ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第三百五十八話「ダイ・アナザー・デイ前の状況 3」

――ダイ・アナザー・デイに先立って、問題視されたのが、空母不足である。雲龍型航空母艦では『大戦後期の大型艦上機は運用不能』という問題が重くのしかかり、結局は同級が実戦で史実通りの艦型で運用された最初で最後の事例であった。排水量が80000トン以上の大型空母がおいそれと用意できるわけではないため、コア・ファイターが用意されることになったり、地球連邦軍も大規模に参加する事になり、改修が終わっていた『ラ號』が投入される見通しとなった。それを模した『轟天』は1944年度から工事が続いていたが、艤装が間に合わないと判断された。その代わりに、扶桑向けに生産中の『播磨型戦艦』を増産し、作戦に間に合わせることになった。乗組員は旧型戦艦の退役で余る人員で賄うことになった。この頃に『海援隊』の公営化の話も進む。しかし、日本側の勘違いと強権的振る舞いにより、戦艦薩摩を強引に解体され、戦艦三笠(初代)を記念艦扱いで供出せざるを得なかったため、海援隊の実働部隊が取り込まれた『海上護衛総隊』には詫び代わりとして、海保の最新型巡視船が無償で譲渡され、戦艦近江の移管も確約された。海援隊の装備も根本的な刷新期に入った表れであった――

 

 

 

 

 

 

――また、扶桑そのものの改革をしようと、日本が息巻いた途端に、欧州で大規模戦闘が予測されたため、扶桑陸海軍の主力の全てを欧州に集結させることとしたが、北方戦線の部隊が猛反対したため、地球連邦軍の部隊がその代わりに参加する事になった。ダイ・アナザー・デイは、扶桑に未来兵器が流入しだす契機になったのだ。これは三式中戦車以前の機甲兵器が日本の判断で廃棄処分、もしくは倉庫行きがなされたためで、『M動乱用の場つなぎ』とされていた『四式中戦車改』、『五式中戦車改』が実質的に主力戦車とならざるを得なかった。五式中戦車改も『五式の装甲とエンジンを強化し、自衛隊61式のもののコピー品の砲を乗せただけ』の代物であるが、第二次世界大戦当時の水準で言えば『高性能』ではあったため、生産続行がなされた。本命とされた74式戦車の扶桑独自の生産に横槍が入り、『ライセンス発行は工員の労働環境改善が確認されるまで延ばす』という一方的決定、防衛作戦にすることに日本側がこだわったため、結局は独自生産はダイ・アナザー・デイ中には間に合わずに終わる。とはいえ、センチュリオン、パーシング、パンターと言った高性能戦車に『火力だけでも伍する』存在が自力で生産できる点は大きかった。だが、装甲面の不安はやはり拭えず、次第に火力と足回りを強化されたセンチュリオンが戦線での主力となっていくが、時間がかかるのである。航空機は紫電、烈風、五式戦だけでは賄いきれず、四式戦闘機の投入が考えられたが、外見と性能が一致しなかった。(これが四式戦の悲劇のもととなった)陣風はその事件を受けて、緊急で『試作途中の機を伝播技術で完成させる』形で日の目を見た――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍も『倉庫で埃を被っていた過去の高性能試作機や少数生産機』を引っ張り出し、対応することにした。ジェガンは少なからずが老朽化していたり、ジャベリンは数が足りない。圭子はそれを見越し、フェイトに『どこかの世界から、強いスーパーロボットを見つけて、とにかく味方につけろ』という指令を出す。その結果、参戦したのが明神タケル(マーズ)とゴッドマーズである。対するティターンズ残党はその『真の目的』の都合もあり、リベリオン軍の総力をダイ・アナザー・デイに注ぎ込ませた。その兵力は連合軍から接収した人員と兵力もつぎ込む結果、史実のノルマンディー上陸作戦の更に倍の総兵力にまで膨れ上がる。まさに史上空前規模であった。自由リベリオン軍は兵器の数量、人員の数の双方で、この大会戦を戦えるだけの余裕はないため、一部の人員が連合軍部隊の一員として加わり、戦果を挙げるに留まった。なお、同軍のトップエースであったシャーリーはプロパガンダに積極的に起用されたが、政治的束縛を嫌い、『北条響』の名義を使い、一人の戦士として戦闘を戦い抜くことになる。また、中島錦の『変態』は極秘事項にすぐに指定されたものの、長姉の小鷹が軍の元ウィッチ(最終階級は大佐)であったために把握されていた。彼女は妹の変態を『それが運命ならば』と受け入れ、既に引退している自身と、ウィッチの才能がそれほどない末妹の分まで『奉仕』して欲しいと、デザリアム戦役の頃に伝え、それがのぞみの同戦役での『再起』のきっかけの一つになるのだった――

 

 

 

 

 

 

 

――次期大作戦(1945年のダイ・アナザー・デイ)を『プリキュアたちの公な初陣とする』ことにした連合軍。しかし、プリキュアはが如何にスーパーヒロインと言えど、存在が明らかになった『組織』相手には心許ないという意見があり、圭子らのツテで、連合軍は仮面ライダー一号、宇宙刑事ギャバン、アカレンジャーらに『参戦要請』を発した。折しも、彼らも『共同戦線』の必要を感じていたため、依頼を承諾。ダイ・アナザー・デイの中核を実質的に担う形になる。それを更に察知した百鬼帝国やミケーネ帝国残党がティターンズ残党に戦力を提供し……と堂々巡りが続く結果、敵も味方も参加戦力が膨大な数に膨れ上がり、一つの勢力がコントロールできる限度を遥かに超えたスケールの戦いへとエスカレートしていく。そのため、連合軍は自らに大義名分がある(一応は)のを活用し、リベリオンを我が物にしようとする敵に抵抗する軍隊であると宣伝しようとするが、連合軍の将官がドイツ軍中心である事(連合軍の将官の多数派はカールスラント軍やスオムスの高官であった。これは元々はカールスラント軍やスオムス軍が『連合軍の基になる部隊の設立の旗振り役になっていた』関係だが、第三者からは両国による寡占と見なされた。カールスラントが騒動で失墜し、スオムスも智子にまつわる騒動で権威を損ねた結果、その両国の将官に代わり、日本連邦と自由リベリオン系の高官が重要な地位に就いていく。つまり、連合国のパワーバランスが変化したのである。ブリタニアはもはや経済的に大規模軍隊を恒常的に維持できるほどの力はないため、活動の軸足を『兵器の提供』などに移し、扶桑の軍需市場の開拓に一定程度の成功を見るのである――

 

 

 

 

 

――カールスラントのウィッチ達もそうだが、故郷を離れるのは経済的にも、環境的にも、精神的にも、容易なことではない。カールスラントの場合は、急激な政変による周囲からの『戦争屋』呼ばわり、急進的な反軍政策での『それまでの名誉の全ての剥奪』による環境の激変で(コンドル軍団出身者に顕著であった)『親類縁者全てと絶縁状態に陥った者』も多く、故郷で誰もからも白眼視され、誹謗中傷の中で残りの人生を過ごすよりは、『人材を欲する扶桑に尽くして、国家功労者として遇される』ほうが遥かに幸せと結論づけた者はエースパイロットや技術者の多くに当てはまった。そのため、1945年度のダイ・アナザー・デイのあたりから、自分達の失脚を予想した軍人や技術者の多くが扶桑に移住していき、永住権を取得していく。これは後世、『ドイツ連邦共和国が反軍的施策を押しつけたことによる大失敗であった』とされる――

 

 

 

 

 

――扶桑はその逆に、人材が充実したことにあぐらをかく姿勢が徐々に鮮明になり、軍内部の1920年代生まれ、俗に言う『黄金世代』が高齢化してくる1960年代後半頃になって初めて、その後の時代の事が議論され始めるという体たらくを露呈する。とはいえ、扶桑は1944年からの長きに渡って、ひたすら戦乱に明け暮れる日々となったため、悠長に新人育成をしていられるだけの余裕はなかったのも事実だ。Gウィッチ達も、自分達が生きている『本来の世界での家族』とゆっくり触れ合うだけの時間がそもそも確保できない事(ハインリーケ/アルトリアのように、軍部が精神的影響への懸念により、『親類縁者が戦禍に倒れた』事を後から知らされた例もある。黒江家や中島家、宮藤家のように、転生という現象を受け入れ、それなりの関係を維持していったのは『幸運なケース』なのだ)、黒田侯爵家のように、転生によるメタ知識そのものがお家騒動の原因の一つになったケースもある。Gウィッチらが戦友間の福利厚生対策ネットワークを早期から築いていくのは、メタ情報は軍事的には有用であっても、周囲との関係を壊す危険がある(のび太とドラえもんが、自分としずかが『婚約に至る未来』を予め知っていたことを、しずか本人に『結婚した後』まで黙っていたように)事を実感しているためだ。転生そのものが軽度とはいえ、

ある程度の事柄が機密に認定されていたこともあり、当たり障りのない事務的会話に留まってしまう場合が多かった。そのため、現在の家族と『心を落ち着かせて、会話を真に楽しむ』事が却って難しいことも多く、『距離ができてしまう』ことがままあった。当たり前だが、『誰しも、特異な状況に寛容であるとは限らない』のだ。のぞみは転生先の肉体の変容という形で『復活』したので、特にそれを恐れていたが、中島家の長姉/家長の『中島小鷹』が転生を受け入れ、変わらずに家族として接すると表明する事で事なきを得た。(結婚の際は嫁入り道具まで持たせた)黒江、圭子、智子の三名は家族の誰かに『理解者』がおり、なおかつ『巻き起こすこと』に慣れていたため、良好な関係が保てた『極めて幸運な例』である――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――予てより存在の捜索が行われ、あわよくば……という形で実行されていた『プリキュア・プロジェクト』は『軍の内部にその転生者がいた』形でひとまず成功し、第二段階に移行したのがダイ・アナザー・デイ中のこと。プリキュアの発見と保護に目的が定まったからで、1949年度までに第一世代の過半数、第二世代の半数近く、第三世代の一部が加わるに至る。また、便宜的(戦闘行為の合法化)に軍籍を与えられたとはいえ、現役時代からやってきた例もあるため、基本的には、キュアムーンライト、キュアマカロン、キュアエース、キュアアクア、キュアミント、キュアブルーム(キュアブライト)、キュアイーグレット(キュアウィンディ)の合議で活動方針が定められる。合議制になったのは、戦闘のリーダーシップは取れても、普段はリーダー気質でない者が多い性質であるので、比較的に年長、あるいは普段の統率力が高めの者(なおかつ、軍階級が高め)の合議制になった。なお、ブルームとイーグレットが最終決定権を持つのは『二代目』であるからであるが、ダイ・アナザー・デイ~デザリアム戦役までは暫定的に、『三代目』であるキュアドリームが最終決定権を与えられていた。(デザリアム戦役の際の出来事以降は実質的に返上していたが)――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1945年――

 

「誰が好き好んで、故郷を捨てる?やむにやまれぬ事情があって、そこで初めて、国を離れるものだ。昔の日本にだって、村八分という悪習があっただろう?それと一緒だ」

 

バルクホルンはダイ・アナザー・デイの前の時点で、扶桑への移住を前提に動いていた。折しも、カールスラントの政変が起こり、戦前からの軍人の多くが何らかの不利益を被り始めていた時期であった。妹のクリスに『もよやの出来事が起きる』ことを恐れた彼女は『ダイ・アナザー・デイ終了後にカールスラント軍の予備役に退き、扶桑への義勇兵として戦い続ける』選択を選んだ。

 

「妹のことか」

 

「ああ。妹の学業に支障が出てくるからな。私はコンドル軍団の世代ではないが、コンドル軍団の名誉剥奪が決まりそうだろう?その余波が『1938年以前から軍歴のある軍人』に及びそうだから、故郷にはいられなくなる。メルダース大佐の『柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章』も剥奪は確実。彼女も近いうちに、扶桑へ移住するだろう。お前もそうしろ。お前はコンドル軍団の経歴があるからな」

 

同僚となったフーベルタ・フォン・ボニンにその仔細を伝える。彼女はコンドル軍団に新米の少尉として参加していたため、名誉剥奪は確実視されている。過去の問題発言という大義名分もあるからだ。

 

「しかし、何故、ドイツは我々を目の敵にする?」

 

「連邦にとってのジオン、ドイツにとってのナチ政権時代のようなものだろうな。ドイツの一般市民にとって、我々は『戦犯』同然に見える。その風潮が持ち込まれた以上、カールスラントに、これ以上は義理を立てる理由はないさ」

 

バルクホルンは愛国心が強かった反動か、ドイツに迎合し、自分達の名著を地に落とす行為を悪びれない自国に愛想を尽かしたようだった。哀しげなのは、10年近い『奉仕』を否定された感覚だからだろう。

 

「『今回』は前世よりも苛烈な結果を招く。内乱は避けられんだろう。皇室親衛隊の人員を問答無用で公職追放し、軍人の多くの名著を剥奪すれば、ほぼ軍事国家化しつつあったカールスラントの国民が軍部を煽り立てる。NATOに働きかけて、早期介入の密約を取り付けるのが精一杯の誠意だ」

 

「ルートが有るのか?」

 

「出木杉英才氏の親類がNATOの要人の親友とのことでな。そこを通して働きかける。NATOも米国とは別に、我々の世界へ接点を持ちたがっている。そこを利用する」

 

「私たちはその間に、扶桑へ移住か?」

 

「私と妹は、『エクソダス』の時に両親が亡くなったからな。今更、『故郷』に未練は無いが、妹のために留まっていただけだ。だが、妹も今後は故郷で生きにくくなる。移住するなら、急いで手続きを済ませろ。お前はコンドル軍団の経歴を持つ以上、公職追放もあり得る」

 

「公職追放か。向こうの世界での同位体もゲルニカ爆撃に加わっていたわけではないというのに」

 

「彼らにとって、属していたという既成事実があれば充分だ。明日から手続きを始めておけ。移住の手続きが済んでいれば、名誉剥奪も有名無実になる」

 

「踏んだり蹴ったりとは、このことだな」

 

 

フーベルタ・フォン・ボニンはティターンズの捕虜となり、収容所の所長の趣味でメイド服での強制労働を課される屈辱を味わい、救出後は救出後で、過去の発言の釈明をする羽目に陥った。『空中では、撃墜数だけがものをいう。階級などというくだらぬものはどうでもいい。地上では軍律があるが、空中では最多数撃墜のパイロットかつ、戦闘技術と経験に優れたものが指揮を執るのだ』という文面で公に見解を発表していたが、『ドイツ人らしい高慢な考え』と、『平和な時代の軍隊』の米・英・日の三カ国の軍隊から猛烈に批判されてしまったのだ。本人は『この発言は私の若気の至りかつ、個人的見解であって、カールスラント軍全体の意見ではない』と釈明し、『けして、年長者に敬意を払わないとか、そういうことでは絶対にない』と謝罪した。仕方ないが、『平和な時代の軍隊とも共同戦線を張る以上はもめ事になり得る要素は徹底的に排除する』。それがアイゼンハワーの方針であった。

 

「お前、謝罪会見の気分はどうだった?」

 

「……晒し者にされた気分だよ。まさか、若い頃(10代前半の全盛期)の発言くらいで始末書を書かされるわ、尻を『かたーい樫の棒』(海軍精神注入棒)でぶん殴られるとは……」

 

「海軍精神注入棒の処分は決まっているから、お前に使うのを最後にしたかったんだろう」

 

「だからと、ガタイの良いあんちゃん達に持たせるか!?一週間は仰向けに眠れなかったぞ」

 

「それで済んで、よかったじゃないか。下手な奴がやれば、脊髄損傷で半身不随になったり、打ちどころが悪ければ、その場で死んでしまう。だから、司令部も『艦隊一の使い手』にやらせたのだ。扶桑の国民向けの一種の『仕事してます』のパフォーマンスだし、ウィッチ相手だから、相当に加減してやったそうだ」

 

「日本人のそういう気質、良くないと思うぞ」

 

「ブリタニアに文句言え。その起源はブリタニアだそうだ」

 

なんと、フーベルタは『海軍精神注入棒』の最後の被験者にされていた。扶桑人の反連合軍感情を抑えるため、見せしめ的に『不遜な発言』を理由としての制裁がなされた。この制裁を以て、海軍精神注入棒の歴史は幕を閉じたわけだが、『気絶しそうになった』と愚痴っている。とはいえ、扶桑人が納得するための『パフォーマンス』が政治的に必要なのだと、バルクホルンは説く。

 

「空軍の軍人に海軍の備品を使うか?……全く、ドイツ軍と違って、うちの軍は戦争さえなければ、今頃には空母航空団の設立がされたはずだというのに」

 

カールスラントの癌と見なされた『ヘルマン・ゲーリング』とその一派、『戦前からの軍人』の多くはこの時期に問答無用で公職追放、あるいは名ばかり管理職に左遷されていった。それに反発する者たちが煽り立てた結果、カールスラントは自傷行為と言える『内乱』へひた走る。それはバルクホルンらの止めようがない領域での出来事である。結局、ドイツはカールスラントの軍事国家化を阻止しようと、現地の人々の拠り所の根幹にまで手をかけたことで、現地の混乱を却って助長させ、名ばかりの『連邦国家』が出来上がる契機となってしまう。日本連邦の成功と対照的であるため、国民をまとめられる何かが明確に存在する日本と、二度の敗戦で『かつての失敗を犯さない』ことでしか、自らのアイデンティティを見いだせなくなったドイツとの差であった。

 

「ドイツはおそらく、失敗を実感すれば、手を引こうとする。だが、相応の罰は受けてもらう。手筈を整えておく」

 

バルクホルンの言う通り、ダイ・アナザー・デイ中、ドイツはカールスラントへの過度な介入がもとで地球連邦軍の砲艦外交を受け、大慌てのドイツはカールスラントへ口出しできる権利の殆どをNATOに委ねることとし、カールスラントの間接的な運営を事実上は諦めることになる。日本連邦の鏡合わせのような結果として、『名ばかりの連邦』と揶揄される『ドイツ領邦連邦』。NATO軍政が長引くのも、ドイツが『カールスラント帝室の祖国への帰還を国民が受け入れるか』にかかっていたからで、カールスラントは史実のドイツと異なる『立憲君主制国家となることで纏まり直す』事を選んでいく。ドイツは日本連邦の二匹目のドジョウを狙い、見事に失敗した例となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――戦車道世界に複数が確認されたプリキュア達は他世界のコネクションができたのを良いことに、ウィッチ世界で不要になった試作品の戦車を取り寄せ、大学選抜との試合で(ある程度は戦車道仕様にした上で)使用。圧倒的に蹂躙した。戦車道世界では、構成部品が『1945年八月までに試作段階であれば、試合で使っても良い』からで、スーパーパーシングやパーシングジャンボは初期型センチュリオンと通常量産型パーシングを見事に蹂躙。プリキュア化能力と前世の記憶の蘇りで乗員の『状況判断能力』が大きく増した事も、大学選抜の一方的敗北に繋がった――

 

 

 

――戦車道世界 大学選抜との試合後――

 

「……ここまで蹂躙できるなんて」

 

「さすが、アメリカ軍がティーガーⅡ対策で用意しようとしていた車両ですね…」

 

秋山優花里も、この圧倒的な結果には『開いた口が塞がらない』。この時、あんこうチーム含め、実力者のチームにはスーパーパーシングとパーシングジャンボが回されていたのだが、当代トップクラスの高校生らが存分に腕を振るった結果、予想外の『圧倒的な蹂躙』に役人は顔面蒼白で気を失い、みほも車両の性能差が(一部のみだが)埋まった事などを鑑みても、予想外に圧倒してしまった。それでいて、エンジンを載せ替えていたので、機動力も改善されているのも、通常のパーシングを相次いで撃破できた要因だ。

 

「これで、廃校は撤回されるのかな?」

 

「されるよ。会長があれこれ動いてたし、両方の流派の師範と家元から、すごい圧力が文科省にかかってるからね」

 

「むしろこの状況では、文科省の役人のほうが首飛びますよ、武部殿」

 

西住みほと秋山優花里は、試合結果が『高校生が大学生を圧倒的に蹂躙する』結果であった事で、大学選抜の立場を慮る。大戦末期に試作車、もしくは初期量産品が出回った『戦車道で使える中では一番の高性能戦車』を用いておきながら、高校生に蹂躙されて終わった。島田愛里寿の才能も、予想だにしない大洗女子の猛攻にかき消されたからだ。

 

「ちょっとかわいそうだけど、これは売られた喧嘩。文科省のお役人さんはお仕置きしないといけないからね」

 

「西住殿、前世の素が入ってます」

 

西住みほの前世は四葉ありすである。四葉ありすは自分と友人の『敵』と判断した者は何が何でもぶちのめすという、意外な側面を持っていた。覚醒によって、その一面が目を覚ましたため、(ある意味では皮肉だが)西住流本来のスタイルに近い『圧倒的火力による制覇』を体現したスタイルで以て、島田愛里寿の才覚を完封せしめたわけだ。

 

「西住殿。相手のリーダーの子、泣いてるかしれませんよ」

 

「ちょっと見てくるよ。やりすぎたから」

 

「うん、それは言えてるな(ますね)」

 

あんこうチームの誰もが大小の低度に関わず、『やりすぎた』と述懐するほどの結果となったので、気になって様子を見にいくみほ。観客席で試合を見ていた実母のしほも『誰が、ここまでしろと言った』と言いたそうだが、その様子を見ていた帝政カールスラント陸軍元帥の『エーリヒ・フォン・マンシュタイン』が事情を説明し、表情が柔らかくなった。名将の誉れ高いマンシュタインが娘の戦術を褒めたことは鼻高々なことは確かである。島田千代(愛里寿の母、島田流戦車道の家元)は友人が高校時代か、婚約時代のように、見るからに嬉しそうに頬を緩めるのを見て、マンシュタインの威光を思い知った(異世界との交流が裏で始まったことは、彼女独自の情報網で知っていた。そこが戦車道以外の事柄には関心が薄く、ストイックなしほとの違いである)のだった。

 

 

「大丈夫だった?」

 

「……ずるい。スーパーパーシングとパーシングジャンボを持ち出すなんて」

 

様子を見に行くと、大洗側の主力であった数台の車両が『規則はギリギリセーフ』な米国の試作車である事を知らされ、ぐずる愛里寿の姿があった。仕方ないが、如何に彼女と言えど、ケーニッヒティーガー、もしくはその後続車両をも倒すことを想定された車両の砲撃を受けては、ティーガーIとパンター想定で開発されているセンチュリオンの装甲では『操縦テクニックによる避弾経始策』をどんなに用いようと、防ぎきれるものではない。

 

「あなたたちの車両はセンチュリオンとパーシングってことは読んでたんだ。だから、対応するための奥の手を使ったの。部品は『八月十五日』までには間に合ってるし、ギリギリで合法だよ」

 

「……ボコのミュージアムが廃館になっちゃう……」

 

島田愛里寿も、西住みほ同様に戦車道世界でのクマのマスコットキャラ『ボコ』が大好き。自分たちが勝てば、母親にスポンサーになってくれるように頼んでいたのだが、島田流の真価どころでない醜態を晒してしまった事でご破算になってしまったと嘆く。

 

「……大丈夫だよ」

 

「どうしてそう言え…っ!?」

 

「目をつぶってて」

 

みほは笑顔を愛里寿に見せると、一瞬でキュアロゼッタへ変身してみせる。戦車道世界でもプリキュアは『アニメ』として存在しているので、目を開けた瞬間から驚く愛里寿。

 

「私――キュアロゼッタ――がどうしかしてみせるから」

 

口調はみほのままであるが、姿形は完全にキュアロゼッタのそれとなっていた。そして。

 

「ちゃー、先を越されたかー。ま、しょうがないか。それっ」

 

「うむ、仕方あるまい」

 

黒森峰女学院の逸見エリカ、大洗女子学園のカバさんチームのカエサルも現れ、それぞれ「キュアハート」と「ミルキィローズ』に変身する。アイテムを介さない、俗に言う『簡易変身』だが、これはキュアフローラとキュアエールで実例が存在するので、他のプリキュアができない道理はない。

 

「え……あなた達……」

 

「ごめんね、愛里寿ちゃん。あたしたち、本当にプリキュアなんだ」

 

キュアハートが言う。

 

「ややこしい事この上ない上、現代科学では説明できない現象でなぁ。カール自走臼砲をちょろまかしたのは、この私だ」

 

ミルキィローズも続く。当時に最新のプリキュアである『ドキドキ!プリキュア』である二人はともかく、ミルキィローズは既に代替わりして久しい『プリキュア5』のメンバーであったため……

 

「あなたもプリキュアなの?』

 

そう言われ、地味に時の流れに打ちのめされ、しょげるミルキィローズ。

 

「そ、そうだ……。君から見たら、ずいぶん昔のプリキュアになるなぁ……」

 

「私達の先輩だよー。愛里寿ちゃんは『プリキュア』見るのかな?」

 

「飛び級で大学行ったし、そういうのはあまり。親戚と話を合わせるために見てはいるけれど……」

 

愛里寿は13歳で大学に在学する天才だが、天才過ぎるため、周囲から浮いていた事、島田流の嫡子ということで、親戚一同からも特別扱いされていることに一種のコンプレックスを持っている事、ボコが大好きであるが故に、他のアニメには興味があまり持てないが、親戚などと話を合わせるために見てはいると明言する。

 

「だけど……本物に会えるなんて……思ってもみなかった」

 

ようやく笑顔を見せる愛里寿。年齢的には小学校を卒業して間もないくらいであるし、彼女とて『魔法少女ものに憧れた時期』はちゃんと存在しているからだ。と、そこに。

 

『隊長、お迎えに……ぃぃ!?』

 

「あ、大学選抜の副隊長さんたち」

 

『ぷ、ぷ……プリキュア!?』

 

『ど、どうも~……』

 

愛里寿を迎えに来た三人の副隊長たちは驚天動地であった。なにせ、愛里寿と会話をしているのが『プリキュア』であったのだ。変身している三人は明かせる範囲での情報を伝え、自分達は大洗女子学園側のメンバーである事、それぞれ『異世界転生』に近い状況で、プリキュアの力と『現役時代の記憶』が蘇った存在だと教える。

 

「どうして、そんなことに?」

 

「多分、私たちの力がどこかで必要にされてるから……かなぁ」

 

「他にもいるの?」

 

「ええ。今回の連合チームにはゴロゴロと」

 

大学選抜の副隊長たち『バミューダ三姉妹』(そういうトリオ名)には、彼女らが既に成人済みである事もあり、事情をそこそこの範囲で話す。三人とも、子供時代に『初期のプリキュアを見ていた』ためと、引くべき線は心得ているからだ。

 

「そりゃ、西住流にはコンプレックスありますって。まほ隊長が引退すれば、当然、あたしにお鉢が回ってくるし、今の戦車道部は西住流の力に頼りっきりの状態だし」

 

キュアハートは逸見エリカとしての愚痴をこぼす。逸見エリカとして、西住まほ、ひいては西住流に『心酔しているからこそのコンプレックス』があり、みほが去った後、後釜に収まったが、自分はみほのようにはできなかったことを赤裸々に。バツの悪そうなキュアロゼッタ。

 

「プリキュアとしての力と記憶が戻った事の是非はともかく、これからどうするべきかは、ゆっくり考えますよ」

 

「まだ時間はあるわ。あなたなりのチームを考えなさい。黒森峰とて、黄金期の頃の西住流はチームを構成する一要素に過ぎなかったのだから」

 

大学選抜の副隊長たちが高校生であった時期は、少なくとも5年以上前。黒森峰女学院戦車道部の全盛時代の中期から後期にさしかかる頃に相当する。黄金期の黒森峰は西住流のバックアップは受けていたが、代々の隊長・副隊長は『西住流以外の』人間であった。だが、西住流の正統後継者である二人の高等部入学後に、西住流との蜜月の関係の『負の側面』が一挙に噴出。まほの隊長就任に邪魔となる、先輩格の有力生徒を理事会が『精神的に潰し』、それに反発した『黄金期を知る世代』がチームを去ったために、ノウハウが受け継がれずに『装備だけ立派な木偶の坊』という状態にまでボロボロとなるなど、内情は火の車に近かった。如何にまほが少ない時間で再建に尽力しようと、実の妹の心情までは悟れず、親の言いなりであったために、妹が学園を去るという最悪の事態が現実となった。それを悔いたまほは、最終学年次に『自身を中等部時代から知り、心酔している』逸見エリカを抜擢したが、みほの周囲との絆ががまほの采配と才能を上回った。それを経ているので、キュアハートは柄にもなく弱気であった。

 

「それに、あなたの諸先輩方は西住流に頼らなくとも、あの時代を築いた。八年連続優勝という――ね」

 

バミューダ三姉妹はそう言って、キュアハートを勇気づける。西住流は戦車道を形作る一つでしかない。要は自分の戦車道こそが大事なのだと。

 

「プリキュアであるあなたに、こんな……誰でも言えそうな激励を言うのは――、なんだがすこし……こそばゆいわね」

 

「いえ、それで充分ですよ。プリキュアなことは戦車道には関係ないですし、あたしが隊長を充分に補佐できなかった事には変わりないですから」

 

三姉妹のリーダー格であるメグミの言葉で、気が楽になったらしいキュアハート。逸見エリカとして、優勝を逃したこと、どの道、まほの後継ぎとならなければならないのには変わりないからで、逸見エリカとして背負う重圧を前に、精神的に引き締められる思いであった。

 

 

「あなた、ドキドキのリーダーでしょ?それに、そこにいるのは……プリキュア5のミルキィローズ!?」

 

「ええ、まぁ。今は正真正銘の地球人ですけど…」

 

「写真、いいかしら?中学生の頃、あなた達の事を見てて……」

 

「そ、それはどうも」

 

苦笑交じりながらも、大学選抜の副隊長陣のリーダー「メグミ」の頼みに応じるミルキィローズ。大学選抜の副隊長たちが中高生の頃が『自分達の現役時代の様子』がアニメで放映されていた時代だと聞かされ、もろ他の事を想像し、色々と複雑になるミルキィローズであった。

 

 

 

 

 

 

 

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