ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百六十七話「二つの世界にて 48」

結局、扶桑は地球連邦軍のバックアップで兵器開発の規模を維持できたものの、予算規模は大きく縮小してしまった。軍需より民需が優先されたためだが、時代は戦時。扶桑の人々も軍需優先を望むという事態に直面。日本は扶桑からの突き上げに対して、場当たり的な対応に終止した。結局は日本の企業と同祖にあたる企業を日本企業に吸収させ、現地部署として扱うなどの救済措置を取らざるを得なかった。アナハイム・エレクトロニクス社はそんな扶桑と日本の窮状に商機を見出す形になり、間接的に扶桑の企業を影響下に置いた。アナハイム・エレクトロニクス社の先端科学により、扶桑の科学は一挙に数十年分の進歩が起こったが、市井にはあまり放出しなかった。1960年代相当の技術でも、民間の手に負えないと判断されたからだが、軍部の人間は1990年代以降の情報技術を駆使する事になるので、結局は1970年代までの技術を市井に降ろすのが適当とされ、急速に電話網などが末端の農村にまで普及していった。その過程で地主の解体が起こり、小農村の廃村が相次いだのである。

 

 

 

 

 

 

この落差は先端情報技術が必須になった後の時代の戦争に巻き込まれた故で、結局は政治の駆け引きに夢中になった日本の内部抗争のせいで、扶桑軍部の組織的行動を困難にしたため、異能者におんぶにだっことなったのである。軍事技術が異常発達するのを恐れたのだと、日本側は言い訳するが、扶桑の技術は史実の同時期よりも、発達が遅れている分野も多く、それが史実通りに矯正されるだけである。戦時というのは、元より技術が発達する時期なのである。例えば、ソナーは1920年代の水準であったため、それが戦後の時代の性能になるだけであったり、潜水艦のソナー手の仕事が楽になる。M動乱以降は必須の技術とされたためで、潜水艦関連技術も戦後の時代の水準に達しつつある。違うのは、潜水艦による対地攻撃の必要性が低いことだ。また、水雷装備を降ろした艦政本部がM動乱で散々に兵士らから不備を責められ、集団ヒステリーを起こすなどの組織的混乱が続いた結果、航続距離そのものは妥協するが、装備は積めるだけ積むという、史実の日本海軍と同じ考えに至り、結局は艦艇の大型化を容認するに至った。大パワーと省燃費・省スペースを達成できる機関がもたらされた故に、積載できる武装の上限が増え、機関の省スペース化や電子装備の導入も達成できたからである。その過渡期に建艦された『伊吹型重巡』は従来型軽空母の陳腐化に伴う計画変更で、結局は重巡へ戻されたという経緯から、『生まれながらの旧式艦』と揶揄されていた。だが、戦間期水準の艦が余裕で現役を張る連合軍にとっては充分に新しい設計であり、逆に日本側が『高望み』を責められる結果になった。

 

 

 

 

この悲劇は、扶桑にもたらされた軍事技術の飛躍が起こした。軽空母は尽くが『烈風と流星の運用さえ事欠く』とされ、大半が練習空母どころか、航空機運搬船にもされずに解体の道を辿った。その兼ね合いで、空母化改造が宙に浮いていた伊吹は重巡に計画が戻されたが、二転三転する計画に、造船所の現場が怒り狂い、ストライキとサボタージュを起こしてしまう始末。その収拾に時間がかかり、その間に、デモイン級というバケモノ重巡が生まれてしまったのである。扶桑は超甲巡で対抗を考えていたが、超甲巡が巡洋戦艦に分類されてしまったので、同クラスの巡洋艦を必要とすることになった。伊吹は『それまでの繋ぎに過ぎない旧式艦』と見なされていた。とはいえ、高雄型重巡洋艦の老朽化、呉軍港の壊滅での金剛型戦艦の破壊に伴う代替艦が必要不可欠になったため、妥協で増産がなされた。日本側も『設計は1930年代の二等巡洋艦が基だが……』と渋い顔をしたが、デモインと対等の巡洋艦となると、一昔前の戦艦と同格の船体が必要不可欠。そのため、迅速な生産は不可能。大和型戦艦以下の戦艦部隊も、大半がドック入り中であったため、新鋭の水戸型戦艦の量産が急がれているが、1949年秋の段階での生産数はたったの数隻。現存艦隊主義もやむなしな有様であった。ただし、大和は船体へ予想以上に激戦での金属疲労などが蓄積していたため、代替が必要とされ、その代替艦に名を引き継がせる見込みである。水戸型の竣工済みの艦は各戦隊の旗艦となったが、これは連合艦隊の主力艦が動けぬことを欺瞞するための配置であった。結局、大艦巨砲が抑止力になっている世界では、強力無比な戦艦で艦隊を組むだけで、戦争抑止力になるのである。史実の長門型戦艦がそうであったように。

 

 

 

結局、日本が扶桑に強く出られないのは、軍事力の物量差、戦艦という『ロストテクノロジー化した重装甲艦がある』こと、日本が失って久しい異能者がたんまりいることが理由であった。日本は『もう十年早ければ……』と嘆いたが、接触が早ければ、学園都市をけしかけられたからであるが、その学園都市は既に消えている。さらに、学園都市を非人道的だということで、能力者が散り散りになったタイミングで解体したのは、自分たちである。さらに言えば、転職志望の軍人に辛く当たったら、その人物がプリキュア変身者だったという予想外の出来事による大失態も絡んでいた。しかも、プリキュアでも有数の人気を誇る人物であったのだから、国際問題級の不祥事にしてしまった関係省庁の顔面蒼白ぶりはいかほどであったろう。結局、扶桑の予備役制度自体をガタガタにしてしまったことと合わせ、日本は自らのミスで、扶桑の政治に(合法的に)介入できる権利を喪失していった。ドイツと違うのは、自分のミスで放棄せざるを得なくなった点が異なった。のぞみの一件はまさにそれで、日本側にできるのは、リンチで退役せざるを得なくなった者への損害補償の担保と、のぞみの転職を政治的取引で潰した詫び代わりの厚遇であることくらいである。だが、プリキュア側にも弊害はあり、有名人である故に、プライベートが無きに等しいくらいに、パパラッチに追われてしまうことがあり、それを回避するため、プリキュア姿で勤務するのが当たり前になっていった。倫理観の大転換により、小農村が次々と廃村に追い込まれていっているのも事実であり、外地に投下されていた資金が内地に投下されるようになったため、皮肉なことに、地主層の解体も起こり、国内が不安定気味であったので、プリキュアたちに注目を(敢えて)集め、農村部の不満を逸らさせる目的もあった。農村部が魔女への迫害という、稀に見る愚行に走ったため、それを国が取り締まるためもあり、64Fに良質の魔女を集中させるようにもなったのだ。

 

 

 

 

 

魔女は地方出身者のほうが質がいいというジンクスがあり、芳佳という例外を除けば、智子と武子、圭子は北海道、黒江は九州の出であった。だが、芳佳が(二重の主人公補正で)最高の魔力量を得たり、関東地方出身の中島錦がプリキュア化したりした影響で破られている。また、メタ的意味で『宮藤芳佳以上の魔力の魔女は(直系尊属の子孫でない限り)出現しない』という事実の判明も、魔女への期待値の低下に繋がった。そして、魔法が体系化されていない場合が多かったのも、時空管理局の魔導師への劣位に繋がった。そのため、質がある程度担保され、人同士の戦いにアレルギーを持たない者が重宝された。黒江がダイ・アナザー・デイ当時から集めてきた者の多くはその気質を持つ。怪異がスーパーロボットや魔導師の手で退治されていき、相対的に脅威度が下がった時代では、後世に現れる垂直離着陸機のような扱いになりつつあったが、国を問わず、魔女は『我が強い』ため、政治的意味では嫌われ者となっていった。黒江たちのダイ・アナザー・デイでの奮戦がなければ、史実の魔女狩りのような惨劇が世界規模で起こっていたことは間違いない。事実、オラーシャではそうなった。第二世代型ユニットは魔女の生き残りをかけた切り札と言われていたが、人同士の戦争にアレルギーを起こさないようにしなければ、どのみち、政治的に抹殺される。既に、素で瘴気等に耐えられる体質があることも分かった時代では、魔女を(敢えて)大人数で新規に雇用する意義は薄れたのである。雇用枠の維持は人々の魔女への差別意識の醸成の防止のため。それが真相であった。

 

 

 

 

 

 

プリキュア達は世界を超えて覚醒する関係で、既に別の力を持っていても、前世がそうであったりした場合は覚醒する。のぞみは肉体そのものが変異した例であり、調は前世で縁があるケースであった。野比財団の10年近くの調査により、徐々に判明した。プリキュアに覚醒した者にはそれぞれの事情があるが、家庭の事情で軍自体は去れないため、所属軍を変えた(キュアマーメイド)りする工夫がなされた。撃墜王と公言することが海軍航空では、『英雄ぶっている』と嫌われるからだが、日本連邦化で英雄が政治的に必要になり、結局は坂本と若本を担ぎ上げる事になったが、坂本は年齢を理由に、第一線を退いたため、実質的に若本しかいなくなった海軍航空。そのため、ダイ・アナザー・デイの際に中堅であった世代は揉め事で撃墜王を空軍に流出させたと、以後の時代の者たちに疎んじられるようになった。仕方がないが、プリキュアに覚醒した者のうち、多くが扶桑陸軍航空の出身であったが、主人公補正持ちの芳佳が覚醒し、海軍航空の集団主義性を嫌い、空軍へ移籍してしまったことは痛手であり、海軍航空は以後、人材不足に悩み続けることになったというパニックも引き起こした。だが、プリキュア達を自由に動かすには、新興の軍隊が必要であったのも事実であった。プリキュアには、飛行能力を上位形態で得るパターンも多かったからだ。その関係上、空軍に籍を置かせたほうが都合が良かったのだ。のぞみの一件は完全に日本軍の知識への無知が招いたミスであったが、扶桑への不信を招いてしまったため、日本はこの事件で、次第に日本連邦の運営に興味を無くしていくが、扶桑の独走を防ぐために、一定の関わりは維持した。そのせめぎあいの結果が『異能者への勤務特権の付与』であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、日本で人気のアニメキャラクターであったプリキュアオールスターズが実在したが、法的な都合等で、扶桑軍に雇用されていることは日本で議論を呼んだが、過去のヒーローたちと違い、警察関係者に『ヒーロー活動に理解のある者』がいなくなっており、違法性に問われる危険が大きかったため、扶桑軍が身辺警護も兼ねて、雇用したという答弁は、日本警察に理不尽なクレームが舞い込んでしまう流れを作ったが、警察官はあれこれの束縛がある。機動刑事ジバンも、法的にかなり無茶をしなければ、バイオロンを殲滅出来なかったし、特捜ロボジャンパーソンも、あれこれの束縛のないロボットだからこそ、悪の組織を倒せた。レスキューポリスが解散させられたのも、法務省や警察に、そのあたりにうるさい輩が増えたからである。だが、実際には、三大宇宙刑事が悪の組織を壊滅に追い込んだのは知られていたので、面倒ごとを避けがちな戦後日本の悪癖が表れているとも取れた。そのことが彼らの再訪で示される事になると、プリキュア達の活動は(かつての機動刑事ジバンのように)特例法の制定で帳尻合わせが取られることになった(銀河連邦が日本政府に圧力をかけたためでもある)。その事の兼ね合いもあり、プリキュア達は転生後は公私の区別無く、変身姿で活動することが多くなっていった。

 

 

 

 

これは変身後が有名であっても、変身前が知られていなかったのぞみのケースを鑑みての措置であり、他のプリキュアも追従した。ダイ・アナザー・デイの終了直後、野比家へ帰還するキュアフェリーチェについてくる形で、キュアドリームとして、野比家を訪れたのが最初であった。帰還先は既にノビスケも幼稚園児を迎えていた2017年前後の頃。のぞみの現役時代からは10年近くが経過していた。そこから少しづつ『他人の肉体を乗っ取る形で転生したことでの負い目』などを無くしていく努力がなされ、ススキヶ原で事実上の(精神的意味での)療養を行った。この時期から、キュアドリームの姿で、現役時代での素に近い天真爛漫さを見せるようになっていった。ただし、錦としての気質が完全に消えたわけではなく、サッカー好きになっていたり、運動神経の基礎値が上がったため、現役時代より動きが良くなっているなどの効果もあった。しかしながら、軍人としては、教育の簡略化に伴う格闘訓練の省略の最初の世代であった故に、暗殺拳の伝承者であるティターンズ残党の幹部層には手もなく捻られる事例が相次いだのも事実であり、それは戦間期に鍛えられた。講師は流竜馬やドモン・カッシュ、本郷猛(一号ライダー)と言った玄人集団。加えて、錦の姉『小鷹』と黒江の元上官の江藤敏子が同期であった縁により、錦が継ぐはずであった『草薙流古武術』(陽)を継承。太平洋戦争時には、ダイ・アナザー・デイ当時より隙のない能力に成長を遂げることになった。その状態で、ナリタブライアンと精神を入れ替えたため、ブライアンは自身の絶頂期の時の感覚を取り戻し始めていた。

 

 

 

 

 

 

ウマ娘は絶頂期の感覚を失い始めると、途端に成績が落ちるのだが、それはウマ娘の持つ魂の『歴史的役目』に由来するのも多い。オグリキャップもそうであったが、史実が史実なので、最後に勝てた。だが、引退レースで勝てた者は実は少ない。ブライアンは史実を超え、自分の満足の行く競技人生にしたいので、それを可能にするためなら、神とも戦うつもりであった。ドラえもん達はそれを聞き届け、肉体的な治療を施した。後は精神的意味での全快である。そのため、ブライアンは自ら荒療治を実行した。それがプリキュア稼業の一時的な代行であった。本質が臆病であった彼女の子供時代の願望は『強くなりたい』であったので、ある意味で『合法的に子供時代の夢を叶えられる』のと、『自分の復調を叶える』ことの両立を図ったという、意外に純真なところがあったのである。

 

 

入れ替わりは(ブライアンがかなり長期にわたる入れ替わりを所望したため)長期に及ぶ。そのため、ブライアンは入れ替わりに伴う戦線参加は承知していた。

 

「お前、コルト1851ネイビーなんて、渋いの選んだな」

 

「改良はしてある。拳銃なんぞ、めったに使うもんじゃないだろ。オートマチックは、日本だといいイメージないものもあるが、リボルバーはいいイメージがあるからな」

 

「オートマチックは早打ちに限度があるからな」

 

「威嚇で使えるだろ、あんたらの相手でも」

 

「まぁ、それは否定しねぇが」

 

シャーリーはキュアメロディとしての現役時代より荒っぽい気質であり、口調である。また、ブライアンはメインで使うわけではないと前置きした上で、見栄えのするものを選んだという。

 

「実戦で使うんなら、ブラックホークとかを使うがな」

 

「44マグナムを片手で撃つ、か。まぁ、あたしらならできるが、命中率がな」

 

「あんたらは頭で考えすぎだ」

 

プリキュア化している状態であれば、44マグナムなどの大型拳銃も片手で撃てる(64Fに支給されているものは)のび太が特注している弾丸なので、既製品より改良されている)が、シャーリーはいまいち命中率が良くない。これは覚醒前からのメインウェポンがマシンガンであった『BAR』なので、バラマキ戦法を好んでいた。その都合で、拳銃等はあまり命中率が高くないのだ。

 

「後輩にタイキシャトルというのがいるが、早打ち競技に出たことがあるそうでな。そいつから聞いたら、拳銃は考えて撃つものじゃないそうだ」

 

と、拳銃は比較的に近距離で使うものなので、命中率は天性の才能に寄るところもある。ブライアンは射撃に天性の才能があるようで、実銃に触れるのは始めてながら、普通に弾丸の装填をこなす。古い時代の拳銃であろうと。

 

「その割に、手慣れた手つきだぞ、お前」

 

「従姉妹の一人にサバゲーマーがいてな。そいつのうんちくに付き合ってるうちにな」

 

「あたしゃ、身内の一人がガキの頃に事故で死んじまってからは、親父が銃に触らせてくれなくてな。軍隊で扱いを覚えたが、戦闘機乗りは基本的にバラマキ戦法みたいなものだろ?」

 

「日本軍の生き残り連中が聞いたら、殴られるぞ?」

 

「日本軍は物資がなかったからだろ」

 

と、シャーリーは弾丸の命中率はあまり気にしない(若手時代、坂本に咎められたが)ほうであるが、日本の軍隊は基本的に『無駄使い』を極端に嫌うので、シャーリーや圭子のような『撃ちまくり』は嫌われがちである。

 

「お!!別個体だ!!」

 

「チィ、子供を生まれると厄介だ!迅速に始末するぞ!!」

 

と、タイミング良く現れた怪物に向けて、銃をとにかく撃ちまくる。殺せれば、怪物の開けた穴を塞いで、壁を直せばいいからだ。

 

「こんのぉ!!」

 

シャーリーは近くに置いていた、ポンプ式ショットガンを撃ちまくる。怪物は多少の穴が空いた程度ではへこたれず、普通にいくつにも分かれた舌を出し、捕縛しようとするが。

 

「フン!」

 

「舌だけ切ったのか!?」

 

「悪いな、運びやすくするために、三枚おろしにさせてもらうぞ」

 

怪物がヘビのような体全体を出した瞬間、ブライアンはのぞみの持つ『エクスカリバー』を使い、手刀の衝撃波で三枚おろしにした。綺麗さっぱりと。(キュアドリームの)ダイ・アナザー・デイ後のパワーアップを象徴する攻撃である。

 

「残りは何体だ?」

 

「あと二、三匹らしい」

 

「地下が塒では、他につがいがいくついるかわからん。ゲッターライガーで調べるわけにもいかんだろ。下手に掘りまくったら、地盤沈下になる。私達の時代の日本で問題になってる」

 

「高度経済成長の頃のインフラの寿命が、2020年代の頃だっていうのは、本当だったか」

 

「扶桑のインフラも、今作り終えたのは、持って100年だろ。どうするんだ」

 

「2000年くらいに配管を取っ替えるつもりだと。そのくらいまで持つ計算らしい」

 

「まぁ、この頃のは、バブル絶頂期の手抜きより良い質というからな」

 

「工兵隊を手配するから、今のうちに、別の仕事も片付けんぞ」

 

「別の仕事?」

 

「広報の仕事。近くの基地で撮影があるんだよ。ダイ・アナザー・デイからというものの、ドラえもんの世界の日本の連中が暴れてくれたおかげで、パイロットどころか、下士官以上の軍人が不足に陥ってるんだよ。軍人の手をトンカチで潰したとか、首を折って殺したとかの噂が広がっててな。それで、下士官以上の軍人を増やすために、うちの部隊の力が必要なんだと。日本の一部の連中、国籍を問わず、リンチしやがるからな」

 

「広報の怠慢じゃないのか?」

 

「参謀本部自体が動くと、大本営発表だの言われるから、だとよ」

 

と、シャーリーは一匹を倒し、当面の安全を確保したことを確認すると、別の仕事を片付けたいという。広報部からの仕事が入っていたからである。また、扶桑軍が全体で動くと、日本の市民団体から苦情が入るため、64Fの単独行動ということにしていかないとならないと語る。そこも面倒くさいが、歴史的に考えれば、地球連邦軍の第二次ネオ・ジオン戦争時の無気力の源流といえる動きを、日本政府は容認していたことになる。

 

 

 

 

 

 

 

この頃、扶桑軍への干渉は市民団体等によって続いており、現地の混乱で、魔女狩り等を招いたため、扶桑による逆占領も叫ばれているくらいである。日本は政府や官庁の干渉は止めさせたが、民間団体による干渉までは止められないので、扶桑側がどうにかするしかないが、『正義』という棍棒を得てしまった彼らの暴力は凄惨極まるもので、扶桑国籍ではない軍人や官僚にまで及んだ。結局、各国が『強硬措置』を示唆したことで鳴りを潜めたが、民主主義を盾にしての凄惨な暴力で再起不能にされた軍人は膨大な人数に上り、日本政府はその損害賠償に追われることとなった。扶桑国籍でない者まで、集団リンチしたことが不味かったのである。結局、連合軍はこの騒動で再起不能にされた軍人らの人数に目を回し、士官~下士官の決定的な不足に長らく苦しむ羽目に陥ることになり、組織的作戦行動を封殺されてしまった。連合軍の形骸化を招いたとして、日本はその責任を問われることになり、結局は余計な出費をすることになるのである。かなり悲惨だが、国家自体が破滅したカールスラント帝国に比べれば、まだいいほうであった。カールスラントは旧東西地域の住民の相互不信が拡大した事による、無意味な殺し合いで、早期の復興の芽が摘み取られたのだから、それに比べ、軍人や華族が割を食うだけの扶桑は幸せなのだ。

 

「まったく、広報は何を考えているんだ」

 

「このまま消耗戦になったら、人的資源が枯渇する。そう脅され続けてるからな。連中はイカれかけてるんだよ。魔女の世代交代期だったから、魔女は普通のパイロットに輪をかけて人手がない。1000人近くいたはずが、今や、扶桑全土をかき集めても、数百もいかない。しかも、その多くは、飛行学校で教官してたような古株だ。だから、あれこれ広報したいが、日本は予算をよこさねぇと来てるからな」

 

魔女はもはや、兵科の体をなしていないくらいに数が減っていた。陸戦のほうが多くなった上、軍に残る『若手』はごくわずか。結局、時空管理局からの出向や、他国の経験者、日本で素質が判明した若者らをヘッドハンティングすることで、兵科の維持を図っている有様である。また、戦闘向けでない特性の者もいるため、プリキュア達はその万能性で『魔女の救世主』たらんことが期待されている。

 

「あたしたちを昼夜問わずこき使ってるのが、市民団体に問題視されたみたいだが、交代要員をさせられなくしたの、連中だぜ?いけしゃあしゃあと……」

 

「気持ちはわかる。私も、全盛期の頃、隙あらば、協会や学園の広報に駆り出されるのは億劫だったからな。だが、次代を担う後輩が育ってくれんと、あんたらも休みが取れんのは事実だ。それに、連中も警戒して、数日は大人しくなるだろうさ。最も、同族の死を気にする知能があれば、だが」

 

自分達の過労の原因となった市民団体などに恨み骨髓のシャーリーをなだめるブライアン。絶頂期には考えられなかった、他者を労る言動だが、絶頂期の一匹狼を気取った言動で失ったものの大きさに気づいたというべきだろう。プリキュア業を代行することで、自ら抑えていた『優しさ』を表に出し始めたブライアン。前世(競走馬)の記憶の覚醒も大きいが、低迷したことで、自分を取り巻く環境が大きく悪化したために、隠しきれなくなった『弱さ』の発露でもあるだろうが、それが却って、ブライアンという人物の本質の理解に繋がったとも言える。それも、ブライアンの『ルドルフの後継』を期待され、当代最強のウマ娘であることを求められ、それに応じきれなくなってしまった身の上故の悲劇だろう。

 

 

 

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