エディタ・ノイマンは不幸にも、デロス島の一件で失脚し、以後のコンドル軍団構成員の追放に至る流れを作ってしまった。彼女は撲殺寸前の重傷を負ったのみならず、心にも深い傷を負った。デロス島自体は圭子のストナーサンシャインで解放されたが、カールスラント系武官の連合軍内の立場を決定的に悪化させる流れを醸成してしまった。だが、陸軍の分野では替えが効かなすぎたため、結局は顧問という形で復権する将軍が続出した。特に機甲戦では、カールスラントが一番に研究していたためである。ロンメルとグデーリアンは軍を政治的理由で追放されたが、配下の装甲軍が装備ごと日本連邦に義勇兵として志願してくる有様であった。この装備ごと義勇兵化する事態に、カールスラント政府とドイツ連邦共和国は強く困惑。結局、ドイツの強い働きかけで『カールスラント軍の海外勤務』扱いにすることで、カールスラントからの出向中に戦時に巻き込まれた体裁にされた。これは元の東ドイツ軍の軍人の統一ドイツでの取り扱いに準じた扱いであった。これにより、終戦後のカールスラント軍への奉仕を義務化させた。これは帝政ドイツ相当の国家の存在をドイツ連邦共和国が追認するのと同義であった。また、持ち出された装備は扶桑への無償供与という体裁にされた。ただし、ドイツ連邦共和国はカールスラントに戦後型装備や、工業機械を提供することとされた。カールスラントから多くを強引に奪ったドイツ連邦共和国は、その咎をNATOに追求された。結局、カールスラントの本土帰還を容認し、『無実』と確認された人材の公職復帰を促進させることとされた。こうして、ドイツは現地に多大な混乱をもたらしただけに終わり、日本のように『旨味を味わう』ことはできなかった。それどころか、エルヴィン・ロンメルやハインツ・グデーリアンといった名将軍を追放したせいで、カールスラント陸軍が使い物にならなくなるという弊害をもたらした。一連の混乱はカールスラントの暗黒時代と評された。
扶桑は機甲戦を理解せぬ騎兵・歩兵閥が一挙に失脚した事による内部の混乱をその二人の顧問就任で払拭することに成功。だが、備砲の要求水準が一気に105ミリ砲以上に飛躍した事による、現場の大パニックは拭いきれなかった。砲弾の備蓄の問題があったからで、結局、余った砲弾は野戦砲に回され、数ヶ月の会戦で消費され尽くしたという。また、扶桑在来兵器で唯一、前線で生き残った『五式砲戦車』は備砲(砲弾も)と全箇所の装甲の強化をなされた後期型が造られ、自走砲代わりに運用された。大戦型機動戦を前提に設計されたものが(他の技術の進歩で)自走砲代わりにされる。それもまた、歴史の皮肉であった。これは90ミリ砲搭載の大戦末期型の戦車には、100ミリ程度の装甲では慰めにもならないからで、カールスラント系重戦車の装甲厚すら陳腐化させる、リベリオンの次世代戦車砲は恐怖の的であった。それを更に駆逐するために、A-10攻撃機が投入されるなど、堂々巡りのような展開になってもいた。一般部隊も仕事自体はしていたが、士気が低いため、『肝心なところで、踏ん張りがない』と言われる始末であった。また、人事部が不祥事の責任を負わされた際に、所有の書類を焼却してしまったために、また大問題になるなど、機能不全に陥っていたため、広報部が人事を発表出来ないという問題が発生。結局、坂本が(このような事態を想定して)写本をしていた記録で復元がなされたため、その功績で、大佐に正式に任じられ。階級は(武士的な気質が政治家に嫌われたため)以後の兵役期間において、それで据え置かれることになった。
この時代以降、表立って政治的思想を口にすると、それだけで、出自を問わずに出世の道が閉ざされるために、軍人の間で政治議論がタブーとなる。それが許されるのは、特権を持つ『極限された』一部のみであったからだ。扶桑は武士時代の名残りで、軍人は政治に興味を持つ風習があるが、それが否定され、日本の意向で、旧来からの軍人の多くが使い捨て同然に扱われていった。しかし、代替の人員の育成は時間がかかるので、黒江らの息のかかった人員のみは(政治に興味無しの実直さを持つので)重宝された。そのため、黒江らの元の同僚や部下が加速度的に要職へ取り立てられていった。旧来の参謀や高級将校らと違うモラルで行動すると期待されたからで、この時期に『旧軍的発想』の多くが淘汰され、逆に、黒江の広めた『自衛隊的発想』が定着し始める。菅野は本来であれば、(攻撃精神の塊であるので)政治に疎んじられる側に分類されるが、異能者となったおかげで、それを免れた。また、平時が遠い時代には、如何に人員消耗を抑えつつ、決戦に勝つか。それが優先された。とはいえ、兵器の質が全体的に低いため、扶桑はその強化と供給体制の確立に、扶桑は年単位の時間をかけることになった。
在来兵器の多くは淘汰されたが、五式中戦車改は実質的に(装甲の厚い61式戦車も同然であったので)61式相当であった幸運で生き残った。戦役後には退役の予定とされたが、74式の製造に手間取っていたり、センチュリオンやチーフテンが普及してしまう状況の阻止のためか、現役に留まり続けた。既に性能的に旧式化しつつあったものの、M4中戦車が敵にまだ多数残っていることから、『四式以前を使うよりはマシだ』ということで、使用が続いた。センチュリオンやチーフテンが最終型相当で配備されている時期においては、二線級でしかないが……。また、五式砲戦車は自走砲用途としての強化で、主砲を155ミリへ強化し、戦後式砲弾を撃てるようにした改良型へ切り替えられ、猛威を奮った。元々、駆逐戦車として期待されたが、実際は自走砲同然に運用された。駆逐戦車という区分が戦後に淘汰されたことによる判断であったが、戦車不足により、本来の戦車掃討任務に供され、戦果を挙げた例もあった。駆逐戦車は区分としては淘汰された(自走砲と統合された)が、戦場ではしばらく生き続けることになった。
MSは基本的に、1949年の戦車では倒せないため、扶桑陸軍は(耐弾性能を重視して)陸戦型ガンダムを所望したが、同機種は正式な生産ラインがなかったので、現存せずと回答を受けた。その代わりに、陸戦用に調整されたジェガンが支給された。宇宙用としては旧式化して久しいものの、地上用としては、新しいほうの年式であったためであった。また、地上での運用では、ビームシールドは過剰性能とされたので、通常シールドであるジェガンは古くからの『フレーム構造』である故の単純さが評価されたのである。むやみに最新技術を積み込むサナリィが没落したのは、『市井の機械製品での応急処置が出来ない』という難点が、白色彗星帝国戦以降のゲリラ戦でマイナスに働いた(マルチプル・コンストラクション・アーマー技術は市井の機械部品で直せる代物ではないので)面が大きい。とはいえ、クロスボーン・バンガード残党対策で、ガンダムタイプが使われることに(経費面で)憂慮した者達が、小型量産機では成功作に分類されるジャベリンの供与を要望した。ジャベリンも新しい機種とは言えないが、ガンイージやガンブラスターは(シュラク隊の悲劇もあり)マイナスイメージが強かった(異様に生還率が低いデータが有る)のと、リガ・ミリティアの自然消滅と、軍縮の空気で生産ラインが破棄されてしまっていたため、次善の策で、生産ラインの稼働中のジャベリンが選ばれた。基本的にジェガンの部品の流用が効く(原型機のジェムズガンが『ジェガンの基礎設計のいいところを受け継いでいた』ので)からで、そこも補給上の利点の重視によるものだった。
オトナ世界が『滅びに向かい、地球人が淘汰される世界線』であった事による問題は、大人のぞみを1000年女王への叙任に導いた。地球を守るための選択であった。戦いはいよいよ主力艦同士の激突となってきたわけである。中央突破を目論む白色彗星帝国、それを阻止せんとする地球側。同世界の地球人たちの知らぬところで、人類の存亡を賭けた海戦の本格的な幕が上がった。
「敵前衛艦隊、出現!!」
「数は?」
「戦艦がおおよそ数万、空母以下は無数!!」
「無人艦に拡散波動砲を撃たせろ!その後に、突撃隊形を取る!!」
「敵艦隊の速度、30宇宙ノット!」
「無人艦の突撃速度を上げろ!拡散波動砲を撃った後は敵艦に突っ込ませろ!」
銀河連邦での共通単位『宇宙ノット』。これは船の速度単位を宇宙戦艦に当てはめて運用することで生まれたもので、おとめ座銀河団全体で普遍的に使われている単位である。なお、かつての地球の海戦同様、30ノット以上で高速艦扱いである。戦術単位では、それが重要な要素である。無人艦は白色彗星帝国戦後の地球では禁忌扱いだが、数合わせで投入されている。使い捨てのドローンと同じ扱いだが、波動エンジンと波動砲を持つ艦を使い捨てにするのには反対論があったが、つべこべ言える状況ではないので、そのままの作戦となった。また、数が無尽蔵に近い敵相手なので、無人艦は使い捨ての自爆兵器同然に運用された。
「A戦域、自爆プログラムを実行」
「B戦域、拡散波動砲の発射を実行」
無人仕様の主力戦艦級は同艦の増産過程で生まれたものだが、戦艦の無人化に『宇宙五大頭脳』たる真田志郎が猛反対したので、ある程度の数は造られたが、死蔵状態にあった。だが、結局は白色彗星帝国との戦で、高級士官が壊滅状態に陥ったために、妥協的に再度生産された。そんな経緯を持つ。より最適化した無人艦までの繋ぎという位置づけでであった。
「提督、フェーベの空母部隊から打電。我、奇襲に成功セリ」
「そうか」
大人のぞみらは土星空域の外縁部にいた。宇宙戦艦ヤマト率いる空母部隊はかつてと同じく、フェーベ付近の空域を決戦空域に選び、これまた奇襲を敢行していた。有人の飛行部隊の主力はこの空母決戦に駆り出されていた。つまり、第二のフェーベ航空決戦であった。しゅんらんの指揮管制モニターには、フェーベに配された空母部隊の奮戦ぶりが映し出された……。
古代進のコスモ・ゼロ率いる第一次攻撃隊は(かつてと同様に)敵空母部隊へ奇襲を敢行。今回は直上(宇宙空間でも、戦術単位での『上下はある』)からの急降下爆撃から始めた。
「全機、攻撃開始!!空母を潰せ!!」
この号令一下、コスモ・ゼロとコスモタイガーなどの大編隊が急降下爆撃を敢行する。これまた(艦載機の発進寸前であった)絶好のタイミングで攻撃を行えるという幸運により、(以前よりミサイルの質がいいとは言え)面白いように、空母はあっけなく炎上していく。しかも今回は初手の対空砲火も間に合わずという、白色彗星帝国の大失態であった。
「古代さん、すごい。あんな旧型で、よくもまぁ」
この時は初代コスモ・ゼロを持ち出した古代進に、大人のぞみは関心する。コスモ・ゼロは量産の頓挫した後は、大隊長クラスの専用機といった体裁で配備されており、連邦軍でもかなり貴重な機体である。改修型の開発も進んでいるものの、やはり少数配備に留まる見込みであった。
「第二次攻撃隊も続くよ!!」
この時、大人のぞみはリ・ガズィ・カスタムのBWS形態に乗り、Z系の部隊を率いていた。護衛の戦艦などの排除のためで、戦闘機はミサイルを撃ち尽くした後は火力が極端に下がるが、MSはエネルギー兵器が多いが、原理の都合上、ガミラスや白色彗星帝国が前提とするエネルギー兵器防御の影響を受けない。それにより、戦闘機では手に負えない相手の撃沈に使われる。
「まさか……ね」
まさか、別の自分が飛行隊の隊長を務められるだけの階級にまで出世しているとは思わなかったので、本心としては驚きであった。
――一介のしがない教師で終わるよりは、国家の英雄として扱われたほうがいい――
かつて、戦いに青春を費やしていた身の上な以上、今更、平凡な生活には戻れない。ましてや、21世紀頃の教師などは、サラリーマンも同然(しかも、土日を休めない場合が多い)の立場。やってみると、如何に精神をすり減らすだけの場であるか。それを理解した。それも、大人のぞみがキュアドリームに戻る事を望んだ理由の一つであった。
(曾祖父さんたちの世代が、太平洋戦争が終わっても、軍隊生活を忘れられずに、自衛隊に入り直した気持ちがわかった)
皮肉なことに、戦いから離れたことが、大人のぞみの人生に影を落としたことがわかる。なのはもそうだが、一度でも、自分で戦ってしまえば、両親が望んだであろう『平凡な人生』は歩めない。それは戦争だけに限らず、陸上競技などでも起こり得る。
(スポーツ選手にしろ、引退した後に、犯罪者に落ちぶれるなんて、ザラだしなぁ。人は何かかしらの形で戦ってないと、本能を満たせないのかもね)
なのはにしろ、のぞみにしろ、異能が拠り所になった者は、それなしの生活をしようにも、上手くいかない。なのはの場合は『それで周囲に認められたから』、のぞみは『それで想い人の力になれたから』。理由は違えど、そのベクトルは同じ。
(なんだかんだで、あたしはこの姿にならなけりゃ、何の目的も持たないで、ダラダラと生きてたかもしれない。キュアドリームであることで、本来なら、10代の姿で会えない時代に生きる子たちとも会えた。ココには悪いけど、やっぱり、あたしは……)
大人のぞみはある意味、『異能を得て、非日常を強く体験してしまった故に、それが無くなった後の平凡な毎日に耐えられなかった』場合のサンプルであった。のび太らがドラえもんの去った後の人生で幸せを手に入れたのと対照的であった。また、のび太(少年期)に比べても、のぞみは『キュアドリームである』ことが青春期のアイデンティティであった上、叶えた夢の実際の様子が『あまりに過酷かつ、非情である』が故のギャップが大きすぎたのである。自分の曽祖父らの世代が味わったであろう気持ちを理解した大人のぞみは、皮肉なことに、周囲の望んだ平穏よりも、戦いに生きることを選んだのである。
「いけっ!!」
スティック(一時に流行ったアームレイカーは廃止されつつあった。ジオン由来の技術であったという、元ティターンズ系の派閥の意向もあったが、整備性の悪さという現場からの不評が大きかった)のトリガーを押し込み、BWSのメガ・ビーム・キャノンを撃つ。MS形態で『ハイメガランチャー』にする事もできるように改良されている。これは基礎設計の改訂が(技術の進歩で)繰り返されたためで、ビームの出力も計画当時の想定の数倍である。白色彗星帝国の駆逐艦は無砲身の回転砲塔をハリネズミのように持ち、地球では巡洋艦に分類される体躯を持つ。回転砲塔のビームは当たれば、地球の駆逐艦や水雷艇程度は粉砕できるという。そのため、如何に回転砲塔を潰しつつ、撃沈するか。コスモタイガーの機関技術で恒星間航行艦の艦上機にふさわしい航続距離と火力を手に入れた『Z系可変機』の力の見せどころである。
(敵の艦は想定外のものには脆いというけれど、思いの外だな。恒星間航行艦の割に……)
恒星間航行艦は地球人の考えているように、頑強な構造を持つわけではなかったりする。エネルギー兵器に耐久性を発揮しても、原始的な火薬などへの防御は発泡スチロール並の脆弱さだったりする。地球連邦軍は土壇場でそれに気づき、無力ぶりを露呈したフェーザー砲を捨て、物理的破壊力を発揮できるショックカノンの開発に傾倒した。そして、フェーザーは嘘のように消え去り、ショックカノンが地球連邦軍最強の艦載砲となった。これはそれを超える『パルサーカノン』が開発されるまで続くことになる。そして、地球連邦軍では伝統的に、宇宙艦は頑強な構造を持たせられるが、これは宇宙怪獣(分かりやすく言えば、古くから恐れられたキングギドラとか)との交戦が考えられていたからで、そこは怪獣の存在を恐れ続けた地球特有の事情があった。
「なんだか、シューティングゲームみたいだけど、ガチの戦争なんだ。生かして帰さないよ」
視界いっぱいに展開する白色彗星帝国の大艦隊に、大人のぞみはTVゲームの場面を連想しつつ、部隊を率いる形で、空母を重点的に狙う。
「飛行甲板を狙おう!!敵機に飛び立たれれば、こっちがジリ貧だ。一機も飛び立たせないように、蜂の巣にしていこう!!」
「了解!!」
のぞみたちは火力を飛行甲板に集中させていった。白色彗星帝国の空母は、地球連邦軍のように、水上艦由来の形状はしていないが、飛行甲板はちゃんとある。そこを狙うのである。空母は基本的に『攻撃されれば、最も脆い』艦種の一つであるので、地球連邦軍はガミラス戦まで、MSの台頭もあり、宇宙戦闘機の宇宙戦での有効性に疑義を抱いていた。だが、宇宙戦艦ヤマトが有効性を示してからは、宇宙空母共々に復権しつつある。通常の戦闘機はMSや可変戦闘機より(調達費が)安価であるからだ。しかし、根本的に数は不足しており、可変MSの趨勢が飛行型であったのは、それを補う意図もある。また、四足歩行型への可変は『それはゾイドでいいだろ』というティターンズの大物高級将校(バスク・オムと噂される)の鶴の一声で廃案に追い込まれたが、アンギラスなどの生態データから、有用性が主張されたという。だが、主戦場は宇宙となり、奇異なアイデアが採用される余地は消えていった。また、非人形であることも多いデストロイドの勃興も理由であった。
「今後の憂いを断つためだ。恨むなよっ!」
大人のぞみはリ・ガズィ・カスタムを操り、敵艦を徹底的に叩く。「オトナ世界」の地球人の技術では、土星圏で起こる『地球人の存亡をかけた争い』などは知るよしもない。だが、プリキュア経験者に社会的圧力はかけられるので、プリキュア達が決起したという証拠が必要である。のぞみ、トワ、ほまれなどはその証拠として宣伝されるだろう。人知れず戦っていても、それがやがて、人々の拠り所となる。仮面ライダーやスーパー戦隊、宇宙刑事らが証明したことだが、その集団心理が、オトナ世界のプリキュア経験者を苦しめることになるのも予測済みであった。それ故に、大人のぞみは(戦いを捨てた後輩らの分も)戦場に立つのである。オトナ世界のココにとっては、実に皮肉極まるが、戦わなくては、誰も生き残れない時はやってくるのである…。