結局、日本が公的に、市民団体への規制を強めたのは2026年の初夏。野党や『民主主義に基づく権利』という後ろ盾があった事、相手は旧軍や内務省相当の組織であったりしたので、野党が一方的に悪と断じてきた結果だが、扶桑での那覇を炎上させ、のぞみの転職を潰すという『国家の沽券に関わる』レベルの悪手を打ってしまったため、左派は面子丸つぶれどころか、戦艦大和と武蔵による砲撃が現実味を帯びる段階に国家を追い込んだ。野党関係者も自衛隊の『自衛隊の兵器は大戦艦を正面切って無力化に追い込めるものではない』という声明に愕然となり、もし、扶桑と日本の首脳の会談が決裂した場合、東京の沿岸が艦砲射撃で戦後に逆戻りする可能性は大であった。故に、日本側は決死の覚悟で交渉に臨み、成功させた。大和と武蔵の威力は彼らもよく知っていたからで、アイオワ級戦艦よりも重装甲を誇る大和型を撃沈するのに、必要な物量はレシプロ機換算で千機相当。しかも、扶桑は大和よりも格上の戦艦を既に完成させている。この事実が日本が扶桑との有事を諦める理由となった。
戦艦は船体への被弾を折り込み済みで設計される。大和型とその改良型は当代最新の装甲板を纏っていると思われ、超大和型戦艦であれば、800ミリを超える厚さを誇る(大和の最厚部は650ミリ)と思われ、自衛隊の兵器はその厚さの対徹甲弾装甲を貫く力を持たない。さらに、日本の国家首脳は扶桑軍から『近代化で取り替えられた大和の装甲板の真の情報』を得ており、21世紀の兵器では傷をつけられないことを知っていた。結局、防衛当局の主導で、扶桑に多額の賠償金を支払う事が決まり、財務当局もこれには同意せざるを得なかった。扶桑の富が無くば、日本の財政復興は頓挫するからで、多方面への賠償金は合計で数十兆の単位に達した。那覇の復興資金を出さなければならなかったからであるが、魔女の保護に必要な教育を地方へ施すための資金もあった。さらに、軍の物量が減った以上は『質』で対抗せねばならない。その宿命は人型機動兵器の普及を促したが、精密部品の補給体制への疑念から、戦車の配備も継続された。64Fはそんな時勢に『最大の戦果を引き出す魔女集団』という看板を背負わされ、苦労を強いられていた。
扶桑が財政的に火の車となったのは、諸侯系華族の旧領に残る天守などを一括で買い取り、国宝と扱うための作業に資金が費やされたためで、諸侯系華族は(身分の剥奪を防ぐために)否応なしに協力させられた。安土城は将軍家であった織田の居城であったことから、そこそこの状態。史実では幻の城扱いであったことから、最優先で修復と耐震補強がなされた。次が名古屋と姫路であった。江戸は史実と違い、史実で頓挫した天守の再建が(軍事的都合で)無事に成った世界線であったため、日本の歴史家は神妙な顔になったという。織田家の記録によれば、史実での明暦の災厄は(魔女の世界では)怪異の襲来によるもので、避難場所として天守が使われたが、あえなく損傷。この時に怪異を討伐したのが、森蘭丸の後裔の一人である魔女であったという。この騒動で再建された天守が建ったままで明治を迎えたという。そのため、江戸城は(史実では建てられなかった天守があるため)微妙な立場となったという。
軍隊の量を減らそうとしたら、それでの不備が露呈。結局は地球連邦軍の超兵器におんぶに抱っことなった。四式中戦車も『砲塔バスケットを採用していない旧式』と揶揄されており、結局は一定数で量産が差止められ、採用の改良型へ切り替えられたが、それも中止された。戦車技術があまりに飛躍してしまったからで、旧軍式の命名規則も廃止されたため、後続の五式改が文字通りの『最後の日本軍型の中戦車』となった。以後は戦後世代のごちゃまぜ状態が続くことになる。ラーテに充てられるはずであった資金はMSや戦後型戦車の購入資金に充当され、地球連邦軍の駐屯の礼金にも流用された。ラーテの代わりはビックトレー陸戦艇などの供与が賄った。全ての点で上位互換であったからで、結局、カールスラントは肝心要の陸空の兵器が不良債権化してしまい、自前の航空兵器の開発能力の喪失が起こったことがトドメになり、二流国家へ転落してしまうことになった。
日本連邦もクーデター後の混乱で、実質的に航空兵器の開発能力が低下したため、地球連邦軍の兵器で場繋ぎを行うことが常態化している。震電改シリーズが少数生産に終わりそうだからだが、それでも、時代的に数百機は約束されている。これはクーデター後の裁きを恐れたエンジニアが多かったからで、日本の誤算でもあった。結局、ジェット時代では、レシプロ時代の設計は通用しないという事実もあり、軍需産業の設計能力は実質的にリセットされたも同然であった。その回復に寄与したのが、タンク技師であった。史実でいうところのクルト・タンク技師だが、魔女の世界では、魔女であった過去を持つ妙齢の女性であった。手腕は史実通りで、Fw190やTa152などの名機を送り出した。その彼女は祖国を事実上捨てる形で、各地を放浪。最終的に、日本連邦の招きに応じて来日。1949年時点では、日本連邦の資金力を背景に、史実で言う『HF-24』相当の機体を開発中であった。軍上層部のお気に入りであった、メッサーシュミット博士の失墜と対照的であった。Me262の生産停止がトドメとなり、メッサーシュミット博士は名声を失った。これはBf109の後継機の開発にことごとく失敗したためで、さらに、祖国が内乱で開発能力を喪失するという悲運により、Me262の後継機と目論んでいた機種の試作機やモックアップが全て失われたことが追い打ちをかけた。設計自体は無事であったが、既に、戦後第四世代相当までの開発に成功しつつあった日本連邦の興味を引けず、結局はお蔵入り。こうして、彼は史実通りに、不遇の晩年を過ごすことになった。
日本連邦は加速度的に戦闘機を更新するが、高度化が進むと、今度は荒く扱えないという問題があった。そのため、格闘戦前提の設計かつ、構造が比較的単純なF-86は大人気であった。後続機らは電子装備の調整に手間がかかるため、扶桑の古株の整備兵に敬遠されており、同機は比較的単純な構造故に、好まれた。後続機は電子装備が複雑である故に、整備点検に時間を要するが、F-86はレシプロ時代の機器の改善型である故に、練度の低く、学のない整備兵でも迅速に整備できたからである。また、エンジン性能が史実より強化されているため、Me262が見せた『劣悪な加速性能』などのネガティブな点は無くなっている。それもあり、扶桑では長らく使用されたという。レシプロ機がまだ大量に残る世界では、F-86で充分であったのだ。
そのため、F-15やF-14クラスの現用機水準の機体を気軽に使える64Fの体制は羨望の的であった。レシプロからジェットへの変革期故に、ジェットへの抵抗が強い時代であったものの、並大抵のレシプロ機では手も足も出ないB-29などへの対抗策としてのジェット機は諸手を挙げて歓迎された。震電すらも(対抗に)怪しいと判定されたからだ。F-86は就役末期にはミサイル兵器も積めていたため、防空部隊に優先的に配備された。この飛躍により、レシプロ戦闘機は急速に淘汰されていったわけだが、これにより、使用する燃料が変化する(ジェット燃料は通常のガソリンではなく、軽油に近い)ため、扶桑はこれまた産油国から大量に燃料を買い付ける(日本が資源枯渇を懸念したため)羽目となり、産油国はその得られる資金で産油設備の近代化等を遂行した。その関係で、扶桑の戦争の長期化は必然となった。燃料の備蓄に数年を費やす予定だからだ。結局、日本の後先考えぬ狂奔的な振る舞いが扶桑の財政に負担を強いていたのである。しかしながら、もはや、レシプロ機の手に負えぬ相手が出てきているので、使用燃料の比率の切り替えは急務であった。
この時期、当然ながら、現役時代とキャラが異なるプリキュアがいることで議論が起きていた。当然、転生でパーソナリティが異なる者は生ずるわけで、のぞみが皮肉にも、その筆頭であった。結局、存在の認知と引き換えに、中島家には帰れなくなったため、戦間期には、野比家に居候していた。その際には、軍籍を変更せざるを得なくなった事による混乱、事案の発生後は好奇の的にされていたため、必然的に変身後の姿で活動したほうが色々と都合が良かった。現役時代と変わらぬところもあるが、言葉遣いが(素体の影響で)荒くなった面がある。これは素体が男勝りな性格の魔女であった関係である。戦間期(日本で2024年前後)のこと……。
「皮肉なもんだよなー。プリキュアになってるほうが、プライベートが確保できるなんて」
「まぁまぁ。今回のことで危険手当は倍額出すとのことですから、金は稼げますよ」
「今の御時世じゃ、日本でしか使えないって。そりゃ、家は買ったし、婚約もしたけどさ~」
「あんたらも大変ね……」
「タイシンちゃんは常駐になったの?」
「あの子が懐いたから。柄じゃないけれど、シニア級だから、レースの機会は減ったし、高等部の卒業に必要な単位も取ったから」
トレセン学園は少なくとも、高等部までは存在が確認されている。タイシンいわく、卒業を待つだけだという。とはいえ、三強を謳われた時もあるが、全体的に(元々が虚弱体質寄りであるのもあり)消化不良気味であり、史実を考えれば、不本意な結末が待っている事から、のぞみに(自分と従妹の)運命を変えてくれと、この頃には頼んでいる。ブライアンは自分から持ちかけたが、タイシンは(引退後に家業を継いでくれという話があるため)迷っていたが、家業も(折からの不景気で)売り上げが芳しくないという連絡があったため、当面は現役を続けてくれと懇願された。
「単刀直入に言うけれど、あんた、ZEROから得たっていう力で、従妹とあたしの運命を変えてくんない?」
「ブライアンちゃんから頼まれたよ。タイシンちゃんも?」
「家のこともあるんだけど、シャクなのよ。このまま忘れ去られることもだけど、ハヤヒデに頼まれちゃ断れないし。自分に代わって、ブライアンの行く末を見守ってくれって言われちゃね……足は治したけど、家族を食わさないといけないとかで、続けられないって。それに、別世界線のあいつの運命を、オグリ先輩経由で知ったみたいで」
「史実だと、病気で夭折だもんね……あの子」
「同じナリタの冠かつ、ガチの親類の好もあるけど、あたしも回避しないといけない運命があるから。それに、あたし自身、そんなに丈夫な方じゃないからさ……あんたに頼めた義理じゃないけど……」
「分かった。他の世界からのあなたへの因果が切り離されることになるだろうけど、お安い御用だよ」
「それと、入れ替わる時は、私が体を貸しますよ」
「ありがとう」
タイシンは『史実』を知った故の悲しさや悔しさがあるらしく、自分にも回避したい悲劇的結末があることを明確にした。この願いを聞き届けたのぞみとことはは、ゴルシの協力を得て、ナリタ冠の二人の運命を運命を好転させるべく、奮闘していくことになったわけである。
「――って、ことになってな」
「なるほどな。ほんでこうなったわけか。と、いう事は、はーちゃんも時々、入れ替わってるわけか?」
「フェリーチェの状態で入れ替わってる。普通の状態だと、子供っぽいだろ?」
「ガチで子供だしな、あの子。元は妖精で、神の後継者。それを考えると、フェリーチェの状態は『下駄履いてる』ようなもんか?」
「世界線によっては、神の役目よりも、みらいとリコの家族になることを選ぶらしい。あたしらの知ってる、あの子はZEROに二人を倒された後、ディケイドに連れてこられて、お前んとこに預けられたんだな?」
「ああ。小学校高学年の頃だったよ。まぁ、僕に時間軸云々は関係ないけど。しばらく塞ぎ込んでてね。精神的ショックで、フェリーチェの状態を解除できなくなってて、本人もパニクってたよ。で、心の傷の影響か、よく、僕のふとんに潜り込んできてね…。思春期に入る時期だったから、まいったね。」
車を走らせながら、のび太は語る。見かけは14歳前後だが、実年齢は赤子に近い故に、みらいとリコの双方を倒されたショックは大きかった。故に、精神不安定に陥った影響で、プリキュアの変身が解けなくなっており、その状態は数カ月は続いたと。
「ミューズにも協力してもらって、色々と試行錯誤したよ。数年して、僕が中学の三年になった時、親父が正式に養子に迎えて、そのタイミングで、僕の通ってた中学に行かせたんだ。戸籍は綾香さんとガランド閣下がでっち上げてくれれたから、高校と大学に行けるようになったのも大きかったね」
「だから、お前、ミラクルに詰め寄られたわけか?」
「そういうこと。あとで、いちかちゃん……キュアホイップに聞いたら、みらいちゃんは数年くらい、一人ぼっちになってた時期があるそうでね。当然、中学と高校は一人ぼっちで通ってたから、はーちゃんのことで、あれこれ詰め寄られたよ。例の手で切り抜けたけど」
「スカート捲りの魔法だろ?あれ、みらいたちとは原理が違うそうだな?」
「もしもボックスで見つけた世界のものだからね。僕にもわからないし、ドラえもんにもわからない。フェリーチェとミューズがその後になだめてくれて、なんとかなったよ。結局、ドラえもんにタイムテレビ出してもらって、はーちゃんの中学~大学の様子を見せることになったよ。うちの街は古風なセーラー服だったし、大学時代はプリキュアの姿で通ってたし」
「みらいの奴、目ぇ回したか?」
「在学中も街の事件を解決してたから、めっちゃ汗かいてたよ。まぁ、ぼくの世界は普通にパーマンやオバケのQ太郎がいたから、プリキュアが闊歩しようが、気にされないからね」
「ある意味、すげえなぁ……それ」
「だから、のぞみちゃんにドリームの姿を保つように言ったのさ。そのほうが『公務中』の言い訳で、パパラッチを避けられるから」
「それで、あたしらにも保つようにいったのか」
「それと、平常心で事に当たれるし、体が変身に慣れて、負担がかかんなくなるってメリットがあるんだ。仮面ライダー達はサイボーグだけど、君らは不思議パワーで変身するだろ?」
「まーな。でもよ。あたしは単独で変身できるようになったんだろう」
「奏ちゃんも転生してるし、彼女とのつながりがそれ以外でも強い。それと、生前の功績に免じての神々のプレゼントかもね」
「みらいとリコはどうやって生き返らせた?」
「肉体自体はゼントラーディ由来の技術で再生できるけど、魂はそうはいかない。だけど、綾香さんと智子さんがエイトセンシズ会得済み、ゼウスの許可が出てたのもあって、冥界から魂をそのまま連れてきて、再生中の肉体に宿らせた。アテナとゼウスの厚意で、魔力値を以前より強くしてあるそうな」
「沙織さんもやるなぁ……」
のび太から語られた、みらいたちの蘇生の経緯。黒江と智子は黄金聖闘士かつ、エイトセンシズに到達、さらに、オリンポスの最高神の裁可を得られたので、二人をそれで蘇生させたと。少々強引な手段だが、二人の生前の魂を宿らせるための最終手段であった。
「今や、オリンポスの神々の多くは僕らの味方だよ。敵はオーディーンやロキとかさ」
「どうなっとるんだよ、神々の世界は」
「少なくとも、オリンポスと北欧神話の神々が別々にいること、オリンポスも内輪揉めしまくってるってことさ。メネシスなんて、神話上の英雄たちの何人かを幾多の世界線から選んで、自分の配下にしてるって話だ。だから、君らが沙織さん……アテナの実質の配下になってても、神々からお咎めがないのは、メネシスへの抑止力だって話さ」
「神々のパワーバランスってか…。まったく、普段は傍観してるくせに」
と、シャーリーとしての軍隊経験や、紅月カレン時代の経験からか、神々の傍観に腹が立つらしいが、城戸沙織の尽力もわかるため、複雑らしい。
「さて、そろそろだよ」
「ガキはどうする?」
「マジカルが連れてくるって。それより、地下街を荒らされるわけにはいかないよ。準備はいいね?」
「OKだ」
「よし、地下街に入るよ」
一同は車を停め、地下街に入る。地下街の東南地区に出現した怪物はいかなる様子であろうか。それに対するブライアンの自信とは?退治は新たな段階に入った。
その頃の扶桑の国防省・海軍部
「超大和で戦艦を統一ですか」
「仕方がなかろう。君らが戦艦の刷新を叫ぶからだ。紀伊型が当初通りの姿だったのは、工期短縮のためだというのに。おかげで、世論は戦艦の建艦運動だよ」
扶桑海軍はモンタナ級による奇襲で、政治的な面目を潰され、航空主兵論が(航空機の高額化で)萎んでしまう有様であった。日本の政治家は戦艦戦力の全廃を叫んだが、アイオワ級戦艦よりも強大な戦艦が量産されている事実に顔面蒼白に陥り、八八艦隊型の全廃と大和型を祖とする高速重戦艦の量産を推進させた。その回答が水戸型戦艦であった。
「水戸型を造っただけでは、世間は納得せんだろう。だからこその戦果が必要なのだ」
「艦隊決戦がそうそう起きるとは……」
「この世界線では、航空戦力の価値は低く見られている。故に、艦隊決戦は起きやすい。だから、超甲巡を造ったというのに」
超甲巡が戦艦扱いになってしまったため、巡洋艦の刷新計画が覆ってしまい、研究のやり直しになったことを愚痴る造船士官。結局、高雄型重巡洋艦の改良案の立案までの繋ぎの目的で、伊吹型を巡洋艦として続けなくてはならず、造船士官らには不本意な流れとなった。特に、利根型が(史実の不手際を理由に)『縁起が悪い』と忌避され、港の肥やしにされる事は相当な不満であった。とはいえ、利根型の最大の特徴であったはずの水上機運用能力が『水上機自体が急速に陳腐化する』流れによって『時代遅れ』とされること自体、完全に予想外であった。さらに、零式水上偵察機などを想定していた都合上、戦後型のヘリコプターを艦内に積めないという問題も発覚し、大淀や利根型と言った水上機運用前提の巡洋艦が『無用の長物』とされてしまう事態に陥った。運用設備を魔女用に転用することも考えられたが、魔女装備の刷新期の到来で、1943年式の油圧式カタパルトでは『射出能力が足りない』という問題が発覚。わざわざ油圧式の最終型である『H-8型』を巡洋艦や戦艦に搭載する意義への議論に加え、航空魔女そのものの軍事的価値の低下がトドメになった。
「しかし、ヘリコプターや無人機が登場している以上、異能者でもない魔女を載せたところで、役に立ちますか?」
「ジェットストライカーは既存のカタパルトでは射出できんというから、リベリオンから、新型のカタパルトを購入する話だったのだ。それが……蒸気式や電磁式とは……」
「生産ペース的に、とても軍事的に役に立ちませんよ。それに、戦争は人同士の殺し合いという、当たり前のことを受け入れない者が多すぎる。与えても、宝の持ち腐れです」
「しかし、彼女らに居場所を与えてやらんと、オラーシャのような惨劇になりかねん」
「怪異退治専門の民間軍事会社の拡充を容認するしかないでしょうな。金食い虫ですからな、魔女兵科は。それでふるいにかけるのが、今後の時代には必要ですよ」
「今すぐには無理だ。少なくとも、この戦争が終わった後でなければ。従軍経験者らが認めんよ」
「練度が低い魔女を出したところで、今の状況では『爆弾を抱えさせて、体当たりさせる』のが関の山。手が自由に使え、三次元的な機動を取れるというメリットにも気づかない者が大半。まったく……クロウズの引退後を見越して……という貴方方の見通しの甘さときたら……」
自衛隊から派遣されている幹部自衛官は、扶桑海軍航空隊の魔女らに蔓延る集団主義を糾弾した。この時、既に手練れと言える魔女が若本徹子だけになっていた(他の多くの魔女は空軍に移籍した)扶桑海軍航空は、坂本美緒らの世代が円熟期を迎える1940年代初めからの教育方針の誤りを痛感しており、クーデターによる『粛清』後の人手不足に苦しんでいた。空軍の(機材供給の不安や、部内の派閥抗争はあれど)充実ぶりと対照的であった。
「陸式の三人は突然変異。そう考えていた。だからこそ、我々は分業化を進めた。それが……まさか……」
黒江らの万能さを『突然変異』と見なし、分業制を進めた扶桑海軍航空隊であったが、近代兵器の普及で(生き残りのために)魔女にも『近接格闘能力』と『緊急時の生存能力の高さ』が求められる時代が到来してしまった事に追従できずに苦悶していた。更に、魔導師の存在も大きかった。
「高町三佐はなんなのだ?」
「あの方は魔砲使いですよ。ワンマンアーミーといいたいですが、異能者の中では、格闘戦が弱めですので、些か弱いかと」
「あれで弱いだと?」
「黒江閣下のように、特別な宝具を奮うわけではないですので」
「まったく……君等の基準はどうなっとるのだ」
なのはは魔導師としては、中遠距離特化と言える特性である。史実より万能寄りだが、スペシャリストには劣る。造船士官が呆れるのも無理もないが、なのはの時点で『下手な古参の魔女の生き残りより近接格闘戦に長ける』からで、フェイトも黄金聖闘士への叙任で弱点の補完に成功している。
「閣下らの活用に失敗した貴方方よりは客観的に評価できていると自負しておりますが」
「あれは事変当時の佐官級将校らに責任がある。お陰で、我が国は外交問題になりかけたからね」
不満をぶちまける造船士官。この頃になっても、ミーナの起こしかけた国際問題は扶桑陸海の航空隊間の派閥抗争を引き起こしたとして、事務方を中心に、未だに白い目で見られている事が窺える。事変開始時の佐官級の黒江らの取り扱いが巡りに巡って、扶桑軍の航空科将校らの世代間抗争の引き金になったからで、ミーナの起こした不祥事はそれに『火に油を注ぐ』形になった。その混乱の責任を取らされた将校こそ、事変の当時に在籍しており、その時点で佐官であった江藤敏子(事変時の黒江らの上官)であった。彼女に非はないが、当時の関係者に鬼籍入りが多かったため、『とりあえず』ということで、スケープゴートにされた。それも、江藤の復帰後における出世が遅れる理由となった。