BanG Dream! ワーカーホリック少女が奏でるオト   作:あこ姫

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突如始まったシリーズ。



Rhythm 017 病室の夏 ①

皆様、どうも。 御神亜麻音です。

今日は8月2日。

私は今――絶賛入院中でございます。

 

事の発端は自身の17歳の誕生日の2日後に交通事故に遭って大怪我しました(笑)

いやぁ……笑って宣言する事項でも無いんだけどさ。

なってしまったモノは仕方ないし、悲観的になるのもアレだと思うんよね。

 

つーか、私自身がナーバスになっていると香澄が余計に自分を追い込みそうだしさ。

タダでさえバンド活動継続もヤバい心境だというのに更に悪化されても個人的に困る。

 

香澄のメンタルケアは私がどうこう言うよりも有咲達Poppin'Partyメンバーに委ねるのが最良だろう。

それか茜先輩とか親近者の方でもいいかもしれないけど。

ぶっちゃけ、私が下手に介入することでもないだろうとは思っている。

 

 

閑話休題。

 

 

 

暇だ。

 

 

もう一度言おう。

 

 

 

すんげぇ暇だ。本気で暇だ。

逆に疲れてくるって位に暇だ。

 

 

 

 

そりゃあ、そうだよ。

普段の健康体ならバンド練無い時はバイト入れまくってるもん。

それがな? 唯々病室のベッドで寝ているだけで1日が終わる。

これを暇と言わないで何と言うんだ。

 

そんな私の癒しは他のバンドメンバーがお見舞いに来てくれる事だ。

令王那は夏休みだからか、もう来ない日は無いくらいにお見舞いに来てくれている。

他にもあこやこころ、つぐみ達が日替わりにお見舞いに来ている。

 

そんな感じで回想に物耽っていると、病室のドアのノック音がして私の思考は現実に戻る。

 

「どうぞ」

 

私が入室を許可すると入って来たのは

 

「おはよう!姉様!! 調子はどうかしら?」

 

可愛い可愛い私の従姉妹の弦巻こころちゃんでした。

ヤベェ。あまりのスマイルの破壊力に昇天しちまいそうだぜぇ……。

病院だし蘇生措置も可能だろうし。

幾らでも昇天しても問題は無い!!

 

「いやいや、どうしてそういう思考になっちゃうんですか?亜麻音先輩」

 

私の思考にツッコミを入れたのは美咲。

 

「いや、普通じゃない?」

「全然普通じゃないですよ!? ホントこころが絡むと暴走しますよね」

「………………」

 

美咲の言葉に図星すぎて何も反論できない私である。

言わないでくれ。美咲よ。こころの尊みが反則級なのが悪いんじゃァ(責任転嫁)

さてと、こころ達が来たのは多分のカンだけど何かあるだろう。

 

「姉様!! 今から流し素麺をしましょう!!」

「え」

 

こころの提案に目が点になって間の抜けた声を出す私である。

え、『流し素麺』!?

あの半分に斬った竹を水路に見立てて水で素麺を流すやつ!?

え、ここ病院だよね!?そんなのどうやってやるんだよ!?

 

「あー……亜麻音先輩の気持ち凄く解ります。あたしも思いましたもん。でも諦めてください。もう既にセッティングは済んでいますから」

「………………」

 

えぇ……まさかのセッティング済みで開催決定なのかい。

しかもいつセッティングしたんだよ!?

 

ん……?そういえば今日日付変わった頃に何か物音がした気がしたけどさ。

まさか……ねぇ?

 

「ねぇこころ、一つ良い?」

「何かしら? 姉様」

「いつセッティングしたの?」

「今日の深夜よ」

「………………」

 

こころの言葉に無言になる私。

やっぱりだった。

まさかの予想大当たりで草しか生えないんだけど。

つか、病院関係者が何故止めなかったんだろうか。

 

あ、此処は弦巻グループの系列だったわ。

そりゃあ、誰も流しそうめん準備工事してても誰も止めないわな。

だって、こころの提案だもんな。

 

 

そう思うとなんか納得した私である。

 

「それじゃあ、ポチッとな」

 

こころが何かの装置のボタンを押すと床が開いて竹製の水路が出現し、あっという間に接続されて、その水路の終着点である私の病室には真ん中がせり上がったスペースが出現し、中央には大きめの木製の桶が鎮座していた。

 

その突然の出来事に驚く間に水路には水が流れ始めていて、最早素麺待ったなしである。

 

そういや、この水路普通に病室の壁ぶち抜いてるんだけど、何処が始点なんだろうか。

 

「はぐみー。流して始めてもいいわよー」

『オッケー! こころん!!』

 

こころがトランシーバーではぐみに連絡を取っていた。

所々でトランシーバーから風の音が聞こえてくるんだけど……。

まさかとは思うが、屋上に居るんじゃないんだろうな!?

 

「ねぇ、美咲」

「どうしたんですか? 亜麻音先輩」

「はぐみ何処に居るのよ」

「お察しとは思いますが、屋上です」

「……マジか」

 

美咲の返答にコレしか言えなかった。

私の病室って1階だ。

確か、この病棟は屋上ノーカンで10階建てだったはず……。

 

いや、マジでどんだけ大工事してんの!?

それを2時間ちょいで騒音も無く完遂て。

どんだけ規格外なのさ。弦巻家の技術力。

こればかりは弦巻家メイドの私でも驚愕である。

 

「ささ。姉様、これを使って!」

「え」

 

戸惑う私をよそに渡されたのはめんつゆが入った器と漆塗りの箸。

その直後に

 

びゅぅん

 

桶にシュートされる素麺。

 

びゅぅん

 

桶にシュート×2される素麺。

 

………いや、何今の。

クッソ思ってた以上に速いんだけど!?

流しそうめんってこんなに神速だっけか!?

私聞いたことなんだけど!?こんな流しそうめん。

 

困惑する私は右横にいる美咲&こころ(みさここ)に視線を向けると、2人はフツーに神速で流れる素麺を箸で掬って堪能していた。

 

え、マジでか。

取れないの、私だけ……??

 

………………………。

 

あぁ、そうか、そうか♪

なんか、すんげーイラッときた♪

やってやんよ、こん畜生が。

 

もう負けず嫌いな私はスイッチが入ってしまいましたよ、ええ。

ガチで素麺を掬いまくっていた。

この時は、味は覚えていない。本気で必死だったから。

 

「「……………………」」

 

尚、私がガチで素麺掬いに挑む姿を見ていたみさここはと言うと……

 

「亜麻音先輩……」

「姉様…………」

 

 

ドン引きしていた。

 

「…………あ」

 

現実に戻った私だけれどももう遅い。

どうやったって取り繕うのは不可能に近しい。

 

『OTL………(・ω・`)』

 

こころにドン引きされた私の心は崩壊していた。

もう砂化現象待ったなしである。

 

「えっと……だ、大丈夫ですよ。あたしもこころも特に気にしてませんから」

「そ、そうよ! ほら、はぐみのコロッケを食べて元気出して!!」

 

こころが高速で流れるコロッケを掬い、私に渡してくれた。

こころから受け取ったコロッケをめんつゆに浸して食べる。

 

あ、美味い。

なにこのめんつゆと合うの。

めんつゆ用に調整ってスゲェな。

私は北沢精肉店謹製の牛肉コロッケを堪能。

 

その後も素麺は勿論の事、饂飩だったり蕎麦だったり冷麦だったり棊子麺だったりの色々な麺類、かしわ天、芋天、イカ天、エビ天、シソ天、かき揚げ等の麺類のお供にピッタリな揚げ物も堪能していた。

 

〆に心太を皆で食して『病室DE☆流しそーめん大会』は幕を閉じたのであった。

その後、こころは疲れたのか私の横で眠りについている。

 

お腹も心も満足した私はこころの髪を撫で(堪能し)ながらふと思い出した事を美咲に尋ねることにした。

 

「ねぇ、美咲」

「……?どうかしましたか、亜麻音先輩」

「花音と薫は何処に居るのよ」

「あー……花音先輩と薫さんなら今()()に居ますよ」

「え」

 

美咲の言葉に絶句する私である。

 

え、青森!? あの本州最北端のAOMORI!?

何で其処まで行ってんだよ!?

どうなってんだ、花音の迷子スキルは!

そしてさぁ、気になるのが――

 

「美咲、なんで薫が巻き添えになってんの??」

「えっと……薫さん屋上に居て高所恐怖症を発症しまして、花音さんに頼んだんですが……」

 

なんだろうか、この後の返答スゴい予想できそう。

 

「花音さんが薫さんを気分転換を兼ねて羽沢珈琲店に連れて行こうとしたらしいですよ?」

「そしたら何故か青森に到達してたと……」

「はい。正確には白神山地のど真ん中らしいですけど」

 

あの二人大丈夫か……!?まさかの遭難とかしとらんよねぇ!?

 

「あ、遭難はしてないですよ?なんやかんやで青森駅前にたどり着いたらしいですし」

 

え、寧ろそっちのほうが怖いんやけど!?

物理法則色々と無視しとらんか!?

 

「突っ込んだら負けですよ。コレについては。あたしはもう何も言いませんよ」

「あぁ……そう」

 

美咲にこう言われては何も言えない私である。

納得してなくても納得するしかあるまいて。

 

「……で、何時帰ってくんのよ。花音と薫は」

「話によると、盆過ぎてからだそうです」

 

もう青森観光する気マンマンやん。

青森ねぶた祭りとか参加できるやん。

うわ、私も超行きたいんですけど。

ま、こんな状態じゃ無理やけどね。

 

「林檎、お土産に買ってこないかな」

「亜麻音先輩、林檎好きなんですか?」

「うん。飾り切りとか楽しいってのもあるけどね」

「へぇ……あ。亜麻音先輩お願いがあるんですけど良いですか?」

「『お願い』……?」

 

美咲の『お願い』ってなんだろう……。

こんな状態だからハード(意味深)な事はないだろう。

 

「それはないです。あと、『意味深』ってなんですか、『意味深』って」

 

美咲に見透かされていたのか先に否定された。

 

「言わない。言ったら墓穴掘りそうだし」

「『御神式多段階墓穴掘削法』とか言われてますんもんね」

「言うな。ってか、誰だ!?そんなこと言った奴」

「え、亮からですけど?」

 

石川ァ!!テメェ何吹き込んでやがんだよ!?

退院したらソッコーで〆る。

もう決定事項だよ。序に池上も加担してたら〆たるわ。

 

「まぁ、死なない程度でお願いしますね?」

「まぁ、うん。前向きに善処する事を検討するわ」

「それしないやつの常套句じゃないですか」

「(ゝω・)テヘペロ」

「それ、巴さんの(中の人の)持ちネタじゃないですか」

 

話が脱線し始めた。

誰だ、こんな事にした張本人は。

 

 

あ。

って……私でしたァ!

 

「あの、お取り込み中すいませんが、茶番はその辺にしてくださいね?」

「(゚Д゚)ノ ァィ」

 

と、言う訳で。

本気で茶番は終わりにして本題に入ろう。

 

「亜麻音先輩、あたしに林檎の飾り切りを教えてくれませんか?」

「別に良いよ。私で良ければ」

「本当ですか? ありがとうございます」

 

その後はこころが起きるまで美咲と談笑しつつもしっかりと堪能していた私である。

 

 

その後、盆過ぎて8月25日。

突如として帰ってきた薫と花音は私の御土産として『恋空』を5箱買って来た。

その林檎を使って飾り切り教室が催されたのは別の話。

 

 

そして石川亮と共犯者の池上拓也が退院後に処されたのも別の話である。

 

続……く?

 

 

 

 

 

 

 

 




病室で過ごす1日はマジで暇。
病室のベッドで1日過ごしていると普段よりも疲労貯まる。
それを1度ならず2度ならず……という実話。
入院経験はあるんだよ、これが……。

このシリーズはネタさえあれば続きます。



しれっと『頭の中将』さんの作品のキャラが登場しています。
中将さん、キャラの出演許可ありがとうございます。

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