落と無力化、リベリオンの分裂は連合軍の形骸化を引き起こした。また、連携の拙さがダイ・アナザー・デイで露呈し、数カ国の軍隊が無力化したという事実は、欧州戦線の敗北の二文字に現実味を帯びさせた。だが、黒江たちとヒーローたちの本格参戦、地球連邦軍の介入で見事に勝利した。魔女たちはそんな戦局に寄与出来なかったため、社会的栄華を急速に終えていった。比較的に寛容な扶桑でさえ、世間的な視線が冷却化したのだから、世界的に深刻な影響が生じたのは言うまでもない。のび太は青年時代の彼が奮戦したり、各組織間の折衝などに活躍したため、扶桑で叙爵を受けた。その関係上、のび太の代以降の野比家はアジア地域きっての名家と扱われている。
基地に戻ったブライアンとジェンティルは改めて、入れ替わりを通達。武子もそれを追認。水無月かれん(キュアアクア)が医官であったので、ジェンティルは自動的にその仕事をすることになった。元々親類に医者がおり、医学部に誘われていたこととアスリートであった都合上、一定の医学知識をあらかじめ仕込まれていた。それに医官として勉強している水無月かれんの記憶がプラスされたため、あらかたの医療行為に問題は生じなかったのだ。ブライアンは(入れ替わっているのぞみのポジションの関係で)戦闘要員であったが、ブライアンがは(のぞみに長期的な入れ替わりを頼んでいる都合で)その代わりを務めた。ただし、のぞみ固有の明るい振る舞いは(ブライアンの気質的に)出来ないので、戦士としての立場を演ずることとされた。
「あんたも、難儀なことをすんのね」
「仕方がないだろ、こちらから頼んだんだから、それ相応に恩は返さんといかんからな。あんたも随分と穏やかになったな」
「うっさい。ハヤヒデから連絡あったけど、オグリさんの話だと、あんた、別の世界線だと……」
「ああ。それは薄々とわかっていたよ。別世界線の姉貴からの言付けをされたそうだな」
「あんたの現役としての行末を傍で見守ってくれってさ…。自分ですればいいのにって言ったんだけど……あいつは……」
「姉貴は頭が回りすぎるからな。それで、自分の運命を受け入れてしまったんだ。脚は治させたはずだが、再発と重症化を恐れてるんだろう。それを言ったら、私も同じ運命のはずだったんだがな……」
「あたしもよ。まったく……」
「あれは本来、一流どころにつきものの病なんだぞ」
ハヤヒデは運命を受け入れ、そのまま引退を選んだが、別世界線での妹の夭折を知り、相当に罪悪感を抱いたのか、親友兼親類のナリタタイシンに『自分に代わって、妹の行末を見守ってくれ』と頼み込んだと、タイシンは電話越しに伝える。既にウマ娘世界でも、サンデーサイレンスやキングカメハメハ、クロフネなどの血を継いでいる者たちの転じたウマ娘たちが隆盛を極めつつあり、ウオッカが現役を去れば、そこでブライアンズタイム系のウマ娘はほとんどいなくなる。キズナが血を継いでいる(母系で)が、父はディープインパクトであるので、サンデーサイレンス系に分類される。
「繋靭帯炎と屈腱炎は私たち種族の宿命だからね。本来は四足歩行の馬の病気なのに、二足歩行でも発症するメカニズムはドラえもんの世界の医学でも解明しきってないんだって。ただ構造的に、筋肉と骨格の基本強度限界の関係で全盛期のスピードを長時間の維持ができない。心肺機能も、宿す魂の使命を果たしたタイミングで急速に衰えるんじゃないか……って、佐渡先生が」
「オグリさんもそう推測していたが、こうもタイミングが一致すると、不気味なくらいだ」
「あんたも難儀なことをするわね」
「そうでないと、絶頂期に持っていた闘争心は取り戻せんからな」
ブライアンは闘争心を取り戻すために、プリキュアと入れ替わりを敢行。それを懸念していたゴルシが、ジェンティルドンナを巻き込んだのである。
「なんだって、ゴルシはジェンティルを連れてきたのよ」
「ナカヤマは都合がつかなくて、シャカールは興味を示さなかった、オルフェは座興に乗らなさそう、ステイはそもそも連絡が取りにくい……とかだ」
「マックはどうなのよ」
「あいつは生徒会の新メンバーに選ばれて、多忙なんだと。ゴルシにしては、まともな理由だ」
と、ウマ娘世界での事情もあり、ブライアンのお目付け役の追加は難儀。三冠の栄冠を頂いていることを考えると、相応の大物を必要とした。さらに、パワーでブライアンに確実に伍するとなると、ジェンティルやルドルフなどのトップレベルが必須条件になる。ルドルフは多忙であるし、そういうことに興味のない面々を除いていった末に、ゴルシはジェンティルドンナに白羽の矢を立てたのである。
「で、ジェンティルを連れて行ったわけね」
「あいつは普通に走るだけでトリプルティアラを取れるからな。ヴィルシーナくらいだ、同期で食らいつけるのは」
そのことから、ジェンティルドンナに同路線で食らいつけるのはヴィルシーナのみであることが明言された。実際、ヴィルシーナは当代屈指であるものの、ジェンティルドンナが強すぎるのである。
「あんたから見ても?」
「前世では早くに死んだから、見ていないがな」
なんとなく話し方が寂しそうなのは、前世で短命であった故だった。粗野な一匹狼を気取っていた全盛期からは想像もつかない振る舞いである。前世の記憶を得たことで、人格が変化したためだろうか。
「あんたも難儀なことを頼まれたもんだ」
「まったくよ。だけど、最後はひっそりと……ってのは嫌だし、乗っかったのよ。あんたのアスリートとしての行く末を見届けてくれって願いをね」
「それがあんたなりの意趣返しか」
「普通に生きていくと、孫の代でサイアーラインが絶えるってのもわかっちゃうと、いっそのこと、アスリートとして生きていくことで反逆してやろうと思ったのよ、因果に」
と、前世の記憶故の選択で、他の世界の自分自身とは別の道を歩むことを選んだブライアンとタイシン。二人は今後をアスリートとして生きていく決意をこの時期に固めたのである。
この時期の64Fの任務は、ティターンズ残党にザンスカール帝国やギガノス帝国、旧クロスボーン・バンガード、ネオ・ジオン残党が迎合した結果、各組織のMSが扶桑陸軍を圧倒しており、その掃討に地球連邦軍の新鋭MSを投入するに至った。別世界線の魔女たちにも開示されたそれらは(小型機でも)戦車では擱座すら困難な超兵器であることが一目でわかるもの。魔女の装備では、装甲に傷すらつけられない。故に、64Fの超人も(色々な兼ね合いで)同じ土俵に立っているのである。
「こんなのが、普通に使われているなんて」
芳佳Bは息を呑む。鹵獲された『ジムクゥエル』であった。ティターンズ残党は機体の数合わせをしなければならぬために、駆り出されていたと思われる。それでも扶桑陸軍の機甲部隊を圧倒するだけのポテンシャルは充分にあった。ザクの120ミリマシンガンを余裕で弾くだけの装甲強度を持つため、64Fの(より後の世代の)MSを掃討に必要としている。
「だから、同等の兵器で倒すのが手っ取り早いんだよ。下手すれば36cm砲を弾くしな、こいつら」
シャーリーAは珍しく、素の姿で芳佳Bに会っていた。ルッキーニBが激しく拗ねるからだが、ルッキーニBも最近は『同じ姿の別人』であるのを理解したという。
「ルッキーニのヤツ、おっ◯いバインバインじゃないと、拗ねやがる。どうにかしてくれよ」
「あれはルッキーニちゃんの精神安定剤なんですって。でも、久方ぶりですよ、あなたの素の姿」
「見分けつかねぇからなぁ。最近はやっとわかったって?」
「ええ。目つきが怖いとかで」
「仕方ねぇだろ、ドス効かせた声と目つき使わねぇと、日本で軍人生活はしてらんねぇよ。古い下士官に舐められるからな」
日本系国家では『士官学校卒の軍人は着任の際に、その部隊の再古参の下士官をぶん殴らないと、部隊を統率出来ない』という悪癖があり、それは自由リベリオン出身者でも同じに扱われ、シャーリーも、他部隊との共同作戦の際は相手方の最古参の航空兵をぶん投げるか、全力でぶん殴って、精神的に服従させるしかなく、扶桑軍の悪癖だと批判している。
「扶桑の下士官は我が強いからな。士官が出てくることを毛嫌いしてっから、士官は指揮を取る時、最古参を殴ることで空気を変えるしかねぇんだ。通過儀礼化してるから、下士官は昇進を目指すんだそうな」
そうした風土は日本連邦化で否定されたが、すぐには消えないので、シャーリーも否応なしにするしかないのである。特に、日本では1000時間以上で一人前とされるため、1949年時点で、飛行時間が700時間ほどのシャーリーは『ジャク』扱いされることがある。とはいえ、戦闘センス等は自由リベリオン最強であるため、他部隊からは一目置かれている。
「そうなんですか」
「全員が少佐みたいじゃねぇんだぞ?扶桑は武士気取りが多いのは事実だけど」
と話しながら、格納庫でのジム・クゥエルの検分を見学する二人。改装もされていないのか、コックピットはグリプス戦役以前の頃の旧世代式。武装もデラーズ・フリートの蜂起当時のものがそのまま使われていた。元々は憲兵を肥大化させたような立ち位置であったティターンズの機種らしく、対人センサーが強化されている。
「こういう機械が、遠い未来で戦車を裏方に落とすんですか?」
「普通に行けば、1000年くらいかかるかもな。特異な発達のあった世界でも、150年はかかったし。あのライフルも90ミリ砲弾を装填してんだ。戦車くらいじゃ、とても耐えられねぇ。天井を撃たれちまう」
「ビームはあるんですか?」
「あるけど、地上じゃビームは減衰する。だから、ああいう実体弾が未だに重宝がられてんだ。まぁ、色々な兼ね合いだ。街ん中じゃビーム・サーベルは使えるが、ライフルは使えねぇ。こいつは元々、憲兵みたいな扱いを受けてた連中に支給されてたそうでな……」
ティターンズは元々官軍であったが、政府が切り捨てたために賊軍と化した。その関係上、ジム・クゥエルなどの連邦系の外観持ちを用いる機会は無くなっていた。だが、転移した残党は数合わせで投入しており、連合軍の脅威であった。
「色々と胸糞悪い逸話も多いから、軍閥同士の闘いが終わった後は民間にほっぽりだされたそうなんだが、一部は残ってたんだな」
小型機の時代も終焉に向かっている未来世界では、一年戦争時の標準サイズのジム系は評価が再好転しており、ジェガンの使用が続けられている。これは小型化しすぎたことでの『耐弾性能の低下』の問題が急浮上してしまった故で、結局はジェガンの代替どころか、再生産が本気で検討される始末であった。
「これを撃破するには、魔女の装備どころか、重巡洋艦の主砲が必要だ。場合によっては、戦艦級の大砲がいる。それも場所によっちゃ弾く金属が使われてる」
ジム・クゥエルはチタン合金セラミック複合材の第二世代型を採用していた。一年戦争時のジムよりは耐弾性能に優れ、正面装甲はドムのジャイアント・バズにも数発は耐える強度を持っていた。そのため、第二次大戦時代の陸軍の大抵の火砲では傷を負わす事も困難であった。また、重戦車の火砲と同等の弾丸を機関銃として乱射できるため、戦車ではまず勝てない。つまり、戦車は兵器としての限界点を示されてしまったことになるが、それでも、パイロットすら取り込むことがあるスーパーロボットに比べれば、『常識』の範疇である。
「それでも、まだ常識の範疇だよ。それと、お前たちの世界は探させている。見つかれば、手続きが終わりゃ、帰れるだろう。問題は一つある」
「流れてる時間の違いだ」
「どういうことですか?」
「お前らが年食ってないように、こことそっちじゃ、流れてる時間の流れに違いがある。次元自体が違うと、そういう事があるんだ。ここで数年だろうと、向こうじゃ、数分も経ってない……なんて、ありえる」
「そんなことが……」
「少佐は嬉しいんじゃないかな」
「坂本さんが?」
「少佐は魔力量が多い方じゃないそうでな。その上、ガキの頃に無茶して、消費量が多くなってる。体質が変化したここと違って、そっちは数年以内に魔力が切れるはずだ。だが、あの人は前線以外では生きられない。他の業務を従卒に丸投げしてるくらいに、興味ないしな」
坂本はどこの世界でも、事務作業等は引退後にすることになるが、前線勤務でないと、精神の平静を保てない可能性が指摘されるなど、裏方に移る上での問題も多い。シャーリーはそれを知っていたので、芳佳Bにそれを教えた。
「書類仕事、坂本さんは嫌そうですもんね」
「こっちだと魔力を保って引退したからか、憑き物が落ちたように穏やかになってな。今は子育て中だ。24歳くらいだし」
「うちのお母さんは、もう一歳若いときには、私を産んでましたよ?」
「おおう、昭和初期あるあるだな…」
「それで、こっちのシャーリーさんが気にしてますよ。速度記録のこと」
「ああ、それか。四年前の作戦が終わってすぐに、部隊の連中のつてで、以前の記録の樹立の時に使ったオートバイを改造してな~……」
と、二人の和気あいあいは続く。シャーリーは(基本は)気のいい姉ちゃんだが、機動兵器などに乗ったりするとスイッチが入る。紅月カレンであった頃の血が騒ぐとは、本人の談。また、キュアメロディとしての変身能力も持つが、現役時代ほどは穏やかではない。
「シャーリーさんはどこでも、あんな感じなのね」
「基本はな」
「どういうこと、トゥルーデ」
「あいつな、色々と前世の記憶が宿って、能力も得たからだと思うんだが、ガサツになってな。子供を泣かせる要素あるんだよ」
と、バルクホルンAもミーナBの見学に付き添ってるのだが、シャーリーAのガサツさと、スイッチが入った時の苛烈さはバルクホルンも引いているところがあるらしい。
「キレると、私では止められん。夢原や、黒江閣下とかでないとな」
「あなたが?」
「私の固有魔法は単純な怪力だしな」
シャーリーAは完全にキレた場合は『原子崩し』を撃ってくるので、バルクホルンでは手がつけられない。それに耐えられる者が必要になる。
「滅多にあることじゃないがな。あ、それと、今だからこそ言えるんだが、ここでのお前は負の側面が最悪のタイミングで生じてな。生粋の軍人ではないという点がな」
「聞いたわ。我ながら、なんで確認しなかったの?」
「お前、少佐に好意を持ってるだろう?それが、閣下らの赴任で暴発したんだ。それも最悪の形で。おまけに、未来兵器の諸元もろくに確認していないってオチだった。それが重なって、四年前は大ピンチだった。閣下らが上を抱き込んでいなければ、お前は軍法会議で処刑コースだったよ」
バツの悪い顔をするミーナB。Aほどでないにしろ、坂本のことで取り乱す事はあるからで、Aはその全てが裏目に出たのだろうと悟る。
「何せ、あんな未来兵器が投入されるんだ。連合軍の陸戦兵器では、手も足も出んよ」
ティターンズの兵器では『旧式のガラクタ』扱いのジム・クゥエルでも、第二次世界大戦型のあらゆる兵器を圧倒できる。ティターンズは少数を使い、連合軍を蹴散らすという運用をしているが、耐弾性能が戦車の比ではないMSは連合軍の通常部隊を寄せ付けない。
「あれと同等の兵器をぶつけるの?」
「カウンターパートはそれしかないんだ。あれを破壊するだけの貫通力を持つ火砲は15cm砲以上。つまりは巡洋艦級だ。普通の野戦砲では、真っ向から破れん。空から攻撃しても、頭部の機関砲で60ミリだぞ?」
「……すごいわね」
「おまけに、最新式ではビーム兵器が当たり前だ。それなら容易に破壊できるが、動力炉に命中すれば、目も当てられん大爆発が起きる。これが新しい世代の機種だと、原子爆弾を爆発させたのと同じことになるそうでな。故に、実体弾は廃れなかったんだそうな」
「それじゃ、戦車も?」
「人型兵器は高価なんだ。おまけに、関節部分の予備パーツの供給が必要だしな」
バルクホルンは機械が苦手であるので、複雑な操縦が必要なMS等は動かさないが、知識はあるので、こうした解説を行っていた。とはいえ、流石に、業務に必要なパソコンやタブレット等は(芳佳Aの手助けで)使っているが。
「動かさない割に、知識はあるのね?」
「そうでなければ、整備班の顰蹙を買うからな。特に、うちは整備班泣かせのワンオフ・ハイエンド品だらけだから」
整備班に気を使うのが、64Fの不文律である。これはMS、VFやスーパーロボット…。戦車や戦闘機とは比較にならないほど複雑な機械であるからで、本来は遥か後の時代の常識すら身に着けなくてはならない苦労もある。
「お前も、帰ったら整備兵に気を使ってやれ。機材に細工されて、エンジントラブルで合法的に殺された将校もいるって話だ」
「…!!」
「だから、ウチは整備兵を入れ替えたんだ。とはいえ、引き継ぎ等の関係で長引いたが」
と、バルクホルンも明言する。64Fの整備兵は数回に分ける形で入れ替えた。旧501時代の整備兵は他の戦線に送られるか、あるいは口外を恐れた上層部に『消された』。これは上層部の意向であった。ミーナの人格変貌やヒステリックさが公になることで起こり得る、扶桑の暴動や外交問題を避けるためであった。更に、日本連邦が成立したことで日本側がカールスラント軍人の人種差別問題を追求していたため、さらなる大事を起こさせないための措置であった。
「それと、お前。整備兵の待遇を良くしていなかっただろ?それが不味くてな。下手したら、軍法会議で即刻の処刑もあり得たくらいの問題になっていた。それが入れ替えの理由だ。公にできんからな。個人的理由で、整備班の接触禁止事項を強要していたなど」
「……」
「その尻ぬぐいは大変だった。お前がヒステリー起こすわ……」
さすがのバルクホルンも愚痴りたくなるくらいの醜態を晒したと告げられ、ますます気まずくなるミーナB。更に。
「お前、少佐は同性だぞ?」
「な、何を、トゥルーデ?」
「うちの部隊の連中は知ってるぞ。お前にその毛があるの」
「魔女同士は罪じゃないでしょ!?」
「内輪でやるにはな…。問題は『そのために、扶桑の天皇陛下肝いりの増員』をぞんざいに扱ったことだ。年齢だけ見てな……」
「!?」
「お前は寛容で通っていた分、それが問題にされた。閣下たちは魔女のカテゴライズに入れられていても、実際はそれを超えた存在だった。人事書類を見ていれば、容易に避けられた。お前の実績と階級なら、第一級の機密に触れられるはずだとされたしな」
バルクホルンはミーナBへの忠告を兼ねて、Aの転落劇の顛末を教えた。日本とカールスラントの外交問題が更にこじれるのを防ぐための生贄にされたのは否めないが、統合戦闘航空団の政治性が64Fの復活の大義名分にされたとも告げる。
「この部隊が統合戦闘航空団の代わりだと?」
「有り体に言えばな。各国が人員を引き上げていったから、扶桑の世代超えのオールスターにせざるを得なかった。我々が居残ったのは、扶桑への償いのためだ」
カールスラント軍が有名無実化したせいもあり、カールスラント系の人員の大半は居残った。書類上はそれ以外の人員が転出していたので、連合軍なりの詫び代わりに、人員が留め置かれたというべきであった。また、艦政本部の人員の士気がズタボロの状態であり、せっかくの若手が(M動乱以来の変化を読めなかった責任を取って)自刃、あるいは拳銃自殺を自主的にしてしまい、設計ノウハウの断絶が危惧されたため、地球連邦海軍が設計作業を代行する始末であったため、連邦宇宙軍に太いパイプを持つ黒江たちの存在は絶対に必要であった。それを招いた遠因であるミーナが白眼視されるのは当然であった。
「それを説明するために呼んだのさ」
バルクホルンAはBより遥かに温厚さが滲み出ており、声色も優しく感じる。それは色々と気を張る必要が無くなったからで、ある意味、色々な責任から解放された場合の、一人の女性としての姿であった。