ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百五十八話「二つの世界にて 38」

扶桑陸軍は結局、魔女偏重を叩かれたため、反動で魔女関連予算を減らした。だが、進行中の計画は止めようがないので、根本での次世代までの繋ぎ扱いで『チト』、『チリ』といった開発中の陸戦ストライカーはそのまま開発された。とはいえ、チヘ以前に比べれば、遥かにマシな性能であったのも事実であるので、懸念された生産枠は維持された。連合軍そのものがガタガタな有様なので、前線部隊が流出してきたカールスラント製装甲脚を好むので、その抑止の意味もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空軍は陸海空の防衛を一手に引き受ける有様であったが、その実像は『ほとんど数個部隊しか恒常的に動いていなかった』のが正しい。これは部内の旧陸海軍航空隊間の抗争があるからで、64Fが必死に戦う中、肝心の組織が抗争の有様では、公にはできなかった。ただでさえ、ダイ・アナザー・デイ後に人的にガタガタにされた上、残った人員同士でいがみ合うのでは、人件費が絶望的に削られるからだ。

 

「装備だけで手一杯な有様だというのに、今度は内部抗争の隠蔽か…」

 

「ええ。数年前からというものの、人員は内外の意向で減らされましたからな」

 

「宇垣など、極道の鉄砲玉扱いだ。豊田くらいは代わりがいくらでもいるからいいが……」

 

山本五十六は岡田啓介と鈴木貫太郎の隠居、米内光政の逝去などで、長老に近い扱いへなった。史実ではとうに戦死していたので、ある意味では幸せであった。本来、日本は1945年八月十五日付けで、旧軍での将官を一括で退役扱いにしたかったが、扶桑への内政干渉になることから、結局は『太平洋戦争で死んでくれたほうがいい』となったことに呆れている。さらに言えば、海上自衛隊に戦艦や砲熕型巡洋艦の指揮は出来ないという現実問題があった。海自のできた頃には、戦艦や巡洋艦(砲熕型)の時代はとうに終焉していたからであった。

 

「どうするのです、山本長官」

 

「今は大臣でも無くなったがね。まぁ、呼び方は好きにしたまえ。まぁ、宇垣には悪いが、どこかで、華々しく散ってもらったほうが幸せかもしれん」

 

と、宇垣纏は首脳陣に死を望まれていた様子がわかる。

 

「豊田や宇垣は大艦巨砲主義者だが、日本に戦艦の指揮に耐えうる人材がおらん以上は、使うしかあるまい。黒江くんらに指揮させればいいのだろうが、あの子らは元が陸軍だから、日本からは嫌われている。あの子らは航空機のパイロットなのだがね」

 

と、黒江らは元々は陸軍に属していたので、日本からは睨まれている。だが、開明的であった航空部隊の出身なので、無碍に扱えない。その事から、前線で使い倒される運命であると、山本五十六は語る。

 

「あの子らが海軍にいなかったことは不幸であるかもしれん。だが、贅沢は言えん。君も戦闘機無用論で睨まれてる身の上だ。戦闘機パイロットを多めに育成しておかんと、君を失脚させようとする者らにつけこまれるぞ」

 

「ええ。それはわかっております」

 

扶桑軍は結局、史実で有能とされた『一部の将校』らが末端の兵を統率する構造へ変質していた。源田実は妥協的(戦中の失敗も多いが、ブルーインパルスの生みの親である)に空軍の総司令に祭り上げられたと、政治に揶揄される身の上であったが、当時の参謀で数少ない『実務型』であったという事情もある。更に言えば、菅野が敬服している唯一の参謀であったからだった。

 

「君は坂本大佐に嫌われていたな」

 

「戦闘機無用論を言っていたのは、戦前のことですし、今は戦闘機搭乗員の育成枠はその頃の10倍に広げています。しかし、悪印象は消えんものですな」

 

「私とて、妾との関係を批判されとるよ。そういう時代なのだがね。成功した男は妾を持つという……」

 

山本五十六は史実で、妾との駆け落ちを手紙に書くほどであったため、戦後日本の女性から多大な不況を買っているが、明治生まれかつ、元藩士の家柄の家柄、地方出身のコンボであったため、沈静化しつつある。

 

「今日、異能者に終身の軍籍を与える法案が通った。あの子たちに苦労をかけることになるが、軍全体を動かして、本土防空に負けるより、一部の有事対応部隊を暴れさせた後で動かしたほうがマシだと考えたそうだ。地球連邦軍の保守派を笑えんよ、我々は」

 

 

皮肉にも、その現存戦力主義というべき消極的ドクトリンは、地球連邦軍の設立後もハト派の基本姿勢として引き継がれ、ロンド・ベルなどにおんぶに抱っこの有様となるのである。その連邦軍は苦肉の策として、有事には、『アースフリートが正規編成の部隊を指揮下に収められる』という形で対応した。その考えもまた、Gフォースの事例に由来する。つまり、日本連邦の日本側の消極的ドクトリンは、数百年後の地球人に多大な悪影響を残してしまうのである。これは史実の日本軍の反省によるものと釈明しているが、ことごとく、攻勢の好機を逸する始末であったのも事実であった。また、良質の将校を精鋭部隊に一点集中するドクトリンには批判が多いが、実際に343空や台南空などの精鋭部隊の成功例があるので、扶桑に反論する余地はなかった。また、テスト部隊に良質の将校を配属させていた事自体が批判されるなど、扶桑の軍事的常識が通用しなかった。結局、前線で強い将校は『死ぬまで戦わせたほうが銃後を納得させられる』状況の醸成に伴い、異能者に頼り切りになってしまったのである。

 

 

 

 

 

 

日本の文民主導の施策により、陸軍も、連合艦隊も形骸化が進んでしまったため、空軍が3次元的な戦闘を展開せざるを得なかった。また、気骨ある将校の大半が軍から追放されたため、組織が機能不全を起こす始末であった陸軍と連合艦隊。この完全な解決には長い時間を必要とするため、空軍が双方の機能を代行せざるを得なかった。日本側はこの有様に困惑。結局は魔女へ、前線から退いた後の進路……侍従武官に代わる『最高の名誉ある配置』を創出せねばならなかったり、異能者と異なる扱いにせねばならないという事情により、旧来からの魔女は『金食い虫』と嘲られる立場に墜ちてしまう。だが、通常の兵士よりは確実に怪異を討伐できるため、金銭面の優遇策は継続された。異能者は『Gウィッチ』と呼ばれていたが、魔法と別の異能が主体であるという事情の周知と内部抗争の勃発により、別カテゴリに再分配されたのである。この過程で、連合艦隊の魔女の中堅が軍国主義のレッテルで追放され、航空隊自体が機能不全となったのである。この追放の混乱が皮肉にも、通常兵器の発達を促す事になったが、同時に、エンジン開発能力の減退をも招いた。この混乱により、航空兵器の開発能力に致命的に近いまでの減退を起こした扶桑は『当面は史実で実績のある兵器のライセンス生産に甘んずる』ということにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

自国の兵器開発自体がそのような惨状であったため、人員は外国の新兵器の購入促進を要望。その流れで、中小国は積極的に武器を扶桑へ売り込んだ。扶桑は拳銃の文化がほとんどなかった事から、外国製拳銃は広く好まれた。日本側も、国産の粗悪拳銃が放出されるよりは…という妥協で容認。こうして、設計からの国産拳銃は既存の南部十四年式以外が淘汰されてしまうことになるのだった。その代替がSIGであったり、ベレッタであり、ヘッケラー&コッホであったのは、歴史の帳尻合わせであった。

 

 

 

 

機甲兵器は戦後日本製戦車が機動戦向けでないため、扶桑は外国産の新鋭戦車を次々と導入した。その過程で、パンター戦車やティーガー戦車も多数が再生され、実戦に供された。日本側も、国産の戦中式戦車の大半が『大戦後期の実戦に耐えられない』ポンコツであったのは周知の事実であったので、『外地で使うのが前提』という条件で使用を容認した。結局、国産戦車の完全な復権は90式以上の登場を待つことになった。軽戦車も一昔前の中戦車級の車格を持つ新型が現れたからで、それも時代の進歩による革新であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、怪物退治に駆り出された64F。だが、それを嗅ぎつけたのか、バダンの一団が襲撃をかけてきた。

 

「まったく。連中も節操のないことだ。だが……こいつのダンナの力、借りるぞ!」

 

これはブライアンに仁の心の資質があった事(サムライトルーパーへの適性)も関係するが、のぞみAが草薙の炎を扱える身であるのも大きかった。その相乗効果はバダンの改造人間をも屠ることができるほどであった。

 

「そぉぉぉえぇぇん!!ざぁーーーーんッ!!」

 

プリキュアの姿でそれを放つことができるのも、のぞみAに資質があった証であった。更に普通の炎でないため、怪人も屠ることができるのである。

 

「なるほど。これがサムライトルーパーの力か。資質があったということだな」

 

「ご苦労さん。しかし、連中め。こんなところにも網を張ってたのか」

 

「ライダー達にいつも、けっちょんけっちょんにされてるくせに、ご苦労なことだ。だが、肩慣らしにはなった。多分、この分だと、元の姿でも使えるようになってるだろう。私達は先達の能力を引き継ぐことがあるからな」

 

「どういう種族なんだよ、お前ら」

 

「サラブレッドの魂と宿命を引き継いだ種族だから、蓄積された思いが奇跡を起こす事がある。女神像にサイコフレームでも組み込まれてるのか?と感くぐっているよ」

 

 

ウマ娘は何かかしらの要素を得ないかぎり、前世と同じ道を辿る。だが、何かかしらの要素が加われば、奇跡は起きる。ブライアンは史実で薄幸の後半生を辿ったため、キャリア後半は不幸のどん底を辿るというのが既定路線に近い。それを覆すのに、ドラえもんやプリキュアの力にすがったのは、そうでもしないと、史実の因果律から逃れられないと判断したからである。それが叶った恩返しに、のぞみAの体を借りているのである。ただし、ウマ娘であるので、『普段の姿では、体が魂の要求に追いつけない』ことの防止のため、キュアドリームの姿を維持している。ウマ娘が運動能力が際立って高い種族である以上は当然の流れであった。

 

「ほんと、現役時代からすれば、奇妙なことになったもんだよ。この姿のほうが気楽に過ごせるなんて。普段の姿が知られてるのも、良し悪しだな」

 

「80年代のアイドルよりはマシだと思え。アイドル全盛期の連中はろくに眠れなかったそうだし」

 

「あたしは普通の姿も、前世の姿も、この姿も知られてるから、余計に参るよ。ん、StG44か。いいの配ってやがる。うちら(自由リベリオン)なんて、M1ガーランドやM1カービンの配備が遅れてんだぜ?」

 

「この時代に、こんな突撃銃持ちこめるんだから、下手な国より優良だな。扶桑はまだ、三十年式すら残ってただろ?」

 

「北海道の師団に残ってるそうだ。だから、南洋軍は超優良なほうだ。余った装備は警察に渡してやろう。九九式すら持ててねぇんだし、見張りの警官連中はよ」

 

 

一同は殲滅したバダンのコンバットロイド達から奪った小銃やパンツァーファウストを集めて、彼らの残したトラックに弾薬箱と共に詰め込み、新京の中央警察署へ向かう。

 

「ここは開発中なのか?」

 

「再開発中だ。明治や大正の煉瓦造から、鉄筋コンクリート造の建物に切り替えるんだそうだ。高速道路も造ってる。本土に先立ってのテスト代わりだが、今は軍隊しか使ってない。そもそも、車が富裕層のおもちゃみたいな扱いな時代だし、仕方がないけど」

 

新京は明治や大正のロマンティックな雰囲気の残る箇所もあれば、昭和期に増え始めた鉄筋コンクリート造のビルも多く建ちつつある街である。安土時代以来の大八車が大通りを走る風景が現存する一方、日本の関係機関等の所有する自動車が疾駆する。この時代は新旧の風景が入り乱れているが、一般大衆の服装は(空襲等で逃げやすくするためもあり)洋装が奨励され、軍国主義の象徴と攻撃されたもんぺは(都会では)姿を消しつつある。これは旧来的な思想を抱く、地方の地主が農地解放等で没落し始めたり、軍国主義的思想がタブーになり、その象徴と見なされたからである。それでも、老年層や芸者などは(史実同様に)和装だ。史実で寒冷な満州にあった新京だが、魔女の世界では、常夏のムー大陸の首都に等しい扱いの街なので、大衆の服装は半袖だ。日本人が観光に訪れる事を想定してか、日本製の自販機も置かれている。

 

「新旧の文化が入り乱れすぎだ。スチームパンクの世界にいる気分になってくる」

 

「仕方がないですよ。この世界は急に21世紀以降の技術と文化がよそから入ってきて、それが大衆レベルにまで降りてきたばかりなんですから」

 

扶桑の順応性の高い国民性が発揮されているともいうが、一方で、国家総力戦とはいい難い様相になっている。銃後と軍事の関係が強引に切り離されたからで、軍事技術の研究がその混乱で停滞したのもあり、未来兵器の導入が急がれている。異能者の力がそれと同じであることが認知されたからで、結局、ゲッター線の存在と合わせて、旧来通りの魔女は次第に淘汰される存在である流れが確定してしまったことになる。

 

「軍も大変だからな。なにせ、大学から追放された科学者の雇用、放棄された軍事研究施設の回収に金がかかりすぎて、空母の建造費が四年も確保できなかったからな。おかげで、航空エンジンは自前で設計から造れなくなったそうだ」

 

「日本は自分らの倫理観が正しいと勘違いしてる節があるからな。だから、海外での試合で勝てんと、昔から言われてるんだが……どこでも同じか」

 

「戦後は軍事研究をタブーにしたから、扶桑が迷惑被ってるんだよ。おかげで、地球連邦軍が設計を開示したそうな。で、連中は『強制していない。そうすべしと指導しただけだ』って、しどろもどろでいいやがる。で、あたしらに負担が行きやがるんだ。普通の部隊の増援が来てくれりゃ、週休二日になるんだぜ?」

 

日本はこの頃、扶桑を引っかき回していられなくなってきており、政府レベルの介入は収まっていたが、民間レベルでは続いており、現地の雇用問題が社会問題になりつつあった。軍関係機関への再雇用等を広げているが、扶桑の大衆が萎縮してしまっている。そのため、民間企業への就職に一定の社会的ステイタスを付与する必要が生じてしまい、扶桑は対応に苦慮している。

 

「やれやれ。月月火水木金金を額面通りに受け取ってるって奴か。休日はどの職業でも必要なんだがな」

 

結局、軍隊の過労問題もあったので、64Fはシフト制にするつもりであったが、新選組とそれ以外の中隊に錬度差が生じた上、異能者が新選組に集中したことから、武子も断念している。とはいえ、プリキュアが増加してくれたので、結果としては、シフトを引けているが。

 

「この仕事が終わったら、ハンバーガーチェーンで飯奢れよ?」

 

「進出してるから、それならお安い御用だ」

 

ブライアンの肉好きは、使う肉体が変わっていても変化無しのようであった。自分の本来の体ではないので、食事量は意図して抑えているため、手軽に肉が食えるハンバーガーや牛丼、豚丼を好んでいる。また、扶桑では物珍しいため、軍人以外の利用者は観光客くらいだが、それでも、ハンバーガーチェーン店の採算は取れているという。

 

「見ろ。扶桑の都会人は、TV以外は昭和30年代と同レベルの暮らしだが、田舎は江戸とそんなに変わらん。それで、日本はそれを責めて、地主とかを解体させたが、無知な田舎の人間は混乱を引き起こしてな。結局、田舎の小村は廃村に追い込まれる運命になった。自動的に食料自給率が下がるから、軍部は工廠に食料品生産部門を作ったわけだ。徴発が禁止されたし、購入するにも、部隊が常に現金を用意できるわけでもないからな」

 

「田舎は旧時代の風習をバカ正直に守ってるところがあるというが……初めて聞くぞ」

 

「醜聞でもあるから、お前の時代になれば、表沙汰になることは滅多にないが、無くなったわけじゃないぞ。この時代はひどいもんだ。こういうヒラヒラな格好でいると、たるんどるとかいうジジイが多いんだ」

 

「まぁ、田舎の連中は、中世や近世の鎧兜姿しか知らんだろうからな。フランスの軍服なんて見たら、泡吹くな」

 

「違いねぇ」

 

武士の時代の風習を未だに信仰する者も、地方に未だ多い扶桑。扶桑は文化的寛容性の証明に、プリキュアたちを使っているが、それは21世紀の人間から見て、扶桑の『モボ』や『モガ』は『古臭いものの象徴』と捉えられてしまうだろうという懸念によるもの。現役時代の坂本美緒のように、変に武士道にかぶれた者も日本側に知られていたため、プリキュアたちは(21世紀日本の文化や嗜好の変化が反映されているので)文化的寛容性を示す絶好の存在として活用されていた。特に、転生の素体が扶桑軍人であったキュアドリームは好まれている。

 

「まぁ、私の今の格好は、姉貴はともかく、妹たちには見せられんな。妹達は年の近い一人を除いて、こういうのに夢中な年頃だから」

 

「仕方がないよ。子供は誰もが通る道だ。のび太もガキの頃は、仮面ライダーや宇宙刑事に憧れてたし、ジャイアンはグッズを集めてた」

 

「それならいいよ。私達の頃は、公園の遊具で遊ぶことは少なくてなぁ。なにせ、クレームが増えて、遊具が撤去されていく時代だったからな。親父によく、それで叱られて、武道を習う流れになったんだ。人並みにアニメグッズは欲しかったが、親父は滅多に許してくれなかった。それが私のレースへの姿勢に影響を与えたと思う。だが、それがもとで、落ち目になると、それ見たことかと、冷たい目で見るようになった。それで、親父と絶縁になった」

 

ブライアンは子供時代から、父親にどこかで反感を持っていたが、それが、自分が落ち目になったことで決裂に至った事を端的に説明する。

 

「親父は事業を拡大したがったが、バブル崩壊の頃に若かったお袋は反対していてな。私達をダシにして、事業を拡大しようとしていた。そこに、私が落ち目になったって話だ。それで親父と大喧嘩。それで、引退の決断もできずにいたところで、あんたらと出会った」

 

「今回の話を持ちかけたのは?」

 

「私自身、精神的に追い詰められていてな。姉貴が怪我で引退を表明する事を考えていて、私も股関節に大怪我を負ってしまっててな。その後遺症で、全盛期の力を失ってしまってた。それと、足に新たな爆弾があるのがわかってな。自暴自棄になっていたんだ。それで、ドラえもんとのび太さん、のぞみにすがったんだよ」

 

ブライアンはドラえもんと出会う直前の時期、屈腱炎の発病が近い状態と診断され、精神的にズタボロに追い込まれていた。その回避には、ドラえもんの力にすがるしかなかった。ウマ娘世界の医学では『不治の病』であるからである。

 

「それで、佐渡先生に研究を依頼してたのか」

 

「それで引退を余儀なくされた者は多いんでな。それに、別世界線の姉貴から、私自身が辿った『最悪の運命』を聞かされた時、運命を超えることを決めた。従姉のタイシンもそれは知っている。その世界線の姉貴はタイシンに、私の競争者としての行く末を見届けてくれと言った。タイシンも受け入れたよ。あいつ自身も、別世界線では、キャリア後半は孤独だったようで、タイシンもそれにショックを受けてたよ」

 

ナリタタイシンはその『平行世界のウマ娘世界』では、史実通りに虚弱体質に苦しみ、ライスシャワーが絶頂期を迎える頃まで現役を続けたが、ライスシャワーの『悲劇』の影で、彼女は怪我の再発で引退を余儀なくされ、全体的に消化不良な競走生活に終わった。それを知ったため、タイシンはその運命に抗うことを選んだのだ。

 

「だから、あなたとタイシンさんは……」

 

「運命を超える。拓馬(流拓馬)が言っていた言葉だが、私とタイシンは駆け抜けることにしたよ。ボロボロになるまで、な。別世界線の自分の無念を晴らすため、満足して、人生の次のステップに行くためにも」

 

タイシンは『いずれ、実家(タイシンは花屋の跡取り娘である)を継ぐだろうけど、競走生活を円満に終えたい』、ブライアンは『別世界線の自分自身の無念を晴らすため』。ベクトルは違えど、同じ方向の未来を志向した。その下地を作りたい。タイシンとブライアンが『違う環境に身を置く』のは、そんな考えによるものであった。

 

 

 

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