半荘3回目。
賽の出目で東場の親は京太郎からスタートしようとしていた。
「そう言えば、咲の麻雀ってパッとしないな?」
「点数計算は出来るみたいだけどね?」
「えへへ……」
先程までの咲の打ち方を見て素人だと判断したのか?
それとも的外れ的な感想を述べたのか?
京太郎と片岡さんは咲を見下している様な言いぐさだ。
「京、お前はそんな咲にすら勝てないでいるではないか?咲の打ち方をどうこう言う前に、先ずは……」
ゴロゴロ!ピカーン!!
そこまで言った矢先、落雷の轟音が部屋に鳴り響く。
「解っているって達也!それにしても雷か………」
「降ってきましたね………」
原村さんが窓を見ながら雨が降って来た事を告げると。
「えっ!?嘘ッ!!傘持って来ていないわよっ!!」
仕切り板の裏手から叫び声と共にガタッ!と言う音がした。
「えっ?あれって生徒会長?」
咲の言葉に視線を仕切り板の方へ向けると、仕切られた場所から1人の女子生徒が姿を現れた。
「咲、この学校では生徒会長ではなく学生議会長な。お邪魔しています、竹井生徒議会長」
「あぁ、君は確か………宮永達也君だっけ?学年主席の……」
「主席なのかは解りかねますが、その通りです。そして今、麻雀部の部員と打っているのが、妹の………」
「宮永咲です」
「竹井先輩は、麻雀部の部長なんです」
目線は卓に向いたままの原村さんが教えてくれた。
竹井先輩は、咲の後ろへと近付き咲の手牌を確認すると何やら納得した表情を浮かべてパソコンが置いて在る場所へ移動しパソコンを操作し始め、これまでの対局のデータを確認しだした。
「ロン!1000点です」
咲のロン宣言で、俺は頭を抱えていた。
俺は彼女達に咲との実力差を解らせる為に、咲に発破を掛けて3人を飛ばせと命じたが、俺は忘れていた。
咲は普段から±0になる打ち方しか出来なく成っている事を。
これは俺の失策だ…………。
先程まで意気揚々としていた咲の表情が、苦笑いを浮かべて俺を見ていた。
俺は仕方がないと言うジェスチャーで咲に応えると、驚いた表情で立ち上がった竹井先輩は、咲の下へと歩みより咲の手配を見ると、驚愕していた。
「よっしゃ、点数申告なぁ~」
「嗚呼、今回ものどちゃんがトップか……」
片岡さんが今回も原村さんがトップだと告げると、先程まで咲の手配を見て何やら思考を巡らせていた竹井先輩は、突然咲のスコアを確認しだした。
「宮永さんのスコアは!」
「プラマイ0ポン!」
片岡さんが咲のスコアを申告した瞬間、竹井先輩の表情が変わった。
恐らくは、咲の実力を見抜いたのだろ。
流石は、麻雀部の部長にて学生議会長と言った処か。
「咲、図書室で借りた本を返すのだろ?」
「あっ!そうだった……」
「俺は、もう少しここに居るから、先に帰っていてくれるか?」
「あ、うん。じゃ、お先に失礼します」
そう言って咲は部室から出でいった。
「帰っちゃいましたね………」
「そりゃ、のどちゃんが強すぎだからだじぇい!」
「圧勝って感じだね!」
「圧勝?なに甘い事言っているのよ。彼女のスコアを見て気付かないの?」
3人の言葉のやり取りを聞いて、呆れ返る竹井先輩。
「宮永さんのスコアは3連続±0………まさか、それが故意だとでも言うのですか?」
「そんな馬鹿な。偶々っしょう!」
「そうだじょ!麻雀は運の要素が大きいからプロでもトップ率が3割行けば強い方。それを±0なんて………普通に勝つより難しいじぇい」
「しかも3回連続なんて不可能ってかい?ねぇ、宮永君。貴方の妹さん、本当は………」
竹井先輩の言葉に、皆の視線が俺に向けられた。
「えぇ、竹井先輩が思っている通りです。咲の実力は、原村さんを始めとする3人より数段上です。京や片岡さんは兎も角、インターミドルチャンプの原村さんが、咲の実力を見抜けなかった事に、はっきり言って失望しましたよ。チャンプの実力がこの程度かとね………」
俺は、原村さんを見てそう言った。
「達也!てめぇ和になんて事言うんだよ!」
「ありのままを言っただけに過ぎんが?先程、原村さんの打ち筋を拝見したが、確かに実力は咲に及ばないにしろインターミドルチャンプだけの事は在るが、余りにも型にはまり過ぎる。そして片岡さんは、東場では無類の強さを発揮するが、南場になると極端に弱くなる。東場で幾ら大量リードしていても、そのリードを維持出来ない。更に、京。お前は初心者も良いところだ!安易に振り込みするのが良い例だ!」
「流石は学年主席だけの事は在るわね宮永君。だった1局だけ見ただけで和や優希の弱点を看破するなんて?貴方達一体何者?」
「何者と言われましてもね?俺達は、ごく普通の家庭に生まれた双子ですよ。ただ、1つだけ普通じゃないと言えば………麻雀一家だっただけですかね?」
そう良い終えると同時に雷鳴が轟き、原村さんが突然と立ち上がり、部室から出ようとした。
「こんな雷雨の中、何処に行こうと言うのですか?咲の後を追うのなら無駄です。咲は既に家に着いている頃でしょうから」
「…………」
ドアノブに手を掛けていた原村さんは、ドアノブから手を離し塞ぎこんでしまた。
「悔しいですか原村さん?貴方より実力が勝る咲に手加減された事に……」
「……………」
俺の問い掛けにさえ応える気力を失った原村さん。
インターミドルチャンプとしてのプライドがズタズタにされたのが余程堪えたのだろう。
そして俺は、竹井先輩に提案した。
「竹井先輩、俺と1局打って頂けませんか?面子は、竹井先輩と原村さんに片岡さんの3人で」
「私は構わないけど………和があれだからね………」
塞ぎ込んでいる原村さんを指差して、そう告げる竹井先輩。
「では、こうしましょう原村さん。明日咲に、もう一度打つ様に言います。そこでもう一度咲の実力を計ると良い」
「はい、解りました。明日、絶対に宮永さんを連れて来て下さい!」
「約束しましょう。では、時間も押し迫っていますので…………」
俺は、ポケットからスマホを取り出し徐に電話を掛け始めた。
「もしもし、厳さんですか?」
『おう!達坊どうした?』
「すみません、今日は店に行けないので、常連さん達に伝えてもらえますか?」
『あいよ!高校生だから仕方がないって。学業の方頑張れよ!』
「また、そのうち顔出しますので………」
そう言って通話終了のボタンを押した。
「何処に電話したのかしら?」
「行き付けの雀荘です。本当なら今日は、そこで打つ予定でした」
「と言う事は、妹さんも?」
竹井先輩の問い掛けに、俺は首を横に振り否定する。
「この事は、咲には内緒にしています。ちょっと訳が有って麻雀が嫌いに成っているんで………」
「あれだけの実力が在りながら?」
「そこは家庭内の事情って事で触れないでくれると助かります」
「そ、そう。では、早速始めましょうか。須賀君、悪いけどお茶を淹れて来てくれないかしら?」
「解りました部長!」
「和も、さっさと席に着いて頂戴。始めるわよ!」
竹井先輩の指示に、頷きながら元の席に戻る原村さん。
俺は、学ランを脱ぎYシャツの襟首のボタンを外し袖を腕捲りして、先程まで咲が座っていた席に着く。
「皆さん、ここは本物の麻雀をしませんか?」
「本物の麻雀?」
竹井先輩の問い掛けに頷く。
「麻雀とは本来、ギャンブルの1種に過ぎない。今ではプロ雀士が賞金や名誉を掛けて戦っていますが、一般的な麻雀と言えばノーレートの麻雀か賭け麻雀のどちらかです。そこで竹井先輩、1つ賭けをしませんか?」
「賭けですって?」
「えぇ、賭けと言っても現金や体を賭けろって訳じゃ有りません。もし俺が敗けたら、咲を麻雀部に入部させる事を約束しましょう」
「もし、私達が敗けたら?」
「簡単ですよ。今後一切、俺達に干渉しない事です。あぁ、原村さんとの約束の後ですがね…………どうです竹井先輩?」
そう提案すると、竹井先輩は暫く考えると竹井先輩のアホ毛がピン!鋭く伸びると俺を見て微かに微笑んだ。
「解ったわ、良いでしょう!」
「「「ぶ、部長!」」」
竹井先輩の言葉に原村さん達は驚き声を荒げる!
「大丈夫よ皆。和と優希、ここは共同戦線と行きましょう!宮永君、後1つ追加良いかしら?」
「もう勝ったつもりですか………良いですよ」
「貴方が敗けたら、貴方にも麻雀部に入部して貰うわ。それと学生議会にも参加して貰うわ!」
「解りました、良いでしょう」
さぁ、始めようか!
本物の麻雀を!