――のぞみは自身の長女を倒す事を前世の自らの禊とする。ここが複数の後輩たちと一線を画する点であり、昭和以前のヒーロー哲学を継いでいる点でもあった。それに同意する後輩は第二期以前が主体である。
「お前、前世でキュアエールとかと折り合いが良くなかったのは、そこだよ」
「それは自覚してます。はなちゃんとは戦闘の姿勢では折り合いが悪かったですからね」
「どのあたりの後輩がラインなの、のぞみ」
「みらいちゃんの後ですね。それ以降はめっきり、後輩との共闘の機会が減りましたから」
「メタ的に言うと、そこでアフレコスタジオに入る限界を越えたっていう事情だけどな」
黒江も知っているが、プリキュアオールスターズは魔法つかいプリキュアを最後に、オールスターズ映画は制作される機会が減った。以後は直近三代のプリキュアの共闘に切り替えられている。のぞみはその時代以降は同期とも会う機会が減っていったことで徐々に疲弊していったのが前世での記憶という。
「お前のその時の心境はアレだ。ZEROと同じようなもんだな」
「え、どういう事です?」
「要はみんなから忘れ去られる事が怖かったんだろ?甲児もその恐怖を抱いた事で、あの怪物を産んじまったからな」
「マジンガーZERO……」
「そうだ。お前たちみたいな『初代を継承するための存在』は忘れ去られやすい。お呼びかかからなくなった事が心を蝕んだのは皮肉なもんだ」
黒江の指摘は図星だった。のぞみが前世で何時頃まで戦っていたのかは定かでないが、その恐怖が生まれていた事がのぞみを戦いに駆り立てていた。だが、あまりに加齢した後の変身は体に負担をかけていくため、彼女が長命でなかった理由ともなっている。
「お前はプリキュアである事自体が目的になっちまってたんだろうな。ガキに自分を否定された後は、それに逃げ込む事でしか自分を守れなかった。錦の地位をあっさり受け入れた理由が飲み込めたぜ、やっとな」
黒江はそこまで言って、コーラを飲み干す。のぞみはプリキュアである事そのものに自分の存在意義の証明を託してしまったのだ。皮肉な事に、それに縋ったことで精神の破綻を一回経験し、更にデザリアム戦役でも陥りかけるなど、闇に呑まれそうになる事が多かった。
「…待てよ、今のお前なら、ZEROに対抗できるやも知れん。光と闇の双方を経験したのなら!」
「え!?ど、どーいう考えですか、先輩!?」
「あいつの属性は混沌。お前は光と闇の双方の要素を今は持つ。ZEROを同化できるかもしれん!!」
黒江はここでZEROを取り込むという選択肢にたどり着く。カイザーとゴッドでの打倒ばかりに考えが囚われていたが、同化という選択肢もあっていいはずである。
「お前ならZEROを説得出来る、おまえの心でZEROの心に夢を見せてやれ!甲児や十蔵博士にアイデンティティを否定された今、あいつの心にあるのは『マジンガーZが一番強いんだ』っていう考えだけだ。光と闇を経験したお前なら、ZEROを解放できる!」
「で、でも、それなら甲児さんが適任じゃ…?」
「グレートやカイザーを否定したZEROとあいつは相容れねぇさ」
「そうだぞ、のぞみ。キュアドリームの心の灯火、マジンガーZEROの心の熾火、性質は違うが、二つの火が合わされば世界を照らす大きな炎に出来るはずだ!」
「ひ、響まで!?」
「私もですよ、のぞみさん。義理の叔母になる身としていいますが、ZEROは夢を見たいだけなのです、自分が英雄でいたいという。なら、夢の名を冠するプリキュアである貴方がやらなくて、誰がやるのですか?」
「は、はーちゃん!?」
「俺も賛成だ。だいたい拗ねた弟に兄貴が何言ったって聞きやしねぇ、そういう時は優しいお姉さんの言葉が男の子には一番聞くのさ」
「こ、甲児さん!?いつの間に!?」
「お邪魔させてもらうよ。ダブルスペイザーの調整に来たんだが、報告もある」
甲児もやってきた。黒江に伝える事があるそうだ。
「ジュンさんが子供を産んだ。俺もプロポーズしたよ、さやかさんに。それが、その…」
「お前、早すぎだろ……」
「大学出てるんだから、早くもねーよ!まいったぜ、さやかさんの地位が地位だから、ゴシップ記事の格好のネタにされちまいそうだぜ」
「確かに。ダブルスペイザーを於いた格納庫はそこのドアからアクセスできる。機材は揃えてある」
「ありがとう。後でな」
甲児は地下に設けられている格納庫へ行った。甲児も後押ししたことで、ドリームはいよいよ以て引っ込みがつかなくなった。
「か、か、かれんさん……?」
「ここはのっかったほうが身のためよ?」
「しょんなー!」
「おいおい、お前、いちかの口癖をパクるなよ」
呆れ顔の黒江。
「ここしばらく、隊での食事時に相手してもらってたからかな?すっかり伝染ったんだ、これ」
「やれやれ」
メロディはため息だ。いちかものぞみの事はなんとなく悟っていたのか、口癖が伝染ったことも許し、メンタルサポートを行うなど、戦闘面以外で活躍している。もちろん、新野比家にもパティシエとして出入りしていたりしている。キュアホイップとしての活躍はないわけではないが、転移後は本業がメインである。
「そういえば、みらいとリコは?」
「二人はパトロール中です。最近はリコが忙しくて、なかなか揃わないですし」
「リコちゃん、最近はシンフォギア世界との交渉役だからなー」
「マリアの妹の生まれ変わりだから、適任だよ。調も揉める要素持ってるしな」
十六夜リコはセレナ・カデンツァヴナ・イヴの転生体であったため、調に代わる形でシンフォギア世界とのパイプ役になっている。その関係上、シンフォギアを起動させられるが、本人はあくまでもプリキュアの立場を通している。調はダイ・アナザー・デイでようやく切歌と和解したが、一緒にいられないことを受け入れさせるのに相当に骨を折った。また、立花響が桜セイバーとの共存を選んだ兼ね合いでの小日向未来への説明で疲労したため、この時期にはのび太の仕事に帯同している。
「あなたたち、いろいろ大変なのね」
「そういう事。こいつのおかげでね」
「こまちはハニーさんのところに泊まるっていうけれど、何故なの?」
「姉妹水入らずって奴さ。ハニーは風来坊だが、如月博士から相続した屋敷の維持もあるから、前世での妹にあたるこまちを泊めさせてるのさ」
ハニーは本来はあくまでも、超AIで自己意思を持つ精巧なアンドロイドだが、秋元まどかの魂が宿ることで『プログラムでないゴーストを持つ』存在として昇華し、自由奔放な振る舞いで有名になっている。プリキュアの家族がプリキュアと同等以上のヒロインに転生した唯一のケースであった。ハニーは表向き『聖チャペル学園に通う高校生』だが、ヒロインとしても既に有名であり、大決戦にも途中から参陣していた。その時はキュアミントの危機を究極形態『ハイパーハニー』の姿で救うという劇的なものであった。
『愛のため、乙女は変わる!ハニーフラァァ――シュ!!』
秋元まどかの姿でプリキュア達の前に現れ、空中元素固定装置をフル作動させる形でハイパーハニーへ直接変身を遂げたため、キュアミントは混乱し、アクアも茫然自失になったが、強さは大決戦当時のプリキュア達を遥かに凌ぐものであり、デーモン族とも対等に渡り合った。百鬼帝国はデーモン族とも手を組み、残忍な方法でプリキュア達を物理・精神の双方で攻め立てたが、ディケイドの連絡で駆けつけたデビルマンとハニーに破れ去った。なお、百鬼へ加勢したデーモン族の中には精神面を攻め立てるのがメインのデーモン族『ジンメン』も含まれており、プリキュア達はその非人道的な能力に凍りつき、何も出来なかったが、黒江(その時はドリームの姿をしていたが)が汚れ役を引き受け、葬っている。
「あの時のデーモン族にはジンメンがいたからな。あの野郎、同化能力で甲羅に人面を浮かび上がらせやがった。俺が倒すしかなかったよ。ブラックたちにアレはキツすぎたしな」
「あんた、非難浴びたよな、あの時」
「ああ。だが、甲羅の人面にされた連中を救うにはアイツを倒すしかない。廬山真武拳で甲羅をぶち抜いてから、剥がしたよ。あの時は非難浴びたけど、ああでもせんと食われた人は解放できなかったしな」
黒江は汚れ役を引き受け、デーモン族『ジンメン』をデビルマン/不動明のアドバイスにより、ジンメンの甲羅を攻撃し、剥がすことで倒した。その時は黒江が人面の内の一人の幼い少女の『プリキュアのお姉ちゃん、こいつを殺して!あたしはもう死んでる……だから…』という言葉を汲む形で倒したが、プリキュア達の多くから、キュアドリームとして非難を浴びた形となった。メロディ、ラブリー、ハート、デビルマンの擁護とタイムふろしきによる逆行という裏技でその場は収まったが、光景そのものはあまりにも悲痛であり、なおかつ、やりきれなさを多分にプリキュア達に刻み、敵の残酷さをこれ以上ない形で示した。ジンメンはその意味での功労者であった。
「ブラックに胸ぐら掴まれてたよな、あんた」
「ああ。『だが、お前も死ぬんだろ?』って甲羅剥がした時に人面も息絶えたからなぁ。ブラックに睨まれたが、俺の目を見たら怯えられたよ」
黒江は戦闘モードでは『修羅場を生き残った者の目』を見せるため、キュアブラックをも一瞬で怯えさせるほどの鋭さがあった。駆けつけたのび太がタイムふろしきを甲羅にかけたことで事は収まったが、黒江の正体がその場のオールスターズに知れ渡った瞬間であった。ドリームは本来、優しい目をしているが、戦闘モードの黒江は狂奔を垣間見せる程の修羅である。そこで正体がバレた。その黒江をして攻撃を躊躇するほどの残忍極まりない特性のデーモンだった。
「その時、誰が先輩を非難したんです、かれんさん」
「オールスターズの大半よ。ブラックは特に怒ってたわ。後はパイン、パッション、ルージュ、ブロッサムよ。特に激しかったのは」
のぞみは信じられないと言った様相だが、事情を知らないとは言え、ブラックは胸ぐらを掴むほど怒った。その場の空気が険悪になったほどに。のび太に毒を抜かれた形の黒江だが、その行いで正体がバレたのである。黒江は救出よりこれ以上の犠牲を防ぐ事に頭が一杯になるほど激高し、プリキュアは既に受けたダメージも同時に回復させることを優先して。たとえ困難でも可能性があればその方向で動く。その差が妙実に現れた。のび太の口からネタバレがされ、デビルマンやハニーが擁護し、メロディたちもそれに加わった。ジンメンは自分が倒されることでプリキュア達の仲間割れを起こさせることまで計算に入れての死であり、策略家である側面を見せた。
「なんで、なんで、あの子達を助けようとしないのよ!らしくないよ、ドリーム!」
「これ以上、野郎の被害者を出さない様に迅速に対処しただけだ、それにあの子が望んだから奴を倒した、それだけさ……。助ける手立ては常識的に無さそうだったしな」
「なんで、そこで諦めるのよ!!」
「諦めたくねぇよ!それでもヤツをこれ以上生かしとく訳にはいかなかったんだ!それもわかんねぇか!」
ブラックが黒江の怒気に圧され、押し黙る。異様な光景にしか他のプリキュアには映らない。また、ドリームの言葉遣いが男言葉主体の粗野なものになっていること、ブラックが明らかに怯えを見せた事も混乱を助長した。黒江はこの後、ジンメンの狙い通り、しばらくは自分を卑下する振る舞いを見せたという。一方で、ミントとアクアはデザリアム戦役でデーモン族と戦うことで、黒江の真意を理解し、侘びている。また、諦めたくねぇという声色に僅かな悔恨の思いが含まれるのをその場の何人かは感じていた。パッション、ルージュ、アクア、ブロッサム、ブラック、イーグレットなどである。残忍なデーモン族との戦いは並の精神力では行えないというデビルマンの擁護は少女達に戦いの実情を垣間見せた。後に、イーグレットは来訪後にブラックの抱いた想いを黒江に伝え、実質、ブラックとの和解を仲介することになる。
「…という感じよ。ブラック、この後は謝りたいって言ってたわ。デビルマンが教えていたみたいでね…」
「先輩、なんてことしてくれたんですかぁ!気まずいじゃ…」
「最後まで話を聞きなさい、のぞみ」
「ど、どういう事ですか、かれんさん」
――その時、キュアブラックは自らの力不足に怒り狂う黒江が迸らせたオーラに飲み込まれる。ブラックの体を引き裂かん勢いの稲妻状の火花が散る黄金のオーラ(某戦闘民族宛らである)はブラックを怯えさせるには充分であった――
「……!?」
キュアブラックはドリーム(黒江)の発したオーラに飲み込まれた瞬間、本能的に怯えてしまい、思わず手を離し、後ずさりしてしまった。
「ど、ドリーム……?」
「……今度ほど、テメーらデーモンが憎いと思ったことはねぇぞ!!」
百鬼帝国に加勢したデーモン族に向けて猛り、吠える黒江。完全に素が出ているが、状況的には仕方なかった。デーモン族の残虐非道ぶりは黒江を完全にブチ切れさせるほどのものであるのがわかる。
「くっくっく……小娘よ、他者に怨まれ憎まれることこそが我らデーモンの強さの証よ!!」
デーモン族の誰かがそう嘯く。怒りの黒江(容姿はキュアドリーム)を制止しようと、その世界におけるレモネードとパインが動くが、彼女らの前にデビルマンが降り立ち、黒江を間接的に擁護した。
「奴ら……、デーモン族との闘いは心の喰い合いなんだ。ちょっとでも気を許したら取り込まれて乗っ取られる。そうなったら、そのデーモンもパワーアップするし、取り込まれたヤツも帰って来ない。だから取り込む隙を与えずに滅殺するのがデーモン族との闘いの鉄則なんだ。これは、俺たちデビルマンを名乗る者達が仲間を失いながら得た教訓さ」
「そんな、そんなのって……」
「それがデーモン族の恐ろしさよ」
ハニーもデビルマンに続き、デーモン族との戦いにおける心構えを教える。デビルマンからして、ヤギとコウモリを取り込んで生まれたデーモン族『アモン』を不動明が更に屈伏させて生まれた突然変異的な存在だからだ。
「待って!デーモン族って何なの!?」
その世界におけるルージュ、アクア(アクアは後に合流したアクアと同一人物である)とベリーが疑問を投げかける。
「一言で言えば、大昔の人間たちに悪魔と言われた連中だ。そいつらは今も言ったように何かと無差別に合体できる能力がある。人間との合体もできるが、合体する時にお互いの精神の食い合いが起きる。それに打ち勝った者だけがデビルマンになる。」
デビルマンという種族はデーモン族との合体でデーモン族の肉体を乗っ取った者が多くなることで成立するため、数は多くないが、総じて強力な能力を誇るデーモンを乗っ取った者が多いために、その中で最強の男である不動明を中心としたネットワークを持つ。それが23世紀以降における『デビルマン軍団』だ
「要するに、貴方達は巻き込まれたのよ。この平行世界を股にかけた大戦に」
「た、大戦って、どういうことなの、お姉ちゃん!」
「ややこしい事よ、こまち。私がどうして、この姿になっているか。その説明もしなくてはいけないけれど、その時間もないのよね」
この時、キュアミント(秋元こまち)は実の姉がキューティーハニーになっている事に驚きっぱなしだが、デーモン族、デビルマン、キューティーハニー、ゲッターロボ、マジンガーと言った乱入者、本来はまだプリキュアになっていない者がプリキュアとして現れるなど、時間軸の混乱も甚だしい。だが、その場の混乱はドリームのことであった。そして。
「ピーチ、ドリームを……」
ホワイトがそう言いかけた瞬間、ピーチ(智子)も青色の炎を纏う。智子もぶち切れていたらしい。しかも瞳の色が銀になり、髪も青色に変わる。
「えっ!?」
その場のプリキュア達は凍りついた。ドリームとピーチがプリキュアとしての力とは別の何かを発動させたとしか思えない上、周囲の地面を大きく陥没させるほどの圧力を瞬間的に放出した。それは『プリキュアオールスターズDX2』当時のプリキュアオールスターズの最高戦闘力をも遥かに超える力の発露であり、黒江と智子の真のポテンシャルの証でもあった。
「もうゆるさないわよ、アンタたち……!」
二人のぶち切れ度合いは完全に『なりきり』を忘れるほどのものであり、その場のデーモンをいかなる手段を講じてでも滅殺することしか頭にないほどであった。
「ドリーム、ピーチ…?」
ブラックとホワイトすらも怯えを垣間見せるほどの光と炎。原初のプリキュアたる二人でさえ、まったく次のアクションが起こせなくなるほどの迫力。ドリームとピーチが完全に『別人』である事はこの時に全プリキュアが悟った。しかも二人の纏うオーラはスーパープリキュア本来の虹色の光ではなく、片や黄金主体に稲妻状のスパークを纏うもの、もう一方は髪と瞳の色までも変わり、青い炎のオーラを纏っていた。完全に『出る物語を間違えてます』的な何かであった。ブラックとホワイトでさえも凍りつくほどのプレッシャーを発する二人に、他のプリキュア達はなんらアクションを起こせなかった。
――アクアの話を聞くドリームは大決戦で黒江の取った行動に取り乱しまくる――
「せ~んぱ~い~!!」
パニックになり、黒江をカックンカックンしまくるドリーム。完全にギャグ漫画のような光景と化している。
「だー!落ち着け、バカ!」
「落ち着けって言われても~!なぎささんと完全に気まずくなっちゃったじゃないですかぁ~!!」
涙目で黒江をカックンカックンしまくるドリーム。苦笑いのアクア。それを聞いていて、すまなさそうな表情のメロディとフェリーチェ。黒江が素を見せたことで気まずい雰囲気になったのは間違いない。最も、当人が完全に別人化してしまったなのはに比べれば、二人の成り代わりはまだ可愛いと言える。なのはの場合は『組織の維持に必要な人材だから、佐官までは出世させる(時空管理局そのものが地球連邦の影響下に置かれた上、内乱で威信も失墜したため、なのはは本人が失点を犯したとしても、政治的都合で一佐までは昇進が約束された)事は戦功との兼ね合いで既に決まっていたし、動乱で面子丸潰れの時空管理局は地球連邦の影響化で組織再編を行わないと、次元世界の信頼回復すらおぼつかない。その関係で魔法文明至上主義的思想は徹底的に排除され、質量兵器をバランス良く受け入れる(そもそも、時空管理局そのものが魔力を持っていたナチス・ドイツの将校らが上手く方便を並べ立てて設立した組織とバラされた)方向になり、少数派の改革派が最終的に主導権を握った。ただし、動乱で多数派が離脱した影響で魔導師の数そのものが絶望的に足らず、これまでの施策をかなぐり捨てて、組織の維持だけを考えなくてはならないため、なのはの素行がどんなに悪くなり、問題を起こしたとしても、佐官(時空管理局でいう一佐まで)までの昇進は約束されているのだ。
「待て、電話だ。…はやてか?なのはの今後の処遇が決まった?……うむ。仕方あるまい。退役の時に…?わかった。伝えとく」
「なのはの処遇ですか?」
「あの時のことで失点ついたが、あいつは必要不可欠な人材だろ?色々な事情を鑑みて、現役中はあいつは佐官どまりにする事が正式に決まった。ただし、俸給と手当だけは最終的に少将扱いにまで引き上げるそうだ」
「なんですか、それ」
「妥協の産物だよ。俺達があいつを連邦の士官学校に通わせたから、大佐までは上げないと不味いんだよ。俺と似たようなもんだ」
この時になのはの今後の処遇が正式に決まった。時空管理局が散々に持ち上げ、戦功も相応にある局員を一度の勤務時の失態だけで窓際族に追いやる事は『時空管理局の組織としての信用問題に関わるし、次元世界からの求心力が完全に失われる』と時空管理局改革派が主張。地球連邦軍もどちらかというと、その主張に同調し、守旧派の懲罰論を抑え込んだ結果、お互いの妥協として、現役時は正式に将官になれないが、最終的に他の佐官より『指揮権などで優越する』ように扱い、定年退官後の恩給は少将扱いで支給する案が合同協議で決まった。なのはを『英雄』と扱ってきた関係が多分に作用した結果だが、衰弱した組織の維持のためには多少の妥協もやむを得ないことの証明でもある。もっとも、地球連邦軍で指揮幕僚基本課程は修了していた事で佐官最上位までの昇進は元から決まっていたが。
「先輩の場合は片方で最高位になっちゃったから、うちが慌てただけじゃ?」
「上が大変だったんだよ。うちの。前例がなかったし、江藤隊長も俺の将官への任官に反対してたしな。お上が、『君等は私に嘘をつかすのか?』と漏らしたらしいんだ。去年に退職した前陸上幕僚長が言ってた。」
黒江の昇進を助けたダイ・アナザー・デイ当時の陸上幕僚長が退官時に伝えた事によれば、黒江が自衛隊で将官教育を終えた事が当時の陸軍参謀本部に伝わった事が始まりという。
「そのあたり、機密指定じゃ?」
「俺本人がいるんだし、機密もクソもあるか」
「そのあたり話すと、長くなりますよ?」
フェリーチェが言う。
「まーな。俺も詳しい経緯を知ったの、その幕僚長に世話になった事ある関係でなんだよ。いくら旧憲法下での話とは言え、軍部を皇室が抑え込んで頭越しに決めた事だしな。で、俺がお上の寵愛受けてる事が隊長に知られて、それが覚醒を促したのは嬉しい誤算だったが」
「つまり、見栄と沽券の問題?」
「そーいうこった。将官教育を俺はあん時には終えてたしな。陸軍航空総監部もそれで大荒れになったって、後で神保先輩から聞いた。俺の実戦果を記録していたカラーフィルムがカールスラントから流されたから、余計に不味くなったとのことで、それで江藤隊長がお上に呼び出し食らったんだ」
江藤が昭和天皇に呼び出された理由は、黒江が過去に受けたいじめの遠因となったと見做された決定を下したのが江藤自身であった事が大義名分だが、黒江の将官昇進への反対意見を酒の席でこぼしたとの証言が伝わり、黒江を寵愛していた昭和天皇は事の真偽を問うため、皇居に呼び出したのだ。江藤も半分近くはとばっちりを食らった形であった。それともう一つは、事変当時は新米の少尉だった武子の分の責任も負わせるためであった。無論、下手すれば処刑される可能性も高いため、家族には散々に罵られるわ、怒り狂う父親から縁切りさえ持ち出されるなど散々であり、当人は平静を装っていても、内心は泣きたかったのだ。幸い、艦娘・陸奥の取り為しで事は収まったが、江藤は武子の分も当時の責任を負わされた。事後七年以上もたった時に当時の行為を裁くのは近代法体制にはふさわしくなかったが、日本側が責任の所在を追求したため、形式的に必要な法的処置であった。武子が64Fの隊長を引き受けたのは、『自分が責を負うべきなのに』という自責と、皇室を守るという忠誠心からの選択であることもここで示される。
「そんなことだったんですか」
「ああ。武子の奴、その直後に俺に泣きながら言ったんだよ。私が責を負えばいいはずなのに、なんで隊長がって。あいつ、昔気質だからな。変に」
武子の尊皇ぶりは滅私奉公のいい見本であった。隊長の地位に就く事になんら執着はないため、黒江を推薦していたほどだが、色々な兼ね合いと、黒江の進言で武子は結局、『第二代64F隊長』に就任し、一気にミーナを抜いた(武子は政治的に疎まれたため、それまでは大尉であった)。1947年時点では中将で、形式上は空軍第七航空軍司令も兼任している。ちなみに扶桑空軍第7航空軍とは、旧六〇一空、三〇二空、三四三空、64F、244F、50Fを一つにまとめた航空軍の事で、343空、302空と64Fは既に合併済みであるため、601空と50F、244Fの三つに統合されている。なお、ホームグラウンドは扶桑では厚木、調布、松山、日本では厚木と百里、岐阜、小松である。
「で、江藤隊長の事は心配してねぇよ、俺。親父さんが退官した後、間に二人挟んだ後に空軍司令官だし。俺が推薦しといた」
「それ、随分先ですね」
「50年代の二次事変の後になるからな、少なくとも。本当はもっと早くしたかったが、俺のことが足かせになった。まぁ、それでも仕事干される程能力が無いわけじゃないから、かえって重要な仕事任せられてるみたいだしな」
「そうなんですか?」
「トムキャットの単座型の量産機を開発させたの隊長なんだと。複座型ですって資料送ったら、単座型にしてきた。笑ったよ、俺」
「あれをどうやって単座型に?」
「グラスコックピット化とかで負担減らしての開発だと。日本製のコクピットに変えて、エンジンも強力なのに変えて、強度も改善させたら、ライノよりいい機体になったんだよ、これが」
「高くないですかね?」
「F22を揃えるよりは安上がりだよ。補助名目でライノも採用してるから、50年代頃にはファントムから切り替えられるだろう」
「キングス・ユニオンが泣きますよ」
「カールスラントが先にぼやいてるよ。俺たちはもうマッハ2級の戦闘機を量産中だから。連中は遷音速がやっとだし」
この当時、カールスラントはMe262の次期生産タイプ『HG2』がようやく配備(一時は生産中止されたが、現地産業保護の観点から生産された)段階であったため、日本連邦は技術的に20年分以上の優位を持つ。
「ドイツの圧力が?」
「流石に現地産業を死に体にしちまうと、現地の治安の問題が出るからな。ドイツも折れたんだよ。ロマーニャがG.91を造ってるから、旧型になったけど」
「あれ、ロマーニャに設計能力残ってました?」
「フィアットが健在だから、カールスラントよりマシだ」
当時、ドイツ領邦連邦はF-86などに切り替え予定だったが、メッサーシュミット社の雇用問題と部品問題があり、治安の観点から生産を承認した。だが、その時点ではキングス・ユニオンはシービクセンとハンター、ナットが最新鋭扱いであるため、日本連邦の優位性が際立つ。キングス・ユニオンの財政難とカールスラントの軍縮をよそに、日本連邦は扶桑由来の青天井の予算で軍用機を世代交代させていき、47年でF-4EJ改が配備済みである。当時のリベリオンはまだ、F9FやF3Hが初飛行したか否かの段階であるため、凄まじい差である。
「敵はF3Hをようやく試作できたらしい。あれは悪くない機体だが、あれをリベリオン航空隊が気に入るかどうか、だな」
「敵も早めてますね」
「だが、ジェット機配備の空母はミッドウェイ級くらいで、後はベアと地獄猫だそうだ。バンシーが量産されなかったみたいでな」
「こっちはクルーとファントムですか?」
「ま、大戦型に乗る限界がクルーだからな。財務省がうるさいんだよな、大戦型をあと5年使いたいってのに」
「どうしてです?」
「財務省が信濃をバカの一つ覚えみたいに連呼したから、角田のおっちゃんが信濃が戦艦だって言ったんだよ。そうしたら大慌てになってやがんの」
「あ、ああ…。あれ、うちじゃ普通に戦艦ですもんね」
「ま、空母になる予定の諸元はできてたけど、船体が原型の大和型じゃ速度でないし、大きさもジェット機時代には中途半端だってんで、戦艦のままで完成して、一番活躍してるんだし、皮肉なもんだ。M動乱の時に旗艦だったんで、従軍章与えられたしな、去年」
「大和は大事にされてますから、戦功はあまりないですからね」
「その代わりに宇宙戦艦と艦娘のほーが無双なんだし、大和のクルーも納得してるよ。日本にとってのエンタープライズだしな」
「武蔵以降なら、知られてないから使い倒しできるって事ですか?」
「日本側の認識としてはな。もっとも、武蔵を実験艦として使ってる事に文句が出たけど、51cmは大和型には過大ってデータは取れたから、航空戦艦扱いで復帰予定だと」
「どうして武蔵を実験艦にしたんですか?」
「移動司令部の役目が後続の艦になったし、怪異化研究も頓挫したから、宙に浮いてたんだよ。武蔵は大和の予備扱いってんで、艦隊編入は元々、考えてなかったらしいから」
史実通りの機動運用は正確には信濃以降の三姉妹のみが想定されており、大和と武蔵は元々、移動司令部とその予備扱いでの鎮座を想定された内装を持っていた。だが、日本側の『無駄使い』との非難により、大和に信濃に準じた強化を施し、武蔵は兵装実験艦に転用された。大和型は『扶桑海軍史史上もっとも数奇な運命をたどったフネ』と後世に称されるが、それは想定と実際の運用が違ったからである。
「つまり、連合艦隊旗艦は公には加賀のままで通すつもりだったんですか?」
「43年の海軍編成表ではな。大和型は実験艦扱いされてたみたいだが、モンタナに紀伊がやられたんで、加賀は書類上しか旗艦をやってないまま他用途に転用になるな」
日本連邦樹立後の時代、大和型は扶桑男児のアイドル扱いの軍艦扱いであり、『大和型の塔のような艦橋とマストを書かなければ、子供に軍艦と納得されないのだ』との逸話も生まれたほどだが、その前型扱いの加賀型は史実の空母としての戦歴と違い、妹に足を引っ張られていた。連合艦隊旗艦も公的には務めておらず、長門と陸奥の予備扱いであった。日本側はヘリ空母への改修を提案したが、土佐の状態が悪く、断念されている。なお、日本の観艦式に参加した際に機関不調で日本のドックに入る事になったのだが、その時に土佐の機関に製造ミスと工程ミスがあり、加賀と比べ、タービンの軸がわずかにずれていたことと部品精度が低い事が判明。この時期には装備実験艦扱いで在籍中だ。
「それで大和型が?」
「ま、プロパガンダ目的もあるが、大和型は戦艦としてはいい出来だよ。艦政本部は艦尾延長と幅の拡大に反対してたけどな」
大和型は未来技術での近代化改修の際に全長が30mも伸ばされ、幅も大きくなっている。速力発揮と安定性強化、近代兵器の搭載スペースを確保するためだ。改装で宇宙戦艦ヤマトに準じた上部構造物に取り替えられたため、デザイン面では不評である(マストなどがSFチックであるため)。ちなみにこの仕様で新造されたのが三河であり、日本への派遣時には外見に偽装が施されていた。大和型はこの点からも『数奇な運命を辿った』とされる。扶桑の資金を膨れ上がった自国の福利厚生費になんとしても充てたい日本を扶桑が納得させるための手段は日本の予測を超えるモノの保有しかないというのも皮肉なものだ。
「じゃあ、あの時の大和は何なのですか?」
「あれは轟天だよ、アクア。超大和型の三番艦。元から空中戦艦として設計された最終生産ロットだ」
轟天は元々、ドラえもんの世界での日本海軍が1940年前後に計画していた超大和型戦艦の三番艦相当の798号艦、799号艦計画の再利用という体裁で作られた扶桑製のラ級だ。計画自体は本当にあり、ラ號の姉妹艦として、当初は二隻を追加するはずであったという。二番艦の『豊葦原』という艦名も本当である。三番艦は不明で、それについてはダミー説もある。ドラえもんの世界においては、その船殻製造技術を応用し、大和に改良が加えられたらしく、22世紀終盤でも、宇宙戦艦ヤマトの素体にできるほど原型を留めていた。そして、その技術が更に発展して普及したのが宇宙戦艦ヤマト以降の宇宙艦艇の船殻であり、マゼラン級以前と一線を画する強度である理由である。轟天は数度の戦役で64の手で使用後、正式に地球連邦宇宙軍の軍艦籍に登録され、ヤマト型宇宙戦艦の一つとしてカウントされる。書類上はまほろばタイプの二番艦として。
「超大和型戦艦…?」
「日本軍が考えてたスーパーヤマトだ。アメリカが同等の戦艦を造る恐怖に駆られての計画だから、スペック倒れと言われてるがね。公式記録にも残ってるよ」
ドラえもん世界の日本はオーバーテクノロジーで起死回生を図った。東條英機はオーバーテクノロジーを嫌っていたが、基礎工業力のあまりの差をあ号作戦の失敗で痛感、オーバーテクノロジーに起死回生を賭けた。だが、全ては遅すぎた。
「のび太が30代の頃に献納で秘匿建造されてた記録がポロポロ出てきて、歴史学者もビックリとか言われてるぞ。ウィッチ部隊まであったし。のび太の世界の昭和天皇はオーバーテクノロジーでの犠牲を避けたかったらしいが、ソ連が条約破りをしたから、ソ連を嫌うようになったとある」
「それは有名ですけど、そちらの世界では違うのでは?」
「ウチの世界ではな。だが、ロマノフ王朝も日本は信用しないし、ドイツ帝国に冷淡に接するから、向こうが『オニ、アクマ!』とか言って泣いてるんだよ。流石に哀れでな…」
日本は日露戦争以来、ロシア系国家を信用していないし、第二次世界大戦で裏で侮蔑されていたことから、ドイツ系国家も好かなくなっていた。そこがカールスラントとオラーシャの誤算であった。
「ドイツが一番哀れかも知れん。ドイツのある空軍元帥が戦闘機の設計ライセンス料をぼったくってた上、扶桑から買った空母を10年近く放置してたんだ。日本は怒り狂って、国際司法裁判所に提訴して、更に膨大な違約金と賠償金だ。最初に提示した金額は向こうのドイツの軍事予算5年分だったとか?」
「なんですか、それ」
「パフォーマンスの恫喝だよ。アメリカが宥めて、相当に値切らせたが、それでも、カールスラント空軍予算の二年分は払うらしい」
この賠償金の値引きは飛燕の燃料噴射装置の特許使用許可、シュワルベの設計に対するカールスラント空軍首脳の公式謝罪も取引してのものだった。そのため、ラルは自分が謝罪する羽目に陥ったのに激怒し、原因であるゲーリングを詰ったという。ゲーリングは『公的な同盟国でないんだし、最新の渡すとおもうか!?なんで鬼の首を取ったように言われなきゃならん!?』と喚き散らしたとか。
「どうやって払うのですか?」
「日本での2030年代まで払うってさ。それと扶桑のコピー品が失敗作になったから、そのお詫びってことで、ゲーリングに賛成した将軍の何人かを懲戒解雇するって」
「いいんですか?」
「ガランド将軍と俺たちはコネがある。向こうもそれが頼みの綱だから、言うことを聞いてくれるよ」
カールスラントは親独派が急速に排除されていく日本連邦での粛清の嵐に怯えており、ガランドのパイプだけでも維持しようと躍起になっていた。それを黒江に利用されているのである。ガランドはこの時期には表向きは養子らと共に隠居生活だが、実際はフィクサーとして君臨しており、ラルの事実上の上役である。また、スバル・ナカジマは母親がガランドの養子になったため、孫扱いであり、この時点ではガランドの秘書がメインの仕事だ。ちなみに、その師であるなのはは教え子のスバルとティアナがホームグラウンドをウィッチ世界に移した事もあり、自身もデザリアム戦の後は未来世界に新居を構えており、時空管理局局員の肩書は形骸化している。
「あ、あの、そろそろ元の話題に戻してくれますか?」
「思った以上に話しこんじまったから、今日は無理だよ、アクア。直にノビスケがコスモに連れられて帰ってきちまう」
「あ、先輩!!なぎささんとは揉めてないですよね!?」
「たりめーだ。終わった後には分かってくれたよ。ぶーたれられたけど」
「それに、その後もてんやわんやでね、のぞみ。歴代の昭和仮面ライダーも来てくれたのだけど、えりかがふてくされてね…」
「えりか、そこはこだわるんだよなー…。どこでも変わんないか」
「俺も驚いたよ。最初に来たのがZOさんだったし…」
「ZO?」
「仮面ライダーZO。光太郎さんの後輩で、仮面ライダー第13号だよ」
黒江の口から、大決戦に最初に参戦した仮面ライダーは未来世界での最新仮面ライダーの一人『仮面ライダーZO/麻生勝』であった事が伝えられた。バイクに乗りながらの変身を披露し、デーモン族すらも一撃必殺の力をいきなり見せつける登場であったという。
「その次が光太郎さんだった。カッコいいセリフとセットで」
彼に続いて現れたのは南光太郎であった。ピーチ(智子)が破顔し、『光太郎さんっ!』と喜んだので、フレッシュ勢は茫然自失となったが。
『人々の心に光がある限り、希望は必ず蘇る!!貴様らのような邪な者を倒すために!!』
おなじみの変身ポーズでRXになったわけだが、光太郎の持つヒーロー性もあり、正に『スーパーヒーローの登場』の見本となっていた。ただし、ピーチが破顔し、名前を呼んだので、フレッシュ勢はパニックに陥ったのだが。
「かっこよかったぞ、光太郎さん。智子の奴、嬉しそうな顔してよ。ベリーとパッションが目玉飛び出る勢いで固まってたけどな」
「智子先輩、せつなちゃんに誤解されそうな事しないでほしいです……」
「おかげで仮面ライダーが来ても怪人扱いされなかったのは智子の手柄だな。10人ライダーのマシーンでの登場は圧巻だったぞ。新サイクロンからヘルダイバーまでが一斉に爆音轟かせて、士が開けた空間から現れたんだから」
10人ライダーの登場はまさに予想外であった。門矢士が開いた道を昭和10人ライダーが通り、参陣したのだから、流石のあしゅら男爵も『十人ライダーだと!?おのれディケイドぉぉぉ!』と恨み節であった。あしゅら男爵がその際に恨み節を兼ねて吐いた『伝説の10人ライダーがこんなところにまでお出ましとは!!』というセリフで、10人ライダーが別格の存在である事が明確に示された。
「あの10人はどういう存在なんですか?」
「いいか、アクア。あの十人は昭和の時代に改造されて、そこから戦い続けてきたヒーローだぞ。敬意を払えと後輩と会えたら言っとけ」
当時のプリキュア達の内、数人は12人の仮面ライダーの援軍に反発したという。かれんに黒江がそう忠告するのを聞き、のぞみにはその心当たりがないので、首を傾げる。
「誰だろ?味方に反発するなんて、記憶にないし……」
「穏やかな形を入れれば、なぎささんも入るわよ、のぞみ。それと貴方が会ったのと別のつぼみ達ね」
キュアブラックの場合は誰かに助けられるだけになってしまうことを嫌がったが、いくら彼女でも、あまりに長時間の戦闘で疲労が蓄積しており、キュアレインボー形態の維持がやっとというほどに疲弊していた。キュアブロッサムとキュアマリンの場合は時間軸がデビュー間もない時期であり、気を張っていた事もあるが、未来の後輩達にも足手まといに見られる事をブロッサムが意外なほどに嫌った。
「私達も戦わせてください!このまま皆さんの足手まといのままでいたくないんです!未来の後輩にまで迷惑をかけるなんて、わたし…!」
ブロッサムは決戦開始から抱いていた想いをドリーム(黒江)にぶつけたという。自分の後輩というキュアラブリー、キュアハートがドリームの護衛として立派に戦い、更に二人が歴代ピンクで指折りの武闘派であったため、劣等感を抱いたのだろう。
「助けられるのは恥でもなんでもねぇぞ、助けられるってのも、お前の力なんだからな、ブロッサム。いや、花咲つぼみ」
「わたしの名前を知ってるんですか、ドリーム…?」
「話は後だ。それに迷惑かけたのは、奴らをこんな所まで来させちまった俺らの方だ、気にすんな!」
と、黒江は素を垣間見せ、サムズアップする。プリキュア5の他メンバーはこれで半信半疑が確信となった。だが、空気的に野暮であるので、ミルキィローズ含め、沈黙を守る。
「そうだよ、つぼみちゃん」
「あなたは…?」
「あたしは相田マナ。キュアハートだよ。つぼみちゃんの二期後輩だよ」
キュアハートがフォローに入る。ピンク唯一無二の完璧超人と言えるのが相田マナである。歴代ピンク唯一の生徒会長経験者であり、スーパープリキュアとしても最強レベルの戦闘力を持つ。生徒会長という点で異端児扱いのピンクが彼女だ。スーパープリキュアとしては薄いピンクのコスチューム、マント状のパーツの装着や翼の拡大など、思いっきり目立つ。その派手さは伊達ではなく、シャイニングドリームを上回るスペックを持つ『第二期プリキュア最強の存在』である。
「つぼみちゃん、あたし達を信じて。この時期はまだ、ミラクルライトを振る側の立場だったけど、あたしもプリキュアになった。だから、強くなれるよ、どこまでも」
「お前がプリキュアならな」
ハートとドリームの微笑みに感銘を受け、曇った表情を捨てるキュアブロッサム。
「だって貴女は可能性の『つぼみ』でしょ?」
「ピーチ……」
「それに、つぼみちゃんとえりかちゃんを敵にやらせたら、あの二人に会わせる顔がないしね」
キュアラブリーも同意する。
「お、おい、ラブリー。それは…」
「ミラクルライトふってた中に混じってましたよ、あの二人」
「嘘ぉ!?」
「あのぉ、それって誰の…」
「直に分かるよ、えりかちゃん」
笑顔を見せるラブリー。後輩達からのエールを受け、ブロッサムとマリンはサポートに回り、黒江率いる援軍チームは12人の仮面ライダーと共に敵に立ち向かっていったわけだ。
――それを聞いたのぞみは…――
「いいなぁ、マナちゃん。二期プリキュアで一番目立ってるしぃ~…」
「そう拗ねるな。タウ・リン相手に『ただじゃ殺さんぞ!!貴様にたっぷりとプリキュアの恐ろしさを教えてやる!!』って啖呵切ったのはどこの誰だっけ?」
「先輩、あの時の事はぁ~…その、あの、無我夢中で…」
デザリアム戦役中に激昂したのぞみが発した啖呵はある意味、心の想いをストレートに発していたと言え、キャラ崩壊レベルにぶっ飛んでいた。
「いやいや、アレはいいものを見せて貰ったって思ったよ、コレを呑み込んでモチベーション保てるなら強くなるなって期待もしてたんだ。りんが傷つけられると、お前、理性ぶっ飛ぶんだなぁ」
「~~……りんちゃんはあたしの家族みたいといおうか、その…」
「いいのよ、のぞみ。無理しなくて。私も改めて思ったわ。あなたがりんへ抱いているものが貴方の光だって」
「……」
「でも、これではっきりしたわ。あなたは自分の大事なものが壊されそうになると、頭に血が上る事が。現役の頃にもあったじゃない?」
「覚えてたんですか」
「貴方が激昂したのは滅多になかったから。でも、まさか、ね」
「先輩、穴があったら入りたいです…」
「いーじゃねーか。俺だってあるし、そういう経験」
ドリームは顔を真赤にして、湯気を出している。黒江には大笑されながら背中をバンバン叩かれ、メロディとフェリーチェからは『あたたかい目』で見られる。とにかく恥ずかしいらしいが、ある意味、本音であったのは事実だ。
「プリキュアとして力を見せつけるって宣言してんだから本当に安心したんだよ、当時は。ただ、竜馬さんがぼやいてたぞ。そりゃ俺のセリフだって」
ちなみにこのセリフは神隼人も引用しており、『すまんな、リョウ、俺も使ってた。著作権料に飯奢るぜ』という一コマがあったのは言うまでもない。
「うぅ~…」
「恨みつらみを昇華して希望を掴む力に出来るってその啖呵に希望を見出せる。怒り心頭でも自分はプリキュアだ、って矜恃を持ってるなら心の闇のコントロールは出来るってことだよ。卑下してるけど、お前は天性のヒロインだよ。のび太を慕ってんのは、のび太がプリキュアになる前の自分と同じタイプの人間だった事を知ってるからだろ?」
「ええ。それもあるんですけど、のび太くんはいつだって前向きに人生を生きた。私はそれが出来なかった。のび太くんみたいになりたいんです。のび太くんは周囲がなんて言っても、自分の幸せを掴んだ。この姿に戻った意味は、錦ちゃんから受け継いだ命と、戦いの中で探していきます。」
のぞみはかれんと違い、精神的には大人そのものなため、シニカルな返しであった。絶頂期の姿に戻って転生した意味を新たな生と戦いで見つける。前世の不幸からか、どこか厭世的とも取れるが、のび太の生き様に憧れている事を明確にした。自分の戦いの意味を新たな戦いで見つけるというのは修羅道ではあるが、のぞみはのび太という存在を道標とする。それがこれから『義父』になるのび太への思いだった。