トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 アニメ観た感想。いや、おま、そこはカイリュー使っとけよ……。

 


挑戦! ターフジム!

 

 

 ターフジム戦当日。

 私とソニアは現在控え室でスタンバイしているユウリの元を訪れたのだが。

 

「はぁ、貝になりたい……です」

 

 ユウリは部屋の隅でどんよりとした空気をまといながら膝を抱え込んでいた。

 どう見てもこれから初のジム戦に挑まんとする子供の姿には見えない。

 

「ずいぶんと元気がありませんね。どうかしたんですか?」

「いや、あんたのせいでしょ!?」

 

 ソニアのつっこみが耳をつんざく。

 

「はて? 私は何もしていませんよ。しいて言うなら、昨日一昨日と合計で30回ほどユウリを負かしたくらいですね」

「それよ! 何をどう考えてもそれしかないでしょ! 誰だって30回も負かされたら自信喪失するわよ!」

「だからといって手加減して勝たせても意味ないでしょう。それなら、しっかりバトルして負けさせた方が成長するでしょう」

「限度があるっての! たしかに負けさせた方がいい時もあるけど、メンタルブレイクさせたら本末転倒でしょうが!?」

「ああああもう! 負け負けうるせぇですよ2人とも! 喧嘩売ってやがりますか!?」

 

 現実逃避もしていられなくなったのか、虚だった目に光を宿してユウリは叫ぶ。

 

「ようやく戻りましたか負けユウリ」

「負けユウリはやめろです! ジム戦前に縁起でもねえですよ!」

「そうですね、失礼しました」

 

 私が素直に謝罪したのが意外なのか、ユウリは目を見開く。

 

「ど、どうしたですか? 師匠が非を認めるなんて……」

「勝負は時の運。運=勝率のユウリには縁起はとても大切なものですからね」

「遠回しに煽ってるですよそれ!?」

「ユウリ。カントーにはこう言う言葉があります、当たって砕けろと」

「砕ける前提で言うなです!」

 

 そこにジムの職員が控え室に入ってきて。

 

「申し訳ございません。そろそろジム戦が始まるので選手以外の方は控え室から出ていただけますか?」

「あ、すいません」

「では、私たちはこれで。応援してますよユウリ」

「笑顔が胡散臭い! ぜってぇ、嘘です!」

 

 

 □

 

 

 控え室を追い出された私たちは、初めから買ってあったスタジアムの席でジム戦が始まるのを待っていた。

 他の席を見てみるとやはり空席が目立つ。この時期に一つ目のジムに挑戦しているトレーナーへの期待値などこの程度なのだろう。無理もない。

 私としてはとても残念だ。もう少し人がいればソニアが人目を気にして説教タイムを短くしてくれるかもしれないのに。

 私は青筋を立ててこちらを睨んでいるソニアに。

 

「ソニア聞いてください。私はけして意味もなくユウリをボコボコにしたわけではありません」

「問答無用!」

「ちょ、耳はやめてください!? せめて頬に……いたたたた!」

「あんたの頑丈な身体には、耳くらいしかダメージ入んないでしょ! 本当になに考えてるのよ! あんたが厳しいのは知ってるけど、本番前に自信喪失させたら元の子もないでしょ!」

「だからそれにはわけがあるんですよ! 説明しますから、1回離してください!?」

 

 私の必死な言葉に耳を貸す気になったのか、ソニアはようやく耳から手を離した。顔は納得いっていないようだが。

 

「それで理由ってなによ?」

「……そうですね、まず1つ言えることは今回のバトル、ユウリが勝ちます」

「はい?」

 

 私のユウリ勝利宣言にソニアは目を点にする。

 

「いやいやいや! たしかにユウリは頑張ってるけど、相手だってジムリーダーよ! そんな簡単に行くはずないじゃない!」

「たしかにジムリーダーが本来のパートナーを使えば今のユウリでは太刀打ちできないでしょう。しかし、ジムリーダーはチャレンジャーの所有バッチに合わせてポケモンのレベルを下げなくてはなりません。そして、ユウリはそのレベル程度ならば普通に倒せる実力をすでに有しています。要は、トレーナーの実力の差以上にポケモンのレベル差があるということです」

 

 これが前に私が言ったトレーナーの才能の限界だ。

 トレーナーがどれだけ効果的な指示をしようともポケモンがついてこれないのなら要求するレベルを下げなくてはならないし、逆にトレーナーのレベルが低ければポケモンの実力は発揮できない。

 また、使うトレーナーの実力がなくとも、ポケモンのレベルに差があればそんなもの関係ない。

 極端な話をすれば、私とソニアだってポケモンを入れ替えれば私が負ける。

 

「なら……」

「なら余計にあそこまでする必要はなかったといいたいかもしれませんが、必要あるんです。なぜなら、ユウリがチャンピオンになるとき戦うかもしれないジムリーダーは手加減などしてくれません。全力でユウリを潰しにきます。ユウリはトレーナーとして飛び抜けた才能を持っていますが、精神的にまだまだ未熟なところが目立ちます」

 

 子供なので仕方ないかもしれないが、彼女は8ヶ月後にチャンピオンになることを目標にしているのだ。そこは直さなくてはならない。

 

「簡単に勝てるバトルは人の気持ちを緩め、慢心させます。今の彼女にはジムリーダー相手にそれが出来てしまう。だからこそ、ポケモンバトルの怖さを忘れさせないために、私は彼女を全力で叩き潰しました」

 

 スタジアムの照明が一瞬にして落ちると、パッとスポットライトがフィールドの中央を照らした。

 そこには麦わら帽子をかぶり、ムキムキに筋肉が隆起した男性が立っていた。モニターに映された拡大した顔はとても優しそうで、全てを包み込むようである。

 彼はヤロー。ターフジムのジムリーダーだ。

 ヤローの登場に観客たちが一斉に湧き上がる。

 その歓声に応えるようにヤローは手を振る。そうしていると、実況と思わしき男の声がスピーカーから響いてきた。

 

『それでは本日のチャレンジャーに登場していただきましょう! 出身はハロンタウン! そしてあの無敗のチャンピオン、ダンデから推薦を受けた期待の超新星! ユウリ選手だァァァァァ!』

 

 やたら巻き舌なところが気になるが、それ以上に観客のざわめきがすごい。どうやら、チャンピオンのダンデに推薦されたというところに興味を惹かれているようだ。

 なにはともあれ。

 

「そろそろバトルが始まるようなので、一旦話をやめませんか?」

「……そうね」

 

 訝しんだ表情をしながら、ソニアはフィールドに目を向けた。

 

 

 

 

 フィールドに立ったユウリは思う。

 息苦しさを覚える、観客の声に集中を乱される、フィールドがいやに広く感じる。これは、緊張から初心者が自滅するあるあるだとオレンジから聞かされていた。

 ユウリは無神経ではない。

 そのため、自分にもその症状が出るのではと不安があった。

 しかしどうだろう。その症状が出る気配は一切ない。代わりにあるのはオレンジの煽り顔への怒りだけである。

 絶対に勝ってやる。ユウリは決意を再度固めて、ボールを手に取った。

 

「はじめまして、ぼくはヤローといいます」

 

 集中力を高めていたところに呑気なテンションで話しかけられて、ユウリは虚をつかれた。 

 しかし、トレーナーとのコミュニケーションは大事だと色んな人に教えられていたので、すぐに返事した。

 

「は、はじめまして、私はユウリです。今日はヤローさんの胸を借りるつもりで頑張るです」

「礼儀正しいですね。それにとても落ち着いています」

 

 ヤローはユウリがぽかんとしていることに気がついたのか、まゆを困らせて。

 

「急に話しかけてすいません。ぼくに挑戦するトレーナーは初めてのジム戦の方が多いので、こうしてバトル前に少しでも気を紛らわせようとするんですよ。緊張している時は誰かとの会話がいいですからねぇ。あとは怒らせたりするといいって聞きますが、ぼくには向いてないですしねぇ」 

「怒らせる……はっ」

 

 ユウリには怒らせることに心当たりがあった。今思えばオレンジは普段ユウリを弄ることはあるが、あの場面で無闇に煽るようなことを言うのは少し違和感を覚えていた。

 そんな無神経な人間ではないとユウリも思っていたのだ。

 そしてその考えは間違っていなかった。無意識にユウリの頬が緩む。

 

 ーーまったく、気遣いが分かり難いんですよ!

 

 心の中で叫んだ。それと同時に審判の声が聞こえて来る。

 

「バトルは2対2のシングルバトル。どちらかのポケモンが2体とも戦闘不能になるまで続けます。両者質問はありませんか?」

「ありません」

「ないです」

「それではバトル開始!」

 

 審判の声と同時に、決戦の火蓋が切って落とされた。

 

「行くですよ! アオガラス!」

「アオガァッ!」

「行くぞ、ヒメンカ!」

「ヒメ!」

 

 初めて見るポケモンにユウリは図鑑で情報を検索する。するとあのポケモンはヒメンカ。当然だがくさタイプだ。

 ヤローがヒメンカを使ったというデータはなかった。ここで初だしということだ。

 どのような技を使うかはわからない。しかし、状態異常を使うことが特徴的なくさタイプに安易に攻め込むのは危険だ。

 

「アオガラス、スピードスターです!」

「アオガァッ!」

 

 ひこうタイプの特徴を活かして空中からいくつもの星を放つ。

 

「ヒメンカ、はっぱカッターで対抗だ!」

「ヒメッ!」

 

 葉っぱは星とぶつかり合い、空中で爆発した。

 しかし、その陰からアオガラスが迫っている。

 

「アオガラス、ついばむです!」

「アオガァッ!」

「速いっ……」

「ヒメェー!?」

 

 ついばむを受けたヒメンカは吹っ飛ばされるが、自らの特性を活かして風に乗りゆらりゆらりと飛ぶことで、地面に激突するダメージをゼロにした。

 そのおかげで一撃で戦闘不能は避けられた。

 しかし、ヒメンカは肩で息をしている。ダメージはかなり大きいようだ。

 

「ヒメンカ、はっぱカッター!」

「ヒメ!」

 

 ヒメンカから、再度放たれた葉っぱがアオガラスを襲う。

 

「避ける必要ないです、はたき落とせ!」

「アオガ、アオガ!」

「そこにやどりぎの種だ!」

「ヒメ!」

 

 はっぱカッターに気を取られて種への反応がワンテンポ遅れてしまった。

 このタイミングではかわすことはできない。しかし、はたき落とせば種はツタとなってアオガラスを締め上げて体力を奪ってくる。

 ユウリはとっさに。

 

「アオガラス、スピードスターで打ち落とせです!」

「アオガァッッ!」

「なんだって!?」

 

 スピードスターは必中技。故に小さな種であろうとも問題なく当てられる。

 種を撃ち落とした星は、その勢いのままヒメンカに向かって行った。

 

「ヒメッ!?」

「とどめのついばむです!」

「アオガァッ!」

 

 ヒメンカに空から猛スピードで落ちてきたついばむがぶつかると、土煙が舞った。

 アオガラスが抜け出してきて優雅に飛び回る。

 そして土煙が晴れると目を回したヒメンカが倒れていた。

 

「ヒメンカ、戦闘不能! アオガラスの勝ち!」

 

 審判の声が響くと同時に、われんばかりの観客の歓声が響いて来る。

 ジムリーダーのポケモンが苦戦もなく倒された。この事実が観客に期待を持たせたのだ。

 

「まさかこんなに簡単に倒されるとは思っていませんでした。あなた強いんですねぇ」

「そ、それほどでもあるです」

 

 ジムリーダーに褒められて、照れ臭くなったユウリはつい素っ気ない言葉を返してしまう。

 

「次のぼくのポケモンはこの子だ。いけ、ワタシラガ!」

「ワタワタ」

 

 出てきたのはワタシラガ。このポケモンはユウリも知っている。ヤローがジム戦で使うエースポケモンだ。

 そしてそれは同時に切り札を使うことを指している。

 

「さあ、ダイマックスだ! 根こそぎ刈り取ってやる!」

 

 ヤローはワタシラガをボールに一度戻す。

 するとヤローのダイマックスバンドに赤い光が集まっている。その光がボールに蓄積されていくと、ボールは巨大化した。

 ヤローはそのボールをポンポンと優しく撫でて、フィールドに投げた。

 

 

ワタワタアアァァ!

 

 ダイマックス化したワタシラガに会場のボルテージが上がる。

 ここでユウリも対抗してダイマックスすることも考えたが、ユウリはあえてその手段を取らないことに決めた。

 なぜなら、ダイマックスは時間が経つとエネルギーが切れてサイズが元に戻る。それならここで安易に対抗せずに、ダイマックスを温存して少しでも相手の体力を減らした方が勝つ確率が上がる。

 ユウリはそう考えた。

 

「いくぞ、ワタシラガ! ダイアタック!」

ワタワタァ!

「アオガラス、こうそくいどうでかわせです!」

「アオガ!」

 

 アオガラスが猛スピードでその場から離れると、その下から柱のようにエネルギー体が突き出してきた。

 ダイマックスのあまりの迫力に観客も息を呑む。

 しかし、ユウリは特に驚いた様子はなかった。むしろ困惑していた。なぜなら……

 

「試してみるかです……。アオガラス、ついばむです!」

「アオガァッッ!」

 

 すばやさを上げたアオガラスは、トップスピードで巨大化したワタシラガに突進して行く。

 

「隙だらけですよ! ワタシラガ、ダイソウゲン!」

ワタワタァァァ!」

 

 ワタシラガはやどりぎの種など比較にもならないほど巨大な種を投げる。その種から生えてきたツタがアオガラスを襲うが、ユウリは笑っていた。

 

「やっぱり! 師匠の攻撃の方がはえぇし、つえぇですよ! アオガラス、全部かわせです!」

「アオガ、アオガ」

「なんだって!?」

「いっけぇぇぇ!」

「アオガァッッ!」

ワタワタ……!

 

 こうかはばつぐんだ。

 大ダメージを負ったワタシラガはよろよろと後退していく。

 しかし、ユウリの攻撃は止まらない。ワタシラガが意識を曖昧にしている時を利用して、アオガラスはその背後に回り込んでいた。

 

「後ろだ! 来るぞワタシラガ!」

「遅いですよ! アオガラス、ついばむ!」

「アオガァッッ!」

ワタワタッッッ!?

 

 無防備だった背後からの強烈な一撃にワタシラガは前方に倒れ込んだ。大きな体に恥じない土煙が舞い上がる。

 そして土煙が晴れると、小さくなったワタシラガが目を回して倒れていた。

 

「ワタシラガ、戦闘不能! アオガラスの勝ち! よって勝者、チャレンジャーユウリ選手!」

 

 その宣言とともに会場をわれんばかりの大歓声が埋め尽くした。

 

 

 

 

 結局ユウリはダイマックスすら使わずに、ヤローに勝利してしまった。

 その事実にソニアは未だ信じられないようで、唖然とした表情のままフィールドを見ていた。

 そしてようやく絞り出すように。

 

「……あれが修行の成果なの?」

「まあ、大方の目的は最初に話した彼女の慢心をなくすことです。しかし、付随的に強者とのバトルにならすことも目的にしていたのですよ」

 

 ようは160キロの速球を見た後に、100キロの速球を見ると遅く感じるように、人間は慣れることができる。

 もっと言えば、チャンピオン級(自分で言うのもなんだが)の実力者と何度もバトルすれば、ジムリーダーなど目じゃない。

 これは思考型か直感型かで変わるが、ユウリは後者故に身体で覚えてもらうのが一番早いのだ。

 

「あなたって何者なの?」

 

 ソニアは困惑した顔で言ってくる。

 どうやら、私のことを未知の生物とでも思っているようだ。

 たしかに、ユウリを教え始めてまだ一月も経ってない。そんな短期間でジムリーダーに完全勝利させるほどの実力を付けさせたと見れば、ソニアにとっては未知との遭遇かもしれない。

 だが、私は別に特別な人間ではない。少し人生が上手く行っただけの普通の人間である。

 

「……私はただの研究者ですよ」

 

 

 





 Q.元同行者は今何やってるの?

「そうですね……。たしか、ヒカリとムーンはチャンピオン。トウヤはグリーンのジムで働いていて、メイは女優です。セレナは未だに修行の旅でジョウトに、ハルカは画家として世界中を飛び回っているそうです。……ゴールド? 知りませんよ、あんな不良弟子のことなんて。どうせ、ジョウトの育て屋の老夫婦で働かされているんじゃないですか?」

 
 思ったよりもシンオウ地方編の投票が多かったのがびっくりです。
 一応、全編短編は考えていたのでタイトルだけ乗っけときます。参考にしてください。

 ・ホウエン
 親馬鹿暴走!?、潜入ニューキンセツ

 ・シンオウ
 山賊? ガバイト登場!、シロナ結婚!?

 ・イッシュ
 おばけなんているさ(トウヤ)、メイの全イッシュ巻き込みプロポーズ大作戦!

 ・カロス
 ウキウキ、メガシンカ!、女たちの仁義なき戦い(バレンタイン)。

 ・アローラ
 バカンスにトラブルは付き物?、アローラinサンタクロース。


 

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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