トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 何となく、圧倒的何となく! (謎の言葉)


オレンジ尾行します!

 

 ユウリがジムリーダーに勝利後、泊まっているホテルにはマスコミが雪崩こんで来ていた。

 ジムリーダーをダイマックスすら使わずに勝利してみせた新星、しかも推薦者は無敵のチャンピオン。  

 そんな話題性抜群の人間をマスコミが放っておくはずもなく、取材やテレビ出演の依頼を取り付けようと必死に群がってきたのだ。

 その騒ぎは凄まじく、協会側が取材規制をかける事態にまで発展した。

 結局一週間ほど記者やテレビの対応に追われてしまい、私やソニアもぐったり疲れていた。

 そしてようやくマスコミの騒ぎも少し落ち着いた頃。

 

「明日は1日自由行動にしてほしいです」

 

 すっかり営業スマイルが張り付いているユウリが言った。

 その言葉に死んだ魚のような目になっているソニアが。

 

「急にどうしたの? たしかに明日は取材は入ってないけど……」

「ちょ、ソニアさん……ゴホン。だって私たちターフタウンに来てバトルと取材対応しかしてねぇですよ! ショッピングとか人気のスイーツとか、色々見てまわりたいです!」

「要は観光したいということですか?」

「その通りです!」

 

 たしかにわざわざ町に寄ったのに観光もせず去るのは味気ない。どうせ時間はあるのだから、1日くらい問題ないだろう。

 

「構いませんよ。私も買いたいものがありますし」

「……ハッ! そ、そうね。私も買わなきゃならないものがあったの忘れてたわ!」

 

 なぜか妙に声が上擦っているが、まあ気のせいだろう。

 

「それでは明日1日は各自自由行動ということで。ただし、ユウリ。あなたは変装の一つくらいはしてください。マスコミは減ったとはいえ、あなたは一般人からも認知されてますから。変に騒ぎになると面倒なことになりますよ」

「わかってるです!」

 

 ユウリは元気よく敬礼ポーズを取った。

 ……心配だ。

 

 

 □

 

 

 夜、良い子は寝ているであろう時間。

 ソニアはユウリの部屋に訪れていた。ワンルームの狭い部屋のベッドに女の子が2人向かい合っている。

 一見すれば明日の予定をワイワイ楽しそうに話し合っているようにも見えるが……。

 

「ふっふっふっ、ついに計画を実行する時がきたです」

「そ、その通りです首領。彼奴もまさか自由行動と言われた日に追跡されているなんて思いもしな……しねぇと思いやす」

「……ソニアさん。もっと堂々とやってくださいです。ヤジロン軍曹はそんなか細い声はしてねぇですよ」

「は、恥ずかしいものは恥ずかしいんだからしょうがないでしょ! あんた私のこと何歳だと思ってるのよ! というか、これ何!?」

「ガブリアスキッドに出てくる悪役、フライゴン首領とヤジロン軍曹の悪巧みシーンのパロディですよ! 私昔から一度やってみたかったです!」」

 

 無邪気に笑うユウリ。その裏にはガブリアスキッドを語り合える友達がいなかったことを暗示させ、ソニアの保護欲を刺激した。

 そう言われてしまうとソニアも強くいえない。

 

「それにしても気が進まないんだけど……オレンジを尾行するなんて」

 

 尾行。それは人の跡をつけて、その人物の行動を監視する調査方法の一つである。

 探偵がストーカーくらいしか、そんな行動をすることはない。

 

「今更何言ってるですかソニアさん! あの秘密主義野郎のバトルの強さの秘密を暴くですよ!」

 

 秘密主義野郎とはオレンジのことである。

 要は、ユウリはジムリーダーに圧勝して、ようやく自分って案外強いんじゃね? ということに気がついてきたのだ。

 それでもオレンジの足下にも及ばない現実。しかも当のオレンジはいつも調査に仕事ばかりで、ろくに鍛錬をしている様子もない。

 そこでユウリは思った。あの野郎、実は強くなる方法を隠していやがるのでは(意訳)?と。

 その秘密を暴くためにわざわざ自由行動を願い出たのだ。

 オレンジを油断させて尻尾を出させるために。

 

 しかし、ユウリはアホなことは断固として認めないが、自分が少々おっちょこちょいなことは自覚している。

 そこで大人のソニアに協力を願い出たのだ。

 

 一方ソニアも、オレンジのことが気になっていた。

 別にそれは恋愛的な意味ではない。オレンジと旅を始めて一月が過ぎたが、いまだにソニアはオレンジのことを何も知らない。

 仕事の話はよくするのだが、プライベートな話になかなかならないのだ。

 それだけならいいのだが、オレンジは意図的にそちらの話にいかないよう誘導している節がある。

 ユウリはよく考えずに秘密主義野郎と揶揄したが、あながち間違いではない。ソニアからすれば、オレンジはまさに自分の情報へのガードが固い秘密主義野郎なのだ。

 そして先日のジム戦でのこと……。

 そんな積み重ねもあり、ユウリの話に興味が湧いてしまったのだ。

  

 ただ、今は少し抵抗感がある。

 オレンジが秘密にしているのは自分の過去を知られなくないからではないかと思ったからだ。

 自分だって知られなくない過去は山のようにあるし、見せたくないプライベートがある。

 それを本人の了承なしに調査しようとするのは、強引ではないかと思うからだ。

 

 しかし、相手は感情最優先の子供だ。

 そんなソニアの心など気づきもしない。

 

「明日は頑張るぞ! おー!」

「お、おー……」

 

 押しに弱いソニアが折れて、話はまとまってしまった。

 

 

 □

 

 

 翌日、運がいいのか悪いのか分からないが、天気は快晴だった。

 絶好の追跡日になってしまった。雨が降っていたら、足跡で気がつかれるからやめようって言えたのに……。

 オレンジは朝食を食べてすぐに行きたいところがあると外に出てしまった。

 そして待ってましたとばかりに、ユウリは目を光らせて追跡を始めた。

 私は気が進まなかったが、ユウリが何かやらかないか心配なので同行することにした。

 ……本当にユウリが心配なだけだから! 他意はないから!

 そんな悲しい自己肯定をして、物陰に隠れながらオレンジの跡をつけていく。

 

「ふっふっふっ、どうやら星は私たちの存在にまったく気がついていないようだな、です」

「そりゃそうでしょ、普通誰かにつけられてるなんて思わないわよ。……ところで、その趣味の悪い帽子とメガネは何?」

「師匠から昨日もらったです! なんか師匠が好きな小説のキャラグッズらしいですよ、ヌメルゴン探偵シリーズってやつです」

 

 え? ちょっと待って。私あいつの好きな小説なんて聞いたことないんだけど……。

 しかもグッズまで貰ってるし。

 羨ましいとかじゃないけど、旅仲間なんだし平等に扱うべきじゃない? 

 

「貸してもらったですけど、まあまあ面白いですよ」

 

 しかも貸し借りまでしてる!?

 オレンジってユウリのことよく弄ってるけど、けっこう可愛がってない!?

 そんなやり取りをしている内にオレンジはとあるお店に入って行った。

 店名は『マホイップ&ホイップ』。

 

「あれは『マホイップ&ホイップ』。最近ガラルでブームになりつつある、人気スイーツ店です!」

「オ、オレンジがスイーツ!? あいつスイーツとか食べるの!?」

「師匠は甘党ですよ。色んな地方のスイーツに詳しいから、話を聞いてて面白いです」

 

 また私の知らない情報をユウリが知ってる。

 

「エンジンシティで連れて行って貰ったお店もすごく美味しかったです」

 

 しかも今度はご馳走になってる!? 

 これはオレンジがユウリに甘いの? それとも私に冷たいの? どっちなの!?

 

「うーん。でもこれはバトルに関係ねぇです……ソニアさん? どうしたですか、顔が引きつってるですよ?」

「べ、別になんでもないわよ」

 

 べ、別にオレンジが私を誘わなかったことに対してふてくされてなんかないし! 

 自分のお金だもの、誰を誘おうが勝手よ。

 でも、ユウリを誘うなら私も連れて行ってくれてもいいんじゃないかなぁー。

 納得できない気持ちを抱えながら、向かいのカフェに入りオレンジを観察する。

 少しして、オレンジのテーブルに皿が運ばれてきた。

 携帯で料理の写真を調べてみると、巨大なパンケーキのような生地にこれでもかというホイップクリームが乗せられ、そこに蜂蜜がふんだんにかけられていた。

 ……見るからに甘そうだ。全部食べたら胸焼けしそう。

 

「まさかあいつ一人で全部食べる気?」

「甘いものは別腹って、言ってたですよ。いくら食べても太らない……あ」

「なめんな」

 

 いくら食べても太らない? そんな羨ましい……けしからない体質だったのか。

 私なんてこの前まで必死に甘いもの我慢して、ようやく体重を元に戻したのに。

 

「あわわわわ、ソニアさんから黒いオーラが漏れ出てるです……」

「ふふふふふ、気にしなくていいのよユウリ。ちょっと世界の理不尽に我慢ならなくなってるだけだから」

 

 ちょっと殺意が湧いたけど。

 オレンジはクリーム山盛りのパンケーキを簡単にたいらげて、店を出た。あれだけ食べて太らないなんて羨ましい。

 私たちは急いで会計をして、その後に続く。

 しばらく歩くと、大きなお店に着いた。どうやら、古本屋のようだ。

 

「古本屋? 研究の資料でも探すのかな?」

「違いますよ。たぶん、ガラルの超名作推理小説『シャーリック•ブーイズ』シリーズを買うんだと思うです。昨日、『pokeien』で私でも知ってる有名なタイトルはあるかって聞かれて、それを答えたですから」

「……ちょっと待って。ユウリはオレンジのアカウント持ってるの?」

「はい、持ってるですけど? 旅を一緒にするくらいなら普通持ってねぇですか?」

「私持ってないんだけど?」

 

 私がそう言うと、ユウリは気まずそうに目を逸らした。

 たしかに電話番号とメールアドレスがあれば仕事の連絡は困らない……困らない。

 ふーん。べっっっっつに! 怒ってないしいいぃぃぃ! ただなんかムカムカするだけだし!

 

「こ、ここもバトルとは関係なさそうです! あーもうなんか師匠の後をつけるのも飽きてきたなぁー! ソニアさん、これから2人でスイーツでも食べに行かないですか?」

「いいわ。私はもう少しオレンジを観察しているから、ユウリ一人で行ってくれば」

「そ、そうなんですかー! なら、私も自分で誘ったわけですから、付き合わないわけにはいかねぇです!」

 

 なぜかユウリが泣きそうになってたけど、すでに私の眼中には入っていなかった。

 

 

 

 

 その後のオレンジはウールーカフェでウールー達と触れ合い、また違うスイーツ店に入り美味しそうなスイーツを食べて、牧場でまたウールー達と触れ合い……とがっつり自由時間を満喫していた。

 ほのぼのとした空気が漂う。

 

 一方。

 それを追跡しているソニアとユウリの空気はどこか殺伐としていた。

 オレンジが何する度にソニアが知らない情報をユウリから聞かされて、ソニアの機嫌が悪くなり、ユウリが話を変えようとするがアホなのでまた似たような話でソニアの機嫌を悪くしを繰り返した結果だ。

 ユウリはあんな提案をした過去の自分を呪った。ソニアはオレンジのプライベートを覗き見る罪悪感は消え去り、代わりになんかもやもやとする心だけが膨らんでいた。

 

 そうして時間は経ち、日はすっかり暮れて夕日が顔を隠しそうになっていた。

 結局今日の収穫はユウリは特になし。ソニアは予想以上に自分はオレンジのことを知らなかったということである。

 

 ーーーここまで信じてもらえてないなんて思ってなかった!

 

 この一月ソニアはとても楽しかった。

 研究者として会話もたくさんしたし、軽口も言い合ったし、何より10歳の時とはまた違う世界を毎日のように見れたことが新鮮だった。

 でも、その日々もまるで空虚だったかのように思えてしまう。

 そんなこと思いたくないのに、そんな考えが浮かんでしまうことが悔しいのだ。

 ムカムカとする心が歩く速度を上げる。

 

「キャッ」

 

 脳の容量を別のことに割いていたせいか、視界が狭くなっていたようだ。

 横道から出てきた人間に身体をぶつけてしまった。

 

「ちっ、いってぇな!」

 

 そしてぶつかってしまったのは、最悪の人種だった。

 黒い革ジャンに派手なイヤリングにピアス、そして濁った瞳。見るからにろくでなしな人間だった。

 

「すいません」

 

 とはいえ、ぶつかってしまったのはソニアの方だ。素直に謝って穏便に済ませられればいいと思ったが。

 

「アアッ? 謝れば済むと思ってんのか? 舐めてんじゃねえぞ!」

 

 男はずいっと顔を近づけて威嚇してくる。

 話が通じそうにないことにソニアは困惑する。

 男はソニアの顔をジロリと見ると、どろりとした笑顔になり。

 

「へっ、よく見りゃ可愛い顔してるじゃねえか。一晩俺の相手してくれんなら、許してやらねえこともないぜ」

「……っ」

 

 男はソニアの顎を持って、くいっと上げる。

 男のいやらしい妄想が漏れ出てくるよな顔に、ソニアは生理的に拒絶反応を感じてしまう。

 今すぐにでもこの男の手を振り解いて逃げ出したい。

 しかし、こちらにはユウリがいる。子供を置いて一人逃げられない。

 それにあまり長引かせると、男は標的をユウリに変えるかもしれない。それはいけない。自分はユウリを守る義務がある。

 男への嫌悪感と、ユウリを守らなくてはという気持ちがソニアの中で揺れ動く。

 

 ーーこんな時ヒーローがいれば、私のことを助けてもらえるのに。

 

 昨晩、ユウリにガブリアスキッドごっこに付き合わされたせいだろうか、不意にそんな非現実的な言葉が頭をよぎってしまった。

 でも、ソニアの世界になんでも解決してくれるヒーローなんていなかった。

 トレーナーの時も、研究者の時も自分の困った時に颯爽と駆けつける人間なんていなかった。

 いつだって自分で壁にぶち当たってきた。

 今だってそうだ。助けてなんて、もらえない……。 

 

「いてててててててて!?」

 

 心を闇に落としていると、男の悲鳴で現実に引き戻された。

 何事かと悲鳴の方を見ると、そこにはオレンジが男の腕を捻って制圧していた。

 

「大丈夫ですかソニア? ケガはありませんか?」

 

 心配そうなオレンジの顔に、ソニアは安心感を覚えた。

 

 ーーそうか、これが助けられるって感覚なんだ……。

 

 自分のことを助けてくれる人なんていない。否、いなかった。

 

 今はいる。

 

 その事実にソニアは空いていた心が埋まったような気がした。

 

 □

 

 

 後日談。というか、今回のオチ。

 

「「ええ!? 私たちの尾行に最初から気がついてた(です)!?」」

「はい。最初のスイーツ店について来るところからずっとね。忘れましたかソニア、私は耳が常人よりすごくいいんですよ」

「あ」

 

 そういえばそんな会話をした気がした。

 たしか、あれは遭難したユウリを捜索している時のことだ。

 

「ええ!? なんですかそれ! 私聞いたことねぇですよ! ……なんだソニアさん。私が知らないこと知ってるじゃねぇですか」

「はっは……」

 

 私もすっかり忘れてたけどね。

 ユウリは何かを思いついたのか、悪い笑みを浮かべ。

 

「聞いてくださいよ師匠。ソニアさんたら、師匠について自分が知らないことを私が知りすぎて、追跡中ずっと不機嫌だったですよ」

「んな!? ちょっとユウリ!?」

「ソニアが私について知らないこと? はて? どんなことですか?」

「かくかくしかじかです!」

 

 ユウリはノリノリで追跡中の話をした。

 すると、オレンジは困り顔で。

 

「ああ〜、すいませんソニア。色々誤解を生じさせてしまったようで」

 

 と言うのも、スイーツ好きを隠していたのは単にいう機会がなかった。

 ユウリだけを誘ったのは、私がダイエット中なことに勘付いてあえて秘密にしていた。

 小説に関しては、単にいうほどの事ではないと思っていた。

 そうよね。あの時はなんかムカムカしたけど、冷静になると、どれもわざわざ話すことじゃない。特に2番目に関しては完全に気遣いだった。

 どうやら、どれもこれも小さな擦れ違いだったようだ。

 

「あれ? じゃあ、アカウントは……?」

「はぁ……。言わなくてはなりませんか?」

「うん、気になるから」

 

 できれば言いたく無さそうだが、そこだけ誤魔化されると後でもやもやしそうだから聞きたい。

 オレンジは目を伏せながら。

 

「私はガラル人ではなくて、カントーの人間です。そして、カントーの人間にとって、ビジネスでの番号交換とプライベートの番号交換はハードルが違うのですよ。……特に、異性として意識している女性にはね」

「……え?」

 

 要するにオレンジは私のことを女として意識して、でも私オレンジの部屋に何度もパジャマで行って……。

 

 ………………………………………え

 

………………………………………ええ

 

 ………………………………………ええええええええええええええええ!?

 

 そこで私の意識は途切れた。

 

 





 Q.どんな異性が好きですか?

橙「……なんか悪意を感じる質問ですね。というか、これ前にも答えませんでしたか?」

 Q.より細かくお願いします

橙「細かくって……。そうですね。研究者はやはり特殊な職業ですので、それについて理解がある方が理想ですね。顔はあまり重視しませんが、やはり清潔感のある女性が好きです。ゴミと友達になっているような方は論外です。元シンオウチャンピオンとか、見た目だけ考古学者とか」

 Q.要するにS…….

橙「ガブリアス、ギガインパクト!」

 
 ※今回のは告白ではありません。単に女として見てると伝えただけです。勘違いした方はすいません。


 

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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