トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
一気に全部書くと長い上にグダリそうなので前後半に分けます。
それとダンデのポケモンは、まだ御三家が育っていないと言う考えの元、別のポケモンを入れています。あしからず。
ひりりと冷たい風が肌を撫でる。月は丸くはっきりと浮かんでいる。
昨日、あれほどまでに人で溢れかえっていたエンジンスタジアムも、今は人の気配すらない。
長い階段をゆっくりと歩いていると、入り口に腕を組んで佇む一つの影が見えた。
ガラル地方の英雄『無敗のチャンピオン』ダンデだ。
「よく来たな、オレンジ」
「あなたこそ。ちゃんとエンジンスタジアムにたどり着けたのですね」
彼は理解不能の方向音痴だ。正直、先に着いているとは思いもしなかった。
「ははっ当然だ。さすがに18時間以上かければ俺だって目的地に着けるさ」
「……18時間以上? まさかダンデ、あなた昨日の夜からここに向かっていたのですか?」
「その通りだ。言っただろう? 色々準備があると」
私としてはスタジアムの使用許可やスケジュール調整のことだと思っていたのだが。
暗闇で分かりにくかったが、近づいて見ると彼の目には隈があることに気がつく。
どれだけ私とのバトルを楽しみにしていたんだ、この人。子供か。
「随分と眠そうですが、バトルできるのですか?」
「問題ない! むしろいつもよりテンションが上がっているくらいだからな!」
「それは大丈夫じゃないと思うのですが……」
寝不足の末期の症状だ。よく私も研究に熱が入るとそんなテンションになる。
「無理だよ。今のダンデくんは誰にも止められないさ」
ダンデに呆れていると、スタジアムの入り口から人が出てきた。
白髪まじりの髪にシワが見える顔、そして首元には手拭い。
たしか、エンジンシティのジムリーダー、カブだ。
「はじめましてオレンジと言います。カントー地方で研究者をやっています」
「これはご丁寧に。ぼくはカブ。エンジンシティのジムリーダーにして、このスタジアムの管理人だ」
「ええ、存じています。たしか、カブさんはホウエン地方出身ですよね? 私、昔ホウエン地方を旅していたことがあるんですよ」
「おおっ、そうなのかい? ぼくはもうガラルでの生活の方が長いくらいなんだけど、やはり故郷のことを知っている人と会うのは嬉しいものだね」
故郷の名前が出たことが懐かしいのか、カブは口元を綻ばせていた。
「そういえば、ユウリやソニアはどうしたんだ?」
キョロキョロと首を動かしていたダンデが聞いてきた。
「今日のバトルは2人には伝えていません。ソニアに怒られるのも嫌ですし、ユウリはあなたのファンですから負ける姿など見たくないでしょう」
あとソニアに知られると絶対にしばかれるから言わない。大事なことだから二回言った。
負けるという言葉にダンデの目が鋭くなる。
「……俺は絶対負けないぞ、オレンジ」
そう言って、スタジアムの中にスタスタと歩いて行った。
こんな分かりやすい挑発に反応するとは思わなかった。今日のバトル、ダンデは相当な覚悟を持っているということなのだろうか?
「どうやら、ダンデ君は君に負けることを恐れているようだね」
「恐れている?」
「ああ。彼は無敗の名に恥じず、本当に一度も負けたことがないんだ。公式戦、野良試合全てでね。そんな彼にとってポケモンバトルに負けるというのは、未知の領域なんだろう。だから、こわいのさ」
「おやおや、私はトレーナーなどとっくに引退した、ただの研究者なんですがね」
私の言葉にカブは堪えきれず笑ってしまった。
「やめてくれ。君がただの研究者なら、彼に負ける恐怖を教えられなかったジムリーダー達は何なんだい?」
「失礼しました。しかし、私がトレーナーを引退しているのは紛れもない事実だ。あなた方が不甲斐ないことには変わりありません」
失礼千万な言葉だが、客観的に見て、いまだにダンデを脅かす人間が出てきていないことは不甲斐ないことだ。
私が見ただけでも3人はダンデを超える可能性を持つ才能を確認したのに、この地方のトレーナー達は何をしているのか。
正直言って、甘えている。最強のチャンピオンの存在をいいことに自分達が強くならなくていい理由にしてしまっている。ダンデのチャンピオン在位は10年。そう思われても仕方ないだろう。
「……厳しい言葉だ。しかし、その通りだな」
カブは重々しく呟くように言った。
「……一つ質問をいいかな?」
「構いません」
「我々には強くなる理由がある。ジムリーダーの立場として、1人のトレーナーとして、またそれこそチャンピオンを超えるために。では、一線から退いた君は何を理由に強くなるんだい?」
カブの聞き方は考えを聞いて後学に活かそうなどではなく、単純な興味での質問のようだった。
何を理由に強くなるのか。そんなもの決まっている。
「贖罪です」
□
「審判はぼくが務めさせてもらう。できれば、スタジアムを壊さないでくれよ」
フィールドの真ん中の審判ボックスから、カブさんの力強い声が響いてくる。スタジアムの独特な反響にはまだ慣れない。
そう言われても、普通にバトルしていても壊してしまう可能性があるから困る。
「平気ですよ。壊れたらダンデが全て補填しますから」
「ああ、問題ない」
「壊す前提なのか……」
がっくりとため息をついた。どうやら、諦めたようだ。
カブさんは両手の旗をあげる。
「では、バトルを始めよう」
「オレンジ。今日はチャンピオンのダンデじゃなく、1人のトレーナーダンデとして挑戦させてもらうぞ!」
「手加減はしません。頂点の力を見せてあげましょう!」
ダンデはまとっていたマントを投げてボールを持ち、私もそれに合わせてボールを持った。
「バトル開始!」
「行くぞ! ギルガルド、バトルタイム!」
「ギルッ、ガル」
「行きなさい、ペルシアン!」
「ペルニャア〜!」
ダンデはおうけんポケモンのギルガルド。私はシャムネコポケモンのペルシアンを繰り出した。
ギルガルドははがね・ゴースト、ペルシアンはノーマル。タイプ相性は互角。
「まずは様子をみましょう。ペルシアン、パワージェム!」
「ペルニャア!」
無数に現れた光の岩が、ギルガルドに迫る。
「ギルガルド、受けろ!」
「ギルっ」
盾はような身体を利用して石をすべて受け切った。元々、ダメージが半減することもあって殆ど効いていないようだ。
「反撃だ! ギルガルド、せいなるつるぎ!」
「ギルっ、ガルッ!」
ギルガルドは盾の状態を解除して剣を持つ。そしてその剣を光らせて、ペルシアンに迫ってくる。
「ペルシアン、接近してしっぽを使って剣を掴みなさい」
「ペルニャ!」
ペルシアンは接近してくるギルガルドを迎え打つ。
そして剣を振り下ろそうとしたギルガルドの腕にしっぽを絡ませて捕まえた。振り払おうと必死に腕をふるが、ペルシアンのしっぽは離れる気配がない。
「そのまま投げ飛ばしなさい」
「ペルニャア!」
「ギルガルッ!?」
ギンガガと金属が落ちて擦れるような音が響く。
軽々攻撃をあしらわれたダンデは顔を苦く歪める。
「追撃です! ペルシアン、シャドーボール!」
「ギルガルド、キングシールド!」
闇の球体は、現れた透明な壁に阻まれた。
そしてギルガルドは最初の盾の状態に戻っている。
これはバトルスイッチというギルガルドの特性だ。攻撃時は剣を抜いた状態になり高い防御力が反転して高い攻撃力になり、先程のキングシールドを使うとそれが元に戻る。
要は攻守共に優れたポケモンである。
なぜこのような特性を持っているのか、学会でも長く議論の的になっているポケモンだ。
故に、私は対処法も心得ているが。
「ギルガルド、ボディパージだ!」
「ギルっ、ガルッ」
ギルガルドの身体が眩い光を帯びる。
ボディパージとは、自らの身体を軽くすることで素早さを2段階上げる技だ。
「行け、せいなるつるぎ!」
「ギルッ、ガルッ」
残像が見える程のスピードで接近してくる。先程とは比べものにならない速さだ。
ペルシアンの真上で銀色に輝いた剣をギルガルドが振り上げた。
「遅い。ペルシアン、かわしなさい」
「ペルニャア」
しかし、振り下ろした先にペルシアンはいなかった。
「まずい!? ギルガルド、後ろだ! キングシールド……」
何か違和感を感じたのかダンデはしまったと口を動かす。
「よく気がつきました。しかし、もう遅い。ペルシアン、つじぎり!」
「ペルニャアッッ!」
「ギルガアァ!?」
つじぎりを受けたギルガルドは、その勢いのまま壁に叩きつけられた。そしてさっそく壁に蜘蛛の巣状の傷ができた。
「とどめのシャドーボール!」
「ペルニャア!」
黒の球体がぶつかると土煙が上がった。
そして、土煙が晴れると目を回したギルガルドが倒れていた。
「ギ、ギルガルド戦闘不能! ペルシアンの勝ち!」
「よくやりました、ペルシアン」
「ペルニャァ〜」
ペルシアンの首元を軽く撫でてやると、気持ち良そうに鳴いた。
久しぶりのバトルだったが、息はしっかり合っていた。やはり付き合いが長いとこのような時に助かる。
「さてさて、まだ序の口ですよ」
□
カブは自分の目の前で起こっていることが信じられなかった。
チャンピオンのポケモンが軽くあしらわれるように倒されてしまったのだ。
今までダンデの実力を生で感じてきたカブからすれば、到底有り得ない光景だった。
それもダンデのギルガルドは、攻守共に隙がないポケモンとして有名だ。
バトルスイッチにより攻守の種族値は高く、さらにボディパージやかげうち、キングシールドなど厄介な技を覚えている。そのため、あのギルガルドを倒すだけでもままならないというトレーナーは山のようにいる。
一瞬追い詰めたと思っても、キングシールドで軽々凌がれてしまうなどよくあることだ。
それをあんな手で封じるとは。
オレンジが使ったのは『ちょうはつ』。特殊技を封じる効果があり、そのせいでギルガルドはキングシールドを使うことができなかったのだ。
それにタイミングも嫌らしい。わざわざ一度目のキングシールドやボディパージでは使わずに、咄嗟の場面でキングシールドが使えないという状況を作ったのだ。
ダンデは気がついたようだが、時すでに遅く。
これを軽々やってのけるメンタル、技術、体力。まさに心技体において隙がないと言っていい。
「すごいな。いつの間にちょうはつを使ってたんだ? まったく気がつかなかったぞ?」
「あなたのギルガルドがボディパージを使っている時ですよ。これからは能力上昇系の技を使う時は気をつけた方がいいですよ。そのような技は隙を作りやすいですから」
「アドバイス感謝する」
ダンデのバトルはいわゆる横綱相撲だ。
相手のどのような戦法をも受け切り、正面から叩き潰す王者の戦い方。
よく言えばシンプル、悪く言えば単調。そしてその戦法でダンデは負けたことがない。それ故に能力上昇系の技の隙などあまり気にしたことはなかった。
まあ、使われても気がつかないのなら意味がないが。
「ちなみに気がつかないところは企業秘密なので内緒です」
「そうか」
ダンデはからりと笑う。
カブとしてはチャンピオンに気がつかれない戦法は非常に興味深かったので、少々残念に思った。
「次はこのポケモンだ。バトルタイム、ガマゲロゲ!」
「ガマゲコォォ!」
ダンデが繰り出したのはガマゲロゲ。みず・じめんタイプ。故にほのおタイプにとっては天敵である。
カブはいつもこのポケモンにやられるため、自身の最大の敵の出演に顔を曇らせる。
「ふむ。ペルシアンのまま続けてもいいのですが、ここはこの子に行ってもらいますか。戻ってください、ペルシアン」
若干物足りなそうな顔をしながらペルシアンはモンスターボールに吸い込まれた。
「行きなさい、メタグロス」
「メッタ!」
オレンジが繰り出したのはメタグロス。はがね・エスパータイプ。
じめんタイプの技に弱いポケモンを出したことに、カブは心の中で首を捻る。メタグロスを使うくらいならば、ペルシアンのままの方がよかったのではないかと疑問が浮かぶ。
「ガマゲロゲ、あまごいだ!」
ガマゲロゲは手に集めた青い球体を空に投げる。それが破裂すると雲が広がりぽつぽつと冷たい雨が降り始めた。
ガマゲロゲにあまごい。
トラウマを思い起こす組み合わせにカブはうっ頭が状態になってしまう。
ガマゲロゲの特性はすいすい。天候が雨状態の時、素早さが2倍になるのだ。要するに今のダンデの(ここ重要)ガマゲロゲはテッカニンをも上回る速度を誇る。
「行くぞ、ガマゲロゲ!」
「ガマゲロ!」
水を得たカエルはスピードスケートの選手を優に超える速度で滑走して、メタグロスに接近して行く。
カブの目では目で追うのが精一杯であったが、オレンジは顔色1つ変えていなかった。
「ガマゲロゲ、かわらわりだ!」
「ゲコゲーコ!」
「メタグロス、サイコキネシス」
「メッタ」
ガマゲロゲはかわらわりのチョップを振り下ろそうとする体勢のまま、青いエネルギー体に包まれて止められてしまった。
カブはあのスピードに反応できることにも驚いたし、何よりあの桁外れのパワーを持つダンデのガマゲロゲをあっさりと食い止めるメタグロスのパワーにも驚かされた。
オレンジは手を上に向けて。
「そのまま上空に投げ出しなさい!」
「メッタ」
「ガマッ!?」
いくら速度を上げようとも、空中では無意味。ガマゲロゲを出した瞬間から、すいすいの特性は予測していたのか。
カブはオレンジの読みの鋭さに寒気を覚えた。
「コメットパンチ!」
「メッタ」
「ガマアァァァ!?」
拳を決められたガマゲロゲは壁に打ち付けられる。カブは様子を確認しに行くが、ガマゲロゲはかろうじて立ち上がった。
「大丈夫か、ガマゲロゲ!?」
「ゲロ!」
しかしすでに体力は残り少ない。コメットパンチはダメージが半減するはずだが、それでもこれほどのダメージを受けているのだ。レベル差を察してしまう。
「ガマゲロゲ、相手を撹乱するんだ! メタグロスの回りを走れ」
「ガマゲ!」
八方塞がりをなんとか脱しようとダンデは仕掛ける。
サイコキネシスはある程度相手を捕捉できなければ効果をなさない。素早さが上がった今のガマゲロゲが最高時速で走り回れば、さすがのメタグロスもとらえることはできない。
なんとか、相手の隙をつくチャンスを伺う。
しかし、それは普段のダンデのバトルスタイルからは考えられない手だ。
要はダンデは二体目にして自らのバトルスタイルを崩さなければならない状況に追い詰められているのだ。
「小賢しいですよ。メタグロス、地面に向かってアームハンマー」
「メッタ!」
まるで地震に見舞われたような衝撃にスタジアム全体が揺れた。
メタグロスの拳を打ち付けた場所を起点にひびが割れ始め、隆起し、最後は地面が見るも無残なほどに倒壊した。
カブは修理期間とリーグ委員会への言い訳を考えて、頭を抱えた。
「……やりすぎましたね」
「メッタ」
冷や汗をかきながら言った。
メタグロスもここまでするつもりはなかったと、冷や汗をかいていた。おそらくコメットパンチの追加効果で攻撃力が上がっていたのだろう。
そんな中、割れる地面にのまれたガマゲロゲが目を回した状態で浮上してきた。
それで自分の本来の仕事を思い出した
「ガマゲロゲ戦闘不能、メタグロスの勝ち!」
世界は広い。カブはそう感じられざるをえなかった。
□
やってしまった。
まるで地盤沈下が起きたかのようなフィールドを見ながら、私はひとりごちる。
私としては地面を揺らしてガマゲロゲの動きを止めるつもりだったのだ。それがまさかコメットパンチの副次効果で攻撃力が上がっているとは思わなかった。
まあ、言い訳しても仕方ない。このままではバトルが続行できないのだから。
「メタグロス、サイコキネシスで地面を直しなさい」
「メ、メッタ!」
ボコボコだったフィールドが表面だけだが平地になった。その後、アームハンマーで踏み鳴らさせれば、なんとかなるだろう。
「応急処置はしました。しかし、あまり長くは持たないと思うので、後で業者に頼んで修復することをお勧めします」
「ああ、分かってるさ」
カブは引きつった笑みでうなづいた。
すいません。苦労かけます。
「それではバトルを続けますか」
「ああ。行くぞ、オノノクス!」
「オノォ!」
出てきたのはオノノクス。ドラゴンタイプで、なかなか優秀な種族値をしているポケモンである。
「フィールドを壊したペナルティです。交代です、メタグロス」
「メッタアァ……!?」
久しぶりのまともなバトルに燃えていたメタグロスは、悲痛な叫びをしながらボールに戻された。
まあ、ペナルティという面は嘘ではないが、実はこの子にチャンピオン級の実力を経験してもらいたかったところもある。
「行きなさい、ピチュー!」
「ピチュー……ピチューゥゥ!?」
ピチューはオノノクスを見た途端、逃げ出して私の後ろに隠れてしまった。
はあ、相変わらず強いポケモンには弱気だ。
私は膝をついてピチューと目を合わせ。
「ほら、行きなさい」
「ピチュ! ピチュ、ピッチュ!」
絶対嫌だ! 殺される! と言わんばかりに首をブンブンふる。
「そうですね。もし勝てたら、あなたが大好きなギザ耳ピチューちゃんに会わせてあげますよ」
説明しよう。ギザ耳ピチューちゃんとは、今カントーで大人気のアイポケ。私のピチューもその大ファンなのだ。
「ピチュ!? ピーピチュ?」
「ええ、本当ですよ。オーキド博士の番組によく出演しているので、頼めば会うこともできますよ」
多分、おそらく、メイビー。
「ピチュー!」
やる気になったピチューは電気袋から電気をバチバチと放出する。
やりとりを見ていたダンデは
「もう大丈夫か?」
「ええ、お待たせしました」
毎回、強い相手と戦う時はこのやりとりをするのだが、いい加減慣れてほしいものだ。
「今度はこちらから攻めますよ。ピチュー、十万ボルト!」
「ピチュゥゥ!」
オノノクスに電撃が直撃する。
「ノクス?」
だが、オノノクスには殆ど効いていないようだ。
「ピチュ!?」
「まあ、こんなものですかね。それではピチュー、突撃しなさい」
「ピチュ、ピチュピッチュ!?」
お前は馬鹿か!? と言いたげだ。
「聞こえませんでしたか? と・つ・げ・きしなさい。ギザ耳ピチューちゃんに会いたいでしょう?」
「ピチュ……ピチュウウウゥゥゥ!」
観念したのか、ピチューは涙目になりながらオノノクスに向かって走り出す。
「どういうつもりかは知らないが、隙だらけだ。オノノクス、ダブルチョップ!」
「オノォ、オノォ!」
両手にチョップのエネルギーを溜めて待ち構える。
「一撃受けたら終わりですよ。ピチュー、スライディングしてかわしなさい」
「ピッチュ!」
ピチューは野球のスライディングの要領でオノノクスの大きな股下を滑り抜けた。
体格差を活かす。ホップがユウリに使った手だ。
「アイアンテール!」
「ピチュピッチュ!」
「ノクスッ」
顔を歪めるがその程度のダメージでしかない。やはりパワー差はかなりあるようだ。
しかし、思う一念岩をも通すと言うように、一撃のダメージが低くても連続でダメージを与えれば大きなダメージになる。
「連続でアイアンテール!」
「ピチュピッチュ、ピチュピッチュ!」
「オノノクス、ダブルチョップ!」
「オノノ……ノクスッッ!?」
チョップを繰り出そうとした時、オノノクスに異変が起こった。身体がビリビリと電気を帯びる。
いわゆるまひ状態だ。
「しまった、せいでんきか!」
「ピチュピッチュ!」
「ノクスッッ!?」
初めてオノノクスが身体をふらつかせた。
確実に効き始めている。避ける時に身体をかすらせて、せいでんきの発生を狙ったことも功を奏している。
このまま行けば、いける!
「ここで大技行きますよ! ピチュー、ボルテッカー!」
「ピチュ、ピチュピチュピチュ……」
ピチューは電気を纏いながら突進していく。その時。
「ピチュっ!?」
地盤が弱っていた部分に足を取られた。
ボルテッカーはかなり繊細なバランスが要求される技だ。僅かな歯車の狂いがすべてを狂わせる。
ピチューは技を崩し、そのまま一回転して仰向けになってしまった。
そこに影が覆う。その影の正体はオノノクスだ。
ピチューはすべてを悟ったのか、震え声になりながら。
「ピ、ピーピチュ」
「オノノクス、ダブルチョップ!」
「ノクス、ノクス!」
轟音と同時に土煙が舞い上がる。
土煙が晴れると、目を回したピチューが現れた。
「ピチュー戦闘不能! オノノクスの勝ち!」
「……善戦はしました」
実際、足を取られなければ押し切っていた可能性もあった。
勝負にたられば厳禁だが、ピチューの成長が見えたいいバトルだった。
私はピチューに駆け寄り、抱き上げる。
「大丈夫ですか、ピチュー?」
「ピチュ……ピチュ、ピッチュ」
ピチューは悔しそうに唇を噛んで泣くのを我慢している。なんだかんだ親に似て負けず嫌いなのだ。
いつも変なプライドが邪魔をしているが、このようなバトルをこなしていけばどんどん強くなる。
「よく頑張りましたね。ゆっくり休んでください」
私はピチューをボールに戻す。
まあ、約束は約束なので会わせはしない。しかし、ギザ耳ピチューのCDくらいは買ってあげよう。
さあ、ここから一度仕切り直そう。
私は元位置に戻り、ダンデに向き直る。
「さあて、お楽しみはこれからですよ」
ポケモン紹介。
ペルシアン(カントー版)
カントー地方を旅している時に仲間になる。メンバーの中では古参。
素早さが異常に高く、かそく3回積んだテッカニンとも競えるほど。性格はつかみどころがない。
エーフィをよくからかって遊んでいたので嫌われている。(内容はオレンジに甘えて、エーフィを嘲笑する)。
技はパワージェム、つじぎり、シャドーボール、ちょうはつ
メタグロス
ホウエン地方を旅している時、ダイゴから譲られた。いつも壁に向かってとっしんしているなどバトルが大好き。力加減ができないのでよくやり過ぎては怒られてシュンとする。
今回もやり過ぎて、ペナルティを受ける。
技は、サイコキネシス、コメットパンチ、アームハンマー、ひかりのかべ。
簡単地方設定、イッシュ(1回目)編。
オレンジ
うんたらかんたらでシンオウの騒動をどうにかし、ヒカリを将来の助手にすることを約束してカントーに帰る。
その後数ヶ月間は自分の研究をしていたが、イッシュのアララギ博士から研究協力の依頼を名指しで受けたので、イッシュに渡航する。
そこで負けず嫌いの少年に目をつけられたり、友達電波インテリに目をつけられたりする。
ポケモンは、エーフィ、ピチュー、ガブリアス
トウヤ
チャンピオンを目指す少年。一匹狼気質で、自称ぼっちで捻くれ者。超がつくほどの負けず嫌いで、ふいにバトルしたオレンジに完敗したことが許さずオレンジの旅についてくる。
いつもバトルしてアドバイスなどを受けていた。
しかし、本人曰くあれはあいつが勝手にやってることだ。俺はけしてあいつの弟子なんかじゃない!と言い張っている。
なんだかんだで現実が見えていて、バトルセンスもある。
バトルに負けると部屋(テント)に篭ってぶつぶつと反省会をしている。
旅の終了後。リーグを制覇したがオレンジには勝てなかったため、カントーまでついて行く。面倒になったオレンジによって、グリーンのいるトキワジムにジムトレーナーとして働きながら、グリーンの修行を受けている。
目標は、打倒オレンジ。そして頂点のレッドを倒すこと。
N(えぬ)
電波。バトルは強い。なお、その理論にオレンジは興味ない。
チェレン
めがね。トウヤの幼馴染。インテリ。1人でどこかへ行くトウヤにいつも頭を悩ませる。
ベル
ドジっ子。天然。
アララギ
口癖はあらら。
アララギ(父)
なんか大物っぽい。
ゲーチス
黒幕。どこか小物っぽさが抜けない。
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
-
オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
-
オレンジが女の子だったら
-
オレンジの日常