トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
数万人の観衆がスタジアムに詰めかけて、これから行われるエンターティメントを今か今かと、まるで子供のように目を輝かせて待っている。
ここはエンジンスタジアム。今日この場で、未来のチャンピオン候補たちが顔を揃える。メンバーは各種ジムリーダー、リーグ関係者等から推薦を受けた人間だけ。観衆は、そんな実力者からその実力を認められたトレーナー達の初舞台を見届けに来る。
その雰囲気は独特だ。今日はポケモンバトルをするわけではない。プログラムは、入場、ガラルポケモンリーグ会長の言葉、チャンピオンの言葉、そしてトレーナーへの授与式だ。一切のエンターティメントに思えるものはない。
それでもこのイベントは、とても盛り上がる。それは一言、期待。
チャンピオンを目指すという常人では舞台にすら立てない目的に、皆は夢を見る。
例えば、プロ野球選手は、そのプロという看板を背負っただけで、野球のことに関してはすべてプロフェッショナルとしてこなす期待を観衆からかけられる。
今ある期待はその類だ。
無責任に自分の理想を押し付け、勝手に楽しみ、落胆する。
そんな修羅の世界に今日、ユウリとホップは足を踏み入れるのだ
「相変わらず、この空気は苦手だわ……」
私の横に座り観客の1人となっているソニアがぼそりと呟いた。
「ソニアも昔ジムチャレンジに挑戦したことがあるんですか?」
「うん、まあね。てっ、言っても、私はすぐに挫折しちゃったんだけど」
苦い記憶を思い起こすようにソニアは言う。
「ほう。それはまた勿体ない」
「気を使わなくていいわよ。自分にバトルの才能がないことは分かってたし、今の研究者してる自分も嫌いじゃないし」
気を使ったつもりはまったくなかったのだが、ソニアにはお世辞を言ったと捉えられたようだ。
まあ、本人の決断を他人が後からあれこれ言うのは良くない。
私が時計を確認すると、選手入場まで数十分ほどあった。
「少し飲み物を買ってきます。ソニアは何かいりますか?」
「じゃあ、冷たい紅茶と……アイスもお願いしていい?」
「また、太りますよ?」
「ひ、人の熱気で暑いの! だから、脂肪も燃焼されるから差し引きゼロよ!」
「ちょっと何言ってるかわからないです」
「いいからアイスもお願い!」
「……はぁ、了解しました」
私は財布を持って売店へと向かった。
□
結論から言うと売店のアイスと飲み物は大方売り切れてしまっていた。そのため、私はスタジアムの外にあるお店でアイスと飲み物を購入した。それだけ盛況ということだろう。
ただの時間潰しのつもりで外に出たら、結局おつかいに振り回されるとは。目的と手段が入れ替わっている。
まあ、今からでも十分開会式の開始には間に合うから問題ない。
「ユニラン、エナジーボール」
「ああ!? クスネッ!」
通りすがったバトルフィールドで、少年2人がバトルをしていた。あくタイプのクスネに対して、エスパータイプのユニランが完勝したようだ。
相性ではクスネの方が有利なのだが、ユニランのトレーナーはなかなか腕がたつトレーナーのようだ。もしかしたらユウリのライバルになるかもしれない。モジャモジャの特徴的な髪型をしているし、有名なトレーナーならばデータもあるかもしれない。
そんな風に他人事の感覚でユニランの少年の顔を見ると、不快感を感じた。
相手を見下したような嫌味な瞳。自信満々な自分の強さを信じて疑わない表情。一目で分かる、嫌なやつだ。
ユニランのトレーナーの少年は、クスネのトレーナーの少年に近づいて。
「あなたトレーナーを辞めた方がいいですよ」
クスネを抱き抱えていた少年は挙動が止まる。
そんなことなど気にせずに、ユニランのトレーナーは続ける。
「タイプ相性で有利なポケモンを使いながら、この醜態。あなたには才能がない。弱いトレーナーに使われると、ポケモンがかわいそうだ」
「う、あ……」
「ここで言い返せないことが何よりの証拠です。どうせ出るだけ無駄なのですから、ジムチャレンジも辞退することをお勧め。いや、するべきでしょう」
「うあ、うああああ……」
クスネの少年はついに泣き出してしまった。
無理もない。子供がいきなり赤の他人から自分のトレーナー人生を全否定されたのだ。そのショックは計り知れない。
そんな少年を、ユニランのトレーナーは汚らしいものを見るような冷たい目で見下していた。
私は久方ぶりに怒りを覚えた。
私はフィールドに乗り込んで。
「先程の言葉は不適当だ、取り消しなさい」
と言った。
それを聞いたユニランのトレーナーは、訝しんだ目で私を見て。
「どちら様ですか?」
「私はオレンジ。通りすがりの研究者です」
「はぁ。僕はビートです。それで僕の言葉のどこに不適当な部分があったというんですか?」
「1から10まで不適当ですよ。トレーナーを辞めるべきだの、才能がないだの、何から何まであなたの主観でしかない言葉だ」
「あなたは彼のバトルを見ていなかったんですか? 相性が有利なポケモンを使っておきながら、技を1つも当てられず、挙句惨敗する。これのどこに才能があると?」
「彼はクスネが倒された時真っ先に駆け寄って抱き抱えました。トレーナーの資質などそれで十分です」
私の言葉をビートは鼻で笑う。
「まさか、バトルの才能の話をしているのに根拠が精神論とは。研究者を名乗るのなら、もっと理論的に説明すべきでは?」
「分かりました。では、研究者としてあなたの勘違いを指摘しましょう。まずもって、バトルに才能なんてものはありません」
ビートは何言ってんだこいつと言いたげに眉を挟める。
「正確にはトレーナーに『バトルの才能』などありません。なぜなら、バトルするのはポケモンです。どんなに優れたトレーナーであろうとも、ポケモンの種族値個体値が低ければ負けます。それだけポケモンバトルにおいて、トレーナーの役割は矮小なものなのです」
私は人差し指を立たせて。
「では、それなら何がポケモントレーナーの資質に値するのか。簡単です。どれだけポケモンを大事にできているか、それだけです」
私はいつの間にかこちらを見ていたクスネのトレーナーの頭に手を置く。
「この子はそれが出来ています。それはトレーナーにとって最も基本的なことであり、唯一必要な資質です。よって、あなたの言葉は不適当だ、取り消しなさい」
「……理解し難いですね。なぜ、そんな弱いトレーナーを庇うのか」
「これが理解出来ないのなら、あなたは一流のトレーナーにはなれない。まあ、一生二流でいいというのならば、話は別になりますがね」
二流という言葉にビートはこめかみをひくつかせた。
「一生二流? リーグ委員長から推薦を受けたエリートである僕にはあり得ませんね」
「現実を見れないのならばそれでも構いません。しかし、あなたはこのままでは、チャンピオンどころかジムリーダーにもなれはしません」
「……ッッ! そこまで言うのならばバトルです! 僕のエリートたる実力を、あなたは知らしめてあげますよ!」
「良いでしょう」
ビートは荒い足取りでフィールドのトレーナー用のスペースに歩く。
時計を確認してみれば、開会式まで残り10分ほど。移動時間も含めればバトルにかけられる時間は5分程だが、十分だ。
「さて、悪い子にはお仕置きが必要ですね」
モンスターボールを片手に私はビートの反対側のスペースに歩を進めた。
□
ーーどういうことだ。
これはビートの頭の中にずっとリピートしている言葉だった。
自分の中では、精神論でイチャモンをつけてくる自称研究者に自分の正しさを教えてあげる予定だった。
しかし、現実はまったく違った。
相手には一太刀すら届かず、自分の手持ちのポケモンは相手のポケモンの一撃で戦闘不能にされていった。
手も足も出ない。いや、もはやバトルになっていない、一方的な蹂躙。
以前、委員長の伝でガラルチャンピオンのダンデと手合わせをしたことがある。
手加減を知らない男であるから、その時のバトルは惨敗に終わった。
だが、オレンジとのバトルはその時と同等、いやそれ以上の惨敗だった。
ーーあの男はチャンピオンと同等の実力者だとでも言うのですか。
そうなればトレーナーに『バトルの才能』なんてものはないという言葉に説得力が生まれる。
しかし、それはビートにとっては自信の根拠ともなり得るもの。否定してしまえば、ビートの信条までもが覆ってしまう。そう簡単に受け入れることは出来ない。
だが、明確に差を見せつけられた。
しかし……
だが……
ビートは、深い深いトンネルへと思考を沈めていった。
正確にはトレーナーの『才能』だけでは勝てない。とオレンジは伝えたがっています。
簡単設定ホウエン編。
オレンジ
ゴールドと共に新生ロケット団との戦いの中で親のことなど色々吹っ切れる。
シロガネ山でレッドとの全力バトルを最後にトレーナーを引退し、その後以前から興味のあった研究者の道に進む。グリーンの紹介でオーキド博士の元で働くことに。専門はポケモンの個体値、種族値の研究。
そんなある日、ホウエン地方のポケモンの生態調査のためにオダマキ研究所に出張。
そこでセンリの娘であるハルカのボディガードを頼まれ、あまりの剣幕に渋々承諾することに。
性格……かなり丸くなり今の性格に近づいているが、まだ尖っていた頃の名残を残す。
ポケモンは、エーフィとウィンディ、無理やり付いてきたピチューの三体。
ハルカ
センリの娘。絵を描くことが好きで、特に風景画を好む。夢は世界一の絵を描くこと。その足がかりのために旅に出ようとする。
バトルには興味がないが、途中コンテストに魅入られ、コンテストに出場し始める。
性格としては、子供っぽくわがままで頑固。特に絵のことになると周りが見えなくなる。絵以外のことは面倒くさがりで、食事の用意などはオレンジに任せて(押し付けて)いた。人見知り。
勉強は大嫌い。
オレンジ的には、ある意味ゴールドよりも手を焼いた。
センリ
ハルカの父、過保護。
レッド
環境のギャップに心を病み、リーグから失踪。その後オレンジとのバトルを経て、かろうじで心のバランスを取り戻す。
その後はチャンピオンを正式に引退し、シロガネ山に篭る。
食糧等は自給自足。時々、グリーンとオレンジが下界の食べ物を持ってきてくれる。
グリーン
苦労性で、面倒見の鬼。親友が失踪したり、ライバルが吹っ切れたり、1番振り回された人。
そしてその後無事サイフ係に。
オーキド博士
オレンジの上司。来るもの拒まず、去る者追わずが信条のため、オレンジのこともあっさり受け入れる。知識を伝えることにも抵抗がない。そのためオレンジはオーキド博士を1番尊敬している。
ナナミ
オレンジのことはグリーン伝いに聞いていたので、最初は懐疑的だった。しかし、働いている内に「あ、レッドくんに似てる」と悟ってからは、特に警戒していない。むしろ心配。
アクア団
アホ。大雨降り続けたらやばいぐらい大人なら知っとけ。
マグマ団
以下、大体同文。
ダイゴ
石マニア。普段は紳士なのに、石のことになるとキモい。残念イケメン。
オレンジ曰く、慣れればワタルよりマシ。
ミクリ
ナルシスト。ハルカをコンテストの道に導く。
オレンジ曰く、一生相入れない。でも、ワタルよりはマシ。
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
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オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
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オレンジが女の子だったら
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オレンジの日常