――スーパーロボットはある種の信仰の対象であった。そして、それが一つの意味で究極の域に達したのが、ゲッターエンペラーである。それらスーパーロボットの力を宿した者達の存在は魔女達の立場を大きく揺るがせた。ミーナの失脚の一因はその力を持っている者が同じ部隊にいたという事を当人が知らなかったことであり、それが扶桑人であったことで、人種差別主義者のレッテルを貼られたことだろう――
――2020年代の日本。ダイ・アナザー・デイの勝利が報じられた頃、坂本美緒は改組された501の幹部として、雑誌のインタビューに応じていた。ダイ・アナザー・デイを最後に前線を引退し、引退式が予定されていた頃にあたる――
――大佐はアニメと同じ道を?
「だいたいはそうです。ですが、この私は先輩方の薫陶を受けてきたのが違いです。宮藤も私ではなく、竹井が見出したので、宮藤との関係は多少なりとも違います」
――ミーナ大尉とは?
「アニメでの設定と差はありませんが、私の落ち度ですな。七勇士の伝説は事変当時に軍にいた者なら、誰もが知ることでしたから」
――七勇士伝説とは?
「事変を勝利に導いた七人の魔女。そういう事になっています。私はその中で末席ですが。例の三人はその首席です。最も、私、竹井、若本の三人は海軍の意向で祭り上げられた部類です。長老である赤松先輩のおこぼれに預かっただけです。当時は12の小僧でしたから」
とはいえ、坂本は転生の恩恵で、当時から戦果をきっちり挙げている。ミーナの階級が大尉と報じられたのは、表向きは『戦時階級が取り消された』とされているからだ。(一連の問題はミーナのキャリアに大きい傷が残る形となった他、佐官級の魔女に恐怖を巻き起こす結果となった。そのこともダイ・アナザー・デイでのサボタージュがなかなか終わらなかった原因である)
――何故、大尉は愚かな真似を?
「私に恋心を抱いていましたからね。彼女は昔はそうではなかったのですが、整備兵であった『彼』が戦死してしまった。以後、魔女に触れようとする者に拒否反応を示すようになった。それで整備兵の不満が蓄積していったのですが、彼女は気づかなかった」
ミーナは結局、かつての幼馴染の悲劇の反動で、坂本へ同性愛を抱くようになってしまった(魔女界隈では同性愛になる者が多い)事、その愛が本人の判断力を鈍らせていたと、坂本は明言した。その当時には、公にしていい事だからだ。
――例の三人への冷遇の原因は?
「上層部への不信と、私が姉のように慕うことへの嫉妬、三人の戸籍上の年齢。それらが重なった結果だと思います。七勇士を知っていれば、取れるはずがないですから。パットン閣下の言う通り、彼女は私情を挟みすぎたんですよ」
できるだけトーンを抑えているが、ミーナの当時の行為そのものは許していないことがわかる。とはいえ、ミーナの好意には気づいていたため、完全に見捨てる事はしなかった。それが坂本なりの筋の通し方であった。
「44年に彼らと共闘し、真ゲッターロボも目撃していたのに、VFの事は知らなかった。それは言い訳のしようがない落ち度ですよ、彼女の。あれさえ使えていれば、あんな消耗戦は避けられたというのに」
ミーナははるか後年に至るまで、その落ち度だけは一貫して非難され続ける事になった。ダイ・アナザー・デイでの一大航空消耗戦は扶桑の航空戦力を大きく消耗させた。その後の扶桑の航空戦力の整備ベクトルが質重視に転じたため、数的意味でダイ・アナザー・デイの直前の水準に太平洋戦争勃発後も回復していないからだ。黒江たちが持ち込んでいたVFも、VF-1やVF-11のような『凡庸な量産機』ではなく、開発元の地球連邦軍でも、エース部隊でしか使われていなかった『VF-19』や『VF-22』などの精鋭機であったことも彼女には不幸であった。使用を解禁したのは、後に着任し、事情を知る一人であった『グンドュラ・ラル』であったが、彼女が解禁を通達した頃には、戦いの大勢は既に決していた。それまでに失われた航空機は数千機を超えていた(数的不利であったのを人員の質で補ったため)。零戦などは生産数の2割弱しか残存せず、その残存機もすぐに一線を退いている。扶桑は以後、航空消耗戦を正面から挑めるほどの数的余裕が無くなり、軍事的に64Fへの依存を深めたため、VFを使えていれば…と大いに嘆かれたのである。
――具体的にはどのような機種を?
「VF-19とVF-22が中心でした。地球連邦軍でも、腕っこきの連中しか搭乗を許されない精鋭機です。あれさえ、最初から使えていれば、扶桑が将来のために蓄えていた戦力を消耗し尽くすことは……」
ダイ・アナザー・デイで予備戦力まで使い切る勢いで投入する事は坂本は反対であったが、消耗が大きすぎたため、やむなく投入されていった。大陸領を怪異から取り戻す事に日本側が興味を抱かない(そもそも、史実の中国やロシア領であった地域の統治に興味がない)ことへの不満も表れている。その不満が反乱というベクトルに向く事を強く恐れた日本は、扶桑の大陸領奪還の意思を肯定も否定もしなかった。とはいえ、扶桑自身も大陸領を『重荷』と考える者が増加傾向にあり、大陸領の奪還についての是非の議論は1990年頃まで先送りとする。大陸領に強い郷愁を持つ大人たちが死滅する年代に議論しようという消極的な考えである。南洋が大陸領を代替できるまで育つ時代まで議論を避けるというもの。そこは不和を嫌う大和民族の業であった。
――真ゲッターロボやゲッターロボGの力をご友人方が持っている事にはいつ?
「転生した時点で、私は気づいていました。そして、その力は事変の時点で有名でしたから、まさか知らないというのは…。他国のほうが有名でしたし」
江藤が若松に叱責されたように、当初は扶桑内部の情報の秘匿が原因だと囁かれたが、ミーナが単に入隊年度の都合で、入隊より過去の出来事に無知であった事は扶桑で衝撃を以て受け止められた他、ドイツ連邦に『戦前からの下士官や士官の排除』の大義名分に利用され、多数の失職者を出した。(扶桑もこの事件の後からは『戦果の非公表』は厳しく咎められるようになったため、昔気質の魔女ほど、『原因』とされたミーナを憎んだ)グレーテ・ゴロプ、エディタ・ノイマンに続く、有力な将校による第三の不祥事はカールスラントの内部でも思いっきり波紋を呼び、カールスラント空軍の駐在武官が昭和天皇に土下座して詫びる羽目になり、権威が凋落する結果となった。海軍系の航空部隊は以前通りに部隊戦果のみを当初は世間に公表したが、戦闘詳報の信用度が日本側でゼロに等しい事により、戦果の粉飾疑惑を生んでしまい、やむなく詳細な個人戦果を公表するしかなくなり、政治的に苦しい立場に追い込まれた。そういう文化が元々、海軍になかったからだ。この変革に伴い、航空分野での扶桑海軍航空隊の影響力は大きく減退してしまう。坂本はダイ・アナザー・デイで引退し、若本も『高齢』になり、引退が囁かれている。こうして、海軍航空隊は組織の存廃さえ議論されていくのである。
――カールスラントの問題を起こした将校はどうなりました?
「グレーテ大佐は公には戦死とされましたが、ショッカーに内通していたという噂です。愚かな人だ。ノイマン大佐は作戦変更で未遂だったのですが、ユネスコから猛抗議を受けましてね。コンドル軍団出身という不幸もあり、左遷されました。退役するとの噂です」
坂本の口から、ゴロプは公には戦死とされていること、ノイマンはユネスコからの猛抗議と、コンドル軍団出身という過去により、悪漢と罵られたショックで精神バランスを崩し、退役することが語られた。
――あなたの世界でのコンドル軍団はいかなる集団ですか
「史実と正反対の国際支援のための軍団ですよ。そうでなければ、現場の責任者の多くを出身者が占めるはずがない。ドイツの落ち度ですよ。レッテルを貼って、断罪するのは」
坂本はコンドル軍団出身者を擁護し、ゲルニカ爆撃をしてもいないのに、どうして『同罪』だと断罪するのかと、ドイツ連邦共和国の独善を非難した。彼らの独善の後に残ったのは『空の王者の無惨な死骸』であると。このインタビューでますます面目を潰されたドイツ連邦共和国はコメントを控えたという。
――話題を戻しますが、あなたはご友人の力を?
「活用するつもりでしたよ。彼女に具申したのですが、梨のつぶてでして。事態が判明した時の醜態には失望しましたよ」
ミーナの醜態はダイ・アナザー・デイ後には公にして良くなったので、坂本も口にする。転生者らを教官として分散配置する計画がミーナの一件で潰れ、一箇所で集中運用する64Fの復活が通ったと。坂本は分散配置案を推しており、64Fの復活が既定路線であろうと、新人を多めにしたかった。だが、実際には腕っこきの尽くが転生者であったので、腕っこきの巣窟になった。そのためか、坂本も愛想を半分はつかしていたことがわかる。
「たとえ、何十年か後に彼女(ミーナ)に求婚されても?」
「私はあなた方のようなハイカラな思想がある時代の人間ではありませんよ」
坂本は同性婚はしないことを明言する。このインタビューの数年後には従卒を務めていた(従卒という制度が廃止されたため、本来の職責に復帰した)『土方圭助』一等兵曹と結婚し、子を儲ける。64Fと行動を常に共にしたのは、太平洋戦争までとなる。
――大佐になられたのは?
「海軍に残った数少ない古参の魔女だからですよ。多くは空軍に行きましたからね。ほとんど空軍に引き抜かれてますから」
坂本は本来、1949年では空母『大鳳』の勤務であるが、空母機動部隊が有名無実化していた都合、64Fと共に活動している。その仕事は本来、志賀少佐の務めるはずだった仕事であるので、坂本にその尻拭いをさせた事になる。
「半分は功績へのねぎらいですね。対外的には、宮藤を抜擢したのは私という事になっていますから」
結局、扶桑は歴史の流れを『史実通りに戻そうとする』勢力に足を引っ張られ、相当の損害を被っていた事になる。だが、それをものともせずに戦果を挙げる存在を日本側が恐れている証拠がいくつかあった。まずは連合艦隊の第一艦隊。三笠型、敷島型などの超弩級移動要塞艦が四隻もあり、しかも動力が日本でも実用化できていない『核融合炉』か、それ以上の代物。ひとたび投入されれば、56cm砲が炸裂する。21世紀型の大陸間弾道ミサイルが命中しても無傷な装甲を誇る。次に扶桑空軍の加速的に進化する航空機。4年で1970年代における最新鋭機の水準に飛躍したという事は、下手をすれば、1960年代には……と恐怖を抱いた。更に、どんなに不利な状況も覆してしまう超人の巣窟の64F。ド・ゴールでさえ、敗北を前提に動いていた戦いを勝たせてしまったのは、どんな超兵器よりも日本の左派を恐れさせた。彼らのような勢力は扶桑に敗北を覚えさせ、『軍や華族の利権構造を跡形もなく壊す』ことが生きがいになっていた。『軍の代わりになる防衛組織を作るのは自由だが……』と、扶桑の現状に理解を示しているポーズを見せるのが彼らの常套手段であった。彼らには『1000万近い軍人の雇用問題の発生』などはどうでもいいのだ。『自分達の辿った道こそが絶対であり、高尚なのだ』と信じ切っていた。そこに彼らが日本の中でも支持を得られない理由があった。
――すると、宮藤中尉とあなたは史実ほどには?
「宮藤のほうもアニメと違いますから、関係はあまり。むしろ、あいつは隊の知恵袋ですよ」
芳佳とは史実のような親しい関係ではないが、一応、アニメと同じ呼び方をしあう程度には交流はある関係だと述べる。あくまで同僚の範疇として。
――彼女がプリキュアだということに感想は?
「私に言われてもなぁ。それは竹井少佐の領分ですよ。彼女もプリキュアだが……。」
――では、なぜ、震電を彼女に回そうと?
「最適な機体を回すのが飛行長の義務ですから。震電は父上の形見も同然だった。それを黒江閣下からメタ情報として聞いていたので、打診したまでです。鶴見大尉との交渉では、梨のつぶてでしたが」
横須賀航空隊の震電の開発責任者の鶴見大尉(1949年時)が非難されるのは、芳佳に父の遺産を渡すのを潰したからであり、日本からの非難が大きかった。とはいえ、横須賀航空隊としても『1942年のアフリカの事例があるから……』という言い分があった。アニメで芳佳がテスト未了の機体をそのまま使うと描かれていたのは、彼らとしても寝耳に水。組織解体の大義名分に使われてしまった。実際、震電は横須賀の誰にも起動できず、死蔵状態。それは問題なので、量産向けの改修がなされていた。それを若手の魔女は燃やしてしまったのである。ジェットストライカーとしての震電は第二世代理論の適応による改良で、シルエットも別物になったため、アニメ通りの姿での宮藤が見れない!と横須賀航空隊はクレームをつけられたのである。こういった対応に慣れていなかった彼らは会見で失態を犯し、ますます心象を悪くし、ついには解散後に、見せしめのように最前線へ送られてしまうのだ。
――なぜ、ダイ・アナザー・デイで烈風を彼女に?
「彼女の父上の腹心だった曽根技師に相談したところ、艦上ストライカーとしての採用が中止された烈風を回せると言われたので。紫電系は生産が追いつきませんでしたが、烈風であれば、対応改修も容易でしたので」
逆ガル翼をストライカーとしても持つ烈風はシルエットが特徴的であり、更に指定された機銃も『長砲身の20ミリ機銃』と強力。宮藤の魔力であれば、P-47にも通じる火力を保証される。そのため、プリキュア覚醒後も時たまであるが、烈風で出撃し、一定数の撃墜数を稼ぐのが芳佳のルーチンワークであった。烈風は零式の正統な後継になるはずだったので、坂本としても喜ばしい姿だった。烈風は大柄であるので、局地戦闘脚であった震電より速度が出ないことを坂本は心配したが、震電は大型怪異迎撃用の機体であり、烈風は零式の後継者としての制空戦闘を目的に作られていたので、乱戦であったダイ・アナザー・デイには最適であった。芳佳の活躍に触発された古参のエース(若本、西沢など)も配備を熱望したので、日本連邦空軍は『未来での高機動型ザクのような立ち位置』を条件に烈風ストライカーをその仕様で量産した。俗に言う烈風改であり、その仕様が零式系統ストライカーの最終発展型となり、1947年まで、エース専用機という地位を守るのである。
――若本中尉にも?
「奴のあの時点での原隊が壊滅しましてね。一時的にウチで身柄を預かった時に与えました。大喜びでしたね。こちらとしても、若い子らを育ててくれる教官経験者が欲しかったので」
――雁淵ひかり少尉や服部静夏少尉をでしょうか?
「あの娘らは色々な事情で召集したので、身柄を若本に預けました。奇兵隊(偵察中隊)での日々に不満だったようでしたので。雁淵ひかりについては、姉が前線配置に反対しましたが、メタ情報で落ち込みまして」
ひかりと静夏の前線配置は色々と問題があったため、坂本は若本に預け、鍛えさせたと語る。ひかりは『孝美が戦死を危惧したが、メタ情報を聞かされ、孝美が落ち込んだ』ため、二人の関係を悪くしないため、自分が命令という形で預けたと語った。若本は滞在中、二人をシゴキ倒したが、そのおかげで史実以上の練度を獲得。1940年代後半時点では、芳佳と共に『若き英雄』の渾名を得ている。
――同戦役の最大の英雄があなたの教え子ではないことについての感想は?
「あれは黒江たちの教育もありますが、本人の才覚ですよ。私は満足ですよ?次世代を担う者が育ってきたというのを知れて。彼女がどのような異能を持っていようが、それは彼女の才覚の一部ですよ」
坂本は次世代を担う者が一人前になる様を見ていたい本音を持っており、それが史実で『その後の芳佳の力に枷をはめてしまう』原因であった。メタ情報で、そのような真似を避けられた事からか、部下の芳佳が物事の中心では無くなっても気にしないという大らかさを見せた。(この世界では、直接の師弟関係ではないこともあるだろう)芳佳にアニメと違う生き方を選んでほしいのか、芳佳との関係が薄いことを示唆する。
「私の世界の歴史はアニメから既に離れています。宮藤が綴られる物語の中心でない世界があっても、不思議ではないでしょう。ですが、考えようによっては過酷な運命からは逃げられないことでもある」
――どういうことですか?
「プリキュアになったということは、魔女としては中心から外れたとしても、プリキュアとしては違う。さらに言えば、あいつの人生には偉大な父上の影がついてまわる。一生な。偉大な者の子孫であるという重圧に耐えられない者は大勢いた。むしろ、これから宮藤の真価が問われるだろうな。彼女の生き様を決めるのは我々ではないよ」
それは芳佳への間接的なエールであった。史実ほどの関係ではないために、直接は言えない(むしろ、芳佳へは『食えない狸』という評価であった)故である。黒江と智子を介しての繋がりはあるが、史実ほどは入れ込んでいない。(芳佳の父・一郎への恩義はあるが)それ故か、震電の受領を阻まれた時の代替手段をすぐに思いつけたり、軍部の思惑にわざと乗っかる真似をするなど、史実より組織人としての世渡り上手な印象が強い坂本。対外的には芳佳は坂本の弟子と宣伝されているが、坂本本人はあくまでも、『恩人の子供である同僚の一人』として見ているという、史実比の距離感を感じさせる回答であった。このインタビューは坂本が『アニメと違う人生を歩んだ』証明だとされ、軍の懸念と裏腹に好評であった。また、宮藤芳佳は『プリキュア化と引き換えに、魔女としての主役補正が薄れた』こと、その代わりを担っているのが、彼女のプリキュアとしての先輩である夢原のぞみであると、坂本の口から明言されたことにより、のぞみは芳佳の史実での役目の一部を代行する存在になったことを突きつけられたため、しばらくの間、自らの存在意義に悩む事になる。このインタビューは後にシリーズ化し、そのシリーズ化の第一弾が夢原のぞみとなるのだが、それはまた別の話である。