トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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旅立ちの時

『弟子にしてください』

 

この言葉を初めて聞いたのはジョウト地方を旅している時だった。

それからシンオウ、カロス、アローラと何人も弟子入り志願してくる少年少女を見てきた。理由は様々だった。幼馴染に追いつきたい、初心者のお隣さんにこれ以上負けたくない、嫁を守りたい。

私は弟子入りを歓迎しているつもりはないが、基本的に断るつもりもない。その理由もまた色々あるが、1つは強くなりたいと願う子供の希望を摘みたくないのだ。

そのためユウリの弟子入りも受け入れるつもりだ。

しかし、これだけは聞かなくてはならない。答えによっては、断ることになる。

 

「1つ聞きます」

「な、何ですか?」

「なぜ私に弟子入りしようと思ったのですか? たしかに私はあなたより強いでしょう。しかし、私は現在トレーナーは引退して研究者の道を歩んでいます。他にも強いトレーナーがいる中、なぜ私に?」

 

そうなぜ私に教わりたいのか。

これが私が1番聞きたかったことだ。なぜなら、弟子になるということは私のバトル理論が基礎になる。もちろん基礎ができた上で、そこから自らのスタイルを築き上げるのは悪いことではない。むしろ、そこまでできれば免許皆伝だ。

しかし、これが強い人間なら誰でも良かったのなら、それは私の弟子である必要はない。なぜなら、誰でも良かった人間は他の強いトレーナーのスタイルも基礎にしようとしてしまう。

トレーナー、特に実力者は一人一人スタイルが全く違う。それなのにそれを基礎で混ぜ込んでしまえば闇鍋状態になってしまう。要するに根底が安定しないのだ。

別に様々な人間のスタイルを真似することは悪くない。実際イッシュ(1回目)で旅を共にしたトウヤは人のバトルを観察して真似することに長けていた。

しかし、そこには彼なりのバトルスタイルが根底にあったからできたことだ。何の基礎もない初心者トレーナーには、それは弊害でしかないのだ。

私がじっとユウリの瞳を見つめるが、ユウリは目を逸らさず。

 

「私はスクールで色んな先生に学んでいたです。その中には、元プロトレーナーの人もいたですけど、この人から色々教わりたいと思ったのは、オレンジさんが初めてなのです! だから、お願いします! 雑用でもなんでもしますから、弟子にしてくださいです!」

 

ユウリはもう一度頭を下げる。その動きには適当さなど感じられず、必死さだけが伝わった。

どうやら、本気のようだ。

 

「……ふう。あなたの目標はチャンピオンでしたよね?」

「は、はい! そうです!」

 

たしか今年のリーグが始まるのは、大体8ヶ月後。ギリギリだな。間に合うかは、彼女次第か。

 

「険しい道のりだとは思いますが、覚悟はできていますか?」

「……!? じゃ、じゃあ!」

「まずはけがを治しなさい。思ったよりもひどくはなかったようですが、それでも歩けるようにならなければ話になりませんから」

「はいです、師匠!」

 

こうして私に5人目の弟子が出来た。

 

 

 

どうやらユウリの足の状態は歩けないほど悪いわけではないが、ここまで無理して来たせいで少々腫れていた。そのため、私は応急処置をするために仕方なくユウリを担いで、ソニアの家まで連れてきた。

借りていた鍵を使ってドアを開くと、上からドタドタと階段を降りてくる音が響いてきた。

 

「あ! オレンジ、ユウリがまたいなくなったって電話来たんだけど何か知らなああああい!? って、ユウリ!? 何これ、どういう状況!?」

「散歩をしていたらいたので捕獲しました。ユウリゲットだぜ、というやつです」

「ゲットされちまったです」

「いや、そんなポケモンゲットしましたみたいに言われても!?」

 

朝から鋭いツッコミだ。

 

「というか、やはり無断で抜け出していたんですね。これは後でお灸をすえる必要がありそうです」

「は、鼻摘まみですか!? また鼻を攻撃しやがろうとしてるですね!?」

「いいえ、鼻摘まみはしませんよ」

 

私はユウリに微笑みかけ。

 

「今度はくすぐりです」

「ぎゃあああああああ! やめてください! 私くすぐりは苦手です!」

「それは良いことを聞きました。私、人の弱点を突くことがとても好きでして」

「このドS師匠、どうしようもねぇです!」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って! 2人とも仲良くなりすぎじゃない? というか師匠って何?」

 

ユウリを楽しく弄っていたところに、ソニアが手と疑問を挟んでくる。

そういえばソニアは事情を知らない。しかも、私とユウリは昨日が初対面なのだ。戸惑うのも当然だろう。

しかし、あまり多く話しても理解しにくいだろう。出来るだけ簡潔に答えよう。

 

「先程ユウリを弟子にしました」

「弟子にしてもらったです」

「どういうことよ!?」

 

2人で息を合わせてサムズアップすると、ソニアは余計に混乱した。

そして、かくかくしかじかと事の経緯を話すと。

 

「はああああああああ!? オレンジにバトルの弟子入りをした!? しかも、旅にも同行する!? ……待って一回整理させて」

 

ソニアは頭を抱えながら考え込む。

この反応も仕方ない。先程も言った通り、私とユウリは昨日が初対面なのだ。それが24時間も経たぬ内に師弟関係になった挙句、一緒に旅をすると言っているのだ。

ソニアからしたら、どこからツッコンでいいのか分からなくてなっているのだろう。

 

「よし整理完了。ちょっとユウリ! 師匠ってどういうことなの!?」

「そのまんまです。オレンジさんのバトルの強さの極意を教えてもらおうと弟子入りしたです」

「いやいやいや、おかしいでしょ!? そもそもオレンジは研究者なのよ? ポケモンバトルなんて……」

「最強などと自惚れるつもりはありませんが、野生のポケモンから自衛できる程度には嗜んでいますよ。元々、ガラル地方に来る条件にも最低限自衛できる程度バトルの腕がある人間という項目がありましたから」

「そ、そういえばそうだったわね……」

 

どうやら、忘れていたらしい。

 

「でも、10歳の女の子と大人の男が2人っきりって大丈夫なの? 親の反対もあるだろうし」

「ああ、親御さんの了解なら先程取りましたよ」

「取れたの!?」

「ええ、さっきここに戻って来る道中に電話で」

「すごかったですよ師匠は。私がいなくなって心が不安定な母親を巧みな話術で誘導しやがったです」

 

ソニアから不審者を見る目を向けられた。

私はため息をついて。

 

「人聞きが悪いことを言わないでください。私はこのままユウリが1人で旅に出るリスクと私と一緒に旅に出るメリットを提示して奥さんに選ばせただけです」

 

まあ、たしかにリスクの方は少し非日常的なことを盛り込んだが。

しかし、旅をしていればチンピラっぽい悪の組織が悪事を働いている場面に出くわすことはよくあるのだ。私は嘘は言っていない。自分の経験の中から、1人旅のリスクを説明しただけなのだから。99%のトレーナーは体験しないで終わる事の方が多いと思うが。

「リスクとメリットなら、後者の方がマシに聞こえるに決まってるじゃない……」

「どういうことですか?」

「CMと同じですよ。デメリットを言った後に、それを解決するメリットを紹介する。そうすればその商品がより良いものに感じられるでしょう? これが世の仕組みです」

「大人の世界って嘘ばっかりです!」

「嘘ではありませんよ、ユウリ。これは大人の事情……痛い! 耳が痛い!」

「子供に何を教えてるのよ! ……はぁ、本当に大丈夫なの?」

「心配ありませんよ」

「心配しかないわよ! ……もう、人が散々悩んでる時にあんたたちは」

 

ソニアは再度頭を抱えてため息をついた。

しかし、何故だろう。昨日から感じていたソニアの重苦しい雰囲気が、不思議と和らいだ気がする。

 

「2人はもう答えを決めてるのよね?」

「ええ、まあ」

「はいです」

「そっか……そっか。そうだよね、ユウリはずっとチャンピオンになりたいって言ってたもんね。チャンピオンになって、ダンデくんを振り向かせるって」

「ちょ、ちょっとソニアさん!?」

 

自分の恋事情をさらりとバラされ、ユウリは顔を真っ赤にしていた。

というか、ダンデ? あの約束すっぽかし男ではないか。そんな人間が好きとは、ユウリはダメ男が好きなのだろうか?

ダメ男好きは苦労する。ソースは未だに彼氏が山籠りを終えるのを待ち続けているカスミだ。

そんな男師匠として許さんと言いたいところだったが、何となくそんなことを言える空気ではなかった。

 

「……私も腹くくらないとね」

 

ソニアはがんばるぞい、とばかりに両手を握って何かを決意していた。

何のことか分からない私とユウリは、互いの顔を見合って首を捻った。

 

 

 

それから2日後。

私は旅支度を整えてブラッシータウン駅でユウリを待っていた。

あれから2番道路の調査をする傍ら、ユウリのポケモンの捕獲を手伝ったり、バトル理論の講義をしたりとあっという間に時間が過ぎていった。

心配されていたユウリのけがも問題なく歩ける程度には回復し、医者からの許可も降りたのでことなきを得た。

私が『ヌメルゴン探偵〜受けてみろ! 俺のほねこんぼう!』を読んでいると、ダッダッダとこちらに向かってくる足音が聞こえた。

ユウリだろうかと顔を上げると。

 

「はぁ、はぁ……良かったぁ。まだ行ってなかった……」

 

そこにいたのは息を切らせながら膝に手を置いているソニアだった。

何か忘れ物があったのだろうか? しかし、荷物に不足がないことは何度も確認したはずだが。

 

「はて? 何か忘れ物でもありましたか?」

 

ソニアは息を整えて姿勢を正す。そして、くすりと笑い。

 

「うん。ある意味忘れ物かな?」

「ある意味忘れ物?」

「そう。今回のあんたの旅、私も同行するの。だから忘れ物」

「……えぇ?」

 

ソニアが旅に付いてくるなど寝耳に水の私は、言葉を失ってしまう。

「なぜ?」

「元々おばあさまからね、今回のオレンジの旅に着いて行くか、研究者を辞めるかどちらか選べって言われてたの」

 

なるほど。だから、あのような空気だったのか。私の滞在予定を聞いたのも、ソニアへのタイムリミットを提示するため。

それにしても調査に行かなければ辞めろとは、なかなか厳しいな。さすがはマグノリア博士。男社会の研究者界隈を女性でありながら乗り越えてきただけのことはある。

 

「正直迷ってたんだ。わざわざ遠いカントーから調査に来るってことは相当研究に熱意のある人だろうし、私みたいな半端な人間が一緒に行っても邪魔にしかならないんじゃないかって」

 

私はソニアが半端な人間だとは一度も思わなかった。

彼女は私が知らないポケモンのことにも一つ一つ丁寧に答えていたし、熱意も十分感じた。

おそらく、こういうところなのだろう。マグノリア博士が、あえてソニアに厳しい選択を迫った理由は。

 

「でもね。オレンジとユウリを見てるとなんか真面目に考えるのがバカらしくなっちゃって。うんん、実際バカだったと思う。だって熱意とか半端者とか関係なく、2人は純粋に目的に向かって歩いてるだけなんだもんね」

 

ーーだから、私と踏み出すことにしたの。

 

ソニアは言った。

彼女は、自ら蓋をしていた空間から飛び出すことを選んだ。その選択を拒む理由など、私の中には一切なかった。

私は手を差し出して。

 

「なるほど。では、これからもよろしくお願いします、ソニア」

 

私の返答にソニアはニコリと笑顔になって。

 

「うん。こちらこそよろしくね、オレンジ」

 

ソニアは私の手を握った。

そこに、ユウリが手を振りながら駅の入り口から歩いてきていた。

 





大体主要キャラは紹介しきったので、質問形式にしようと思います。

Q.好きな異性のタイプは?

オレンジ→自立している女性。シロナ以外。
ソニア→一緒にいて楽しい人。
ユウリ→ダンデさん。
グリーン→かわいい女の子。
レッド→バトルが強い人。
ムーン→嫁(リーリエ)



見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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