結局、現場の機能不全に困惑した日本が更に現場を締め付け…の悪循環により、極度の将校不足に陥った扶桑軍。結局は自衛隊からの派遣だけでは間に合わなくなる始末であった。64Fは義勇魔女の受け皿としても活用されたため、世界的に高練度の魔女の受け皿になっていた。
「そうか。そっちにも出たか」
「ハルトマンと、軽機関銃の弾倉一杯を食らわせたが、まだ生きてた。凄いものだな…。死骸は地球連邦軍のほうに送って、解析してもらう」
「わかった。真田さんと佐渡先生からの連絡待ちだな」
と、バルクホルンからの電話に応じるシャーリー。この時期、魔女の世界の各国は日本による(理由をつけての)苛烈な経済制裁を恐れるあまりに、物的援助を躊躇っていた。その分を野比財団がアナハイム・エレクトロニクス社を動かす形で補っていた。また、空軍では、手っ取り早く食べられるのもあり、ハンバーガーが好まれている。あらかじめ、注文リストは作っておく。
「と、いうわけだ」
「別の地点でも現れたか」
「軽機関銃の弾倉一杯でやっと殺せたそうだから、銃器だと殺しにくいな」
「とはいえ、技は被害が出る。あんたらの現役時代みたいに、なんとか補正があるわけじゃないしな」
「地下だから、対戦車火器も使えねぇしな。昔の対戦車ライフルを引っ張りだすか……」
「連射効かんだろ、対戦車ライフルは」
「うーむ……」
「その昔、怪傑ライオン丸が使った斬撃技でも試してみるか…」
「マニアックすぎだろ。ドラえもんの世界だと実在してたそうだが……」
ドラえもん世界=未来世界の記録では、仮面の忍者赤影、変身忍者嵐、怪傑ライオン丸、風雲ライオン丸等のヒーローが戦国~江戸期に実在していたという。その魂は生前の功績で不滅の存在となり、神の意志で(仮初めの)肉体をいつでも与えられる立場にあるという。
「しかし、なんで、扶桑軍の他の部隊の将校を見ないんだ?」
「日本が軍国主義者と見なして、将校を片っ端からクビにしちまったんだよ。で、気づいた時には、まともな経験持ちがほとんどいなくなってた。自衛隊は人数がいねぇから、結局はカールスラント軍をクビになった連中をかき集めたんだ。だから、扶桑の軍服は着ちゃいない。機甲部隊は特にそうだ。南洋の機甲部隊は今や、半分はロンメル軍団だぜ」
クーデター後の粛清と、その後の混乱で、扶桑固有の機甲部隊の人員と装備は数を減らし、この時点では、カールスラント製装備とカールスラントの義勇兵が総数の四割に達する始末であった。これは大問題であるので、本土の機甲部隊の出征が検討されたが、本土の機甲部隊は(大戦後期以降の)まともな戦車がなく、機甲本部はまたも不手際を責められることになった。M24軽戦車やM41軽戦車が配備されることになったものの、一級の機甲戦に耐えられるものではないため、南洋軍は独自裁量でセンチュリオンを採用。それが配備されてきたが、心情的にブリタニア製を嫌う兵も多く、それがカールスラント製装備の再利用を促したのである。
「ドイツの戦車は重いだろ?」
「地盤の硬い大陸で運用する分には問題はない。それに、戦後の製造精度の部品や燃料とかで稼働率は改善してあるから、意外に軽快に走るぞ。イギリス製は嫌われんだ。空と海はともかく、陸のはな。まぁ、日本の戦車は戦後のバブル期じゃないと、時代に追いつかねぇが」
「だから、ドイツ人を雇用するのか」
「ナチがない世界線だし、疎開先のペルーも内戦で住めたもんじゃない。だから、食い扶持を求めて、ここに来んだ。海軍は使えねぇが、陸空は百戦錬磨の将兵がいるからな」
基本的に、カールスラントの陸空軍の将兵は扶桑軍に再就職先がある。不足した将校~下士官の当座の補充を求めていたからだ。海軍は一次大戦当時はいざ知らず、半ば沿岸海軍へ零落し、視界良好な海洋での航行ノウハウもほとんどないので、再就職先は潜水艦隊のみだ。
「イスラエルとドイツはぶーたれてるが、例の総統閣下はそもそもいないか、いても、売れない画家として死んだ世界線な以上、義勇兵になるのを止める道理はない。それに、東独と西独出身者の精神的対立を決定的にしちまった責任を問われるぜ、あの2つの国は」
シャーリーのいう通り、カールスラントの取り扱いで、あれこれしまくった戦後ドイツとイスラエルは後々、統合戦争で反統合同盟側に与し、敗北することになる。
「で、忘れた頃に統合戦争か」
「ああ。それで、この世界との連絡が統合戦争で途切れ、地球連邦時代に再発見され、今に繋がる。ややこしいが、そういう流れだそうだ」
「やれやれ。のび太のカミさんが地球連邦政府の樹立に心血を注ぐわけだ」
「あいつは宗教戦争とかを嫌ってたからな。その傾向が源家の子孫に多いんだ。その傾向を、ジャミトフ・ハイマンに利用されたらしい」
しずかがのび太に嫁いだ後も、源家が絶えたわけではない。当然ながら、分家がおり、その一つが、生前のジャミトフ・ハイマンの金づるにされたという記録が発見されている。
「分家がいるだろうしな」
「で、欧州の主要国はそれと一年戦争で殆どが没落するわけだ。フランスは散々で、パリとその他主要都市の多くが消し飛んだから、絶滅寸前だそうだ。辛うじて、フランス人を集めたコロニーに数十万がいるが……」
「フランス人が聞いたら、泡吹くぞ」
「まぁ、連中は統合戦争が激しくなるより数十年前、統合戦争の最盛期に総理になるヤツの家族を殺しといて、金でもみ消したって話があってな。それで戦争でボコボコにされたとか?で、意地で、ガンダムファイトの優勝経験はあるそうだ。で、ここ数代のシャッフル同盟にネオフランスがいるから、それが慰めだそうだ」
ガンダムファイトは少なくとも、意外に長い歴史があること、軍用のガンダムとは別個に、ガンダムファイト用のガンダムの祖となるガンダムがいたらしいという情報もある。また、極限まで鍛えた人間はウマ娘すらも余裕で圧倒する(ドモン・カッシュや東方不敗など)ことも分かっている(普通に、病気にはかかるが)。
「しかし、ウマ娘にも上積みはいる。私は上のほうだと謳われたものだが、あいつら(竜馬や拓馬、號)はオカシイ」
「あれより上がいるから、お前らもまだまだ上を目指せるよ。フランスはホームグラウンドのおかげで、勝てているに過ぎんさ」
フランス(ガリア)は鼻っ柱の高さで、他の国々から強い反感を買っていた。それはウマ娘世界でも同じであるが、既に、モンジューはジャパンカップでスペシャルウィークに敗れている。それにも関わらず、『ロンシャンで勝ててから意見を言え』という者もいるため、ブライアンも遠征を考えていたほどだ。
「フランスの鼻っ柱の高さはどうにかならんのか?」
「フランス革命以来だからな、あいつらの偉そうな態度。あれをへし折るには、冬将軍で数十万を死なせるか、電撃戦でパリを制圧するか、だ。ついでに、アフリカの植民地。凱旋門賞は呪いに近いから、史実で負の因果がある奴は避けたほうが良い」
シャーリーも、凱旋門賞の勝利は難しい事を知っており、その後に低迷して引退したり、競走生命を失うケースがある事を勘案し、呪いと表現した。ペリーヌも流石に、凱旋門賞の開催は(外貨獲得のために)復活を認めたものの、ガリア自体が荒廃し、ガリアの名馬たちも既に散り散りになってしまった関係で、開催はここ数年は見送られたままである。また、フランスの競馬場で脚を駄目にした事例も多いことから、ウマ娘達には酷だが、『因果を持つうちはやめとけ』という残酷な事実が突きつけられた。
「呪いか……」
「それに近いよ。あれを走って、キャリアに大きな傷の残った三冠(ディープインパクト)もいるんだし」
「ディープインパクトだろ。奴は海外を嫌がってるが、前世の記憶ありなら、納得がいく」
ディープインパクトは現役後期に『薬物でインチキしていたとの揶揄があった』ことは知られている。それが生まれるきっかけが凱旋門賞の失格であったので、ウマ娘としてのディープインパクトが遠征を嫌うのも、無理からぬことである。
「奴は子孫を残す観点からすれば、神レベルの功績だが、現役馬としてはケチがついた状態だからな。それを気にするのは当然だろう。ウマ娘になれば、子孫を残す必要はないから、満足するまで走るだろう」
ブライアンの予測が当たっていたことが判明するのは、ここからしばらく後のことである。
ーー場所は変わって……ドラえもん世界の2026年ーー
21世紀の日本。野比財団の建設した博物館に陳列された四式中戦車改。M動乱で使われた個体で、砲塔バスケットの導入がなされた末期型である。仕方がないが、M動乱時点で『時代遅れ』と揶揄されたのには違いないため、野比財団の博物館の展示品として払い下げされたのである。だが、隣の三式中戦車よりは『まともな性能』であるので、前線に残った個体も多い。長砲身75ミリ砲はパンターの同口径砲に伍する性能と宣伝されていたが、実際には及ばないことも判明している。既に退役扱いにされているが、軽戦車よりは装甲があるので、前線に残された個体も多い。これは極度の兵器不足に陥ったダイ・アナザー・デイの教訓であった。扶桑陸軍・機甲本部は散々に歩兵直掩思想を否定され、ノータリン、ウスノロとまで罵倒された。そのせいで、人員のやる気が無くなる事態に陥った。黒江たちが軍隊全体の装備の導入まで自己判断で決めているのは、扶桑軍の管理部署の士気がゼロに落ちていた故である。
「君も大変だねぇ。本来は門外漢のことまで管理するの」
「まったくだ。おりゃ、飛行機のパイロットだぞ?それが何の因果で、戦車の導入や管理までもせにゃならんのだ。機甲本部の怠慢だぞ。おかげで、陸自にいる防大の同期に手伝ってもらうことになったし」
野比財団の博物館の落成式に出席した黒江。日本連邦軍・統括官としての出席なので、陸自の制服を着用していた。
「黒田が退いたから、その後釜をのぞみにやらせることにしたんだが、色々と問題が山積でなぁ。あいつの別個体が確認されたが、その内の一つの世界は『滅びの世界線』らしくてな。おまけに、白色彗星帝国の残党が流れ着いて、土星決戦だよ」
大人のぞみは周囲の努力をよそに、1000年女王の座に就いた。ラーメタル人としての因子が目覚めたからだ。この時点で、今までの人生を半ば捨てたことを意味する。
「その世界の土星は無事かな?」
「衛星の一つや二つはぶっ飛ぶだろう。21世紀頃の観測技術じゃ、何が起こったかはわからんだろう。M粒子でボケた画像しか送れないだろうし。土星の衛星が吹き飛んでも、なんかの限界を超えたくらいにしか認識されんだろうさ」
「問題は当座の敵がいなくなった後にくるよ」
のび太も、オトナ世界の今後を憂いる。
「ああ。下手すりゃ、第三次世界大戦になるし、プリキュアの経験者に誹謗中傷がされるだろう。だから、戦う姿を見せなきゃならん。アメリカを倒そうと、中露が動いてるようだしな。戦後の日本に、大国と正面切ってドンパチできる力はない。ましてや、打撃を受けた状態なら……」
白色彗星帝国を倒した後、オトナ世界が第三次世界大戦で滅びることは充分にあり得る。また、ゲッターエンペラーがシリウス星系の増長を星系ごと潰したのは、どこかの世界でのシリウス星系の増長による地球殲滅を未然に防ぐためであるように、統制を外れた者達の殲滅もせねばならない。
「しずかはここから何十年か後の晩年期、孫たちに地球連邦の樹立の夢を託したそうだ。そのためには、不毛な宗教戦争の芽を断てとも。同時に、企業の増長を抑えろともいったそうだ」
「カミさんは、この時代のSFで見るような、企業が国家に取って代わる事を恐れたからね。だから、間接的に、地球連邦時代の子孫たちに『民間軍事会社の増長を潰せ』って命令を出したんだろう」
「あれはしずかの差し金か」
「僕に子孫がいることは、子供時代の時点で知っていたからね。僕との間の子孫が地球連邦の政財界に影響力を持ってることも、おそらくは中高生の時期までに、どこかで知ったはずだ。僕が使うホットラインはカミさんも使うから、おそらく、子孫たちは苦笑してるだろう。カミさんが怖いってのは、老人の僕が書き残したようだし」
「お前のとこ、かかあ天下だしなぁ」
と、しずかは博愛主義が成長と共に変化し、『かかる火の粉は払う』という考えなどが生まれたこと、企業が国家を超えることがないように抑制すべしという思想に至ることが語られる。その発露が民間軍事会社(ケイオスやS.M.S.など)の法改正の上での接収である。これは、しずかが野比家の子孫を動かして実現させたことが語られた。のび太と違い、法改正にまで踏み込んでの制裁を加えるなど、大胆な動きを見せた。この頃(のび太が40間近の時代)には、野比家の子孫が自らの子孫でもあることを知っていることが明示される。
「こいつは日本じゃ、二両か五両こっきりだったそうだな」
「うん。日本陸軍の資料だと、五両があったともされてる。多分、生産ラインが動いてたんだろうね。実際に完成してたのは二両。扶桑のはそれよりも性能はいいだろうけど、M動乱での相手が、当代最強の中戦車たるパンターじゃねぇ」
「砲塔バスケット入れても、シャーマンとどっこいどっこいじゃ、大規模量産の価値無しとされたよ。で、90ミリ砲でも旧式扱いで、いきなり120ミリを求めてきたよ。大戦中のエンジン技術で、120ミリ砲の戦車は不可能に近いのにな」
「それで、機甲本部は?」
「職務怠慢だと、トンカチでボコボコにされて、血の海にされた部屋が続出。人員も精神崩壊で、全面入れ替え。本部自体が移転を余儀なくされたよ。今は機甲部隊関連で俺達が動くための方便にすぎん」
「で、彼らの言い訳は?」
「どうせ同じこと考えるから、未然に排除するんだと。それが組織を機能不全に陥らせる原因なんだっての」
「上の世代の言い分はあまり気にしないほうがいい。常識が日露戦争で止まってるような連中だし、いつまで経っても、連合艦隊司令部の地上への移転ができないよ」
「大衆のご機嫌取りは必要だから、旗艦は残してある。海保は学園都市のせいで、形骸化してるだろ?」
「ロシアにも散々にボコされたから、まともに動ける船は少ないよ、彼ら」
「それで、ダイ・アナザー・デイの時に不祥事を?」
「そのせいで、黎明型巡視船の一隻を譲渡させられたよ。海援隊の戦艦薩摩を誤って解体した咎ということで。明治期のものとはいえ、戦艦の代替が軽武装の巡視船じゃねぇ」
「紀伊型の紀伊の損傷が軽ければ、引き揚げたかったが、船体が完全に千切れてて、無理だった。仕方がないから、廃棄予定で、軍港の肥やしにしてた『近江』を海上護衛総隊に回す。八八艦隊式の最後の奉公だ」
「まぁ、モンタナとアイオワが量産された世界線じゃねぇ」
「核ミサイルは表立っては持てん。もし、使っても、敵の誤爆ってことでごまかすのが最善だろう。こっちの独断専行にあえて巻き込んで、日本の政権を転覆させる必要はないからな。戦艦と空母で『古式ゆかしい』艦隊戦する分には、日本も干渉はしないだろう」
「巡洋艦をミサイル化させろとかいうだろうけど、ミサイルは高いからね」
「一発で億がぶっ飛ぶし、未来じゃエネルギー兵器全盛の世の中になってるからなぁ。ミサイルは魚雷扱いで残って、それで生きながらえているなんて、この時代からは想像もつかんだろうさ」
宇宙戦艦の時代、ミサイルは補助兵器の扱いになっている。調達費の高騰や備蓄の問題があったからだが、結果的に、エネルギー兵器の通じない敵相手の切り札という扱いで落ち着いた。
「連中は超甲巡を戦艦扱いにしちまう連中だからな。アラスカ級大型巡洋艦があるのにな」
「フッドが死んだのもそれなんだけどね?」
「ああ……あれに長門以上の戦闘力を与えようなんて、無茶がすぎるよ」
戦後日本の生還率偏重の風潮により、扶桑の軍艦整備計画は破綻してしまっている。元々、扶桑海軍は超甲巡を『高雄型甲巡と金剛型戦艦の代替』で整備してきたのだが、日本の役人は戦艦の定義を誤認しており、結局は『長門型以上の戦闘力』を持たせることになってしまった。扶桑は『巡洋戦艦は純然たる戦艦と戦える船ではない』と認識しているが、日本の政治家と大衆はそれを『金の無駄遣い』と断じ、当局者を理不尽に罰した。その結果がやけくそ気味の改装なのだ。
「だからって、21世紀の機関技術じゃ、240m級の船体を140m級と同等に走らせるのは、費用対効果が出ないだろ」
「だから、極秘に宇宙艦用の融合炉を積むのさ。あれなら、この時代のガスタービンの数十倍の出力と迅速なレスポンスが実現する。テストは『黒姫』でだいたい済ませたから、君の命令さえあれば、全艦の改修が済ませられる」
「そうか、あれを前に借り上げたのは、巡洋艦用の融合炉のマッチングテストか」
「山本元帥に無理言ってね」
黒姫。超甲巡の一隻である。野比財団が借り受け、核融合炉のマッチングテストに使ったことが語られた。
「戦艦長門以上の巨体なのに、防御力が巡洋艦に毛が生えた程度なのが不味いんだと思うよ。とはいえ、アイオワも自分の主砲に耐えられないんだけど、そんなのは、ミリオタじゃないとわからないからね。日本の役人はアイオワが怖いのさ。とはいえ、あれも、近代装備入れると、31ノットも出ないはずなんだけどね」
建物の中を見学しつつ、二人は日本の役人の舶来コンプレックスの絡んだ無知にため息をつく。超甲巡は結局、想定任務を『机上の空論』と否定され、高速戦艦に改造されてしまうことになった。アイオワを異様に恐れるわりに、より高性能のモンタナ級を木偶の坊と侮るなど、なんだかんだで、戦前の水雷戦隊の突撃戦術への信仰を一般人が受け継いでしまっているのが語られる。また、空母の護衛には30ノットが必要だと喚きまくるなど、タンカーと輸送艦の随伴を考えない始末。そのような趣旨の意見をすると、戦バカと罵る。結局、扶桑の輸送艦やタンカーも刷新を余儀なくされたため、空母の整備自体が遅延を重ね、戦艦のほうが先に完成する始末であった。
「ダイ・アナザー・デイで、義勇兵が特攻とかにも躊躇しなかっただろ?あれで当時のガキ連中はすっかりブルった。敵味方双方で。戦争神経症が続出した。それに、敵艦から投げ出された敵兵を、連中が皆殺しにしたってこともある。まぁ、太平洋戦争でやられたからと、意趣返しをしまくったわけだが……。
「ありゃ、怨念返しみたいだったしね。空母は集中してやられたから、敵の魔女はほとんど戦争神経症にやられたそうだよ」
「あん時のガキどもには、血で血を洗う、ガチの戦争は荷が重すぎた。それで、あの後にクーデターなんて起こしたから、社会的立場を失ったんだ」
「あの子たちは自分たちの信じてきた世界秩序が壊されるのを恐れたのさ。だけど、史実の戦後日本がそうだったように、世界はきっかけ一つで変わる。日本の軍人が戦後、悪の権化のように扱われたように」
「艦娘は一部がその記憶持ちだから、連合艦隊からも腫れ物扱いされてるよ。榛名はその最たるもんだ。まぁ、海の大戦犯と後ろ指をさされれば…な」
戦後まで生き延びた記憶を持つ艦娘も複数いるため、銃後に不信を持つ者がいる。そのため、国家首脳らも、ものすごく気まずい思いであるとぼやいていることが、黒江から語られる。
「高雄、長門、榛名、伊勢らはある意味、不幸よ。大日本帝国が戦後も残れば、退役式典をさせてもらえたろうに、体制が変わったからって、屑鉄扱いか、原爆の標的だしね」
戦後まで生き延びた艦艇の転生である艦娘たちは無念が大きいため、政治家たちも『扱いに困る』とぼやく存在であった。ブリタニアなど、実艦の高雄を処分した史実に激昂した、扶桑での元乗員に大使が滅多斬りにされ、再起不能にさせられる事件に震えあがったため、退役した高雄のオークションに不参加を決め込んだほどだ。
「まぁ、連合艦隊の船は大半が某神がかり参謀に恨み骨髓だからな。だから、大和なんて、ウォーモンガーだ。宇宙戦艦ヤマトとして、いくつも星間国家を殲滅してんだから、それでいいじゃないかと思うが……」
「大日本帝国の悪の象徴みたいな扱いされたのが不味いのさ。実際は燃料の都合で、連合艦隊旗艦としても、数える程度しか出撃してないのに。おまけに、三笠と東郷元帥みたいに、国難を救えたわけじゃないし、敵艦隊と得意な分野で戦えたわけでもない」
史実の記憶は艦娘のアイデンティティにも強く影響を及ぼす。大和は不遇の艦生(名声は死後のものである)であったため、ウォーモンガーであり、それでいて、アイオワに機関出力で負けている(史実の大和は15万馬力級だが、アイオワは最盛期には、21万馬力を誇った)事をぼやいている。
「だから、艦娘をあまり表に出せないんでしょ?銃後の掌返しに不信抱いてる子も多いから」
「うむ……。だから、プリキュアに広報の軸足が移ったんだよ。のぞみは特にそうだ。日本で有数に有名、戦闘向きの気質を持ってて、素体が扶桑の正規将校となれば。日本の件の役人は戦犯だな」
「うん。扶桑に弱みを握られたようなものだしね。文科省自体が震撼したし、厚生労働省も、外務省も。本物と分かった時の慌てぶりは語り草。ケイさんがすぐに週刊誌にたれこんで、大事にしたろ?あれで、もみ消しを図ってた文科省や厚生労働省は外務省に怒鳴られまくってね。危うく、東京は大和と武蔵(実艦)の艦砲射撃の標的さ」
「厚生労働省と文科省に、46cm砲弾を一発当てておきゃよかったんじゃねぇの?」
「まぁまぁ。山下奉文大将とか、鈴木貫太郎、岡田啓介元総理に来られきゃ、日本だって、ブルるよ。マレーの虎に、日露戦争の生き残りだし。それも、日露戦争の最前線に佐官としていた世代だよ、両閣下は。日本の政府高官らが、孫とかひ孫にあたるくらいだ。太刀打ちできると思う?」
「確かに」
のぞみの騒動は日本が折れる形で手打ちにしたものの、文科省は直前まで意見がまとまらず、総理大臣の一喝で沙汰済みとなった。『大和と武蔵に艦砲射撃をされたいのか?』これはどんなに軍事に無知でも、多分に効く言葉である。漫画のように、ミサイルは戦艦相手に効く兵器ではない。それでいて、砲弾はいかなる21世紀型軍艦をも一撃で粉砕する。大和型の威力は造った自分たちがよく知っている。それも、のぞみの騒動が一線を超えることがなかった理由である。この騒動以降、扶桑は戦艦による砲艦外交を重視するようになるのは言うまでもなく、2020年代以降、海上自衛隊が(イージス・アショアの失敗を大義名分に)超大型イージス巡洋艦を欲するようになった理由の半分は『扶桑があんなに新世代の戦艦を持ってるのでは、我々の肩身が狭い』という本音も絡んでいる。(原子力空母級の体躯を誇る超大和型がゴロゴロいるのでは、戦後式のミサイル駆逐艦や巡洋艦は物理的に肩身が狭い)
「まぁ、播磨は充分に脅しになったと思うよ。大和と武蔵だって、数百機の反復攻撃でようやく沈んだのに、それより数段大きい主砲と、比較にならない重装甲を持つのが控えてるって分かってれば。大衆には、原子力潜水艦や原子力空母よりも、大戦艦のほうがわかりやすいのさ」
皮肉なことに、戦艦の持つ精神的抑止力が見直されたことにより、日本連邦は戦艦を積極的に運用しだす。オートメーション化で、史実の戦艦のように大人数を乗せなくていいという財政的理由、空母艦隊の形骸化なども絡んでいる。二人が足を止めたところには、その大戦艦『播磨』の新規制作の模型が鎮座している。大和型の発展型とわかりやすい姿である。
「ある意味、僕たちの世界で、21世紀に戦艦が残ってれば、こういう姿だったかもね」
播磨は古き良き軍艦の面影を残す外観であるが、中身は完全に宇宙戦艦と同レベルになっている。のび太はその実状を上手く隠せている模型の出来に感心する。ちょうど、80年代に近代装備をつけられた際のアイオワより多少新しい装備を持つようにされている。実際は宇宙時代の装備になっているが、装備の見かけはあまり変わっていないので、ごまかしは効く。
「アイオワも退役済みだしな。51cmと分かった時の海自の連中の顔ったら」
播磨は、超大和として、対日本の戦略にも活用されている。より改良された水戸が現れたための措置でもあるが、存在自体が『異なる世界線の証明である』播磨は、この頃(2026年)には日本のメディアに露出するようになっていた。そして。
「うーん。無難過ぎるセレクトじゃねぇの?」
「まぁ、ダイ・アナザー・デイで広報に使えそうな写真があまりなくてね」
模型コーナーの先には、ダイ・アナザー・デイで奮戦したプリキュアたちと、日本の歴代ヒーローたちが握手を交わす写真がパネルで飾られている。ダイ・アナザー・デイ時はS☆Sも不在であった旨の説明が添えられていた。そうでないと、『三代目』たるキュアドリームがキュアブラックとキュアブルームという先達を差し置いて、仮面ライダー一号やアカレンジャー、宇宙刑事ギャバン(初代)といった偉大な英雄らと握手を交わしているのに不満の声が出るからで、そこは御愛嬌といったところか。
「のぞみちゃんもそこは困ってたけど、世の中のオジサンたちの全員がライブマンやサンバルカンを知ってるわけでもないし、七人ライダーの後半のほうも怪しい。ウルトラマンみたいに、メディア露出を時たまするわけでもない。その兼ね合いだよ」
「なるほどなぁ。ギャバンは烈さんの強烈なアクションもあるし、印象」
「あの人は割に日本に帰ってくるから、子どもたちにも有名だよ」
宇宙刑事ギャバンは実母の故郷でもある都合上、プライベートでも、時たま地球に帰省しており、その度に事件に巻き込まれては、往年の勇姿を見せる。また、最近は後継者として、一人の若者を育てているという。
「なぎさがいない以上、それに次ぐ有名度のあるあいつは看板を否応なしに背負わされる。つぼみは管理局の仕事があるし、それに、転生先がフェイトの姉貴ってことで、研究の仕事に差し障るとかいうし」
花咲つぼみ(キュアブロッサム)は転生先がアリシア・テスタロッサである上、つぼみの要素が成長するごとに強まったため、成人後は研究職に就いている。もちろん、プリキュアへの変身能力は持っている。
「あの子も、アリシアが存命したのに、なんで生まれたのかって言われて、あれこれと、ぼやいてるよ」
「母親のプレシアが史実のビジョンでも見て、トチ狂ったんだろうしなぁ。フェイトもそうなれば、クローンとしては生まれずに、普通に妹として生まれるはず。二人の髪の色が金色なのは、プレシアの離婚した夫が金髪だったためだろうし」
「それもややこしいなぁ」
「何、戦車道世界に転生したマナちゃんに比べれば」
「あいつもある意味、苦労を押し付けられたようなもんか」
と、ある意味では、つぼみ以上に、転生先で苦労を背負い込ませられた相田マナへ同情する二人。マナはプリキュア状態でゲロをしそうになるなど、乗り物酔いする体質である。転生先が戦車乗りなので、シャーリーに愚痴られたこともある。さらに言えば、伝統校の部活の再建をたった一年の任期でやらなければならないなど、難題を抱えている。
「あいつも現役時代に最強格の一人な扱いだから、それをフルボッコにしまくった南斗鳳凰拳の威力が話題になってたぞ」
「仕方がないさ。南斗の最強格な上、その伝承者が更に正規の軍事訓練を特殊部隊級に積んだ存在に、いくら強化度合いが高くても、元がド素人の学生じゃ」
「うむ……」
歴代随一の強さと言われるキュアハートをも軽く圧倒したことで、南斗鳳凰拳の評価が爆上がり中な世の中。のぞみのダイ・アナザー・デイ後の行動に影響を強く及ぼしたのは確実である。のぞみが転生先での『草薙流古武術』を正式に継ぐきっかけであり、世の中に『プリキュアも完全な無敵ではない』ことを知らしめた南斗鳳凰拳。南斗聖拳は陽の存在と言われるが、その中の最強格となれば、異能の象徴とされるプリキュアをも圧倒できる。ガンダムファイトなどがない時代では、まさしく最強格と言える。マナ自身もぼやいているが、自分たちは『素人に毛が生えた程度である』事を自覚している。その上で強くなればいいのだ。
「単にプリキュアになれば、無敵になれるわけじゃない。それを知らしめたからには、彼らは強いよ」
「うむ…。元斗皇拳や北斗神拳よりはまだ与し易いほうだが……」
より強大な元斗皇拳や北斗神拳、北斗琉拳の前に霞んでしまった感は否めないが、南斗聖拳も現代の一般的な格闘技の大半よりは圧倒的に強く、如何な猛獣も軽く仕留める。南斗聖拳の使い手は(下位に位置する拳でも)プリキュアの防御を軽く突き破れるため、プリキュアたちも流血は(南斗聖拳相手では)当たり前であった。歴代でも五指に入るであろう猛者たちが南斗聖拳の伝承者たる、ティターンズ残党の幹部格らに苦戦する様子を捉えた一枚はまさに、南斗聖拳の見直しが進むきっかけであった.