ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第三百六十五話「ダイ・アナザー・デイ前の状況 8」

――ウィッチ世界では、大型空母が史実より少ない事に抗議が舞い込み、雲龍型空母がその存在意義に疑義が呈された。だが、空母は艦載機や護衛艦艇込みのパッケージで計画されるため、排水量が80000トン以上の大型空母に切り替えるのは容易なことではない。レシプロ機全盛の時代に、ジェット戦闘機を訓練させるのは容易なことではない。そして、F-86戦闘機が早期に登場し、Me262などを駆逐すると、カールスラントの技術立国としての権威は低下していく事になる――

 

 

 

 

 

――F-86が登場すると、即座に各部の改良が施されていった。最終的には、史実でのFJ-4フューリーと同等の武装に換装されるに至る。重爆迎撃用途にも使用されるからだ。――

 

 

 

 

――扶桑軍はレシプロ機に代わる次期主力機として採用したが、未来世界からのメタ情報によるものである。当時はジェット戦闘機の黎明期であったため、各部隊から反対論が強かったが、F-86はMe262と比較にならない性能を誇っていた。再燃焼装置の搭載で加速力も改善され、ジェット機の燃料消費率への回答としての空中給油も実現したため、F-86は一気に大国の主力戦闘機に登りつめた。とはいえ、各国ごとに微妙な差異はあり、扶桑のものがもっとも高性能かつ、長い期間を現役であり続けたり、ブリタニアもそれなりの期間に渡って使用するといった経緯を辿る。当時、自由リベリオンはカールスラントから流れた技術で新型戦闘機を盛んに開発していたが、その最初にして、大ヒット作であった――

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ開始前の混乱は作戦策定の段階にまで悪影響を及ぼし、攻勢による短期決戦が日本の要請で破棄された段階で、敵が電撃戦を敢行。ロマーニャ軍はろくな戦闘車両を有していなかったのもあり、連戦連敗。戦線が保てなくなった上、ロマーニャ海軍の主力はタラント空襲で行動不能。扶桑連合艦隊は錬成中の戦力もつぎ込んで、ダイ・アナザー・デイに臨んだ。ただし、当時はM動乱の後であったので、既存主力艦の多くはドック入り中。新造艦や新鋭艦を直ちに投入する事で、船の頭数をそれなりに増やすものの、逐次投入も同然なため、大反対が起こった。とはいえ、戦闘力が既存艦より圧倒的に上である新鋭艦を遊ばせておく余裕はないため、近代改装済みの艦に熟練している精鋭を乗艦させ、戦線に派遣した。この選抜がダイ・アナザー・デイでの海軍の大戦果の一因である。――

 

 

 

――プリキュア達は敗北しても、逆にそれが現役時代の『諦めない』精神を体現しているとされ、却って評判が高まった。特に、キュアドリームは変身した姿とはいえ、ティターンズによる熾烈な拷問(普通の兵士なら情報を漏らすレベル)に耐え抜き、拷問に屈しなかったことは戦士の誉だと報道された。ティターンズの残虐非道ぶりが既に周知の事実となっていた事、プリキュアを拷問できる超人がいるであろう組織である事を差し引いても、ナチス武装親衛隊やソ連邦の諜報組織(全盛期)もかくやの正視に耐えない拷問を躊躇なく行い、仮面ライダーのパワーでしか引きちぎれない電気椅子の拘束具を使う、ウィッチハンティングと称し、ウィッチのシールドを無力化する純鉄の弾頭を即座に用意するなど、きちんと対策を取っていた。また、鍛えた格闘技のみでプリキュアを半死半生に追い込めるなど、プリキュアと言えど『無敵』ではない点を示すなど、21世紀日本に『容易ならざる敵』との印象を強めた――

 

 

 

 

――ウィッチ達は新戦術や新兵器に容易には追従できなかったが、それでも、状況に適応し、それなりに戦い抜いていく者は存在した。格闘戦に優れた『扶桑のウィッチ』の生存率が高かったのは、個人として格闘術を嗜む者が古参世代中心に多く、撃墜されても、それで窮地を切り抜ける事が多かったからで、促成教育世代の各国ウィッチが『ストライカーユニットがなければ、何もできない』ことすら多かったのに、扶桑のウィッチ(1941年以前の志願者)は格闘戦に長ける場合が多く、どうにか友軍の支配地域にたどり着けるケースが多かった故の生存率である。また、ミーナの査問以降、10代で少佐以上の階級に任ぜられるケースは減少に転じる。即ち、1945年当時に軍に在籍済みの士官たちは『10代で少佐になれる』最後の世代の軍人であった――

 

 

 

 

 

――日本の人々の軍事への偏見は司令部の要員をも前線に立たせた。大将や中将級も前線指揮をせざるをえないため、戦略級の会議がおいそれと開けなくなるという弊害が生じた。特に海軍で顕著になり、連合艦隊司令部が直々に欧州に出張る必要が生じた。そのために用意されたのが三笠型戦艦であるが、構造に最適化されていない点があるため、次期戦艦は更に拡大される見通しである。三笠型は21世紀基準では空前絶後の巨艦である。外見上は大和型をそのまま拡大したような上部構造物を有しつつ、近代兵器を一通り揃えている。大正期の50万トン戦艦を戦艦大和の時代に作ったら?を実現したものに近いが、あくまで『戦艦大和の発展型』の範疇に収まる外見を持つ。その廉価版が『播磨型戦艦』だが、350m級の船体を持つ。主砲は51cm砲。この時点で大艦巨砲主義の究極を極めている。諸外国はこの大戦艦群に驚愕し、戦艦の整備に徐々に興味を無くしていく。だが、ミサイル兵器の怪異への効力が意外に低いことから、ミサイル兵器は(それ自体の高額化もあって)、砲熕兵器の補助として存在するようになり、防御力の観点から、他国では巡洋艦と駆逐艦が装備する艦艇の中心になる。戦艦を戦力と半ば見做さなくなるからだ。――

 

 

 

 

 

 

――これは日本連邦の戦艦があまりに強すぎて、それに匹敵する戦艦を造れないし、作っても維持できないという問題があるからだ。だが、戦艦そのものは囮として使える(怪異は金属に惹きつけられる)ため、1930年代末の時点の最新艦の小改良で済ませていく。戦闘機のほうが重要兵器と見なされたからだが、戦闘機の高額化と開発費の高等は連合軍の数的戦力を低下させていく。そのため、日本連邦とキングス・ユニオンが連合軍の主力として戦わざるを得なくなっていく。皮肉なことに、零戦も余剰機をスオムスなどの小国が購入していったため、それらを含めた現役期間は1960年代に到達したという――

 

 

 

 

――自由リベリオンが行える兵器の生産数はたかが知れているため、一部の精鋭に最新兵器を与え、実地試験をさせるという方法でしか、迅速な新兵器の投入は実現し得なかった。更に言えば、少数精鋭が彼らの生きる道になったため、兵器開発速度は異常な速度に加速。F-86の量産開始後すぐに、その後継機の開発が始まっていたからだ。とはいえ、実際に完成するF-100は改良が施されたとはいえ、良くて凡作にすぎない。そのさらなる後継機は模索するしかなく、結局は場つなぎ的に、F-106が史実と異なる運用で、一時的に制空戦闘機として使われた記録が後世に残された――

 

 

 

 

 

 

――扶桑独自の不沈対策はそれなりに効果があり、M動乱で廃艦となり、標的として供与された『戦艦陸奥』は海自の最新鋭魚雷にも五発以上も耐えてみせた。これは海自の水雷関係者を顔面蒼白にさせた事柄でもあった。史実よりも程度のいい装甲板を持ち、史実よりも有効な水雷防御を備えていたため、海自の新鋭魚雷を以てしても、有効打になりにくかったのだ。しかも、標的が大正期の建造である長門型戦艦であった事で、開発陣は腰を抜かしたという。そのテストはダイ・アナザー・デイの直前に行われたので、扶桑の旧式戦艦の退役に影響を及ぼしたのは確かである――

 

 

 

 

――とはいえ、大和型より前の戦艦群は『相対的な性能低下が明らかになった』だけで、対地射撃要員としては有用なため、当時に機関不調で長期ドック入り中の加賀型戦艦を除く八八艦隊型戦艦は対地砲撃のために駆り出されたが、アイオワ級戦艦及び、モンタナ級戦艦の艦隊と運悪く遭遇。その敵旗艦がラ級化されたモンタナ級戦艦であった不運もあり、あえなく撃退されてしまう。それにより、『陳腐化』が現実として突きつけられた八八艦隊型戦艦はダイ・アナザー・デイが『戦艦としての最後のご奉公』となった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――大和型戦艦はダイ・アナザー・デイ当時は火力面での優位性が薄れていたが、改装が繰り返され、第一線級の能力が保たれていた。第二次改修で図られた『火力の強化』だが、これは六〇口径砲を開発して載せ替えるはずだったが、流石に長砲身過ぎて、試験中に砲身破損などの問題が発覚。五五口径砲へ変更された。とはいえ、威力増は予想以上のものであり、そのまま制式採用され、ダイ・アナザー・デイ中に換装作業が行われる。船体防御も更に強化されたため、1945年の技術では『原爆であろうが、撃沈不能』な領域に達した。これは戦艦を更新する事が数十年ないようにと要請する財務省への配慮であったが、それをいい事に、未来技術での改造に上限が無くなったと判断した海軍は史実の汚名返上と言わんばかりの改造を施したのである――

 

 

 

 

 

 

――単純に、既存兵器を未来技術で強化するばかりでなく、未来兵器そのものを導入する端緒となったのが、ダイ・アナザー・デイである。最初は広大な戦線を単独でカバーせざるを得ない64Fにのみ許されていたが、周りから『不公平だ』という声が生じたため、段階的に解禁されていった。とはいえ、未来世界に派遣されていた者たちは『一握りのエリートか、実績のある現場叩き上げ』で、人数が多いわけではない。1945年度では、64Fと空母艦載機の部隊がその恩恵に預かった――

 

 

 

 

 

 

――とはいえ、早急に敵機がジェット化される可能性が『現実問題』としてあったため、ジェット機が用意された。しかし、大問題が起こっていた。Gフォースに宛てがわれた機は老朽化していた『F-4EJ改』。機体各部に老朽化が生じており、だましだまし使うにも限界があった。そのため、実際に『セイバーフィッシュ』を主力にする事は、黒江の帰還前から議論されていた。F-4EJ改の状態が劣悪であったからだ。背広組は悪びれもしなかったが、新鋭機の消耗を恐れたため、F-2やF-15の使用さえ渋った。相談された赤松は『地球連邦軍から、セイバーフィッシュを提供させるしかあるまい』と結論づけた――

 

「コスモタイガーの整備は、21世紀自衛隊には荷が重い。だが、セイバーフィッシュであれば可能だと思う」

 

「中尉」

 

「うむ。ボウズ(黒江)が戻ってきたら、正式に手続きをさせるが、儂が先方に話を通しておこう」

 

セイバーフィッシュは基本的に、21世紀時点の航空技術から逸脱の少ない『在来型航空機』であるため、すんなりと供与は決まり、倉庫で埃を被っていた機体の再整備がなされた。勘違いされがちだが、セイバーフィッシュはガトルやドップより高性能な機体で、ブラックタイガーやコスモタイガーが現れても、現役の機体があるくらいには数が多かった。余り物の処分とも言えるものの、Gフォースに良好な状態のものが供与されたわけだ。

 

 

 

 

 

(ちなみに、地球連邦軍はコスモタイガーどころか、その後継機種の開発を始めていたため、セイバーフィッシュは供与してもいい部類の戦闘機に入っている。地球連邦軍にとっては旧世代の機体だからだ)

 

 

「中尉、我がGフォースは機材を確保できるのでしょうか」

 

「長野の松代大本営跡に秘匿してある『G機材』を引っ張り出させろ。ボウズのツテで、関係当局の了承は得ている」

 

「あれを…ですか」

 

「そうだ。流石に初代スーパーXはないようだがな」

 

 

赤松はGフォースでの黒江の副官へ指示を出す。日本自衛隊がバブル期に作っていた超兵器の使用許可を引き出したことを明言した。スーパーXⅢ、メーサータンク、その先祖のメーサー殺獣光線車など、自衛隊が日本軍から研究を引き継ぎ、延々と開発し続けていた兵器の封印がこの時に始めて、全面的に解かれる事になるのである。近代化改修が施され、Gフォースに配備されるそれらは、21世紀水準からすれば、オーバーテクノロジー(23世紀以降では普遍的な技術となったり、旧世代の技術になったものもあるが)に相当する代物。対学園都市用に秘匿していたものだが、学園都市の機構が解体された後は、永久に死蔵されるはずであった。しかし、その威力とオーパーツぶりが注目され、ダイ・アナザー・デイで日の目を見ることになった。

 

 

 

「初代スーパーXは何故、21世紀にないのでしょうか」

 

「儂が聞いた噂によれば、1980年代のテスト飛行で事故を起こしたとの事だ。眉唾ものの話だが、電磁パルス攻撃の実験に供され、失われたというが」

 

「しかし、移動核シェルターを設計変更した代物なのでしょう?たかが電磁パルス攻撃くらいで…」

 

「電子回路が想定外に脆かったんじゃろう。80年代の日本は資金力はあったが、自前の兵器設計能力は未知数だった。それ故の不備があったんじゃろう。スーパーXⅡは無線操縦式である事が高官らに問題視されたと思う。書類上は試作二号機が保管されとることになっとるが……」

 

赤松も自衛隊籍を持つため、松代大本営跡の秘密格納庫の管理部署の隊員と情報をやりとりしていた事を『彼』に教えた。その情報によれば、スーパーXシリーズは少なくとも、日本がまだ資金的に余裕のある時期に開発された超兵器で、初代は核戦争用の移動シェルターの試作機を転用して開発され、Ⅱはその反省で無線操縦式になった。Ⅲは有人型に戻されたが、原子力事故の被害抑制のための武器を搭載している。その事から、存在が革新政権に知られていれば、大っぴらに投入できたと嘆かれている。

 

「現状、動かせるのはⅢだけになりそうだ。Ⅱはその現存がはっきりせんからな」

 

「それでも充分では?」

 

「対ビームコーティングに加え、人工ダイヤモンドミラーコーティングを施す。レーザー核融合炉程度の出力では『Iフィールド』は使用できんからな」

 

スーパーXⅢは21世紀日本にとっては、一種のオーバーテクノロジーにあたる『レーザー核融合炉』で駆動する。21世紀日本にとってはハイパワーな動力だが、それより遥かに効率に優れるM/Y式核融合炉が普遍化している未来世界にとっては旧世代の技術である。炉心の載せ替えの暇がないため、そのまま投入されることになっていたが、ダイ・アナザー・デイの長期化で、その時間的余裕が生まれることになる。赤松も『ミラーコーティングは未来世界の対ビームコーティングに近い代物』ということは理解しているので、怪異のビームに対する防御力の確実さに疑問を持っていた。だが、怪異のビームは未来世界のビーム兵器より総じて低出力・低初速であった事、で予想外に有効。搭載兵装の冷凍兵器の射程が長く、怪異や未来兵器の双方へ一定のアドバンテージを持っている事が確認されるのである。

 

「中尉は改良を?」

 

「そうさせたい。原型通りでは『時代遅れ』に過ぎんからな。とはいえ、冷凍兵器は有効だ。ラ號に搭載が試みられたというが…。資料が残されていたらしいな」

 

赤松は冷凍兵器を高く評価しているようであった。赤松の予測通り、スーパーXⅢの冷凍兵器の基礎は大戦中の秘密兵器の研究であり、それを長年かけて実用化に持っていった。オーロラエクスキューションやダイヤモンドダストもそうだが、冷凍攻撃は有効打を与えたり、サポートに役立つのである。

 

 

 

(おそらく、ドラえもん世界の日本軍は異世界との扉を開いていたドイツ経由で聖闘士の事を与太話として聞きつつも、その力を科学で再現しようと目論んだ。バード星の宇宙刑事達やデンジ星人などの置き土産を使って……)

 

赤松はそのような仮説を立てた。そうでなければ、ナチ残党がショッカーなどの母体になれるはずがないからだ。大首領も、仮面ライダー一号と二号によれば『太古の昔にB26暗黒星雲で生まれたサイボーグ戦士』が野心を持ち、母星に似た星である地球の生命の進化の方向性を決めさせた。つまり、地球の生命体の創造者の一人という説である。それと関連し、日本軍は彼らの他にも、宇宙人の残していったものを1900年代に入ってから解析しだし、太平洋戦争の時代までにはある程度はものにしていた。その中に聖闘士の力を再現しようと試みる計画があったとしても不思議ではないと考察するのだった。

 

 

 

 

 

――キュアドリーム/夢原のぞみはその経緯上、素体であった中島錦陸軍中尉(当時)の軍籍を流用され、充てがわれる形で軍の人間となった。転生後も日本人であるピンクプリキュアでは、最初に『軍人』になった人物となった。覚醒もない時期は変身能力が体に馴染むまでに間があり、彼女もしばらくは、キュアドリームの姿のままで勤務していた――

 

 

『プリキュア・パッショナートハーモニー!!』

 

キュアメロディ(シャーリー)が覚醒してからは、圭子の意向でコンビを組まされており、遅れて転生してきたキュアピーチ/桃園ラブもメンバーに加えて『プリキュア三羽烏』と通称された。この時は、キュアドリームとキュアメロディが即興で『プリキュア・パッショナートハーモニー』(スイートプリキュアの極め技。お互いの手を繋ぎ、同時に金色の閃光波を放つ。元来のパワーソースが同じであった世代のプリキュアであれば、プリキュアのチームが違っていても、放つことは可能である)を放つが、体がパワーに馴染んでいないためか、防空圏を突破してきた怪異を仕留めきれなかった。

 

「嘘だろ、耐えやがった!?」

 

驚愕のキュアメロディ。倒せる自信があったからだ。

 

「ピーチ!」

 

「分かってるって!プリキュア・ラブサンシャインッ!!!」

 

怪異は本能的にバレルロールをし、ピーチの放つプリキュア・ラブサンシャインのエネルギーを華麗に回避する。これにはピーチも。

 

「あ~~~~!!嘘でしょ!?避けたぁ!?」

 

ガビ~ンと言わんばかりのギャグ顔で唖然とするキュアピーチ。

 

「なら、これでどーだ!プリキュア・ドリームアタァック!!」

 

ドリームが咄嗟に『プリキュア・ドリームアタック』を放つものの、これは怪異のビームで迎撃されてしまう。

 

「えーーーー!?迎撃されたぁ!?」

 

一定のクールタイムを必要にするため、技の連発は効かない。それはピンクプリキュアで顕著である。三人が低空で防空網を突破し、基地を攻撃しようとする怪異の反撃を喰らおうとした瞬間。幾何学的な戦闘機動で圭子が駆けつける。

 

「やれやれ、手伝ってやる。後で、なんか奢れよ」

 

「ケイ先輩!?」

 

驚くキュアドリーム。圭子の戦闘を目の当たりにしたのは、この時が始めてであったからだ。そして。

 

「ムウン!!」

 

圭子の両腕を包むように巻き付いていた金色のモノが展開され、物理法則無視の変形で『鋭利なカッター』へと変貌し、圭子はそれにゲッター線と魔力を上乗せさせ、怪異の上部に取り付く。すると。

 

「わりーな、ここから先は通行止めだ」

 

との一言を言うと。

 

『バトルショットカッター!!』

 

叫びと共に、両腕のカッターを縦横無尽に奮う。その早さや、鎌鼬の如く。怪異はコアも外殻も関係なしにバラバラにされ、消滅する。

 

「久しぶりに使ったが、まぁまぁか」

 

圭子は本性を顕にしたためか、ゲッター艦隊にいた者特有の『目』をしており、一般向けの近影での『優しそうな目つき』とは似ても似つかない。元来はガンナーである圭子だが、ゲッターに魅入られた後は『接近戦闘』も得意分野に変貌しており、物理的におかしい靡き方のマフラー、明らかにおかしい目つきなど、どう見ても『ゲッターロボに取り込まれてます』というものをアピールしていた。

 

「やはり、パワーが今の体に馴染みきってないようだな、お前等?」

 

「いやぁ、面目ない。でも、ちょっと待ってくれ。あんた、どうして、あんな技使えんだ?」

 

ツッコむキュアメロディ(シャーリー)。圭子は狙撃手としてだが、一定の知名度があるので、バリバリに接近戦をこなせる事はあまり知られていない。同世代のウィッチでも、知らない者は知らないからだ。

 

 

「悪いな、あたしはゲッター艦隊にいたんでな」

 

「ゲッター艦隊だって?」

 

「ああ。そこから戻ったんで、人間ゲッターに等しい。お前らより技の破壊力は上だ」

 

圭子は人間ゲッターと、自らを形容した。ロボットガールズの出現に先駆けて、それに類する能力を発揮していたからだ。

 

「もちろん、ストナーサンシャインやシャインスパークもできるが、めったにやらねぇよ」

 

「……先輩。なんですか、そのチート」

 

「まぁ、お前らと違うベクトルの贈り物のようなもんだ。その内に、お前らも似たようなことはできるようになるかも分からんぞ?」

 

「どうして、そう言えるんだよ?」

 

「はーちゃんがそれを達成したからだよ」

 

「なにーーーー!?」

 

「ほれ、ドラえもんが撮ったスナップだ」

 

圭子はドラえもんが送ってきていたスナップ写真を見せた。三人は腰を抜かす羽目になった。

 

「なぁーーーー!?」

 

「ええーーー!?」

 

「なんですか、これぇーー!?」

 

写真には、真ゲッター1と同様のポーズでストナーサンシャインをチャージするキュアフェリーチェの姿が写っていた。自分たちの知るフェリーチェと違い、目つきが鋭くなっていたり、現役時代のように『超然的な表情』ではなく、明確に『怒り』が表れているような『猛々しい』表情をしている。三人は唖然としてしまう。ボイス付きのものなので、直後のシャウトも収録されていた。

 

『ストナァァァァァァ!!サァァァァンシャァァァァイン!』

 

凄まじいインパクトである。温和な性格のキュアフェリーチェ(花海ことは)がここまで明確に猛々しい声で技を出すというのは、三人の現役時代の記憶にはない。ストナーサンシャインの力を知るキュアメロディは、思わず乾いた笑いが出る。

 

「は、ははっ……。あんたの差し金か?」

 

「いーや、はーちゃん自身の意志だ」

 

「どういう事ですか?」

 

代表して、ニュートラルに問いかけるキュアピーチ。

 

「話せば長い。そもそも、あの子は2020年代から呼ぶことになっている。のび太が30そこそこになり、子持ちになっている時代だ」

 

「どうして、その時代まで?」

 

「はーちゃんは元々が大地母神の化身だっただろ?故に、その因果から切り離されて、存在そのものが『一介のプリキュア』にされた事で、不都合が出てな。魔力は高いが、以前のように、高レベルの魔法を連続では使えなくなっていた。それで、あの子は別の進化を求めて、光子力とゲッター線の力を渇望しだした。のび太がガキだった頃の話だ」

 

圭子は語る。ことはが『マジンガーZEROの力で、存在そのものの因果を書き換えられ、大地母神の化身でなくなった』事を自覚し、自分が守るべきだった宇宙との繋がりを『超常的な兵器の力で断たれた』ことを悲しみ、生き残った自分に『プリキュアになる力は残された』事の意味を探るためにも、のび太らとと共に生きていくことを選んだこと、『元のように、魔法が思うように使えないのなら、それとは別の力を持てばいい』との結論に達した後、自分なりに特訓を繰り返し、仮面ライダー達のみならず、宇宙刑事ギャバン、はたまた、流竜馬らに協力を仰ぐなどの努力を20年近くに渡って継続した結果、圭子と同じ境地に到達したこと。

 

 

「に、20年近くだって!?」

 

「そうだ。元々が妖精かつ、神の後継者だったんだ。あの子にとって、時間の流れは意味をなさない。のび太はそれを承知の上で迎え入れた。最も、あいつは自分の転生も計算に入れているがな」

 

「あいつ、そこまで打算的か?」

 

「いや、あいつの行動原理は優しさだよ。それ故に、お前らを見守るために、転生をも選んでる。お前らは今や、年を食うことすら許さない身だ。だが、のび太は普通に年を食っていく。お前らは将来的には、今生きてるダチはもちろん、身内とも別れて、『世界のために戦う』道を征くしかない。だが、お前らの帰る場所を守る誰かがいる必要がある」

 

「まさか、それで……!?」

 

「のび太自身の選んだ道だ。そのために、のび太は扶桑の爵位を必要にしてるのさ。だから、23世紀の野比一族は言うならば、『日本という国の墓守をする一族』。そう自称してる」

 

「墓守……」

 

「地球連邦体制が続けば、地域国家時代の記憶は薄れる。それは統合戦争の覇者だった日本も例外じゃない」

 

圭子は野比家が23世紀に負っている役目の一端をプリキュアたちに教えた。それは『地球連邦という枠組みを作ったが故に、そこかしこに名残りを残すが、日本という国が日本列島にあった記憶自体は薄れている』時代でも、地球連邦構成国としての日本連邦という体裁を保てているのは、野比家などが『日本が一つの国であった頃の記録や記憶』を幾多の戦乱からも守り抜いたからである。実際、その役目を担える者を欠いたフランスは『近代以降は民主共和制であった事実』が半ば忘却されたのか、仏系の住民が優先的に入植した『ネオフランスコロニー』は立憲君主制のコロニーである。

 

「フランスみたいに、近代的民主共和制の祖っていう歴史が忘れかけられて、大昔の王家の傍流の子孫が『国家コロニーの元首』なところもあるし、昔そのままの暮らしをコロニーで復活させたネオアメリカの例もある。だから、のび太の子孫は『地域国家時代の人々の思いや記憶を風化から守る』役目を負ってる。だから、スペースノイドから『墓守』って揶揄されてるんだ」

 

 

「墓守……」

 

そう言われ、そうとしか言えない三人。

 

 

 

 

 

――ある事柄の記憶と言うのは、時と共に風化していく。当事者がいなくなれば、その出来事は歴史の本の1ページとして残るものの、人々の記憶からは消えていく。野比一族は中興の祖たるのび太の『遺訓』により、『日本という国が存在した証を後世に伝え、守る役目を負ったが、それは地球が一つの惑星国家となり、さらなる発展『星間国家』へと発展していくにつれ、忘れ去っていく『地球への郷愁』を維持させるという意義がある。とある世界の人類の辿った『傲慢不遜な地球統一政府をシリウス星系が滅ぼすも、彼らも内部の勢力争いで崩壊。以降は全く別の星系を主体にしての銀河連邦ができるが、やがて、連邦は帝国に取って代わられる』道を知っていたのび太は『地球が人類の中心で無くなろうとも、一定の繁栄が維持できるようにする』という遠大な目的を述べ、それに必要である『地域国家時代の記憶』を守れという遺訓を残し、ノビスケ(のび太の長子)、のび三(のび太のひ孫)、セワシ(玄孫)などの歴代当主はそれを守ってきた。その家業をザビ家などは『墓守』と揶揄していた。その事へのコンプレックスは地球連邦内部で、『統合戦争以後の成り上がり』の一家である『ビスト家』にとっても同様であった――

 

 

 

 

 

――ビスト家の過激派は『地域国家時代の記憶の墓守』の役目を担う野比一族を一方的に敵視しているが、ビスト家のトップであったサイアム・ビスト、その孫のカーディアス・ビストのように、その志に共感していた故に、ビスト家全体として、明確な敵対を避けてきた。だが、カーディアス・ビストの死をきっかけに、マーサ・カーバイン・ビストが当主代行になった事で暴走。野比一族に敵対していくのだ――

 

 

 

 


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