ダイ・アナザー・デイは『戦艦同士の砲撃戦』の良いテストケースになるため、各国は扶桑に観戦武官を派遣した。特に、史実では発生し得なかった『新戦艦同士の大砲撃戦』であったため、日本側も興味を抱き、観戦武官を派遣した。自軍は大和型と超大和型。敵軍は米独の最強戦艦。仮想戦記さながらの状況であった。
「小沢長官。超大和型をよく、こんな短期間で用意できましたな」
「友邦勢力の技術供与の賜物だよ。10万トン超えの軍艦など、本来は10年がかりで作るものだったからな」
超大和型の嚆矢『富士』。採算度外視の海上移動要塞として整備されたもの。全長は400mを軽く超え、排水量も数十万トンに達する。
「君等が大和の史実で脅したろ?それで、艦政本部がヤケクソになって設計したのだ。標準的な核兵器に耐えられるよう、硬化テクタイトと超合金ニューZ、ガンダリウム合金の複合装甲を与えて…な」
「ゴジラとやりあうおつもりで?」
「半分はそのためだ」
主砲も56cm砲。下手な列車砲よりも大口径である。海上幕僚長はこの威容に震え上がった。宇宙戦艦ヤマトの技術で造られた大戦艦。これを量産可能なように『スペックダウン』したのが播磨型。こちらも史実の超大和より大型の船体を誇る。
「君等の部下がイタリアとドイツの海軍の戦艦をバカにし、不参加を通告したろ?その兵力不足を補うために、生産を急がせた。まぁ、我々としては更新の良い方便になったが」
「政治屋が大艦巨砲主義と発狂していますよ」
「仕方なかろう。空母を本来の用途に供することができるようになったのは、去年(44年)のことだ。代艦の計画がグダグダになっておるから、容易に予算が通る戦艦を増産したのだ。潜水艦の攻撃用途転用も誹りがあるからね」
「これで戦力不足だと?」
「敵は容易に二桁の動員ができるが、こちらは六隻前後が精一杯。だからこそ、他国の戦艦の加勢を願っていたのだがね」
「イタリアの戦艦はカタログスペックはそこそこですが、アメリカの戦艦とやりあえる力はありませんよ。ドイツもしかり。イギリスも怪しいくらいです」
海上幕僚長(2019年前後当時)も、日米の『艦隊決戦用途に特化した』戦艦の戦に『平時の抑止力としての用途も設計に入る』欧州戦艦はお呼びでないと断言する。とはいえ、数合わせにイギリス戦艦を混ぜるのが、義理立てのギリギリのラインだと、彼は言う。これは色々な兼ね合いである。航続距離で言えば、扶桑戦艦の旧型は武装と防御の強化をすれば、燃料タンクの設置場所の減少を招く。結局、旧型の最後のご奉公として、対空砲を変えて駆り出すが、数合わせ以外の何物でもないと扱われている。
「八八艦隊なんて幻想は捨てた方が良かったんですよ。ドイツに空母を売るなど。あんな三流海軍に売るなど、政治家どもはイカれているとしか」
「第一次世界大戦の頃は世界二位の海軍だったのだがね。まぁ、一次大戦での悲劇や、国家の財政難、前皇帝の失脚でボコボコになったのは否定せんが……」
海上幕僚長にこう断言されるくらいに、第一次世界大戦後のカールスラントは海軍技術の断絶を味わい、結局は大海艦隊の再建という夢も『夢物語』として否定され、三流と揶揄される立場と成り果てていく。
「我が連合艦隊も空母を揃えづらくなります。大鳳や雲龍などは早晩に役に立たない大きさに成り下がりますし、80000トン級空母の艦載機部隊と合わせた運用費は、この時代の比ではありません。ですので、空母は今後、大型化と引き換えに、少数精鋭になっていく。アメリカでさえ、11隻しか維持できないようになりますから、その金食い虫ぶりはわかりますね」
「うむ…。魔女はどうするのだね」
「連中は強襲揚陸艦に移し、運用するのが最善ですよ。64Fのようなバケモノはともかく、一般の連中は航空機のほうが効果ありますが、垂直離着陸機は普通に造ろうとすれば、ここから30年以上は時間のかかる代物ですからね」
航空魔女の立場が悪化したのは、トップエリートたちのように『三次元的な空戦機動を活用できない上、火力が13ミリ機銃』という致命的な不足。いくら初速を強化できると言っても、怪異のような装甲弱体化効果(要はゲームでいう特効)が通常兵器相手では起きない上、人相手に撃てないという者も多いので、実際の戦力として勘定できる人数は少ない。兵科の存在意義が消失し始めているのは、戦果を上げるのは、いつも『一握りのトップエリート』であること。これが皮肉にも、魔女のやたらめったらな雇用に待ったをかけてしまうことになった。この時に『なりそこねた』者たちはマタギとして生きることになり、しばらくはこの時の『なりぞこない』がマタギの人口を支えることになる。また、運よくなれた者は、長らく戦線を支える羽目となった。黄金世代の人員は程なくして、佐官以上にする予定であったからだ。だが、日本側の意向で『佐官であろうが、将官だろうが、戦え』という指令が飛んだため、参謀型軍人が育たなくなる弊害が指摘されたが、参謀という存在にトラウマを持つ日本の政治家らはそれを意に介さなかった。また、黒江たちのように『他人が真似できない異能を持つ者は、戦うことで国家に奉仕すべし』という指針が定められた。これは戦争が終われば、強いパイロットをストックする必要はないという判断からだが、その戦争がいつ終わるのかという問題、そのような連中は、平和になった社会に適応できないだろうという問題もあったからで、育成枠は大きく縮小され、戦線の魔女の需要の大半を義勇兵と現有の人員で満たすことも同時に決議された。魔女は1年毎に少なくない数が入れ替わっていたが、国家総力戦がそれを許さなくなったのだ。その関係上、歴代プリキュアには、仮面ライダーやスーパー戦隊並の強さが求められた。とはいえ、プリキュアにはシステム上の制約が多いのも事実であった。そのため、単独でで変身できる者は、勤務時間中はできるだけ変身を維持することが求められた。更に言えば、高度な技術で改造された戦闘用サイボーグである昭和ライダーの高速戦闘に追従できるだけの強さを求められた。破壊力で言えば、引けを取らぬ者も多いが、元々が普通の少女であった故の『駆け引きの弱さ』も問題視されたのである。
――それから4年後。1949年の初秋――
「あなた達、中身は陸上選手なんでしょ?それなのに、なんで、本人と遜色ない戦闘ポテンシャルを引き出せるの?」
「陸上選手、とりわけ徒競走というのはな、どこで相手を抜くか、相手の実力の見定めが高度に求められるものだ。レースの引退後に市井の駅伝を走る連中もいるからな。…。ん、何のニュースだ?」
「ああ、ドラえもんの世界での日本の野党の議員がね、若年者、それも軍人に褒章を与えるのはどうかって言って、笑われてるっての。だから、扶桑に古くからある勲章が存続してんの。日本の基準だと、大尉以下で退役すると、そういったものに縁がなくなるから」
キュアマジカルが呆れ気味に話すが、TVモニターで流されている日本のニュースは褒章等の扶桑での運用を見直せと叫ぶ、老齢の議員のヒステリーな放言であった。
「やれやれ。この世界のドイツを滅ぶ一歩手前まで追い詰めておいて…。今度は軍隊に褒美無しで戦えか。呆れるな」
「この手のヒステリーが多いんですって。扶桑の人手で経済復興してるから、どこかでマウント取りたがるのよね。大恥かくだけだってのに」
ドラえもん世界の日本は第二の黄金期へ歩み始めた時期にあたるのだが、学園都市がロシア軍を駆逐したことで得てしまった『極東ロシア』の統治など、課題が山積していた。また、日本のお約束として、軍事に無知な議員は与野党問わずに多いが、扶桑の力なくば、経済復興をなし得なかったというコンプレックスからか、こうしたヒステリーを起こす老齢の議員は与野党問わずにいるという。
「下手したら、議員辞職に追い込まれそうなご時世というのに、こいつらも学ばんな」
「シビリアンコントロールを曲解してんのよ、日本人は。戦中の反省って大義名分で、警察が軍を抑え込む構図が長かったから。まったく、褒美がなきゃ、誰も従わないってのは、原始人の頃からの鉄則だっての」
「あんた、魔法世界に生きてた割に、世俗に詳しいな」
「現役時代に日本にいたから。生まれ変わる前は欧州の戦災孤児だったし」
キュアマジカルはそのあたりの事情がややこしいのだが、十六夜リコとしての戸籍を得た、この時点では世俗じみている。
「軍の士官を減らせとか宣うヤツも多くて…。戦時中に何いってんだか」
ルーデルのように、同位体が同位体なだけに、軍からの追放も検討されたが、『代わりの人材がいない』ための現場からの激しい反対で取りやめにされた例もあるのに反発した議員たちの恫喝的発言は多くなったが、決まって大炎上する。そのため、与党議員の発言は減ったが、野党は変わらずに行う。扶桑との軋轢の原因として、評議会を追放された腹いせのつもりだろう。
「だから、あんたらが酷使されてるのか」
「そうなのよ。魔女の子達に『相手を倒せ』って言っても、怖気づくから、私たちが出張るしかなくて。多分、この戦争が終わったら、兵科自体が解消に向かうと思うわ。科学が発展して、普通の兵器でも怪異を倒せる可能性が増したから、大人数を雇う必要も無くなるし、私たちのような奇跡じみた力でないから、失望されてるし。私達が異常なだけだけど」
魔女が最も政治的に苦境に追いやられるこの時代、生存権を守るためには、戦間期に迫害した黒江たちに(恥も外聞もなく)すがるしかなかった。サムライトルーパーや聖闘士のような異能も確認されたため、平凡な魔女の行き場は却って狭まった。『人を傷つけられない』。この点が国家存亡の危機に『何いってんだ!』となったのである。
「それに、人を撃てない連中も多くて。単に怪我させるだけでいいのに、それも怖気づいてね…。四年前の戦の時はそれで大問題」
「まぁ、いきなり持たせて、相手の脳天ぶち抜けとか言われるよりはマシだからな。やらなくてはならない時はあるものだが……」
「あなた、銃を持った経験あるの?」
「縁日の遊戯銃や、いとこ連中に誘われて、サバゲーをした経験がある。最近のモデルガンは外観がリアルだからな。それと、後輩のデアリングタクトが狩猟免許を持っていてな。その確認に行かせられた時に、ボルトアクションライフルに触れてる。先祖伝来という三八式を狩猟銃に仕立て直した代物だった」
「三八式って…。旧軍の武器で稼働するのが残ってたの?」
「奴のじいさんだか、ひいじいさんがマタギで、復員した戦後はそれで生計立ててたそうでな。それを、アメリカでレストアしてもらったそうだ」
「貴方なら、九九式でも余裕で撃てるわね」
「私達の身体能力なら、44マグナムだろうが、反動は余裕で抑えられるからな。シンボリクリスエスがバイアスロンを趣味でしているから、奴から銃器の取り扱い方は聞いた」
「なるほどね」
「私もまさか、仕事で銃を扱うことになるのは予想外だったがな」
シンボリクリスエスから銃器の取り扱いを改めてレクチャーされたと、ブライアンは語る。
「最前線だと言ったら、デザートイーグルを買えと言われてな。SIGやベレッタでも良かったんだが、荒事の多い最前線の攻勢部隊なら、それくらいが必要だと力説されたよ」
「リボルバーを使うのは、よほどの腕利きか、西部劇かぶれの好事家だから。九四式なんて、使うのは国粋主義者だけだし、前線勤務なら、ベレッタか、自衛隊からの官給品のSIGが普通よ。私は護身目的だけだから、官給品のSIGだけど」
「アサルトライフルはあるのか?」
「自衛隊が余った64式や89式を供与するって話が進んでたんだけど、野党と警察の横槍で、途中で棚上げ。それで、綾香が知り合いのドイツ連邦軍の高官に電話して、ヘッケラー&コッホ社から設計図を流させて、G3を採用させたのよ。アメリカ製じゃないから、陸軍も喜んで使うだろうからってね」
「西側諸国製の武器だから、財務省も文句言えんわけだ」
「そう。それも、銃器に定評のあるドイツ製」
二人は休憩がてらに、このような会話を交わした。これは史実の九九式小銃の末期型の惨状が知られていたために、警察と野党が横槍を入れたが、扶桑の工業力は大日本帝国の比ではなかったので、大恥をかいたという騒動が起こった。扶桑独自の自動小銃計画を潰して推進させていた計画なだけに、日本側の政争で潰されたのは大問題であった。緊急の代替として、黒江がNATO諸国内に築いていたパイプを使う形で、ドイツ連邦共和国に支援を要請。そうして緊急で採用されたのが『G3』。カールスラントで前身となる試作銃が完成済みであったためもあり、その資産を流用するためでもあった。カールスラントは本来、StG45として採用するはずであったが、カールスラント軍の霧散で宙に浮いていた。それを扶桑が緊急で採用したことになる。九九式までのボルトアクションライフルを代替するものが緊急で必要であったからである。
「自衛隊の余剰で近代化させる計画を潰しちゃったようなものだから、軍需産業から文句が出たらしいけど、外征型軍隊の需要は、防衛型の軍隊とは違うのよね」
サブマシンガンなども、自前の一〇〇式機関短銃があるのに、戦後型の『イングラムM10』などが薦められることに不満を覚える将兵も多い。とはいえ、対人特化の火器は、魔女には好まれない傾向が強いのも事実だ。
「だから、戦前日本の銃器のポテンシャルを証明してくれって言われてんのよ、うちの部隊。こういうのが困るのよ」
戦前日本の銃器は8x22mm南部弾由来の低威力を抱える場合が多いが、反動が小さいので、体格に劣る日本兵でも扱いやすいという利点もあるにはある。とはいえ、相手が半自動小銃を持つリベリオン軍なので、64Fでは、一〇〇式機関短銃用に使われるのがせいぜいであった。史実での一〇〇式は『そもそも出回ることが少なかった』と揶揄されているが、扶桑の戦線では『拳銃弾と補給が統一できる』と好評であったので、1944年から45年度に増産された経緯がある。だが、殆どが空挺部隊などの装備品とされたので、64Fが保有するのは奇跡に近かった。
「一〇〇式はその点じゃ楽よ。余ってる南部式自動拳銃の弾を使い回せるから。私達なら、連続射撃の反動もないようなもんだし。陸軍も溜飲が下がる思いって表明してるそうよ」
旧軍と共通した装備はこの頃に(急速に)戦後型の装備によって淘汰されていったが、需要に供給が追いつかないために、公然と使用が続いた装備も多い。一〇〇式機関短銃もその一つ。アメリカのブローニングM1918自動小銃などでは需要をカバーできないため、結局は残存品の使用が認められた。主に機関銃関連で多いが、これは自衛隊のものが(よってかかって)欠陥を抱えていた関係であった。MG42などは(ナチスの使用した銃器ということで)政治家から睨まれるが、旧軍の機関銃であれば、色々な理由で使用が許される。そんな裏事情も、九九式軽機関銃などの使用継続の理由であった。
「まぁ、弾薬庫の在庫を無くさんと、新品は置けんしな。それと、戦後直後に米軍のミスで、旧軍の火薬を処分しようとしたら、山ごとトンネルをぶっ飛ばした事件もあったそうだ。それもあるから、在庫処分には寛容なんだな」
「情報は伝わってるから、連合軍は腰抜かしたそうよ。前線で使わせたほうが、合法的に在庫を処分できるって、扶桑軍の高官を説得したそうよ。21世紀の神奈川に、こどもの国ってあるじゃない?あれ、元々は旧軍の弾薬庫よ。それで、扶桑の同じ座標の弾薬庫を遊園地に転用させようとしたけど、代替の施設が確保できない上、戦時になったから、当分は棚上げ。60年代までには、遊園地にすることで協定が結ばれたとか」
「まぁ、軍施設を閉めようとした途端に、必要になった。よくあるオチだな」
「まぁ、下手に遊園地作っても、だいたいは某夢の国や映画会社のテーマパークで事足りちゃうから、史実の戦後みたいに、ポンポン作るのも……って、扶桑は考えてるのよ」
「まぁ、小さい遊園地が90年代の終わりから2000年代の始めに次々に消えていったものな。藤沢の近くにあったな、そういえば……。親父だか、おふくろが子供の頃に……」
「横浜ドリームランドのこと?随分懐かしいのを」
「ワイルドブルーヨコハマってのもなかったか?」
「地元民でも、あれはあんまり覚えてないって話よ?」
「そうなのか?」
「のび太さん曰く、お父さんが一回連れて行ったきりで無くなったっていうし。発想からして、バブリーだったそうよ」
「なんで、あんたがそれを?」
「仕事で知り合った、知り合いの自衛官の人が、跡地に立ったマンションに住んでるのよ。それで」
と、妙にニッチな施設のことを知っていたキュアマジカル。のび太も、在りし日に一回連れていってもらったきりだというその屋内プール施設。のび太が幼少~少年期を過ごした時期に存在したが、後世からは『バブルの夢の跡』と語られるようなレジャー施設。あるいは時代とともに消えていった遊園地。のび太から聞いていると言うあたり、のび太は(父親ののび助が大型レジャー施設を嫌っていたのもあって)、幼少期の頃には、その当時にはあった『小~中規模の遊園地やレジャー施設』に連れていかれた事があるのだろう。
「ああいう小さい遊園地もだけど、バブルの弾けた後、各地のレジャー施設って、あの二つに圧倒されて、次第に消えていったのよ。新しく造っても、ニーズが合わなくて、採算が外れたり…」
「だから、扶桑は?」
「新しく作るのをためらってるって話。それに、明治時代生まれの年寄りは、戦時は耐えしのげって喚くのよ」
それは武士の時代が終わって、80年ほどしか経過していない扶桑皇国のジレンマであった。既存の施設で遊ぶのは許すが、戦時に『レジャー施設に大金をかける』ことを許さないという、変に史実の戦時体制下での思想統制のような思考回路を持つ『安土末期~明治時代の生き残り』がおり、そういう輩が地方都市で発言力を持っているケースが多い。だが、もはや、武士の時代はとうに過ぎ去っている。また、軍事と銃後の役目が明確に区別されることが近代化である。
「昭和25年になろうっていうご時世に、明治生まれが口出しするのか?明治45年からも30年は過ぎてるはずだぞ」
「地方の名士ってのは、たいていが古い時代の風習を家族に強いてるものだから、日本側も地主の法的な解体を考えてるそうよ」
扶桑は新旧の思想の相克の時代を迎えている。その間で苦しむ軍と民たち。キュアマジカルの言葉からは、そんな事情が読み取れた。