時空管理局はタイムトラベル技術まではないため、組織名に語弊があると指摘されていたが、今更変えられないので、地球連邦が再建中のタイムパトロールに治安維持部門を取り込ませ、フェイトなどに司法警察権を与えた。また、扶桑から払い下げされた五式中戦車改を大規模に導入した。これは魔導師同士の内紛、なのはの不祥事の報道で、魔導師の信頼が失墜したのと、もはや、質量兵器禁止を宣っても、説得力のない状態である故の妥協であり、同時に、地球連邦の実質的な『外地』に組み込まれた末の産物であった。
こうして、地球連邦は歴史的に見れば、『黄金時代』に入りつつあった。だが、地球連邦は今後の歴史で屈辱を味わされることになるので、それを避けるため、キャプテンハーロックとクイーン・エメラルダスは30世紀水準の技術を過去の地球連邦にもたらした。その結果、地球連邦は早期に次元世界全体へ進出。ミッドチルダの動乱の混乱の収拾を口実に、実質的に同地を支配地域に組み入れた。当時、ミッドチルダの艦艇は第二次世界大戦式の戦艦の砲弾にすら耐えられない『脆さ』を露見しており、それを隠蔽するためもあり、地球連邦の支配を受け入れたほうが良かったのだ。そして、仮面ライダーらの再生機能付きのボディは(時空管理局の技術よりも)数段上の次元にあることも、ミッドチルダの住民には隠蔽されている。サイボーグの類でありながら、機械部分のメンテナンスの必要が殆どないのは、時空管理局の保有技術より数世代は先のものだからだ。
扶桑軍は停戦監視団をミッドチルダに置いていた。その兵力はそこそこのもので、ミッドチルダの体制が安定しないために駐屯しているようなものであったが、時空管理局は魔導師依存が強すぎた結果、非魔導師の人材の活用ができない始末であったため、地球連邦の支配体制への転換後は、扶桑軍の二個師団と一個艦隊が停戦監視団の名目で駐屯している。なのはは窓際族に落ちた後、扶桑との折衝役に任ぜられる予定であったが、フェイトの進言で没になった。これはなのはが酒浸りになっていたからで、フェイトの主導で、流竜馬に頼み込む形で、道場に預けられている。ただし、動乱の戦功で三佐には昇進しており、取り決めにより、一佐の先には昇進させないが、一佐に数年ほど在任すれば、給与その他は将官待遇とするという妥協が取られた。非ミッドチルダ出身者の立身出世のモデルケースにしていた関係であった。そのなのはは、のぞみの覚醒後に会ったことがある。ある日に、急な業務で、ミッドチルダに行けなくなった調の代理で、様子を見に行った時が、正式な顔合わせであった。
「すみません、のぞみさん。ママ、朝から酒を開けてて」
「これが、時空管理局でエリートコースをひた走ってた奴の姿か?呆れて、物も言えないよ」
と、のぞみもあからさまに顔をしかめるレベルで酒浸りのなのは。この時には20代前半を迎えていた。
「私も、付き合いで酒飲むけど、こりゃひどい。フェイトちゃんの携帯の番号、わかる?」
「アリシアおばさんから聞いてます。この番号です」
「よし……。……フェイトちゃん?あたし。夢原のぞみだけど……調ちゃんの代理で、なのはの様子を身に来たんだけどさ」
このような流れで、なのはは流道場に預けられたわけである。ブライアンは、今回の騒動の前、遠征の帰還直後、のぞみの言付けに応じ、なのはの様子を確認しに、流竜馬に会っている。
23世紀の地球 流竜馬の道場
「中身はゴルシのダチか」
「のぞみと話をつけたんでな。あいつの言付けに則って、なのはの様子を見に来たんだが」
「今は弟子たちに揉ませているところだ。そこから見える」
「ん……なかなかゴツいのを充てがったな」
「腐っても、実家は剣術使いの家系で、時空管理局のエリートコースを歩んできたし、軍の正規の訓練も受けたことのある奴だ。そこそこは運動神経がある。酒飲みなせいで、平行世界のミッドチルダに飛ばされた時、別世界線の自分の貯金を使い込んたって、奴の子から教えられてな。呆れたぜ。だから、酒は断たせてる」
なのはは意外と複雑な家庭環境に生きていた。それもあり、接触した世界線では、自身の業務ミスからの挫折をきっかけに、それまで押し殺してきたフラストレーションが爆発。酒飲みに変貌してしまっていた。竜馬はヴィヴィオの教育にも良くないということで、なのはには厳しく接している。
「最近は俺に一泡吹かせようとしてるが、付け焼き刃で、俺に勝てると思ってんのかね」
「ゲッターロボの上から飛び降りて、無傷でいられるって聞いたぞ、あんた」
「5~60mくらいは屁でもねぇよ。それに、俺は真ゲッターや真ドラゴンの負荷に耐えられるし、光速戦闘もザラだ。あいつの魔法の飛行速度なんぞ、あくびが出るぜ。今は倅に細かい面倒を見させている」
竜馬の別世界線での実子の拓馬だが、この時期には、道場の師範扱いで暮らしており、意外と平和に暮らしていた。転移先での竜馬が若いため、ゲッターロボのパイロットとしては予備人員扱いであった。別世界線の存在とはいえ、自分の子である以上は無碍にもできないので、(一応は)自分の子として扱っている。それは竜馬なりの思いやりであった。
「しかし、あいつに趣味があってよかったぜ。ちょっとしたいたずらで、あいつに最高グレードのガンダム試作三号機のプラモを造ってみろと言ってみた」
「あのクソみたいなパーツ数のか?」
「そうだ。当分かかるぜ。エッチングパーツ使えとか条件つけたからな」
「わーお……従姉妹から聞いたら、作るのに、一ヶ月かかるとか?」
「デンドロビウムの実物があった世界線でのプラモだからな。情報も解禁された。ティターンズも倒れて、MS自体も小型化の時代の終わりを迎える時代に、デラーズ紛争の時のMSを秘匿する必要はねぇってんでな。時空管理局の上は神経を尖らせたみたいだぞ、あいつの扱い」
「ああ、管理外世界出身者の立身出世のモデルケースに使ってたんだろ?」
「そうだ。伝統的に、不名誉除隊は時空管理局にはないそうでな。地球連邦軍も、一年戦争以降に人手不足になってからは、死文に近いそうだ。その兼ね合いで、窓際族にする方向になったんだそうだ。あいつ以上の戦闘向けの魔導師は数十年に一人くらいしか出ない。しかし、人事査定上のマイナスはつけなきゃならん……って奴だ」
「しかし、モデルケースにしてた将校を一回の軽微なミスで降格処分にさせるわけにもいかなかったって?」
「だから、教官に向いていないという烙印を押すことで、前線要員として使い倒すことで妥協されたってわけだ」
「大人の事情って奴か」
「秀でたものを持ってたし、立身出世のプロパガンダに散々使ってきたこととの兼ね合いだな。それに、ミッドは今や、連邦の植民惑星だしな。別の世界線は別だが」
「マジンカイザーや真ゲッターロボがある地球を支配しようと考えるバカがいるのか?」
「フェイト曰く、M動乱の少し前まではいたそうだ」
「嘘だろ」
と、時空管理局内部では、マジンカイザーや真ゲッターロボの強大な力を畏怖した者たちが体制に組み込んで、軍部を解体すべしと叫んだ者らはいた。宇宙戦艦ヤマトの波動砲の威力に怯えた上、波動砲も『量産されている兵器に過ぎない』と、その威力を知る八神はやてが説いたこと、ゲッターロボの究極を思えば、真ゲッターロボすら赤子に近いもの。ゲッターエンペラーの存在を知っていたのもあり、はやては各方面に手を回し、地球連邦に喧嘩を売らないようにさせた。その矢先に、動乱は起こったのである。
「だが、あの動乱で、ミッドやベルカのルーツが地球にあることが分かって、アイデンティティが崩壊した連中は内部分裂を起こしてな。良識派が俺等の助力を乞いて、残った戦力で必死に抗戦したが、いかんせん数が足りなかった。それで、停戦に持ち込むのが精一杯だったんだ」
「あんたらの力でも、か」
「あの星は荒れててな。首都の一区画が丸ごと放棄されてたレベルだ。そんなだから、暴れたかったんだが、いずれ復興させたいんだってんでな。まるで、銀河英雄伝説の荒れた地球みたいだったぜ」
「あんたの時代でも読まれてるのか」
「名作だしな」
ミッドチルダは結局、地上本部の惨状が報じられてしまったこともあり、求心力が見る影もなく低下。だが、秩序の崩壊は望まれていなかったので、地球連邦の支配体制に組み込まれることで、辛うじてだが、組織の命脈を保ったことが語られていく。
「しばらくはその体だろう?」
「ああ。変身は解けんがな。解いたら、この体が魂の要求に追いつけずに、壊れる危険が大きいし」
「お前らの種族はサラブレッドの特性を持つって聞いた。魂はサラブレッドのものだが、肉体は人間だ。だから、サラブレッド級の速さに、肉体が長時間はそれに耐えられないというが、鍛えればいい。この時代の医療なら、肉体の老いも、一定範囲は治せるからな」
白色彗星帝国の残した医療技術は地球連邦の医療を飛躍させ、脳の記憶の完璧な電子化とその保存、肉体の蘇生も可能とした。30世紀の真田志郎や大山敏郎(トチロー)が、偉大な先祖の持っていた全技能をそっくりそのまま受け継いでいる理由の遠因である。
「白色彗星帝国の遺産だ。連中の残骸から回収された技術って奴だ。お前らの種族の宿命を乗り越える一助になると思うぜ」
「なんで、本来は四足歩行の動物が発症する病気を二足歩行で発症するんだ?」
「因果も絡んでるんだろう。史実で致命的な怪我をした連中は、そのタイミングで因子が発現するし、急速に能力も衰える。それは因果律のレベルだから、個人の努力でどうにかできるレベルじゃない。凱旋門賞への挑戦も同じだ。だから、因果律を操作する能力を持つ、そいつの力を借りたのは正解だよ」
因果律操作は神の領域の能力である。のぞみAはそれを手に入れている。その能力をウマ娘全体の因果律を変えるために行使していることは定時連絡で伝えられていた。
「だが、似たことは起きてしまうのは避けられんぜ。修正力って奴だな。因果律操作でできるのは、回復する可能性を上げることとかだ。だが、お前が天寿を全うできた世界線もどこかにあるだろうから、その世界線の因果と繋がれば……」
ブライアンは多くの世界線でキャリア後半は奈落への転落を味わう事になる。そして、最後は病で夭折してしまうという結末を迎えた世界線もある。ならば、その逆もあり得るはずである。のぞみAはZEROから引き継いだ『高次予測』でそれを探り、因果律操作でブライアンの未来を変えようとしているのである。
「あいつはそれを?」
「あいつの力なら探り当てられるし、そこから『結果』を手繰り寄せられる。それをお前ら種族全体に当てはめれば……」
「不治の病も治るように?
「そうなる。ドラえもんの技術はロストテクノロジーになっちまって久しいから、こういうチートを使うしか手がねぇがね。反統合同盟のせいだな」
結局、ひみつ道具時代の終焉を招いたとして、反統合同盟の構成国たちは白眼視されるようになり、差別意識は23世紀を迎えても、わずかに残っている。ガトランティス(白色彗星帝国)に軍事拠点が多いと見なされた都合上、ジオフロント化が事前に進められていた旧西側諸国に比べ、被害が大きく、ドラえもんの力無くば、文化遺産の復興もなかった。それだけ、ドラえもんのいた時代の総合的な技術力が安定して高かったか。それに尽きる。
「連中は何をしたんだ?」
「当事者は『こうなるはずじゃなかったんだ……』と言い訳しまくったそうだ。電磁パルスで、当時の情報メインサーバーのコンピュータを根こそぎ壊したそうでな。結局、総合的な文明は21世紀に毛が生えた程度に低下。恒星間宇宙船の復活はマクロスの解析や、波動エンジンの開発までお預けだそうだ。ジオンの連中は、その時に反文明的的な振る舞いをしてた連中の子孫だって話だ」
反統合同盟は次第に大義名分も喪失し、霧散していった。元々が日本連邦への復讐、ないしは自分らの過去の栄光の復活が目的であったからで、建前と本音が違った。その子孫らが『内輪揉めで分裂を繰り返すジオン公国とその残党軍』なのは、ある意味で納得する話だ。地球がガミラスや白色彗星帝国相手にも、航空戦では有利であったのは、内輪揉めを繰り返してきた故に、空中戦のノウハウが数百年単位で蓄積されているからである。
「それで、軍事技術だけが突出したんだな」
「で、波動砲とかを得た地球は銀河系に進出し始めている。銀河連邦も衰退して久しいから、理事国になれってさ。で、このままだと、30世紀のハーロックとかの時代が悲惨になるから、常に危機に備える思想を忘れないようにしてくれってよ」
「近隣の銀河との戦争が落ち着けば、戦争なんぞは地震や火山の噴火扱いになるだろうしな。だが、地球とて、永久にそのままでいられるわけでもないだろうに」
「だから、地球がなくなろうと、文化圏を維持しようってことで、あっちこっちに移民船団を送り込んでるんだ。それに、ハーロックの話だと、銀河系に、地球とまるっきり同じ地形で、まるっきり同じ大気を持つ惑星が見つかるそうで、そこを第二の地球にするそうだ。その星の太陽も、地球の太陽より若いそうでな」
「太陽って、100億年だろ?」
「普通の大きさだとな。あと数十億で、水星と金星を飲み込む。その後に地球は弾き飛ばされるなんて話もある。だから、事前に地球の全てを他の星に移植しておこうという話になった。コロニーは星の重力均衡が崩れると、脆いからな」
「あんた、意外にインテリだな」
「まぁ、ゲッターのおかげだな」
「で、なのははどういう酒を飲んでたんだ?」
「まぁ、ごくありふれたもんだ。ビールに日本酒……まぁ、テキーラやジンとかには手を出してないのは幸いだった。中国やロシアのに手を出したら、肝臓が死ぬところだぜ」
「中国とロシアのは、場合によれば、70度に達するというしなぁ。手を出す前で良かったよ。ビールと日本酒なら、極普通だ」
と、実家の関係で、酒に詳しい面を持つブライアン。
「まぁ、酒は体に悪い側面もあるが、大人の付き合いだと、欠かせないだろ?今はノンアルコールを飲ませてる」
「最近は便利になったからな。昭和の頃は社員同士の会話で、下戸はハブられるとかあったというが、今は厳しいからな」
「俺達もあまり飲まんよ。呑兵衛でエースの人もいるがな。大人になると、タバコはともかく、酒は付き合いで飲むしかねぇ時も多いが、肝臓をやると面倒だ。ウチの親父も酒飲みだったからな」
竜馬は自身の父が(キチ◯イな)格闘家であったためもあり、酒は嗜む程度に留めている。それは拓馬のいた次元でも同じであった。
「調やヴィヴィオには管理をするように言い聞かせている。ヴィヴィオは甘えたい盛りの年頃だ。あの年で負担を強いるわけにもいかないしな」
竜馬は自身の母親(既に死去)が長らく床に臥せっており、事故で夭折した実妹『ジュン』(竜馬が中学一年の頃に事故で夭折)が母親の看病をしていた関係か、そうしたところは意外なほどに、きめ細かく対応している。
「まぁ、今しばらくはウチで預かる。最近はプロフェッサー・ランドウも大人しくしてるしな」
この頃には、百鬼帝国に代わり、プロフェッサー・ランドウがゲッター軍団の主敵であった。アンドロメダ流国への対抗も急いでいるところだが、当面はランドウが主敵であった。これはネオゲッターやゲッター號クラスには有利な戦力を持つが、真ゲッターロボよりも強大な能力を誇るゲッターロボアークや真ゲッタードラゴンの出現に泡を食ったためだと思われた。
「頼む。なのはには伝えてあるか?」
「伝えた。驚いてたぞ?」
「まぁ、私は顔出しでは動けん身の上だしな。奴も、酒飲みな姿は見せられんだろ」
「ひょんなことで、別世界線の自分に会うこともあるからな、あいつは。今の時点だと、かなりかけ離れてるからな、正史から見れば。機動六課も、面子がかなりいなくなってるし」
「まぁ、ガキ連中に、ガチの戦争はさせられんだろ。それに、ティアナなんて、声の妖精さんつながりで、HIMEと乙HIMEのハイブリッドだぞ」
「なのはにも、素質がありそうだな、そうなると」
「あり得る」
この時に二人が言及した可能性である『別世界線の自分に会う』だが、なのはは既に、二回は経験している。二度あることは三度あるともいうので、周りはもう一度あるだろうと踏んでいる。ただし、そのことは、ウマ娘たちにも当てはまることでもあるし、プリキュア達もしかり。派生する世界線にもよるが、剣鉄也は壮烈な戦死を遂げるし、グレンダイザーに至っては、隠し機能の発動で地球を滅ぼしてしまう。アムロも、一年戦争で戦死する可能性が知られている。シャア・アズナブルに至っては、ナイチンゲールやサザビーで最終決戦に挑めるパターンのほうが貴重で、多くは一年戦争の際に死亡してしまう(アムロ以外の要因も多い)とも。そのため、可能性は無限にあると言える。シャアも、ガルバルディαに乗れた世界線があるものの、アムロがガルバルディよりも上の次元の性能を誇る『ガンダムNT-1』に乗ってきたために、あえなく敗れ去るという顛末であったらしい。それを聞いたシャア本人は乾いた笑いが出たという。また、この数多くの因果律により、シャアはアムロに勝てない可能性のほうが有力であることが確かめられている。
「お前は運命を超えたいんだろう?なら、しばらくはその姿で過ごすんだな」
「そのつもりだよ。時間はドラえもんが調整をとってくれるからな」
こうして、ブライアンは別世界の技術で、レースと距離を置いた生活を送る。ブライアン個人のキャリアが『悲運の後半』へ変わっていく時期に差し掛かる時期であったので、それを変えるためのものであったが、レース以外の生活を(幼少期を除いて)してこなかったことに気がついたことから、こうした使いにも積極的であった。それはのぞみAも同じ。こちらは逆に『アスリートとしての生活』を体験し、運動の楽しさと『勝利を求められる勝負の世界の厳しさ』を垣間見ていたりする。お互いに(かつては)無縁であったジャンルの生活をすることになっているわけだが、片や、現役時代には無縁であった『スポーツ選手』としての生活』、もう片方はまったく興味のなかった『変身ヒロイン』としての生活。ある意味では対極的な生き方の二人だが、片方の辿るはずであった悲運の運命を片方が救うという目的でいえば、のぞみはある意味、プリキュア本来の存在意義を久方ぶりに果たしたと言える状況であった。