ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百九十二話「セクシー・アドベンチャー 22」

日本が慌てて歯止めをかけた時には、カールスラント系の将校たちはその多くが理不尽な暴力で身体障害(それも失明や半身不随レベル)を負わせられた後であった。マルセイユでさえ、孫子の兵法への無知を理由に、古代中国さながらに拷問された。結局、マルセイユはそのことでの療養で、ダイ・アナザー・デイ後期の戦機を逃すこととなり、ハルトマンがカールスラント系軍人の戦功第一とされた。プリキュア達はそんな連合国軍の人材損失の穴埋めに使われたわけだ。逆に、日本警察の『軍人潰し』と揶揄された『尋問』へ批判が集中。以後、連合国軍の軍人への尋問を忌避するようになるわけだが、日本での『警察は軍隊より上の存在』との理屈を押し通そうとした末の大失敗であった。結局、各国の軍法会議は宛にならないからと、独断専行で行った事も露見。日本はこの官庁の大チョンボの連続に頭を抱えた。結局、ユーラシア各地での内戦の勃発がトドメとなり、連合国間の連携は有名無実化。扶桑は外国人不信が国民に芽生えるという最悪の状況に追い込まれたため、自由リベリオンは弾除けという目的で、前線で使い倒されていく事になった。その副次効果で、プリキュア達は否応なしに、対ティターンズ(ひいてはバダン)との最前線に身を投ずる事になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

各国の魔女たちの内、状況を理解していた者は一連の混乱の渦中を見てきたため、日本連邦に与した。そうでなければ、今後の運命自体が暗黒時代になってしまうからだ。魔女を蔑ろにして滅んだ国は多いが、人々にとっては忘却の彼方だからだ。特に、中国と朝鮮については、日本が問題視した結果、カールスラント将校団を機能不全に陥らせたという罪がある。とはいえ、扶桑国民に外国人不信が芽生えた以上、自主的に血の献身をしなければ、戦後の時代に禍根を残してしまう。それを理解している者達は血の献身を以ての贖罪をする選択をした。ペリーヌ・クロステルマンもその一人。彼女の場合はキュアスカーレット(紅城トワ)の人格に肉体の主導権を渡し、1949年度の公的な消息は『戦傷の悪化により、療養中』としていた。彼女の年齢が理由である。本来、ペリーヌ・クロステルマンや宮藤芳佳は1949年前後に20歳を迎える世代であったからで、ペリーヌ・クロステルマンは複数の人格を肉体に宿す結果になったので、魔力が保たれたが、本人は本来、ガリアの復興が果たされれば、第一線を退く事も考えていたが、急激なドゴーリズムの台頭に危惧を抱いたため、完全な退役を思いとどまった。また、連合国の瓦解を止めるため、キュアスカーレットに荒事を頼んだ。自分自身は力を失うフェーズに来ているからで、宮藤芳佳の世代も本来は引退を迎える時代であることを妙実に示していた。それが決まった直後のこと。

 

1948年頃。

 

「スカーレット。お前にペリーヌは?」

 

「ええ。戦いを託すと。あの方は」

 

「魔力がそろそろ減衰期に入るからか……。気にしすぎだと思うがね」

 

1948年の年末当時、ペリーヌ・クロステルマンのメッセージを、キュアスカーレットは伝えた。これがペリーヌ・クロステルマンとして、1940年代中に公的に発した中では、最後のメッセージになった。そのため、人格保持のためもあり、キュアスカーレットの姿で活動することが決まった。

 

「モーさんだと、裏切り者って事実があるから、宣伝にも使えないしなぁ」

 

と、黒江も嘆息であった。

 

――どうして、俺にばかり、視線がきびしーんだよ――

 

「思念で会話か?ったく。そのまま表層化しとけよな」

 

――子供の教育にわりーって言われんだよぉ――

 

「知るかよ。ま、俺も人のことは言えんがね。偽装用プロフィールは『さる華族の令嬢』という事にしておく。細かい部分は広報部が考えてくれるだろう」

 

結局、扶桑の華族は日本の左派からの猛反発があったが、『内政干渉になる』とシャットアウトされ、身分は存続した。だが、元々、扶桑では、ノブリス・オブリージュの考えが強いために、史実での『文化に傾倒する当主』の存在が許されない傾向があるため、身分の存続のために、傍流の軍人(男女問わず)を当主に添える事例が相次いだ。これに日本側は慌て、『華族の身分廃止はあくまでも検討の要請であり、扶桑が従う必要はない』との声明を発するに至った。このような予想外の頻発も、日本が関心を薄めさせる理由であった。だが、政治家や官僚は連邦の円滑な運営のために、ある程度は知識を持たなければならず、戦争中であるのもあり、互いの領土を行き交うには、軍や自衛隊の護衛が必須であった。また、扶桑はコンピュータのない時代であるので、意思決定が(日本の基準では)遅々たるものであるので、軍部の導入を後押ししていた。兵器の設計速度が改善されるからで、特に艦艇の設計速度の向上が期待された。とはいえ、戦後式空母の建造は五年以上の月日を要するため、自動工場の増強が要請され、地球連邦軍も応じた。これは扶桑に恩を売るためであったが、自分らも使うためであった。

 

 

 

 

 

 

かくして、それらの恩恵は1949年以降の急激な兵器開発の進展、軍使用の暗号のデジタル化などで現れ、リベリオンのコードトーカーを上回る安全性(コードトーカーの秘密は23世紀にはとうに知られているため)を以て、日本連邦の作戦行動に秘匿性を与えた。無論、宇宙時代の軍隊であるティターンズには意味のないことだが、内通が疑わしいガリアへの秘匿目的が主な目的であった。日本連邦はガリアとの将来的な敵対を予期し、次第にガリアとの付き合いを事務レベルに落としていく。それは偵察機の行動で、『パリ郊外に核弾頭らしきものが運ばれた』のが察知されたからだ。ファットマンタイプの原爆だと推測されたそれの譲渡は、日本連邦の怒りに油を注ぐ情報であり、結局、ガリアは数十年後、それすら玩具扱いのものの洗礼を受け、またも痛手を被ることになる。それはガリアの潜在力を削ぎ、ド・ゴールの企図した構図は、彼の死後に完全に崩壊することになる。

 

「ド・ゴールも馬鹿なことを。数十年後に植民地を守るために戦争仕掛けても、俺達に勝てんと思ってるのかね」

 

「政治的勝利でも狙ってるのでしょうが、その頃には、この時代の勇士は退役しているでしょうに」

 

と、ガリアはこの時点で、そう言われる有様であった。実際、ガリアの兵器更新は遅々としたものであり、扶桑が冷戦後期の水準になりつつあるのに、ガリアは戦間期を抜け出すかどうかであった。山本五十六は『ド・ゴールはティターンズにつくようだから、アルジェリア戦争を仕掛けたら、完全にぶちのめすにかぎる』と述べていたため、ド・ゴールは扶桑が戦時体制を解くのを待っているようだとも推測している。

 

「それにだ、リシュリューの代艦も用意できねぇ国が、超大和型戦艦の第三段階に到達しようとしてる国に挑むなんぞ、ドン・キホーテ並のアホだぞ」

 

「アルザス級の建造は差し止めてるはずですからね。そのうち造るでしょうが……」

 

 

ペリーヌ・クロステルマンは軍備の再建を差し止めていたが、結局、世論の後押しで、ガリアはティターンズ寄りに変貌していき、扶桑も敵対国家認定をしていく。この反扶桑論の台頭がドゴーリズムの悲劇であった。だが、扶桑は扶桑で、歴史の帳尻合わせのように、本土で大災害が相次ぎ、軍縮が説得力を失ってしまう。同時に、国土強靭化計画に説得力が生まれ、扶桑本土の再開発が急ピッチで行われる。だが、それでかつて封じられた怪異が復活。魔女の仕事は(皮肉にも)確保された。キュアスカーレットは魔女たちの手に負えぬ大怪異の討伐に度々派遣され、オトナ世界へ向かったので、キュアフローラとの再会は殆ど出来ていない。素体になったペリーヌ・クロステルマンが軍人(ペリーヌ・クロステルマンとしての階級は、療養前の時点で少佐になっている)である都合であった。

 

 

 

 

それから半年と少し経った1949年の秋

 

 

 

連合国軍は有名無実化が進展し、有志が辛うじて維持している状態であった。実戦で鍛えられた、カールスラント系将官の影響力が削がれた結果、殆どの軍人は右往左往するばかりであり、何もかもカールスラント軍ありきであったからだ。結局、日米英の三カ国が組織自体を変革するしかなく、カールスラント色は排除されていった。バルクホルンとエーリカは『同位体が西ドイツ軍にいた』幸運で、残留を認められた。マルセイユは『同位体は同じ時期には戦死している』故に、残留が通った。結局、カールスラント系の魔女は『西ドイツ軍に同位体がいたか。戦中に戦死したか、戦後に事故死したか、東ドイツに与したか』で運命が決まってしまう流れとなり、職を失った者も多数生じた。とはいえ、傭兵やマフィアになられても困るので、日本連邦・義勇兵への志願は積極的に斡旋された。特に、熟練の空中勤務者は喜ばれ、部隊ごと志願するケースも相次いだ。そのため、カールスラントの旗を掲げていた航空隊が、数日で日の丸に敬礼するようになると揶揄されていた。とはいえ、戦時動員をタブー視している日本には誠に都合の良い流れであったため、南洋軍の魔女の損失補填の大半は彼女たちで賄われている。結局、カールスラントは他国の政治の都合で、理不尽に滅ぼされた帝国という汚名をひっかぶる事になった。ただし、残存の軍事力は各地に散らばっていたため、大半は日本連邦に雇われていった。第三国の野心のもとにされても困るためで、結局は日本連邦の臨時雇用の将校の多くが、つい半年前まではカールスラントやスオムス軍の軍服を着ていた誰かである事になる。

 

 

結局、カールスラントの再建はナチスのような体制の登場防止のため、日本型の立憲君主制にすることで妥協されたが、軍事力は制限を加えられた状態であった。ただし、怪異関連の例外事項が加えられた。日独が史実で味わった辛苦をカールスラントが数倍で味わう事になったが、怪異のいる分、軍が温存されたのはせめてもの慰めであった。『第二帝政を立て直すより、『共和制に変えたほうが……』という意見もあったが、カールスラント皇室に罪はなかったのと、共和制に不信が強い世界であったため、結局は帝政の再建が通った。結局、カールスラントは帝政こそ存続したが、以前のような大帝国に戻れぬまま『中小国』扱いで、次の世紀を迎えることになる。

 

 

 

 

日本連邦は結局、リベリオンが担うはずの『世界最強の国家』の役回りを背負わされる羽目となり、膨れ上がった軍隊の維持を全世界から指示される始末となった。結局、陸軍を強引に削減したが、今度は少数で倍する敵を返り討ちにせねばならぬ情勢が常態化。その影響で、保有兵器に当代最高の性能が求められていく。そのドクトリンの申し子として、扶桑空軍は形作られていく。問題は陸海の領域の曖昧化により、空軍に陸戦兵器が配備される事態ともなったが、陸軍を『お飾り』にしたい日本は容認した。結局、ヘルマン・ゲーリングを失脚に追い込んだ割に、彼の私兵に近かった第1降下装甲師団を模倣する形で、陸戦部門を擁する事態になった扶桑空軍。可変MSは空軍の保有になったので、アナハイム・エレクトロニクス社はむしろ、扶桑の注文で儲けたと言っていい。廉価版のリゼル、Zプラスなどの高性能機を地球連邦軍よりも多く注文したからで、それで、扶桑固有の軍用機の開発のことごとくが中止になった感は否めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑の軍需産業の嘆きを聞き届けたドラえもんの力により、なんとか復元が成った局地戦闘機の一つに『閃電』があったが、設計の不備などの露呈で、予想以下の性能しか出せず、制式採用の再認定は成らなかった。また、キ84の発展型『キ87』は製造技術の向上で気密構造の実用化に成功したため、その仕様で完成したが、その頃には『F-86』ジェット戦闘機が既に完成しており、老朽化していたキ44-Ⅱ(鍾馗二型)の防空部隊の代替機(ジェット戦闘機までの繋ぎ)としての生産に留まった。ダイ・アナザー・デイにごく少数が試験的に投入され、開発陣の願いは果たしたが、機動力を第一とする扶桑軍航空隊の前線の嗜好には合わず、結局はキ84の汚名返上に繋がらずじまいであったからだ。結局、キ84系統は『中途半端』の烙印を押され、史実と違い、ダイ・アナザー・デイで華々しく活躍したキ100の影に隠れてしまう顛末を迎えた。ただし、キ84の『舵を重くする設計』が逆に不評を買ったのを理由に廃されていたという美点もあり、キ87自体はキ84の後期型(疾風の高高度型として生産された)として量産された(別機としての採用ではない)という。これは史実の悪評価を設計側が気に病んだからで、量産機では複雑な機構は殆どが廃され、『大型化した疾風』以外の特徴が無くなっていたが、逆に安定した生産に寄与した。特に、ジェット戦闘機までの繋ぎとしては充分であると判断され、ダイ・アナザー・デイ後に増産され、キ44のほとんどを代替するくらいは生産された。それが最初で最後の輝きであった。キ100の牙城は崩れなかったが、陸軍系レシプロ機の発達の到達点としての評価は得られたのである。それは陣風と震電しか『復活』できなかった海軍系レシプロ機とは好対照であり、ジェット化の波に飲み込まれたものの、一時でも輝けただけ、史実よりは幸せであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな流れにより、扶桑空軍は黒江たちの息がかかる部隊が『精鋭』と名を馳せる一方、陸海航空隊の呉越同舟状態によるいがみ合いは見るに耐えないため、義勇兵部隊は太平洋戦線でも存続した。F-4EJ改やF-104Jなどの部隊がそれで、旧軍人かつ、自衛官であった者らが扱える戦闘機としてはそれが最高峰であるからで、時代を考えれば、充分に高性能である。ダイ・アナザー・デイでは、旧軍系のレシプロ機で戦っていた者らである。64Fの側面援護は彼らが行い、無事にダイ・アナザー・デイをくぐり抜け、太平洋戦線でも活躍している。64Fに組み入れられた部隊は、戦中に陸軍第5戦隊や第47戦隊、海軍厚木航空隊などの経験者であり、戦後は定年まで航空自衛官であった者らであり、2000年代前半に黒江が自衛隊に『潜入』した時期からの釣り友だちである。

 

 

「おーっす。イーグルの部隊を見てきた」

 

「どー?」

 

「俺の従弟の孫がいるが、まぁ、戦後の平均レベルには届いてるよ」

 

「それで充分だ。ジェット相手なら、自衛隊の平均レベルくらいでいい」

 

「B公を余裕で落とせるのは、気分のいいもんだよ」

 

彼はその部隊の長で、戦争末期に旧日本陸軍の飛行第五飛行戦隊に属し、戦後は航空自衛官になり、高官で軍歴を終えた者である。64Fにダイ・アナザー・デイ中に組み入れられ、ダイ・アナザー・デイを戦い抜いたわけである。

 

「昔はB公の高度にも上がれず、高射砲も届かなかったしな。今はミサイルやレーザー砲もあるから、戦略爆撃機の迎撃手段はいくらでもある。前の時は排気タービンをつけたキ100や紫電改でやってたが……」

 

「屠龍を使うよりはマシだよ。単座戦闘機に襲われれば、あれはいいカモでしかなかった。雷電も使われたそうだぞ」

 

「雷電は元々は嫌われ者だったけど、日本が『ゼロ戦よりマシだろ』で量産させたからね。横空がそれで顔真っ赤でさー……」

 

「フン。実戦も知らぬガキ共のいうことは無視して正解だったよ。キ43じゃ、最終型を使って、それも低空じゃないと、P-51は落とせんし、ゼロ戦は艦上機だぞ、まったく。閃電や震電は残念だったが、あれが完成したとしてもなぁ……」

 

閃電や震電は横須賀航空隊の愚行の犠牲になったが、完成しても、P-51Hへは優位性が無く、F-86にすぐに取って代わられる事は容易に想像できたため、現場単位ではそれほど未練がましく語られてはいなかった。また、P-51Hはストライカーユニットとしても、(製造難度の上昇から)さほど量産はされず、戦闘機としても、陣風にひねられる三下扱いであった。実機のほうが散々な有様であったり、すぐにも、一部のトップエースでもなければ、そのスペックをフル活用できなかったからだ。とはいえ、扶桑系のあらゆるレシプロ戦闘機よりは高性能であるのには変わりないので、政治側が勝手に恐れ、レシプロ機の計画を(進展度の高いものを除き)中止させたのである。また、魔女の世界での横須賀航空隊は雷電の量産強行への不満を引き金に、クーデターに加担したことが明言された。B-29やB-36の存在を知らされていたことから、横須賀航空隊は戦犯のような扱いを受けたが、彼女たちは戦略爆撃機への認識が古かっただけで、実情を知らされ、後悔した魔女も多かった。結局、64Fにテスト部署の任務さえ背負わせる流れになったため、こうして、義勇兵の部隊を吸収合併していたわけだ。その兼ね合いで、地上要員は一万近い人数に膨れ上がっている。

 

「敵の兵器は魔女のおかげで、更新は比較的にゆっくり。こっちはどんどん新しくなる。これでは、兵の教育がおっつかんぜ」

 

「魔女の装備に手間取ってるが、通常兵器は必要な資材と技術さえ与えれば、時間をかければできるからね。魔女の変革は俺等の子の代が今の俺らくらいになる時代になんないと、結果が出んだろう。みらいやリコ、なのはたちは特別だ。この世界線の魔女の大半には、宝具の召喚すら手に負えんだろう。芳佳クラスの魔力でなければいかんが、この世界線に、あんな魔力の魔女は他にいない」

 

ミッドチルダ式魔法の使用も、この世界線の魔女ではおぼつかない。ましてや、魔力砲は夢のまた夢である。宮藤芳佳であれば可能だとされたが、芳佳はプリキュアとなっているし、『それは後輩の領分だ』と言っている。また、黒江たちは魔力自体は(この世界線の基準でも)強くはない。

 

「俺や智子は元々、魔力は高くないからな。今の強さは、それ以外の力によるものだし」

 

黒江たちの固有魔力自体は同時代の平均レベルに留まっているため、自ずと限界は見えていた。故に、転生を重ねるうちに、その他の力を主とするようになっていった。

 

「それがあるだけ、この世界線は幸せだよ。俺たちは後半は連戦連敗だしな」

 

彼らは太平洋戦争(史実)を生き延びたため、無力感のあった戦争後半の有様を思えば、充分に凄いからだ。

 

「空襲も防げなかったからな。源田のオヤジもそれを気にしておいでだよ」

 

「航空幕僚長閣下を早いうちに担ぎ上げたのは、お嬢ちゃんたちだろ?」

 

「まぁ、菅野が心服してるのは、オヤジさんだけだしな。俺もヤツを手懐けるのに、骨を折ったぜ」

 

「菅野くんは反骨者だからな。君も荒っぽくしたんだろう?」

 

「まぁ、記憶があるけど、外聞があるからって、着任したての頃に決闘したんだよ。ま、勝ったけど」

 

「だろうな。ひ孫がプリキュア好きでな。サインもらえたのは僥倖だよ」

 

戦争に行っていた世代は2020年代には、ほとんど生存していない年齢層になる。その兼ね合いにより、集められた日本軍義勇兵の多くは2000年代のうちに集めた者らになる。タイムマシンにより、それ以外の年代からも集められているが、基本的には、2000年代前半期のうちに集めた者が義勇兵となっている。また、菅野も外聞の都合で、着任したての頃に、黒江と模擬戦をせざるをえない状況になり、案の定、ボコボコにされたことが語られる。

 

「あの子達のおかげで、俺たちのような戦中派への批判が和らいだよ」

 

「仕方ないが、ボケ老人を介護して、心身をすり減らすより、扶桑に送って、遺族年金を貰える状態で死んでくれたほうが助かるんだよ、日本の連中も。特に戦中派は。さっき、医官(ジェンティルドンナ)と話したが、そういうことだよ」

 

「世知辛いが、70、80を超えるとな。だから、全盛期に戻れたのはいい気分だよ。女房、子供、孫、ひ孫に迷惑かけなくていいからな」

 

執務室に戻った黒江は、このような会話を行うことで、人心掌握を図っていた。義勇兵もピンキリであるからだが、ダイ・アナザー・デイ後は旧軍の経験+自衛隊の経験も条件に加えられた。旧軍の経験だけでは、外国軍との揉め事を起こすことが多かったからである。そのため、黒江たちに帯同する彼らは最高峰の質の義勇兵と言える。自衛隊の経験も求められるようになったのは、旧軍のみの経験者は『制裁の程度』をかつての日本軍と同じ基準で考えてしまうことが多いことが判明し、外国士官相手でも、骨が折れるのはいい方、海軍精神注入棒で叩かれて、肛門が裂ける、片目を失明に追い込む事もあったり、指の切断すらあったからで、旧軍の暴力性の証明となった。この問題の露呈で、外国軍士官(将校)は日本連邦を一様に恐れるようになったというが、旧軍の生き残り(特に下士官層)の倫理観のタガが外れていることの証拠にもなったが、人手不足が極まる扶桑軍は黙認せざるを得なかった。

 

 

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