ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百五十九話「二つの世界にて 40」

かくして、扶桑陸軍は(日本の空海軍第一主義もあって)旧態化した既存装備の代替に、未来装備を選んだ。魔女を引退した後も軍に残る者を活用するためで、地球連邦軍で余剰扱いのジェガンが活用された。そんな中、超高級な第五世代の空戦型MSであるクスィーガンダムはサイズの大きさとは裏腹の高機動で、ティターンズ製の旧式MSを蹂躙していた。

 

「フッ、悪いな。こっちはガンダムだ。そんな旧式とはわけが違う!」

 

クスィーガンダムはミノフスキー・クラフト搭載型である都合上、スーパーロボット級の体躯に巨大化している。マルセイユは経験が浅いので、アームレイカー(地球連邦軍では廃止されつつある)を使っている。のぞみが通常型の操縦桿を使っているのとは対照的であるが、これはのぞみの転生の素体となった魔女『中島錦』がテストパイロット出身であった関係で機械関係に強くなった一方で、マルセイユは異能者(旧・Gウィッチ)に転じたとはいえ、元来、機械にそれほど強くないからである。そのため、直感的に操作が効くアームレイカーは重宝されるのである。また、未来世界では当初から連邦軍へ納入される前提であったので、この個体はごくありふれた(ガンダムとしての)フェイスデザインを持つ。

 

「別世界線の私が見たら、たまげるだろうが、戦争だからな。それに、第五世代で第二世代以前の機体をボコボコにするのは、気分の良いものではないしな」

 

MSの世代区分は小型化でリセットされているが、第五世代機は小型機では応じ切れない『マルチロール』化の要請もあるが、『通常の小型機では実現不能な機体強度』という強みがあり、試作がなされた。また、グレートマジンガーやグレンダイザーなどがクスィーガンダムくらいの大きさで高機動を実現しているため、『耐弾・耐衝撃性の確保』には、一定の大型化はやむなしと判断されたのである。また、コズミック・イラ世界の推進剤関連技術の流入で、大気圏内での航続距離が伸びたという利点も見逃せない。

 

『クソ、ゲタじゃ追いつけねぇ!!』

 

『ゲタを使うにしても、この最新鋭のガンダムに、そんな旧式ではな!』

 

サブフライトシステム使用の旧式機をこともなげに一蹴するマルセイユ。量産型ジェットストライカーの開発が遅れ気味であることや、それ専用の武装が不評であるなどの理由で、真っ当な手段での対抗策がないための方策であった。

 

 

『ファンネルミサイル!!』

 

ファンネルミサイル。未来世界最新鋭のファンネル兵器で、その高機動力はユニコーンガンダムのデストロイモードすらも超えるという。アナハイム・エレクトロニクス社の支援により、豊富な在庫があるため、マルセイユは使った。思念でコントロールできるため、ある意味、誘導兵器の究極であった。しかも、徹甲弾頭のミサイルであるので、怪異の外殻も容易く突き破れる。チートもいいところだが、64Fの特権である。

 

「ティターンズめ。MSの温存のために、小出しにしてきたか。まぁ、MSは二機で戦車の一個大隊を屠殺できるそうだから、セオリー通りといえばそうか」

 

マルセイユはティターンズが蹂躙したらしき、扶桑陸軍の機甲部隊の残骸を確認する。生存者はなく、装備も一式中戦車以前のものであった。その事から、本土の田舎から引っ張り出された部隊であることが窺えた。

 

「連邦の61式でさえ、幾多の犠牲を強いられるのに、こんなガラクタではな。扶桑の砲兵も可哀想に。ガンダリウムに105ミリ砲が効くものか」

 

と、蹂躙された部隊の詳細を本部に問い合わせると。

 

「本土から装備改編のために派遣されていた部隊が、そうか。連中に見つかってしまったか」

 

「何?本土ですればいいだろう」

 

「今の本土に、ティーガーやセンチュリオンをまともに走らせられる道路があるか?」

 

「砲兵もぶっ飛んだから、あんたら、またどやされるぞ」

 

「はぁ…。モビルスーツと出くわす可能性は低いんだがなぁ」

 

「生き残りはいないから、あんたは左遷を覚悟しとけ。地球連邦軍に増援は要請しておく」

 

「頼む」

 

と、扶桑陸軍はこうした不運も頻発していた。これは、扶桑本土に最新世代の中戦車と重戦車の運用に耐えうるインフラがなかったからで、M24とM41軽戦車が緊急で導入された理由である。

 

「それと、近くで艦娘が戦ってるから、制空権の確保をしてから、帰ってくれ」

 

「了解」

 

と、64Fは戦場どころか、地域の何でも屋であった。これは南洋で統制を保つ部隊が少なかったこと、隊に『銃後の要請に応える余裕がある』表れであった。艦娘は見かけが子供な者もいるが、これは艦としての規模の大きさに由来すると思われる。戦後まで生き延び、海の戦犯と罵られて解体された軍艦である榛名は特に恨み骨髓で、連合艦隊司令部も『なんと扱えばいいのか…』と腫れ物扱い。山本五十六がなんとか宥めている。仕方がないが、榛名は最古参級で、存命時の東郷平八郎を知っているので、山本五十六や鈴木貫太郎、岡田啓介クラスでもなければ、榛名を宥められないのである。最も、それは戦後の日本国民が悪いのであり、運用側の扶桑軍としては困るのには違いなく、史実の戦中の失策を責められ、失脚した提督もいる。山本五十六も南雲機動部隊を死なせたという批判がある。だが、ミッドウェイ作戦は連合艦隊全体の慢心による敗北であるのも事実であり、史実の劣勢期を支えた翔鶴と瑞鶴のほうが、慢心と油断で『戦史に残る』大敗北を喫した四空母よりも高評価をされることもあるので、四空母は戦功にこだわるようになっている。これは仕方がないが、自分たちの油断が戦争敗北の理由の一つとされれば、当然のことであった。南雲中将もこのことは負い目と考えており、大将昇進を固辞している。扶桑の将官はこの戦争で出世できる者は(史実の失態から)殆どいない見込みであり、日本側の意向で(多くが既に60代を迎えている事から)戦争終結後に退官と処理される見込みである。また、国家総力戦の時代で、他国に『元帥』がいることから、やむなく、階級としての元帥を復活させた(天皇が軍事的役割を終える見込みなので)。これは日本側の意向であった。これは自衛官から『旧軍の将官には命令できない』という要請から、日本側が押し通した事柄であり、天皇の軍事的役目が終わる事、他国の元帥との釣り合い取りが必要であったという実務上の都合であった。天皇の大元帥という役目が廃され、侍従武官の職も(ついでに)廃止されるので、それに代わる『名誉』を創設する必要に迫られた扶桑軍。その暫定措置は64Fへの配属とされた。当然、それなりの練度を必要とする上、魔女の通常の勤務年数的に、同部隊の第一線に立てるのは、せいぜい半年から一年。その事から、異能者で固められた主力と留守部隊は別行動を取るのが常になった。宿舎も別にされたが、これは上層部の『通常の魔女の反発を抑える』ための措置であった。

 

 

 

 

 

なぜ、そうなったかというと、ダイ・アナザー・デイ当時のミーナの冷遇が重く見られたからであった。ミーナは人格の入れ替わり前、査問の場で必死に弁解しようとしたが、証拠隠滅のための工作等が露見し、あえなく失脚した。国際問題一歩手前に陥っていたため、カールスラントは直ちに501の管理権を放棄。64Fへの改組は国際問題の鎮火のためという側面もあった。そのタイミングで、シャルル・ド・ゴールが手を回し、有力な人員を意図的に転出させたが、残った人員が異能者に次々と覚醒。さらに、異世界からの援軍も加わる想定外により、現在の組織が固まったのである。この頃から、シャルル・ド・ゴールの行動が不審がられていたが、証拠がなかった。さらに、ガリアの国家首脳に収まった事から、彼の内通の追求は(表立っては)されていない。だが、権力で軍を意図的に混乱させることが予測されたので、64Fが独立部隊とされるタイミングで、64F幹部には特権が付与されたのである。

 

 

 

 

 

「ってなわけ。あたしたちも、この世界だと、扶桑とカールスラントの妥協のしあいに巻き込まれたんだ」

 

「誠意という形でな。今日は巻き込んですまんな」

 

「え、ええ…。でも、なんなの、この生物は」

 

「カンブリア紀くらいの生物の生き残りだという話だ。魔女のいる世界では、怪異のおかげで、一部の古代生物が絶滅を免れたという仮説があってな。それが裏付けられた。後片付けを手配したら、ホテルに送る」

 

バルクホルンAもさすがに、タブレットくらいは扱えるようになったのか、手際よく操作する。

 

「トゥルーデ。よくできるわね」

 

「いい加減に慣れたよ。このくらい扱えんと、21世紀以降は生活出来んからな」

 

実際、機械文明が進んでいくと、どうしても、PCなどを扱えないといけなくなる。ミーナBには新鮮だが、バルクホルンAは生きていくために、やむなく覚えたという事情がある。

 

「色々な通信手段が出ては、消えていくんだ。これからな。手紙だって、以前ほどは書かなくなる。いずれ、そういう時代が来るよ」

 

 

と、バルクホルンAはそういう時代を既に体験している。ミーナBの生存中に、そういう時代が来るのかはわからない。そして、いずれは人は宇宙を目指すようになる。Aは色々な都合で、若い姿のままで、それを見届けるのである。

 

「私は『今の姿のまま』で人の文明を見守る立場になったんでな。まともに歳を重ねることはなくなった。まぁ、下手に年食って、甥や姪に迷惑かけるわけにもいかんし」

 

と、前世で体験した、甥の起こした事故の事を気にしている節を見せたバルクホルンA。事故での負傷で甥の人生を狂わした事から、歳を重ね過ぎることに否定的になったらしい。ある意味、前世の悲劇が転生後の考えに影響を与えた例の一つであった。

 

 

 

 

 

のぞみAもある意味、絶頂期の英雄ぶり、それ以後のしがない人生の落差で心を壊された経験を持つため、転生時に全盛期の姿に戻された。非変身時に現役時代の髪型を維持しているのは、『人生で一番に幸福であった時間』の象徴であったからである。その落差は全盛期に日本最強を謳われつつ、怪我した後の凋落が激しかったブライアンと共通する。故に、ブライアンの魂は、のぞみの肉体に高い親和性を見せたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

史実の記録が伝わることで、元来の立場を失った兵器も多い。金剛型巡洋戦艦は浮揚修理が否定され、大和型戦艦以降の重戦艦に置き換えられることになった他、超甲巡は結局、汎用性よりも攻防力増強が選ばれた。だが、全てをいきなり刷新してしまうと、前線の補給に支障を来す。その事から、超甲巡はいささか不遇な艦種と言えた。アイオワが当代最速の戦艦であったことが超甲巡の不幸であったと言える。また、九九式小銃も結局は89式小銃や20式小銃に駆逐されていくことになったので、いきなり、小口径のサブマシンガンやアサルトライフルを渡された前線の将兵は困惑してしまうことになった。

 

――新京 中心部――

 

 

「ん、あの兵士ども、何を揉めている?一般人と揉められても困るから、諌めてくる」

 

と、ブライアンはトラックから降り、キュアドリームとして、揉めている兵士らを諌めにかかった。兵士たちはダイ・アナザー・デイの英雄が現れたことに驚愕と困惑の表情を見せつつ、敬礼をし返す。5分ほど話し、戻ってくる。

 

「この時代の日本兵は駄目だな。アサルトライフルやサブマシンガンの扱いを知らん」

 

「空挺兵や機関銃担当じゃねぇと、フルオートの機関銃なんて触ってねぇからな、この時代の日本兵は。まったく。貧乏性だからか、なんだか知らねぇが、制圧射撃ってもんを理解してない」

 

「まぁ、弾すら増産できなかったというからな。アサルトライフルも、この時代にプロトタイプが出たばかりだったと、サバゲーマーの従姉妹から聞いたことがある。」

 

「まぁ、マスプロの成功した自動小銃自体、ガーランドが初めてだからな。アサルトライフルはドイツが考えたが、この世界じゃ、初期型が普及する前にドイツ自体が霧散しちまったから、戦後のG3がいきなり出てくるだろうよ。扶桑は採用したようだしな」

 

StG44は前線では『火力の底上げになる』という理由で好評であったが、カールスラント自体の霧散で生産自体が中止。その代替がドイツから餞別代わりに送られた『G3』というのも、歴史の皮肉であった。また、自衛隊からの供与品の量的に、全軍に行き渡らない扶桑も採用したため、こうして、旧西側諸国の雑多な装備が南洋で飛び交うことになった。

 

「お前、兵隊たちがブルっただろ?」

 

「腰を抜かされた。まぁ、こいつの武功はいい印籠になるよ」

 

のぞみのダイ・アナザー・デイやデザリアム戦役での戦功は、扶桑では強力な印籠になる。武人が尊ばれる風潮だからで、日本はそれを『社会の穢れ』として排除しようとして、扶桑社会に特大の歪みをもたらしてしまった。その詫び代わりが、異能者の特権の公認であった。そのため、プリキュアたちは軍人としては下手な将官より強い権力を奮えるのである。

 

「それに、末端の兵士にとっちゃ、少佐や中佐なんてのは雲の上の人だからな。扶桑の数十パーは徴兵だし、職業軍人な時点で、エリートだし」

 

「確かに。ああいう末端がチンピラまがいの振る舞いすると、イメージが悪くなる。定期的にチェックせねばな。柄じゃないんだが…。地球連邦軍も末端はチンピラまがいのが多いと聞いたが、扶桑もひどいな」

 

「戦争が長引くと、こうだよ。今年で三年も戦争してることになる。まぁ、史実の日本は15年も、あっちこっちでドンパチしてたから、それよりはマシだが。後で警務隊が身柄を拘束しにくるだろう」

 

「気持ちはわからんでもないが、ああいうチンピラまがいな振る舞いは、日本が予算を減らす方便に使うぞ?」

 

「だから、あたしらが取り締まれってさ。憲兵がすると、日本があーだこーだいうが、プリキュアのあたしらがやる分には、角が立たないからとかで。警務隊の正式な発足までの繋ぎって名目だが、たぶん、恒常化されるだろうよ」

 

扶桑軍は長引く戦争で、末端の兵士や下士官の規律が弛緩していた。これは1937年以降、戦時が数年単位で続いていなかったことに由来する。さらに、大変革の連続で、それ以前から従軍していた低学歴者が、後からやってきた高学歴者に公然と見下されることが多くなったことが増えたことも大きい。仕方がないが、兵器が高度化していくと、一定の学識が必要になるのである。

 

「それに、あたしらも現役時代と違って、ゴリ押しが通用しねぇ状況に置かれてるからな。だから、格闘訓練をしてるわけだ。おまけに音速どころか、光速で戦うのが、上官連中だし」

 

「聖闘士は普通の理を超える存在だぞ?こいつはものすごくイレギュラーな流れで、その領域に達したが、少なくとも、何らかの手段で、タキオン粒子を操る方法を覚えるんだな。仮面ライダーカブトみたいに」

 

「クソ、面倒クセェ」

 

「仕方がないだろ。光速で戦える改造人間がゴロゴロいるご時世、しかも、最高位はもれなく、仮面ライダー一号と二号の改良型の姿なんだ。あるいはZXか、BLACK。そんな連中相手に、死なずに渡り合える分、マシだって思うんだな。連中も常に光速で動くわけじゃないし、どんな早さも、クロックアップとかをすりゃ、止まって見える。擬似的に、私達(ウマ娘)もそんな感覚を使えるんでな」

 

ウマ娘の持つ『領域』は基本的に『限界を超えた加速』と解釈されているが、時間が止まる感覚があると、タマモクロスが言っていたように、クロックアップに近い状態に達しているのでは?との推測もある。

 

「何だよそれぇ!?」

 

「能力バトルものであるだろ、能力の究極は時を操ることだって。私達の中でも、世代最強と言われた連中にしか発現しないものだがな」

 

ブライアンのそれは全盛期のものとは既に変化しているが、能力自体は失われていない。それを戦闘に応用した上で、更に小宇宙と併用する。天才肌であれば、比較的容易にたどり着く境地である。

 

「ただし、下の世代は単純にスピード強化などになっている場合が多いがな。それ故に、速度が骨格の耐久限度を超えて、選手生命が消えかけた後輩がいる」

 

 

それはサイレンススズカのことだ。あくまで、ブライアンやルドルフの推測に過ぎないが、スズカの領域はあまりに速さに特化したものであったので、それが骨格の耐久限度を超えてしまった故に、複雑骨折の憂き目にあったのだと。

 

「うへぇ…」

 

「私も股関節をやってからは、全盛期の速さは出せなくなってな。それで全てが暗転した。だから、今の状況には感謝してる。まぁ、親父が死なん限り、実家の敷居は跨げないがな」

 

「ある意味、本人より戦闘向きだもんな、お前。でも、親父さんの財産はどうすんだよ」

 

「相続放棄して、姉貴に渡すよ。相続税は高いし、お袋や親戚と揉めたくないんでな」

 

ブライアンが宿っている状態でのキュアドリームは目つきが鋭い、自己意志で『ノワールフォーム』になれるなど、のぞみ本人より闇属性が強い側面がある。それと、自分で稼ぐつもりなので、ブライアンは『親の遺産は宛にしない』ことも明言した。

 

「私の実績なら、今後に引退した後も、食い扶持はいくらでもある。まぁ、直接の子孫がいない以上、競技自体は続けるつもりだが」

 

「それも世知辛いな」

 

「私は種牡馬としては、ダメダメなままで逝ったからな。あと数年の時間があれば、違ったかもしれんが、サンデーサイレンス全盛の時期に入っていく流れに飲み込まれたかもしれん」

 

 

ブライアンはサンデーサイレンスが種牡馬として全盛期に入る頃に種牡馬であったため、現役時代とは真逆の苦難を味わった。その記憶もあるためか、自身の直接の後継者を育てることには興味はないようだ。あくまで、自ら戦うことを選ぶあたりは、先輩のシービーに近い(ルドルフには、テイオーという後継者がいる)。

 

「まぁ、引退したら、しばらくはプロで食っていくよ」

 

と、ウマ娘の競技はある意味、フィギュアスケートに近い構造であったことがわかる。だが、シリーズからの引退者=ロートルという図式が成立してしまって久しく、その批判も大きかったので、シンザンはそれを変えようとしているのである。シリーズを年齢の都合で退いても、絶頂期に近い状態を保つ者もいるのだから。

 

「日本人は武士の頃からの価値観を持ってるからな……。引退レースを勝ててこそ、一流とか、全力で戦えない=生き恥とかな。そういうの、純粋なアスリートにしてみれば愚弄なんだがな。そういう価値観」

 

「日本人はそういう人種なのさ。だから、玉砕や特攻とかを考えつくんだよ。あんただって、前世はそうだっただろ」

 

「そりゃそうだが……不治の病気で引退した例もあるっつーの」

 

「ガキ連中が、ルー・ゲーリッグのこと知ってると思うか?」

 

「確かに……」

 

 

シャーリーは悲劇の野球選手であった『ルー・ゲーリッグ』の現役引退時に子供であったため、不治の病でキャリアを理不尽に断ち切られる事の残酷さを知っている。そのため、日本人の『引退までヒーローでいろ』という考えに眉を顰めるが、ブライアン自身が『期待に応えられなくなったら、周囲に掌返しをされた』経歴の持ち主なので、押し黙る。

 

「英雄は英雄でいなければならんのだ。時代が望む限り……な」

 

オグリも引退後の身体測定で、能力値が全盛期の状態に戻っていたという。それは全盛期のスポーツ心臓が復活していたからで、医学的には好ましくはないともされるが、ウマ娘にとっては重要な要素とされる。オグリは引退レースでそれが復活しており、全盛期の走りを取り戻していた。それ以後は全盛期の能力値を維持しているという謎がある。それも、ある意味で『英雄は英雄であり続けろ』という世界の意志であるのかもしれないと、ブライアンは考えていた。史実では見ることのなかった、サンデーサイレンス系の席巻するレース界を目の当たりにし、それ以外の系統のウマ娘が活躍する機会の減る時代に生きる以上、前世の父親『ブライアンズタイム』への手向けはせねばならない。そう考えていた。自身にブライアンズタイム系で最良の産駒という自覚があったからで、前世の記憶が復活した故の複雑な心理を抱いているのが窺えた。

 

 

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