ジェンティルドンナに語られたのは、ことはは色々な事情から、素の姿での活動は中高時代に限られ、大学はプリキュア姿で通い、大学時代に大震災の救援で活躍し、そこでプリキュアオールスターズの一人というのをカミングアウト。その時点で、『プリキュアは実在する超ヒロインである』という認識がされたはずだが、のぞみの一件は日本側の完全な大チョンボであったことなどであった。
「日本はこういうヘマを何度も繰り返しますのね?」
「連中は自分達の美徳に反するのは、その時点の実情に合わなくても、受けいれるのを抵抗するからな。政府と官僚の連携もできていないんだよ。おまけに、市民団体は自分達が悪者になった途端に、その場しのぎの言い訳を宣って、夜逃げとか、雲隠れをするのさ。うちの那覇を焼き払われた原因にもなったしな。首里城は無事だったが、周りの街がな」
結局、扶桑に支払われた那覇市民への賠償金は日本政府が緊急に支払ったもので、肝心の市民団体等からはビタ一文もなかったことが語られた。日本政府が頭を抱えたのは、感情論による暴走での暴力で『まともな生活を送れなくなり、21世紀の基準でさえも、悲惨な身体障害を負った』軍人が国籍や兵科を問わずに多く生じたからであった。しかも、大半が上級の下士官以上の階級であったことが、日本政府を顔面蒼白にさせた。結局、連合国の内部連携はこの暴虐で崩壊。黒江たちが事前に築いていたツテを頼りにするしか手がなく、ロンメルやグデーリアンなどの『史実でナチズムと距離があった将官の活動』の容認などは(連合国軍の崩壊を避けるために)妥協された。扶桑には、将官クラスに機甲戦の理解者はいないと言っても過言ではなかったからだ。
「で、扶桑に機甲戦のエキスパートは現場にいても、将官にはいないから、ロンメルとグデーリアンを顧問にしたら、ドイツから抗議が来た。こう言ってやったよ。うちの世界には、総統閣下は影も形も無いんだが?って。それで押し通した。機甲戦はこの時代、あの二人を上回るのはいないからな。ビスマルクの帝国が続いてるままの世界に、ナチズムは影も形も無いんだがね」
ドイツ(正確には、旧西ドイツ中心)から、「ロンメルとグデーリアンの雇用をやめろ」と圧力がかかったが、『うちの世界には、ナチズムなど影も形も無いんだが?』との回答で押し黙った。第二帝政が崩壊しなかった世界であることを突きつけられたからだ。扶桑は機甲戦の研究の立ち遅れを痛感しており、『異能者がいない戦場でも戦えるようにする』という目的があるとはいえ、研究に躍起になっている。その一環での招聘である。
「機甲行政は形があってもダメだからな。ネーリングは奴さんが手放さなかったんで、二人を招いた。ナチズムが影も形も無い世界に、あれが滅んだ世界線のメタ情報を持ち込んでも、不毛なことになるからな。特に、ドイツ関係は。ティターンズに使われて、不毛な東西出身者の内戦に持ち込まれたのは、不覚だった」
カールスラントは国家そのものが四散し、軍を中心にした最大派閥がNATOの統制を受ける状況に追いやられ、統一国家としては解体に等しかった。形式的には存続扱いだが、軍部も海軍は有名無実、空軍も実働部隊無し、陸軍は各地にごく少数の派遣部隊が生き残るのみという始末。カールスラント海軍は地政学的な必要もあり、数次の新京条約で『戦艦の六隻ほどの保有は認める』ことで落ち着いたが、カール・デーニッツが失脚するなどの混乱が起こっている。M動乱の鹵獲艦の譲渡と、ビスマルクとティルピッツの再建という形である。連合艦隊としても、戦艦を自国だけ保有する状態なのは、財務当局に睨まれるからで、そんな思惑もあり、連合国の戦艦部隊は急速に再建が進んだ。ロマーニャは内戦に突入したが、新開発の戦艦を提供する余裕はあった。ブリタニアも最新のクイーンエリザベスⅡ級を東洋艦隊に回すことで誠意を見せたため、どうにか連合海軍の体は保たれた。実態は日米英+αな有様だが、史実より大国が少ない上、欧州の雄であるガリアに戦艦の運用の余裕が無くなっている以上は仕方がなかった。また、リベリオン本国側が46cm~51cm砲艦の本格検討に入ったという情報が連合国に入ったのも、海軍の再建に味方した。連合国は51cm砲の規格統一と量産の検討会議を始め、扶桑は61cm砲の搭載を具現化しつつある。
「その会議に、はーちゃんを秘書として同席させたんだが、扶桑陸軍のアホぶりが露見するだけで終わって、気まずかったよ。海軍の方は楽で良かった。砲の格上げが全会一致で採決されたから」
「明確な敵がいれば、まとまるものですわよ?」
「おまけに、日本がカールスラントを法的に追い詰めただろ?そのせいで、連合国の国々が物的援助に及び腰だ。モンキーモデルなんて概念もない時代に、それを否定的意味で広げちまったから、他の大国もブルった。カールスラントほどの大国がいっぺんに内戦に陥って、空中分解したからな。ヘルマン・ゲーリングは知ってるな?」
「ええ。史実での国家元帥…でしたね」
「奴が渡す設計図をケチるように命令した。それが日本が徹底的に潰す大義名分にしたんだ。正式な同盟関係にはなかったのに、だ。日本は史実の関係を前提に叩いた。それが扶桑人の外国不信を招いた。ミーナやノイマンの不手際も、日本にフリーハンドを与えちまう理由になった。結局、莫大な賠償金を払わされた上に、ドイツが強引に人員と兵器の廃棄をしたせいで、国自体が崩壊状態。ミーナはその元凶とされたが、出自が救った。先祖代々の騎士の家柄じゃない。バッハの末裔らしい。直接かどうかは知らんが。その出自のおかげで、音楽関係者の同情を買ったんで、結局はミーナの実務上の責任の殆どは上官のヘルマン・ゲーリングに押し付けて、カールスラント皇室も彼を軍中央から追放する形で、手打ちにした。バッハの血を継ぐっていう一点が命を救ったが、憎まれ役はやってもらうというのが、カールスラント政府と軍隊の判断だった」
「憎まれ役がいなければ、グループにまとまりが生まれない。それも事実だった。事実、ドラえもんの時代から、民間宇宙船の運行で、そういう役を演じる商売があるそうだ。恒星間宇宙船が普及したての時代が最盛期だったそうだが、23世紀には民間の移民船にも、中規模の街くらいの設備がついてるからな」
宇宙船の居住空間の改善は恒星間宇宙船の再実用化後に急速に進んだわけだが、恒星間宇宙船の黎明期、憎まれ役を演じること自体を商売とする考えが生まれた。そうした商売はワープやフォールドの普及、居住空間自体の改善で下火になりつつあるが、必要性を認める者達も多い。それは生物の習性そのものが原因であるからだ。
「どのような場合でも商売は生まれるもの……多少浅ましいような気もしますわ」
「生物のサガだよ、それは」
「ガミラスとかの攻撃から逃れるために造られてた旧大国の移民船には、造った国の『最もいい時代』の大都会を再現する案もあったみたいだしな。途中で放棄されたんだが、1950年代前半頃のニューヨーク一帯を再現しようとしていたものがあった。確か、23世紀に入っても、アメリカのどこかの地下都市で眠ってるはずだ」
「なんですの、それは」
「まぁ、メガゾーン23って、昔の日本のアニメのアイデアを切羽詰まって、地球連邦の北米州がそのまま採用したようなもんだ。まぁ、アメリカは一年戦争……いや、統合戦争以来、ケチが付きっぱなしで、東海岸の主要都市は壊滅状態だしな。それで、前途洋々だった時代の快楽に浸ることで、目の前の惨劇から逃げようとしたんだろう。日本が必死に冥王星海戦したり、ヤマトを造ってた時にだ。だから、アメリカは没落したのさ」
日本などの東アジア圏の文明は切羽詰まると、古来の倫理観で敵を皆殺しにして済ますことが多かった。その倫理観は宇宙戦争時代に蘇り、発露がガミラス本星の壊滅や、ガトランティス、デザリアムの全滅であった。宇宙戦争では、敵対国家のすべてを滅ぼすのが是とされてしまう『新帝国主義』が全盛。結局、ガミラスはヤマト一隻に討ち滅ぼされた、『哀れな国家』として名を周辺銀河に知られ、宇宙戦艦ヤマトは『怒らせると、ぺんぺん草一つ生えないくらいに文明を滅ぼされてしまう』地球の武威の象徴のように扱われている。力の差があったはずのガトランティスを跡形もなく全滅させ、デザリアムを銀河ごと粉砕した。ある意味、中国が造ったアジア圏での『戦争の仕方』が巡りに巡って、宇宙戦争時代の地球に多大な影響をもたらしたともいえる。
「中国が教えた戦争の作法が巡りに巡って、宇宙戦争時代で是とされる。それもまた、因果なのでしょうね」
「アジア文化圏は中国が造ったようなもんだ。奴さんが三国志の頃、日本はジャングルの王者ターちゃんみたいなことから脱却し始めたばかりだったからな。話し合いが通じるのは、同じように文化が発達した相手だけだし、相手にそのつもりがなきゃ、ただのピエロだ。大戦末期の日本がソ連に期待してたように。かのチンギス・ハーンも、自分に逆らった相手の族滅に躊躇しなかっただろ?」
「それを、この世界の国々への制裁に?」
「そうだ」
結局、その時代のアジア文化圏での戦争の作法を形を変えて、『魔女の世界の国々』に当てはめてしまった結果、カールスラントは文字通りの空中分解に追い込まれ、大国に戻るどころか、民族存亡が危うくなるレベルに追い込まれた。ドイツがカールスラントに手を差し伸べなかったことは、ドイツ史上最低の悪手であったと、未来世界の記録に刻まれるわけだ。
「だから、ひょんなことから生まれた『今までの摂理を消し飛ばしてる異能者』を持て囃すようになったんだ。カールスラントが空中分解して、ガリアが面従腹背なら、日米英の三カ国で回さんとならんが、あいにく、リベリオンも分裂して、うちらはリストラをされまくって、人手不足だ。民間軍事会社も日本側が規制しちまった。だから、今回の流れは本来、諸手を上げて歓迎すべきなんだ」
軍隊の人数の増加を恐れた日本は戦時下の情勢も意に介さず、人員削減を強行した。それがもとで、前線を指揮すべき将校の数が致命的に足りなくなる失態を演じ、それを黒江たちに尻拭いさせていた。本来は年端もいかぬ年齢である日向咲にさえ、佐官の地位をすぐに与えるほどに。結果、当時はまだ経験のない士官や下士官であった若手(史実で自衛隊で最高幹部になる未来のある者)を抜擢するしかないなど、シッチャカメッチャカであった。義勇兵を拡大したのは、このような『士官(将校)の不足』が理由であった。結局、魔女の負の側面(経験を積んだ者が数年で退役していく)がこの流れで強調されたのも、魔女出身者の進路の選択肢が狭められていく理由であった。
「俺たちのように、極限まで鍛えたりすれば、摂理や道理は消し飛ばせるってことを学ぶべきなんだよ。まぁ、この世界線の田舎者共には、当分わからんだろうが……俺も地方出身だから、人のことは言えんが……」
黒江は転生を重ねた結果もあり、永続的な魔力を得た。その兼ね合いで、最初の生の頃の使い魔とは融合したと言っていい。その兼ね合いもあり、黒江は今回の生では、誕生の時点で『魔女であって、魔女ではない』存在へ進化しているのである。
「前の戦いの時の愚行のせいで、魔女自体が社会的に睨まれてんだ。今いたり、復帰してる連中が本当の定年まで奉職しなけりゃ、オラーシャみたいに、魔女狩りの対象に成り果てる。俺たちは戦いが宿命づけられたからいいが、他の連中は『ちょっと上の世代のアホ』が原因で、生きづらい生活送ってきたからな。こういうのは繰り返すんだろうけど」
黒江の危惧は皮肉にも、彼女たちの子供の世代の魔女志願率の低下として表れていく。それは『子世代と孫世代の対立』という形に変じていき、軍部はこの時代に軍籍を持っていた者たちを『手放す』ことができなくなっていく。その遠因はこの時代の理不尽な『リストラ』にあるのだ。結局、日本がした事は『魔女の社会的地位』を史実の中世欧州の密告社会に近づけただけであったので、扶桑は国家規模で『保護政策』を実行するのである。扶桑の庶民に外国人不信を植え付けた罪も日本にはあるため、結局はカールスラントの最も優良な人材を官民問わずに雇用せざるを得なかった。1940年代の科学分野の総合面で最も進んでいた国であったからだ。だが、メッサーシュミット博士は皮肉なことに、才能の枯渇が原因で、航空技術者として立ち直れず、彼の会社の計画機もことごとくが歴史の闇に葬られてしまう。
「今回で一番割食ったの、カールスラントだよ。うちらは戦後と戦前のキメラになれば、そこそこは幸せになれるが、あいつらはもう、何をすればいいのかもわからなくなってる。NATOもお冠だしな、『やりすぎだ』って」
「ナチを徹底的に根絶やしにするつもりが、実際に根絶やしにしそうになったのは、その前の帝政……。途中で気がつきそうなものですが……。無知としか」
「この世界線は民主共和制の負の側面が嫌というほど、ガリアで表面化したから、カールスラントの国民は民主制を嫌ってるんだが、ドイツ連邦はそれらを弾圧した。結局、史実の東西冷戦のメタ情報が流れて、東西地域の元住民が殺し合い始めて、気がついたら、連合帝国自体が有名無実化した。だから、連合国の屋台骨自体が揺らいでる始末だ。日本がなんと言おうが、扶桑が支えなければ、この世界線はティターンズ主導のディストピアに成り果てるわけだ」
「それを教えたんですの?」
「何もかもがアニメ通りなものかとヒスる有様だったが、ショッカー経由で、リユース・サイコ・デバイスの研究をしてることが知られて、顔面蒼白。どこかの世界線みたいに、戦争狂いを宗教で洗脳したイカレポンチを軍団化する危険があることが分かってな。それを2010年代の末の国会でぶちまけたよ。あれがある場合、より厄介な事になるからな。日本もそれで重い腰を上げたが、旧エゥーゴがシャア・アズナブルの私設組織だって反発してるのがいる。その時点では、絶望してなかったんだぞ、彼」
結局、ショッカー系の組織と手を組んだティターンズは史実では構想段階で打ち切られたが、『ある世界線』では完成に至った『リユース・サイコ・デバイス』の研究をジオンの右派に代わって再開していた。万一、史実のグリプス戦役のレベルのMS技術とリユース・サイコ・デバイスの脅威が合わされば、サイコ・ガンダムも子供扱いの災厄が出現しかねないという危惧を抱いた地球連邦軍は、保有する全ガンダムタイプに『インテンション・オートマチック・システム』を補助的に搭載していく。万一に備えてのものである。
「この世界線は旧・ティターンズとエゥーゴのグリプス戦役の延長戦に巻き込まれたようなものですものね。魔法すらねじ伏せる力を、サイコミュは発揮できる」
「強力なニュータイプの発する波動なら、下手な宝具の一撃は愚か、みらいたちの最強の攻撃の『プリキュア・エクストリーム・レインボー』であっても、軽くかき消せるからな。それはデザリアム戦役で確認されてる」
それはシャア・アズナブルがナイチンゲールのサイコフレームを介して起こしたサイコフィールドのことであった。比較的にニュータイプとしては強くない(パイロット能力が高いので、普通の人間らにはわからないが)シャアの起こしたサイコフィールドであっても、魔法つかいプリキュア最強最大の魔法を無に帰すことが可能である。当然、みらいとリコはデウスマスト(みらいたちの世界線でのラスボス)も抵抗できなかった魔法が『人が科学の力で生み出したもの』にねじ伏せられた事に動揺してしまい、次の一手を打てぬままに、ナイチンゲールに敗れた(シャアが感応波を意図的に強く発することで気絶させた)。
「アムロさんやシャアくらいのニュータイプ能力でも、みらいたちの最強魔法を無効化できるんだ。これがより強いニュータイプ能力を持つ誰かだったら……。恐ろしいぜ」
ある意味、それはサイコミュ研究が生み出した超常現象が、みらいたちの魔法を上回る事の証明であった。それは魔法つかいプリキュアも万能ではないことを表してもいた。もっとも、シャアが『ジオン・ダイクンの実子』(嫡子ではなく、妾腹の子であるという未確認情報もある)故のブーストがかかっていた事も考慮すべきだろう。結果的に、シャア・アズナブルは『ジオン・ダイクンの実子』である証である本名を使わず、自身の世間での通り名を使う辺り、多少なりともの後ろめたさもあるだろう(シャア・アズナブルという人物がキャスバルの他にいたかどうかは不明だが)。逆に言えば、ニュータイプ能力は媒介さえあれば、古より異能の代表として名を残した魔法を超えることを引き起こせる事が確かめられたのである。
「彼女たちも、ニュータイプ能力に恐れを抱いているというのは」
「そりゃ、思考自体を先読みされればな。まぁ、ニュータイプは感覚が優れてるんであって、身体能力は普通だから、格闘させるよりも、機動兵器とかで真価を発揮する能力だから、ギレン・ザビも戦争に利用したんだ」
ニュータイプ能力は本来、感応能力の拡大だが、機動兵器の操縦をさせると、天才が十年近く訓練して身につけるようなパフォーマンスを若齢のうちに発揮できるようになる。壮年期を迎えても、20代の若者以上の鋭敏な感覚が保たれるという。強化人間としては高齢であるタウ・リンが、10代という生物学上の絶頂期の感覚を持つのぞみを真っ向から圧倒できた理由の一つでもある。
「話が脱線したな…。だが、強化人間というのに触れないといかんな」
話が脱線したのを詫びつつ、黒江は続ける。リユース・サイコ・デバイスもそうだが、ある世界線でのニュータイプ研究の闇に触れるからでもある。
ある意味、それらは科学が極限まで発達した場合、魔法と見分けがつかなくなる事の証明であった。