ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前話の続編です。


第二一話「次元震パニック出張版その三」

――1947年。ウィッチ世界で東京五輪を一年前に控えたこの頃、扶桑は来る太平洋戦争に持てる国力の殆どを費やす準備を進めていた。当時、扶桑の構想していた旧ユーラシア大陸領奪還は事実上、棚上げされ、目の前の来たるべき戦である『太平洋戦線』に持てる全てを費やす方針が決まり、64Fも太平洋戦線に配置された。連合軍はダイ・アナザー・デイで持てる軍事力をほぼ消耗し、大半が財政面でも激しく疲弊していたため、太平洋では人材供給の役目以外は本当に期待されておらず、本当に日米戦争の体裁が強まっていた。扶桑皇国とて、ダイ・アナザー・デイでかなりの軍事費を投じつつも、得られた戦果は『当座の安全は確保した』だけであるため、政治的にはかなりの非難を浴びた。だが、扶桑軍からすれば、『総兵力がノルマンディーの二倍以上の相手を撃退しただけでも大戦果である。』その代償に『ウィッチの志願数は大きく目減りし、MATとリソースを食い合う』という結果をもたらした。この年に昭和天皇の玉音放送がなされ、ウィッチの志願を促したが、賛否両論であった。『あがり』を迎えても一線に留まる選択肢である『Rウィッチ化』は物好きな者のやることという世間の風潮もあり、力に年齢制限がない歴代のプリキュアは是非がでも確保すべき人材と見なされた。この頃になると、プリキュア5は全員が64F隊員(ミルキィローズ含め)であり、フレッシュも前年に東せつな/キュアパッションがアカルンの力を用いて、自力で未来世界にまでたどり着き、デザリアム戦役に従軍しており、第一期プリキュアの80%が既に64Fで勤務していた――

 

 

「ん、あ、電話だ。……せつなちゃん?あ、あたしだけど。……うん。伝えとく」

 

「ピーチ、伝言だよ。せつなちゃんは今日は隊長に付き添って、西部にいる第54Fのとこにいるから、今日は帰れないって」

 

「今、言われてもーー!!」

 

ピーチは運転に必死で、それどころでない。この頃、東せつなは武子が直接育てており、彼女の従卒ポジションであるため、ラブ/ピーチとは別部署配属扱いであった。これはラブはのぞみ、シャーリーとでセット扱いが定着したからで、軍により、第一期プリキュア三羽烏という名称がつけられている都合だ。ちなみに第二期以降のピンクチームは三羽烏になるほどのオールスターズの場数が無いため、基本的に第一期ピンクチームの補佐が役目である。なお、第二期最後の雄『春野はるか/キュアフローラ』が不在であることもあり、明確な戦友意識がある第一期ピンクチームと違い、チームは組んでいない。そのため、第二期は個々で活動しており、めぐみ(ラブリー)とマナ(ハート)が主に活動している(ハッピーは芳佳としての顔出しのほうが多く、あまり参加しなくなった。その代わりに、のぞみへの恩義があるめぐみ、気質的に自分から危険に飛び込むマナが代表と見なされている)。

 

「ねー、いい加減に教えてくださいよー、あなたがあの時に見せた剣の事を!」

 

「だーかーら、あん時に言ったろ、聖剣と神剣だって」

 

キュアブルームが黒江に食い下がる。未だに黒江が見せた力に合点がいかないらしい。

 

「おいおい、ブルーム。はっきり見てたろ?」

 

「伝説の剣って、イーグレットから聞いたけど、ありえないって!?」

 

「この人はアテナから授かりし二振りの剣を持つんだよ。神様から聖剣の霊格を授かって、闘士に任ぜられたお方だ」

 

「別れる時に言ったろ?俺の渾名の一つは『魔斬りの綾香』だって」

 

黒江の聖闘士としての異名は最終的に『魔斬りの綾香』となった。魔斬りの称号は歴代の山羊座の聖闘士でも、めったに名乗れないと言われる名誉あるもの。シュラは『素養はあったが、その前に戦死』し、黒江の二代前の聖闘士『山羊座の以蔵』が生前に与えられていた事で知られる。黒江は聖剣の霊格を実体化させて用いる点で特異とされ、黄泉帰った前教皇『シオン』(肉体は生前の全盛期になっている)からも『面白い娘だ』と評されている。その異名は伊達ではなく、キュアドリームの姿を使いつつも、聖闘士の本領を発揮して、プリキュアの敵であった組織の再生幹部を一刀両断していること、エアで百鬼帝国の軍団を分断するなど、『大決戦』で存分に発揮されている。

 

「先輩、あの時、どういう暴れ方したんです?」

 

「士に聞けばいいだろ?最初から見てたんだし、あいつは」

 

「丸投げですか!?」

 

「しかたねーだろ。ダイ・アナザー・デイん時、俺が本気出しただけで『のび太やゴルゴと戦わない臆病者』って中傷されたからな。あまり口外できなくなったんだぞ」

 

黒江は類稀な実力を持つ(聖闘士としては智子を超える)人物ながら、のび太やゴルゴとの対決をしない姿勢から、逆に『舐めプ』との非難を浴びてしまった。のび太がダイ・アナザー・デイ後に模擬戦でプリキュア勢を銃だけで退け、黒江もクイックドローで下すことで中傷は止んだが、黒江達の実力の公言は控えられるようになったわけだ。

 

「なんで、好き好んで敵増やす様な事せにゃならんのだか……。21世紀の日本の若造共はマウント取って自尊心満たしてるのかねぇ。それに舐めプじゃねーよ、ぶっ壊しゃ良いって訳じゃねぇ、精密彫刻やるくらい気を使わなきゃ、一瞬で地球ごと原子に還しちまうわ」

 

「なんですか、それ…」

 

「神を守るんだから、当然だろ。出力かなり抑えて撃ってるんだぞ、エアは」

 

「あたしたちが霞むんじゃ」

 

「ブルーム。それどころじゃないわよ…」

 

「対界宝具の分類は伊達じゃ無いからな。ま、お前らの活躍する話を捻じ曲げたって抗議が来そうだぜ、公にすれば。それに本来はまだ、プリキュアになってない連中まで参戦したしな」

 

「フェリーチェなんて、ストナーサンシャインを撃ったし、やりたい放題だったもんな。あの決戦はつぼみたちが最新のプリキュアだった頃のあの戦いのもう一つの出来事だから、プリキュアオールスターズDX2に当たるな。ただ、狙われたのがレインボージュエルじゃなかったから、次のDX3と混じってたよな」

 

「うん。微妙に違ってたって聞いてる」

 

ドリームも同意する。正確に言えば、黒江、智子、フェリーチェの三人でシャインスパークも撃っているため、原作クラッシャーもいいところな戦闘であった。

 

「分岐世界だから本筋とズレが出るのは仕方ないさ。それにブロッサム達を前に出すわけにもいかんかったから、メロディ、ラブリーやハートに前に出てもらったんだし」

 

「あたしは一年早く出たから、説明がめんどーだった。だって、DX2のころはまだ中1だし、あたし」

 

「そう言えば、DX3がお前のオールスターズとしての初陣か、メロディ」

 

「うん」

 

メロディは本来のデビューより一年早く戦ったため、説明が最も面倒だったとぼやく。最も、DX2当時はプリキュアになっていない頃の明堂院いつき、ムーンライトへの変身能力を喪失中の月影ゆりがミラクルライトを振っていたりする(翌年、二人はプリキュア陣営に加入する)が。

 

「そう言えば、次の年の戦いで…あなた、本当に初対面だった風だったのは本当なの?」

 

「ここにいるあたしとは別のあたしだからな、そいつ。本当に初対面だよ、イーグレット」

 

「平行世界の不思議なところだよ、そこは。このあたりからエプロンに入る。スピード落とせよ」

 

「はーい」

 

「ぐ、ぐえー!?」

 

メロディはピーチにかなり強引にブレーキを踏ませる。生前と違い、かなりガサツな指示で、一同を苦笑させる。

 

「なんか、バラバラですね、種類」

 

「旧日本軍の飛行機が置かれてると思ったら米軍で見たようなジェット機が停まってる……」

 

「時代考えてくれ。これでも一番に優遇受けてるほーだぞ」

 

一同が見ているのは、駐機場に駐機されている各種飛行機。本来の整備目的とは違い、戦闘機主体だが、レシプロとジェットが混じっている。雷電、紫電改から陣風までのレシプロ機(もちろん、尾輪式)、前輪式のジェット戦闘機各種が停められて整備や待機中である。

 

「レシプロは連絡や監視任務用さ、急激にジェットが増えてるけど、速度がそこそこの機体も偵察には都合が良いのさ」

 

「それにドイツでさえ、ジェット機の配備は進んでないし、ウチしか超音速機は持ってないから、嫉妬されるんだよね、メロディ」

 

「おう。ドイツはやっと時速1000キロに挑戦の段階だしな」

 

「え、もう1000キロ?」

 

「1947年にもなればな。だけど、日本以外の国はジェット機の値段が高いのにびっくりして、イギリス以外の国は配備に及び腰なんだ」

 

1947年といえば、本来はジェット機はまだまだ黎明期。カールスラントがまとまったジェット機部隊を有するのだけで『先進的』と持て囃される時代である。時代的に、扶桑がダイ・アナザー・デイでF-8の量産にこぎつけただけでも『世界最高』と言われる始末だ。当時、扶桑の新鋭機は公にはF-104、F-8/F-4EJ改、ドラケンとされているが、次の機体の投入も間近であったりする。また、この頃には陣風は外見の偽装を施しつつも、実態はターボプロップ機化したものが主力に移行しつつあり、紫電改と雷電、烈風なども実は一部はターボプロップ機化されている。そのため、平均性能水準は飛躍していると言える。これは日本財務省向けの偽装であるが、未来兵器は見栄えもいいため、敢えて公にされているものも多い。

 

「ん、セイバーフィッシュの改良ですか?」

 

「推進機を熱核のに変えてるんだ。それだけで宇宙空間での機動性は段違いになる」

 

「あ、あ、あの、それ、オーバーテクノロジーじゃ?」

 

「アメリカとガチの戦争になるんだ。オーバーテクノロジー使わないと物量作戦に負けるからな」

 

「それに、これくらいでオーバーテクノロジーって騒いでたら、上を飛んでるの見たら、泡吹くよ」

 

「え?は、はいぃぃ――!?」

 

一同の上空を飛ぶそれは訓練中のフェリーチェが操縦する『量産型F91』(第二期生産型)であった。デザリアム戦争後に生産ラインが復旧した量産型F91。第二期生産型と言っても、実質はエースパイロット用のチューンナップ機の製造と言ってよく、ジオンの高機動型ザクが大規模生産ラインに乗ったようなものだ。ただし、幻惑効果があるものの、整備性を悪化させるM.E.P.E.が復活しているため、実戦部隊側の強い圧力があったことが分かる。つまり、ジム系では無理な敵機への対応に、完全でなくていいから、士気高揚のためにもガンダムタイプを使わせろという要望が殺到したため、ラインが存在しつつ、量産型と言い訳の立つF91が選ばれたのだ。そのため、一旦は削減された試作機の機能が敢えて復活され、配備先も選ばれたエースパイロットのみに限定することで、斜陽の小型MSの最後の意地を見せたという。

 

「あ、F91だ。先輩、使わせてるんですか?」

 

「うむ。量産型の第二期生産型の初期ロットだから、不具合を洗い出してるところだ」

 

「量産型ったって、エースパイロット用でしょ?」

 

「高級量産機扱いだ。F91はエースパイロットじゃないと、その真価を発揮しないからな」

 

「高機動型ザクみたいなもんか」

 

「あれはザクの革を被ったゲルググって評判があったというが、連邦はスタークジェガンの上はZ系のリゼルかZプラスとかしか無いし、同じポジションのが欲しいって声があったんだそうだ。ガンダムはマドロックの一件以降は被撃墜率が低いエースパイロットにしか回さない不文律があるしな」

 

黒江の言うマドロックとは、デザリアム戦役中に払い下げを控え、相模原の兵器庫に放置されていた『RX-78-6』のことである。パルチザンはこれを回収し、運用した。64Fはそれをそのまま引き継いでいる。一年戦争で撃破された事から、ガンダムの面汚しとして保有が忌避された面もあるが、ポテンシャル自体は低くないため、当時のパルチザンは内部構造を一新して投入し、戦果を挙げている。機体はそのまま64Fに持ち込まれ、保管されている。

 

「あのぉ、何かなんだか…?」

 

「あそこの格納庫に入れば、理由がわかるさ」

 

戸惑いっぱなしのブルームに黒江はいう。64Fの最大規模格納庫にジープが止まり、やっと運転から開放されたピーチが大きくため息をつきながら安堵しているのを尻目に、黒江は格納庫の扉を開ける。

 

「な、なにこれぇ!?」

 

「……すごい……!」

 

驚くブルーム。その威容に圧倒されて、言葉もないイーグレット。この時代にはふさわしくない人型機動兵器がずらりと並んでいたからだ。これぞ、64Fの幹部と、幹部に準じる権限を持つプリキュアたちのみに使用が許されている地球連邦軍提供の兵器群であった。Z系、RX系、Fシリーズなど、歴代のガンダムシリーズの主要ラインナップを網羅している。他にも、黒い新ゲットマシン(ゲッタードラゴン)、ブラックグレートなど、員数外のスーパーロボットも保有している。ダイ・アナザー・デイでこれらが駆使されたのは言うまでもない。

 

「ドラえもんの世界から更に100年後で使われてる兵器の山だよ。ドラえもんの世界は戦争が絶えなくなったしな」

 

「どういう事ですか」

 

「お前らには難しい話になる。技術的特異点に発端があるからな」

 

「技術的特異点?」

 

「ドラえもんの時代、技術的に頂点を極めた日本は他の国に嫉妬されて、危惧を抱かれていたんだ」

 

「危惧って?」

 

「日本が高度な超AIを造ってたから、機械で人造人間を造るんじゃないかっていう宗教的な危惧だよ。それと、日本が科学を際限なく発達させて、人の手を離れるんじゃないかっていう科学的危惧で世界大戦になったんだ。数十年も続いた、な。戦端を開いた側が当初の目的さえ忘れるほどの長い戦争でな。その後に世界統一政府たる地球連邦ができた」

 

「そんな…!」

 

「もちろん、これは一つの世界での『結果』だよ、ブルーム。で、戦争で日本が誇った人工知能技術が何十年分も後退したりした(極稀に、統合戦争後でも、かつてのドラえもんと同等以上の自我を得るロボもいる。宇宙戦艦ヤマトのアナライザーがそれだ)が、それ以外に残された技術が発達して、こいつらを産んだんだ。それで、23世紀は宇宙移民と地球居住者の対立が主軸になったのがドラえもんの世界だ。戦争の形もずいぶんと変わったから、こいつらが装甲戦闘車両に代わる花形だよ」

 

MS(その後身のマンマシーン)などの人型ロボットが兵器の花形となったのは地球圏特有の現象だが、それが地球連邦軍の空母決戦での精強さに繋がっている。ただし、艦隊決戦ではイルミダスに敗北してしまい、屈辱を味わう。ハーロックが歴史改変に動く理由はゲッターエンペラーとワルキューレの炎でイルミダスが滅ぼされた後に起こる『協力者狩り』の醜さであり、ハーロックがその原因であるイルミダスへの星間戦争での敗北を無くそうとするほど、凄惨極まりない惨状が地球圏で繰り広げられているのは伝わっている。ゲッタードラゴンの進化を裏で補助したり、地球連邦軍に30世紀までの技術を提供する真意は『23世紀の人間が持っていた高潔な精神性を30世紀の人間達に与える』ためである。そのおかげで23世紀の地球連邦軍は科学が飛躍し、デザリアムとの戦いに勝った。同時に、最終的に『ムーンクライシス戦争』の責任を取る形での自治権の放棄と引き換えにサイドごと移民船に改造したジオン共和国はネオ・ジオン軍の大半と共に恒星間移民に赴き、一部の過激な公国軍残党とネオ・ジオン強硬派(元ハマーン派)のみが地球圏でテロを続けている。そのため、旧サイド3宙域は『共和国とネオ・ジオン軍の残務処理』を担当するために留め置かれた、新し目のいくつかの島三号型のコロニーが統治している。組織として解体されたネオ・ジオン軍は大半が移民船の護衛軍に衣替えしたが、多数が紛れ込んでいた元・ティターンズ出身者などは民間軍事会社へ再就職したり、名を変えて古巣の連邦軍に戻ったり、ウィッチ世界のティターンズ残党に加担するなど、節操のない行為を選ぶ者も多い。

 

「こいつらの類を敵が先に持ち込んで、この当時に前途洋々なアメリカを手中に収めたのがそもそもの混乱の始まりだ。俺らは絶頂期のアメリカと、その背後にいる連中相手に戦争をやんなきゃならんのだ」

 

「一昨年の戦いはすごかったですからね。それが前哨戦ってのは、思いっきりげんなりしますけど」

 

「あたしもだよ。だけど、相手が合衆国だから、当然と言えば当然だよな」

 

「スポーツと違って、戦争は核兵器やBC兵器でもない限り、新兵器を使うのは規制されないからな」

 

黒江は言う。ウィッチ世界の多くのウィッチが忘れている事は『戦争に新兵器を用いる事はなんら不自然ではない』事だ。MSやVF、無人戦闘機はウィッチの活躍を奪ったが、中にはGウィッチのように、逆にそれを物ともしない怪物もいる。日本連邦は時代を超える新兵器の使用になんら躊躇がないため、ウィッチ世界の他国の技術者や技術士官から少なからずの顰蹙を買ったが、日本は『オーバーテクノロジーの使用を自制してたら、核兵器を撃ち込まれた』トラウマがあるため、その点はなりふり構っていない。

 

「これはのび太の世界の日本の意向だしな。敵を質で叩きのめせっていう。正に無理難題に近いんだよな」

 

「どういう事ですか?」

 

「この世界はのび太の世界の日本と連邦国家を形成したんだが、軍事行動に21世紀側の都合が大きく作用するから、こっち側は参ってるんだよな」

 

イーグレットに黒江は答える。要するに、21世紀の日本の世論が扶桑にひたすら自制を求め、ダイ・アナザー・デイで撤退する敵へ追撃をかけるのを止めたため、かなり扶桑国民からの非難が飛んだ。日本側には『撃退が目的なら、それ以上の事はするべきではないし、打撃は確かに与えたし、少なくとも数年は動けないから、いいではないか』との世論が強く、太平洋戦争は既定路線化した。その代わりに軍備の近代化はあっさり決まったため、五輪と万博を一種の隠れ蓑にして、近代化が進められている。

 

「太平洋戦争はもう既定路線になったから、こいつらをフルに使って、ワシントンに日の丸を立てろってお達しなんだよ。まったく…」

 

「それは無理じゃ…?」

 

「ああ。アメリカの国民性的意味で、焦土作戦を取ってでも、こっちを挟み撃ちにして大陸から追い出す算段だろう事は予測済みなんだけどな。この時代のアメリカ以外の国家の全部の軍事力を使ったところで、北米全土の占領なんてのは、どだい無理だ。だが、五大湖の工業地帯を全滅させての和平交渉なら、ある程度は現実味がある」

 

「えーと、つまり?」

 

「要するに、アメリカに勝つには、最低、五大湖の工業地帯をぶっ飛ばして、連中の心を折る必要があるってこと。わかったか?ブルーム」

 

「ぐぬぬ…!メロディさ、あたし、そこまでアホじゃないよー!」

 

「いやぁ…、なぎささんもだけど、あたしら勉強苦手じゃん?ハートは別として…。」

 

「そりゃそーだけどさ~…」

 

心外だったようで、そこは膨れるキュアブルーム。ピンクチームのメンバーの多くは成年時には改善されるものの、現役時代の学業面は良くない場合が多い。それは第一期プリキュア共通の事項で、如何に第二期プリキュアの切り込み隊長の相田マナ/キュアハートが異例中の異例な『全てにおいて、完璧な超人級の学生』という異端児であるのが分かる。

 

「あたしは特に悪いほーだったからなぁ。おまけに部活追い出され女王の称号持ち。みゆきちゃんよりある意味、悪いんだよなぁ」

 

ドリーム/のぞみは自嘲気味に自らを振り返る。星空みゆきには『絵本好き』という長所がプリキュアになる前からあったが、自分は何もなく、何をやっても長続きせず、部活追い出され女王と裏で陰口を叩かれる身であった事(皮肉なことだが、戦うことで隠れた長所が生じたという点では、『戦時の英雄的気質』で、平時ではその潜在能力を引き出せない系統の人間だった証左である)を転生後も引きずっているところがある表れだった。

 

「いいじゃねーか。あいつは現役時代、変身してもドジ踏んでたのはマナが証言してんだぞ?」

 

「そうよ、ドリーム。昔、言ったじゃない。『わたしは知ってる…、何も持たない自分でも変われるって』って。あなたの長所は前を向けるところよ」

 

(イーグレット、ナイスフォロー!!)

 

(困った時はお互い様でしょ、メロディ?)

 

(恩に着るよ~!!サンキュー、あとでなんか奢るぜ!)

 

イーグレットがとっさにドリームを立てて、その場をフォローする。アイコンタクトとジェスチャーで、シャーリーは『Good Job』をし、イーグレットはそれに笑顔で返す。

 

「ありがと、イーグレット」

 

「クヨクヨしてるなんて、あなたらしくないわ。あなたはいつも笑ってなきゃ、ね?ココもそれを望んでると思うわ」

 

「~!!い、イーグレットぉぉ~!」

 

イーグレットの言葉に感動し、ウルウル目のドリーム。ドリームに優しく微笑い、先輩としての役目も図らずしも果たすキュアイーグレット。キュアイーグレットはホワイト系プリキュアの二代目かつ、頭脳役としても、ほのか/ホワイトに次ぎ、ブルー/ホワイトチームの次席であるためか、こうした精神面のフォローもお手のものである。のぞみは前世での後半生がとにかく不幸だったためか、どこか影の差すような暗い側面を持ったのを時たま覗かせる。前世で二人の実子がプリキュアとダークプリキュアに別れ、姉妹で殺し合う(次女がのぞみの次代のキュアドリームになり、長女がダークドリームを思わせつつも、コスチュームはキュアドリームをそのまま闇化させたようなダークプリキュアになってしまった。のぞみが一時、怯えていた幻影はダークプリキュア化した長女の姿である。)のを止められぬまま、無念の内に死んでいったせいだろうか?それに由来する闇を少しでも払拭させ、天真爛漫であった往年の姿を取り戻させようと、懸命に努力を続けるメロディ達。キュアイーグレットの登場はそんなメロディ達には福音そのものだった。黒江もスプラッシュスターの二人を買っているため、のぞみをメンタル面で前世の不幸から立ち直らせる一助になってくれると期待している。それを見事にイーグレットは果たし始めたと言えた。

 

 

 

 

 

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