闘牌雀鬼・宮永達也の麻雀記   作:黄昏の旅人

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4話

~京太郎vision~

 

 

突如として始まった達也と麻雀部部員との1局。

 

上家に座る部長が親番を決める賽を振るって、定石道理に親は優希に決まり配牌が進む。

 

 

しかし何故、達也は自身にとって利益のない賭けをしたんだ?

 

確かに、達也が勝てば麻雀部は今後一切の宮永兄妹に干渉する事は出来ない。

 

しかし、仮に達也が敗ければ咲が麻雀部へ入る事になる。

 

はっきり言って達也には、何の利益がない話しだ。

 

それを何故?

 

昔から文武両道に秀でていて妹思いの奴だ。

イケメンで人望が厚く、多少の事では軽く受け流す人格者であるアイツが何故?

 

 

「京、今から俺達の打ち回しを観て勉強するんだ」

 

「あん?何を偉そうに……」

 

「今のお前の実力では、県大会予選で1勝処か清澄高校麻雀部の看板に泥を塗るだけ。少しでも実力を上げたいのなら実力者の打ち回しを参考するのが良い。しかし、ただ漠然と観ているのではなく、自分なら『どうするか?』を考えながら観るんだ」

 

 

くっ!確かに俺の実力は素人同然だっての!

達也の言葉は、常に的を得ているから言い返せない。

 

じゃ、見せて貰おうか!

お前の麻雀を!

 

 

「先制のダブルリーチだじぇい!」

 

 

{横白}

 

 

「ポン!」

 

 

東場の親である優希の先制ダブルリーチを、達也は即刻で鳴いた。

 

恐らくは一発潰しだろ。

 

そして3順目には和からの{発}を鳴き二副露。

更に手配には{中}が暗刻ってるって!?

 

これは大三元の聴牌じゃないか!?

否、それだけではない!

 

正確には『字一色、大三元』{南、北}のシャボ待ちダブル役満手!?

 

 

恐らくは達也が大三元を狙っている或いは聴牌している事が、部長達にも解ったのだろう。

 

達也の河に、切れているのが{東、5、五}のみ。

 

こりゃ、振り込んでも事故としか言えない!

 

 

だが字順、驚愕できな出来事が起きた!

 

達也のツモ番。

ツモって来たのは、当たり牌の{南}!

 

まさか、目の前でダブル役満の上がりを拝めるとは思っていなかったと思っていると、達也は無言でツモって来た{南}をツモ切りしたのである!

 

その行動に、驚きの余り声を上げそうになるのを堪えて観ていると、今度は{北}をツモる。

 

しかし、それもツモ切りした達也。

 

2連続ツモ上がり拒否をする暴挙にでる。

 

 

既に場には、{南と北}2枚づつ切れている為に上がる事は出来ない。

 

 

しかし、和と部長が達也の大三元を警戒してかベタ降りしている中、達也は優希の当たり牌である{6}を警戒する事なくツモ切りする。

 

 

「ロンッ!!ダブリー、タンヤオ、ドラ2親満の12,000だじぇい!」

 

 

案の定、その振り込みを見逃す優希ではなく、達也は優希の親満12,000点を支払う事になった。

 

 

「宮永君、その手配を見せてくれないかしら?」

 

 

と突然部長が達也に手配を公表する様に要求して来た。

 

 

「良いですよ」

 

 

そう言って手配を倒す達也。

 

{南南北北中中中}{発横発発}{横白白白}

 

 

字一色、大三元の聴牌の手配を公開すると………。

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 

3人は当然の様に驚いた。

 

 

「宮永君、貴方は私達を侮辱しているのですか?」

 

「和の言う通りね。貴方、何故2回も上がり放棄したのかしら?」

 

 

達也の手配と河に捨てられている{南と北}を見て、今まで見た事のない怒りを露にする和と、冷静沈着な表情で達也に問い詰める部長に、達也はこう答えた。

 

 

「こんな序盤に、ダブル役満で上がってしまったら………勝負に成らないでしょう?それに、竹井先輩の実力を見る前に終わらせるのは不本意ですからね………」

 

「へぇ、私達相手では、この程度の役満なんて簡単に上がれるって訳?」

 

「さぁ、どうでしょうね?」

 

「ふ、ふ、ふざけるのもいい加減にして下さい!」

 

「なら、俺を本気にさせてみせて下さい。原村さん」

 

 

そう言って達也は、手配を崩し機械の中に入れる。

 

 

その後は、ごく普通の麻雀が進み東場が終了する。

 

 

これまでの点数は………。

 

 

 

優希:33,000点 

 

和 :33,000点 

 

部長:33,000点 

 

達也: 1,000点 

 

 

達也の1人凹みで東場が終了するが、当の達也は平然としながら配牌された牌を理牌していた。

 

あれだけ大口を叩いたのに本当に大丈夫なのか達也?

 

 

 

~京太郎vision END~

 

 

 

 

さて南2局の親番で、これまでの点数はっと………。

 

うん、ものの見事に俺の1人凹みで残り1000点と………まぁ、情報料としては妥当ってとこかな?

 

それにまぁ、この程度のハンデが無いと面白味が無いしな?

 

 

「宮永君、このままだと貴方ハコ割れするわよ?」

 

「大丈夫ですよ竹井先輩。この程度なら絶対にね!」

 

 

俺を心配する素振りを見せる竹井先輩を、嘲笑うかのように配牌されていく牌を理牌させて行きながら俺は仕掛けて行く。

 

 

配牌された手牌は。

 

{五赤五赤五五}{四四⑦}{24赤5}{③発中}

 

 

五萬が4枚に四萬が2枚が入って来ていた。

 

 

それに王牌は俺の目の前の山牌と来た。

 

 

「早くドラ表示牌を捲るんだじぇい!」

 

「あぁ、すまん」

 

 

片岡さんからの指摘に返答して、俺以外の連中が視線を配牌に向けている一瞬に俺は玄人業(ばいにんわざ)を実行した。

 

右手に四萬の対子を上下逆さまに握りしめ、左手で恰もドラを捲る振りして、右手に握りしめた四萬の対子と本来のドラ表示牌とその隣をすり替え{四萬■}とした。

 

玄人業の1つ【ドラ返し】の応用業。

 

イカサマだろって?

 

確かに本来イカサマは御法度だが、玄人達の世界ではごく普通に行われている行為で、やられる方が悪いと言う暗黙のルールみたいな世界だ。

 

現に、あからさまなイカサマ以外は様々玄人業が飛び交うのが玄人達の麻雀だ。

 

 

そんな世界の雀士を玄人(ばいにん)と呼ぶのさぁ。

 

 

「カン!そしてリーチだ!」

 

 

6巡目に暗槓しテンパイ即リーチを掛けた俺に彼女達は驚く!

 

それもそうだろ、何せ槓ドラが四萬と表示されたのだから。

 

五萬が4枚でドラ8+赤五萬が2枚在る訳だから合計ドラ12。

この時点で上がれば、数え役満確定だからだ。

 

そして7巡目。

 

 

「ツモッ!!」

 

 

手牌を倒して宣言する。

 

 

「リーチ、一発、ツモ、ドラ13で数え役満で16,000オールです!」

 

 

さぁ、反撃開始だッ!!

 

 


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