ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第五百七十九話と前回の続きです。


第五百八十四話「西暦2000年のある日 7」

――のび太は少年期、基本的に宿題を後回しにしていたが、それがもとで母の玉子の不信を招き、ダイ・アナザー・デイの途中で大人の彼自身にバトンタッチする事になった。それは本人は苦笑いであった。とはいえ、のび太は以前のような、一日の半分以上を睡眠に費やす生活をやめており、小六になる頃には、中高が大学受験の前段階にされる覚悟を決めていた。(玉子が罪悪感を後に持ったのは、のび太が中学に進学して一年後に、『ゆとり教育』の時代に突入し、玉子の時代よりは遥かに大学受験の難度が低下したからである)のび太の両親は若いうちは、息子の将来に不安を抱いていたが、それは息子が青年期を迎えた後に払拭され、文字通りに隠居生活を送る事になる――

 

 

 

 

――かくして、別の世界の自分と情報などが共有されたキュアドリームこと、夢原のぞみ。世界線によっては『26歳で完全に戦士から退く』事が判明したが、それは本人の望んではいない選択であった。そのため、『世界が戦士からやめさせようとする』世界線と『生涯を一貫して、戦士であり続けた』世界線が存在することとなった。プリキュアオールスターズが生まれる世界線ののぞみは後者であり、オトナプリキュアの世界の彼女は『その中間の経緯となっている』世界の住人であった。その彼女がなんと、フリーダムガンダムに乗ることになった事が伝えられたが――

 

 

「えぇ!?どういうことです、先輩。向こうのあたし、フリーダムに乗ることに!?」

 

――そうだ。向こうのお前に充てがわれるそうだから、その前に、こっちのお前が訓練を積めとか――

 

「炎上しませんかね……」

 

――まぁ、後継機のストライクフリーダムならいざしらず、初代フリーダムなら、専用機ってわけじゃない。本当はアレの乗り手はイザーク・ジュールが想定されてたっていうしな――

 

「納入は?」

 

――キラ・ヤマトのストライクフリーダムガンダムの改修作業に入るついでに、先行して改修した機体が一両日中にそっちに送られる。それを極秘裏に飛ばして、テストしろ。経験はお前からフィードバックされるからな――

 

「いいんですかね?」

 

――そっちの世界で、フリーダムガンダムが物語の主役機になれるきっかけになるやもしれん。ガンダムSEEDはたしか、2002年か2003年の作品のはずだ。のび太に射撃のコツを聞いとけよ?お前、錦が近接武器好きだった影響で、射撃は上手くない部類に入るからな――

 

「先輩たちが万能すぎです!なんですか、武器を使っても、ステゴロでも強いなんてー!!」

 

――俺等は錦の世代と違って、戦前のカリキュラムで育成されたからな。基準が厳しかったんだよ――

 

と、のぞみAは錦の技能を受け継いだが、射撃はけして上手くない部類(大口径砲でどうにかする質であった)であるので、武子には『腕を上げなさい』と叱られている。ただし、武子は北海道出身で、一族にマタギがいる家系の出なので、魔女の中で最高水準の命中精度を持つため、黒江から『自分を基準に考えるな』と諌められているが。

 

――武子にも言われたろうが、あいつの家系はマタギだから、あいつを基準にしてたら、ガキどもが音を上げる。なにせ、クマを見たら、即座に脳天に6.5ミリ弾を打ち込めるからな――

 

「うへぇ……」

 

――ケイのように、照準をアバウトになれとは言わんが、6、7割くらいは当てられるようになれ――

 

「はーい」

 

――その点は向こうのほうが上か?――

 

「どういうことです?」

 

――向こうのお前、コスモドラグーンを送られて使ってるしな――

 

「……は???コスモドラグーンって、たしか……」

 

――そうだ。トチローさんの末裔が作った『戦士の銃』だ――

 

大人のぞみが戦士の銃を送られ、使用している事はこの時に黒江から伝わった。どのナンバーかは、ドラえもん曰く、クイーン・エメラルダスから預かったもので、既に改修済みのモデルだ。23世紀のトチローの末裔が『アルカディア号のコンピュータになったトチロー』である。何代かに一人は『大山としろう』(漢字を問わず)の名を襲名する。それが大山家の習わしだ。なお、30世紀のトチローには、二人の子があり、長男の『昇太』が技術屋としてのトチローの後継であり、長女の『まゆ』(第一子。30世紀の大山家当主)が冒険者としての気質を受け継いでいる。いずれも、クイーン・エメラルダスとの子であり、ラーメタル人とのハーフだ。

 

――大人のお前、思い切りがいいんだそうだ。たぶん、力を一度は無くしたのが原因で、物事に躊躇しなくなったんだな。動乱が終わった後も軍に残るそうだ――

 

「えーーー!?」

 

――白色彗星帝国のカブトガニ野郎の空襲で賃貸してたマンションを焼け出されたんだそうだ。それで失職も確実だそうでな――

 

大人のぞみは街が空襲を受け、仕事先の『プレシール学園』が小学部、中等部、高等部、大学に至るまでの全ての校舎とキャンパスが焼かれ、運営先の学校法人から『閉校も覚悟してくれ』と実家に連絡が来たので、失職間違いなしであった。ろくに貯金もないため、次の就職先を探すまで『家なしの文無し』では格好がつかないらしく、地球連邦軍の軍務を続ける事にしたという。

 

――それをいいことに、お前の代わりに『コズミック・イラに行け』だとさ。それでフリーダムが回されるんだよ――

 

「でも、ストライクフリーダムあるなら、なんでわざわざ?」

 

――いるんだよ、こっちの技術力に懐疑的なエンジニア。オーブのモルゲンレーテはもちろん、プラントの設計局にも。それで、地球連邦軍御用達のアナハイム・エレクトロニクスの技術力を見せつける必要があったんだ――

 

実際、コズミック・イラ歴の技術力は未来世界と比べても、一部分野では上回るため、アナハイム・エレクトロニクスの技術力を見せる必要があった。それが『初代フリーダムの未来世界技術での再建造』であった。同じ設計から造っても、性能に差が出る。それを示すためのものであった。実際、未来世界では軽量の超合金が発達しており、PS装甲の採用量を充分に減らせる。コズミック・イラ世界では、『レアメタルでないと実現できない』強度を普通のチタン合金の延長線上の素材で実現するのだから、それができない時点で、金属精錬技術では間違いなしにコズミック・イラは停滞している。PS装甲万能論がはびこっているからだ。PS装甲の難点は『ビームには耐えられない』のと、『機体重量がやたら増える』というところだ。普通に衝撃に耐えられる装甲が必要なのだ――

 

――たぶん、元が70トン級だから、ガンダリウム合金の最新型を使えば、初代ガンダムやマークⅡ並に軽量化されるはずだ。70トンなんざ、ゼク・ツヴァイや、Sガンの換装形態以外にいないぞ、未来世界――

 

「そいや、そうですね。世代が進むと、見かけによらず、軽くなりますし」

 

――ジオン系の技術屋が聞いたら、重すぎると言われると思うぞ?ジオンは60トンくらいを超える重量のはMAにしてたしな――

 

「ジオンはMA好きですよね」

 

――資源ねぇから、その分をモビルアーマーに回すんだろうが、モビルアーマーって例外なく、ガンダム系の餌食なんだがな。ノイエ・ジールくらいだぞ、互角に戦えたの――

 

純然たるモビルアーマーは雑兵散らしには活躍しても、対ガンダム系となると、必ず倒される運命である。そのため、ジオンも最後の抵抗の際はクイン・マンサの技術を利用した『大型MS』を用いていた。それに触れる。

 

「でも、フリーダムの操縦系統は?」

 

――こっちの規格に変えてあるそうだ。プラントの技術屋連中が腰抜かしたってよ、リニアシートと全天周囲モニター――

 

「ならよかった」

 

――X系とは違うが、空を飛べる分、地上では身軽に動けると思う。向こうはミーティアという武装ユニットの運用も進めて来たそうだが、デンドロビウムのオーキスあるから、上は微妙な顔したって――

 

「デンドロビウムのあれを使ったほうが防御力ありますからねぇ」

 

――既に向こうの新組織の普段遣い用のフリーダムの新型の開発の協力で打診があったから、エアマスターとウイングガンダムのデータを向こうに渡したそうだ――

 

「可変機に?」

 

――だろうな。普通は衛星軌道からの降下とかでもいいが、向こうの世界には、サブフライトシステムがあまりないらしい?――

 

それはコズミック・イラ世界での新組織用のフリーダムとジャスティスに可変機構が組み込まれる事を意味していた。フリーダムは奪取された経緯があったので、本来の開発元にはデータの一切がなく、オーブ首長国連邦のほうが持つという状態。そのため、フリーダムの模倣には、オーブの持つ設計データが使われている。

 

「ゲタ(シャクルズとベースジャバー)のデータは?」

 

――渡した。シンの坊主からは『飛びゃいいのに』って言われたが、推進剤の節約になるだろ?あの坊主は飛べる世代のMSしか扱ってないのかよ――

 

シン・アスカはサブフライトシステムをあまり重要視していないので、通信で黒江に怒られたらしい。黒江へは、彼の元の上官のアスラン・ザラ(第一次大戦で使った事があるので)が侘びており、勉強させるとの事。

 

「先輩、今何してんですか?」

 

――インペロの内部で賑やかにドンパチ中だ。アポロガイストが来やがって、アポロマグナムをうってきてな。キュアホイップが怪我して、俺が包帯を巻いてやってるところだ――

 

「そんな状況でテレパシーしてんですか!?」

 

――俺は元々、マルチタスクが得意なんだよ。Xライダーが今、ライドルで奴と戦ってくれている。ホイップの防御を抜いてくるとはな。テレパシーなら、慣れたら多元中継だって出来るぞ?――

 

「先輩、戦闘中によく、余裕ありますね?」

 

――俺たちは援護担当だよ。ホイップが撃たれたんで、キュアハートが怒ってな。今、冷艶鋸を持ち出して、振り回してる――

 

「あれ、本物ですかね」

 

――北京のジオン残党からぶんどった発掘品だからな。真贋はともかく、すごい切れる青龍刀だ――

 

キュアハートが激昂したらしく、艦内で青龍刀を振り回し、戦闘員の首を跳ね飛ばしまくっていると、黒江が伝えてくる。逸見エリカの持っていた気の荒さが反映されたのか、情け容赦のないスプラッタ劇と化しているらしい。普段に優しい人が怒ると、手のつけられない鬼神になる。それを地で行く有様らしい。

 

「キレたら怖いんだなぁ……マナちゃん」

 

――ま、ブライアンもノワールフォールで暴れてるけどな。ミルキィローズのBに件のフォーム見せたら、闇落ち?って感想きたぞ――

 

「やっぱりかぁ。黒で、コウモリの翼だもんねぇ」

 

 

ブライアンの気質的に『ノワールフォーム』はしっくり来たようで、黒いコスチュームと紫のオーラ、コウモリのような翼の三拍子揃った姿は『闇落ち』のようにも思える。だが、ブライアンは元々が『闇属性の持ち主』であり、レースが最高潮の時に『狼のような獰猛さ』を具象化させるので、ノワールフォームはその心境を存分に反映させられるのだ。

 

――お、懐かしい技だな。サマーソルトキックか……流石に足技に長ける……――

 

アポロガイストに華麗にサマーソルトキックを決めるブライアン(姿はキュアドリーム)の姿を実況中継する黒江。のぞみ本人は現役最盛期にサマーソルトキックをした事はなかったので、悔しいらしい。

 

「ぐ……ぬぬぬ……現役時代にした事なかったのにぃ」

 

――お前だって、現役引退後にスピニングバードキックやらかすの見たって、キュアブルームが言ってたから、それも大概だろ――

 

のぞみも実は変身時であれば、スピニングバードキックを雑魚ちらしに使った事があるので、どっちみち、足技が得意らしい。

 

――あ、ブライアンが『気功掌』やりやがったぞ!!アポロガイストの奴、グロッキーだ!!――

 

「なんで打てるのぉ!?」

 

――元のトレーナーが中国拳法の達人だったんだそうな……?――

 

「なぁ!?」

 

――護身術とか言って、習わされたんだと。うーん……あの世界のトレーナーはどうなっとんのじゃ…――

 

と、黒江も驚きのブライアンが隠し持っていた技能。それは中国拳法/カンフーの達人という意外なスキルであった。気のエネルギーが改造人間にも有効なのは、仮面ライダースーパー1や五星戦隊ダイレンジャーが証明済みだが、急展開である。

 

――おい、ブライアン!!どうなっとんの、お前!!――

 

――知らん。なんとなくやってみたら、できた。元のトレーナーの置き土産……。そう思っておけ――

 

――お前のトレーナー、五星戦隊ダイレンジャーでもしてたのかよ――

 

――知らんと言ったろ。そんなのしてたら、同期のビコーペガサスが食いつくはずだ――

 

と、ブライアンもテレパシーで会話に参加してきた。ウマ娘は必然的にマルチタスクの達人であるので、のぞみの体を借りた以上は可能な芸当だ。

 

――あんたの後輩を怪我させてしまった侘びだ。姉貴(ビワハヤヒデ)からは止められていたが、こいつら相手なら、地獄に送り込んでもかまわんのだろう?――

 

と、どこかで聞いたような物言いだが、ブライアンは興が乗ったようだ。

 

――秘技・ライドル脳天割りぃぃぃ!!――

 

Xライダーから、ライドルスティックを借り受けたブライアンは気功掌でグロッキーのアポロガイストの頭上に勢いよく、スティックを振り下ろした。仮面にヒビが入るほどの強烈な叩きつけだ。

 

「ぐおお…ぉ……おのれ、小娘ども……」

 

アポロガイストの負け惜しみとも取れるうめき声も聞こえてきた。

 

「先輩、とどめを!!」

 

――うお、マシーン大元帥が援護射撃してきやがった!!これじゃ、とどめをさせん!

 

――アポロガイストを回収するべく、マシーン大元帥が突撃銃を構えて突撃してくる。旧ドイツ軍の突撃銃を律儀に使っている。

 

――StG44か、妙に律儀なものを!!シャーリー、BARで応戦しろ!――

 

――だめだ、肝心な時にジャムりやがった!!――

 

――あーもー!俺の89式だけで応戦するのか!?――

 

と、マシーン大元帥の単身突撃がインパクトを突入部隊に起こした事、黒江は有り合わせの自衛隊・89式小銃を持って行ってること、シャーリー(キュアメロディ)はBARでの応戦を指示されるも、ジャムを起こしてしまったのが伝わる。

 

「あのバカ、ちゃんとBARの整備してんの?肝心な時に!」

 

思わず悪態をつくのぞみA。自分は参戦していないのが歯がゆい。時間軸的には、2020年代には『ブライアンの体を使う』少し後の時間軸の彼女自身がおり、ウマ娘世界に行っているので、これもややこしい。だが、ZEROの力で、自分自身の時間軸の違い程度など『関係なくなった』状態であるので、こうした事は日常茶飯事となりつつあった。

 

――お前自身は近いうちに、ウマ娘世界に行くんだったな。遠征の様子はこんな感じだ!分かったな?――

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

と、黒江自身がマシーン大元帥と戦闘に入るため、テレパシーを打ち切る。白熱の展開だ。ナリタブライアンが意外な特技を見せ、のぞみの体を上手く使うなど、興が乗れば、意外に喧嘩に強いらしい。(ウマ娘世界では、ウマ娘の力の使いどころは武道とレースしかないので、ブライアンは双方をしていたらしい)

 

「……射撃、後で訓練すっかな……」

 

旧・野比家のポップ地下室には射撃訓練施設が設けられている。ある時期に魔女たちの要請で作られたもので、無論、のび太の両親は知らない。地下室は後に、新野比家となるマンションに移設され、家督を継いだ後ののび太は射撃競技などの練習用に設けたものだと、表向きは公表する。しかし、実際はのび太よりも周りの人間達のほうが使用機会が多いのである。日本連邦時代になれば、『魔女の世界の軍人は武器の携帯が認められている』(のぞみはその理屈で、キュアフルーレを押し通している。その条件は厳しいが)という規定があるが、この時代では、こっそりと訓練するのが最善だ。のび太は少年期には主に『フワフワ銃』をいざという時のために持っているが、青年期以降は実銃に切り替えている。ドラえもんも時たま、仕事の友人から銃を修理のために預かる事がある。コスモドラグーン(戦士の銃)もその一つで、大人のぞみに渡され、戦果を挙げている。

 

「戦士の銃、か……。改良されたモデルは『小型波動砲』っていうけど……大人のあたし、よく撃てるなぁ」

 

成長の違い故か、大人のぞみはのぞみAのように『銃を撃てる』環境に身を置いていなかったのに、戦士の銃の反動に耐えられる。いくらエネルギーガンと言っても、小型波動砲なら、マグナム弾を使う銃以上の反動のはずだ。

 

 

「向こうの世界のあたし、小学校の教師だったのか。取る資格、微妙に変わるんだな。自炊……できないだろうなぁ」

 

それはその通りで、大人のぞみは食事をレトルトか、外食で済ませている。のぞみAは軍隊生活の都合上、自炊は最低限できるようになったが、大人のぞみは生活力が低いままであるらしい。

 

「うぅ……。向こうのあたし、どうやって生活してたんだよぉ~!!レトルトは作れるだろうな、いくらなんでも……」

 

だが、軍隊で生活をするため、大人のぞみも次第に自炊が可能になっていくのである。のぞみの生活力のなさを見かねた古代進(アース)がヤマトの生活班での研修を命ずるのである。

 

「のぞみさ~ん。昼飯はどうします~?」

 

「あたしが買いに行くよ。はーちゃんは留守番を頼むね」

 

お互いにプリキュアの姿を保っているが、非戦闘時であるので、普段の呼び方になっている二人。ことは(キュアフェリーチェ)から古風な買い物かご(玉子が使っているもの)を受け取る。玉子はスーパーマーケットよりも、駅前商店街で買い物を済ませる事が多かったからだろう。とはいえ、西暦2000年代の初めになると、ススキヶ原にも少しづつだが、再開発の波が押し寄せてきており、スーパーマーケットの数が増えてきていた。駅前商店街も少しづつ(店主の代替わりで)衰退を始めるのである。

 

「プリキュアのいない時代を、プリキュアの生まれる前の世界で過ごすかぁ。頓知みたいな事になったなぁ」

 

と、街を散策していると。

 

「あ、のび太おにーちゃんとこのねーちゃんだ」

 

「あ、たかくん」

 

のび太やジャイアンが弟のようにかわいがっている障害者の少年(当時)と出くわした。手足と口が生来の不自由で、肺疾患も抱えているという境遇で、コージ曰く『45歳になった頃に病気で亡くなってしまう』という人物で、成人後はスーパージャイアンズに雇われていたという。のび太の二歳下なので、この頃は10歳前後か。歳の割に、舌足らずな物言いなのは、口が不自由なので、年相応の喋りができないからだという。

 

「今日はママやおねーちゃんとレストランいくのー」

 

「良かったね~それでおめかししてんだ」

 

「うん~!」

 

嬉しそうにする「たか」少年。彼はこの時、自身の未来の幸福を信じて疑わなかったが、この数年後に彼の両親が離婚したことをきっかけに歯車が狂いだし、青年になる頃に不整脈を抱えるようになるなど、けして順風満帆な生涯ではなかったという。それでも、のび太やジャイアンの尽力により、本人としては悔いのない生涯を送れたという。また、世の中のバリアフリー化の進展する時期に学齢期であった幸運もあり、木っ端レベルであるが、大学まで行けたとの事。

 

「すいませんね。この子、あなたに懐いたみたいで……」

 

「いえいえ、私も子供が好きですし」

 

少年の母親ととりとめのない社交辞令的な会話をこなすのぞみ。母親は40代を超えている風の風貌で、高齢出産であったのを窺わせる。

 

「私は子どもたちを生むのが遅くて……。いつまで、そばにいてやれるやら……」

 

母親自身も高齢出産であった自覚が強いのか、子供の未来が心配なようである。

 

「剛田くんや野比くんからは面倒を見てあげるからと言われてますが、実家の母もいるし……。ごめんなさいね、あなたにこんな話……」

 

「構いませんよ。今の時代、どこもそういう問題はありますから」

 

のぞみは大人ジャイアンから『たか少年』のことを聞かされており、彼がどういう未来を歩むのか。漠然とだが、知っている。のぞみ自身も前世の成人後、年老いて、美容師を引退した後に病気になった母の介護の経験を持つためか、そうした問題の知識は持ち合わせているので、そう答えたのだろう。この後、10分ほど話し込み、自身は中学生だと述べた、のぞみ。外見年齢的には嘘ではない。正真正銘、14歳当時の容姿がプリキュアとしての容姿のベースになっているからだ。のぞみがプリキュア戦士であるのが知れ渡るのは、ここからはずいぶんと後の事だ。

 

「ふう。あの子、この後に苦労する事になるんだよな。あたしも人の事はいえないけど。この頃は七歳くらいだもんな……」

 

 

2000年から2001年に移り変わる頃、のぞみは小学校入学間もない頃。7年後にプリキュアになるなど、まったく知らない幼い子どもであった。本来はその年齢である時期を、プリキュアの姿で過ごすというのは、なんとも言えない。しかも、西暦2001年に入る頃は、自分の現役時代の技術レベルに全体的になりきっていない。ましてや、ススキヶ原は他より昭和の空気が残っていると言われる土地柄である。ススキヶ原が他の地に追いつくのは、2020年代も半ばになろうかという頃だ。

 

「商店街が元気な頃、か……あたしの現役時代にはもう、巷の話題になってたからなー。シャッター通り」

 

キュアドリームの姿で街をぶらついていても、気にも留められないというのは、のぞみには新鮮であった。時代が違うと、楽屋から出てきたアイドルのような有様になる事もあるからだろう。

 

「あと6年くらいで、『あたしら』(プリキュア5)がアニメになって……時代がもっと進むと、なぎささんとほのかさんに代わる顔役の扱いになる……あたしらが……ラブちゃん達以降のプリキュアチームの雛形になったと言えば、そうなんだよな。電子戦隊デンジマンがスーパー戦隊の基本を完全に完成させたみたいなもんか」

 

スーパー戦隊はバトルフィーバーJまでを試行錯誤の黎明期、電子戦隊デンジマンから大戦隊ゴーグルファイブまでを揺籃期としている。電子戦隊デンジマンは現代型スーパー戦隊の雛形になったといえる戦隊だと後世の記録には記されている。

 

「のび太くん、格納庫に近いうちに運び込んで、FARM(大規模近代化改修)工事を『鳥人戦隊ジェットマンの遺産』に施すと言ってたな。と、なると、大決戦の時は使える状態に戻しただけの状態だったんだな。さすがはスーパー戦隊の超メカ……」

 

鳥人戦隊ジェットマン。1991年からのたった数年のみ活動が確認されているスーパー戦隊で、元は公の組織の戦隊だが、諸事情により、リーダーのレッドホーク以外の戦士は民間人であったという。敵を苦戦の末に滅ぼした後、1994年前後にブラックコンドル/結城凱がひったくりにナイフで刺され、不慮の死を遂げた直後に正式に解散したという。彼らが現役時代に使用していたメカは国連が管理する格納庫に押し込まれ、死蔵されていたのだが、ある時期に野比財団にその格納庫が(役人も中のものを知らなかった)払い下げされ、野比財団が買い取ったのだが、その時に回収され、以降はヒーローユニオンの意向で修理がされ、大決戦の際に使われた。そのポテンシャルは23世紀のメカと比較しても、充分に通じるものであったが、ヒーローユニオンは内部を近代化改修する意向であった(実はジェットガルーダは異世界のメカであったが、ジェットマンが運用する際には、地球の技術で修理可能な部品に入れ替えられていた箇所が多い)。

 

「その費用を出せるって事は……野比財団、数百年の間に、地球連邦を動かせるまでに成長していくってことだよね。のび太君が死んだ後も、ノビスケくんややその子が頑張った結果か……」

 

野比財団の力はデザリアム戦役後には『凋落を始めたビスト財団に代わる、アナハイム・エレクトロニクスの支配者』と言われるまでに巨大化する。それを勘案すると、代々の野比家当主が財団を上手く発展させ続けられた事がわかる。たいていの失敗例は『二代目か三代目がダメなケース』だが、野比財団の場合は『黎明~揺籃期の責任者であった、三代の野比家当主』が相当に上手く立ち回り、社会的地位を確立させたことが推測できる。同時に、野比財団は(しずかなどの嫁入りした女性陣の意向か)環境保護にも力を入れていた。しずかは少女期の時点で明確にジオニズムやエレズムを否定しており、成人後にはジオンを『コロニーに住む同胞を数十億も殺しといて、何がコロニーの自治権か』と断ずるなど、ジオンの美辞麗句と裏腹の残虐性を糾弾している。

 

「そうだ、先輩から聞いた事がある。しずかちゃん、ある意味、スペースノイドの反感を買うような事をぶちまけるんだよな。子供の頃から環境保全活動に熱心だったから、ジオンを許せないんだろうな」

 

しずかのメカトピア戦役終結記念式典でのスピーチは『過去の人間として、明確にジオニズムとエレズムを否定する』ものであり、自分の子孫に間接的に迷惑をかける行為であった。とはいえ、のび太と違い、自分の未来を知らない状態であったのを勘案せねばならないだろう。ある意味、ジオンへの最大のカウンターになりえる『過去の人間からの存在の否定』。ススキヶ原の2010年代末からの動乱の要因の一つなのは間違いない。

 

「11歳の女の子に、未来のことまで考えて発言しろったって……無理だよなぁ。あたしもそうだったけど、あの年頃はなぁ」

 

11歳のしずかからすれば、ジオンが一年戦争でした事は『母なる星を汚し、同胞すらも躊躇なく地獄に送り込む、悪魔の如き所業』だろう。ヒトラー以上の残虐さだと。もっとも、ジオン側の人間の全員が一週間戦争での自らの行為を『正義』だと盲信しているわけではなく、荒野の迅雷の異名で知られたエース『ヴィッシュ・ドナヒュー』は『ザビ家が政権を取った時点で、ジオンは戦争に負けている』と断言し、ネオ・ジオンの総帥であったシャア・アズナブルでさえ、『一年戦争でのザビ家の敗北は良きことであった』としている。だが、スペースノイドは連邦政府の統治を『圧政』と考える者が多く、それがジオンなどの歴代の反連邦組織の勃興を支えた。だが、地球の環境を破壊し尽くすというのはシャア・アズナブルの傲慢な考えでしかなく、ネオ・ジオン内部からも離反者が生ずる有様であった。最終的に『異星人との戦争の時代が始まったことで、ジオニズムは息の根を止められた』。それがデザリアム戦役後の地球圏の常識であった。だが、残党は相も変わらぬ不毛な闘争を繰り返している。21世紀以前の世界でのイスラム過激派のように。

 

 

「ジオン残党、イスラム過激派みたいな扱いになるんだよな。だから、この街は動乱に巻き込まれる。その要因の一つが……しずかちゃん。本人は事の真実を知らないのが救いだな」

 

その事実は、ドラえもんものび太も伏せている。まさか、しずかも『自分が善意で語ったスピーチがきっかけで、街がそう遠くない時代に動乱に巻き揉まれるのみならず、自分の血を引く子孫に迷惑をかける』とは夢にも思わないだろう。しずかとしては、おそらくは『地球を見捨てたところで、人は地面から離れては生きられない』という趣旨(超科学に泥酔すれば、それを以てしても『どうにもできない自然現象……突然変異の新しい疫病などか?……が自らを滅ぼすのだ』という論理であろう)で語ったのだろうが、過激なスペースノイドは自らの存在否定と捉える。実際、ノビスケを殺そうとしたジオン兵らは『野比ノビスケの母親は我らの存在を否定した。だから、その息子たるノビスケを殺すのだ』と自決の際に叫んだという。

 

「ある意味、しずかちゃんは『意識高い系』の奔りなんだろうな、世代的に。雲の王国の冒険の時に弁論を奮ったのに、自分達の子孫の代の連中が『人間は自らの手で自らを裁き、自然に対して贖罪せねばならない』って論理で、地球を潰そう。……なーんて考える輩を許すはずないよね…」

 

大人のび太曰く、『シャア・アズナブル総帥をカミさんに会わせられるはずがないって。カミさんが拷問で潰しかねないよ』とぼやいているので、日本の公安警察で相当に剛腕で、際どい取り調べで鳴らしている事は間違いない。少女期の頃は『おしとやかで可憐な性格』を対外的には通していたが、実際はかなりのおてんば娘である。『腕っぷしはジャイアンと互角であろう』。未来でのしずかの夫たる、のび太は恐妻家を公言しているが、それはしずかが持つ本来の気質によるものだろう。街を歩き、駅前商店街へ向かう道中、しずかの実家を通りがかる一瞬、キュアドリームはしずかの『強さ』が動乱を起こしてしまうという未来を想い、のび太とドラえもんの意向を汲み、その事は伝えない事にするのであった。

 

 

 

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