トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
実は間話が一番描きやすい。
ターフタウンを出発した私たち一行は、現在2つ目のジムがあるバウタウンへ向けて歩いていた。
「師匠、聞きたいことがあるです」
前を歩く眼鏡に帽子をかぶったユウリが言う。
なぜ変装コーデなのかといえば、前のジム戦のおかげで一躍時の人となってしまったユウリは、今町を歩けば大騒ぎになりかねないためだ。ジムリーダーやチャンピオンなら分からなくもないが、ただの一挑戦者がここまで注目を浴びるなんて普通じゃない。
リーグ側も色々対策してくれているようだが、まったく防げていない。
これではトレーナーが潰れてしまうぞ。興行に力を入れすぎるのも考えものだ。
「どうかしましたか? ちなみに、私の強さに秘密などありませんよ。日々の鍛錬の賜物です」
「ちげぇですよ! というか、なんで師匠がそれ知ってるですか!?」
「昨日ソニアにメッセージで聞きました」
「ソニアさん!?」
「何よ。あんたが先にバラしたんじゃない」
「それはそうですけど……」
ちなみに、昨日の一件の後ソニアとはお互いにアカウントを登録した。
初メッセージが暴露だったことには少々驚いたが。勝手に怒っていたことをバラされたのが、相当腹に据えかねていたようだ。
「大した努力もせずに強くなろうなんて甘いことを考えているアホには、後でお仕置きが必要ですね〜。ユウリ、休憩時間中にバトル10セットやりますよ」
「なあああああああ、何でですか!? 嫌ですよ! ぜってぇー嫌ですよ!」
「え? 20……」
「やります! やらせていただきます!」
どうやら、ユウリも歓迎しているようだ。これではお仕置きにならないなぁ(棒)。
そのやり取りを見ていたソニアは少々気が晴れたようだった。
「がんばってねユウリ」
「ソニアさんなんて嫌いです!」
サムズアップするソニアに、ユウリは涙目で言った。
□
そして休憩時間。昼食を食べてユウリを一頻りボコボコにした私は、ヤムチャのように倒れているユウリに。
「それでユウリ。聞きたいこととは何ですか?」
「ボッコボコにしておいて、今更それ言うですか!?」
「細かいことは気にせず。まあ、話してみなさい」
ユウリは納得いかない表情をしていたが、渋々と話し始める。
「……私が次に挑戦するバウジムは、みずタイプのジムです。でも、私の手持ちのポケモンはみずタイプには相性がいいポケモンがいない。だから、みずタイプに相性がいいポケモンを捕まえようと思ってたです。でも、前に師匠は腕を磨く前に手持ちを増やしすぎるのは良くないって言ってたのを思い出して、どうしようかなぁと」
思っていたよりもちゃんとした悩みだった。
失礼な話だが、ユウリの悩みなど今日の夕ご飯カレーかハンバーグにしようかくらいしかないと思っていたから驚きだ。
それにしても、戦力増強か。
「そんなに深く考えなくていいと思いますよ。私がそう言ったのも、闇雲に手持ちを増やしてもすべてを育成しきることができないから、忠告したまでですし。むしろ、ユウリのようにしっかり考えを持って増やそうとすることは良いことですよ」
「じゃあ捕まえておこうかなぁ……です」
呟くユウリ。そこに飲み物を持ったソニアが歩いてきて。
「もしかしてポケモンの捕獲をするつもりなの? それなら、図鑑の検索機能を使ってみたら? この辺りに生息するポケモンが一通り載ってるはずよ」
私に紅茶を渡しながら説明してくれる。
一口飲むと柑橘系の香りが口の中に広がった。
それにしても、そんな機能が追加されたのか。前は出会ったポケモンしかできなかったのだが。私の頃に遡れば、そもそもポケモンの分布なんて見れなかった。
便利になったものだ。
「じゃあ、さっそくやってみるです! えーと、検索条件はくさタイプっと!」
「そんなざっくりした条件で大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ネットの検索と同じようなものだから」
少々心配だったが、ユウリの反応を見る限り検索は無事できたようだ。
本当に便利になったものだ。
「ほー。どうやら、この辺りにくさタイプは、コノハナとハスブレロがいるみたいです!」
「ハスブレロは分かりますが、コノハナですか?」
コノハナは元々ホウエン地方で発見されたポケモンだ。それ以外の地方でも発見されているが、大体は深い森の奥に生息している。
この辺りは見る限り深い森があるようには見えない。
もしやガラルのコノハナはこの地形に順応しているのか。気になるな。
「なるほど。では、探してみましょうか。主にコノハナを」
「なんでコノハナ限定!?」
「私が捕まえたいので」
「ちょっと待てです! 人の獲物奪るなです!」
「あなたはハスブレロを捕まえればいいじゃないですか。ハスブレロはくさ・みずタイプなので、みずタイプ対策には最適です。さらに次のエンジンジムにおいても使える。いわば、一石二鳥です」
「……なるほど」
どうやら納得してもらえたようだ。
「本当に口が達者よね……。というか、なんでそんなにコノハナが欲しいのよ。ガラル地方以外にもいたでしょ?」
「いたからこそですよ。私の研究はポケモンの種族値、個体値が大きなテーマですから。他の地方とは違う生息形態をしているポケモンには、非常に興味惹かれるのです」
「なるほどねー。それなら、カモネギはどうなの? ガラルのカモネギとカントーのカモネギは姿が違うんでしょ?」
「私の好みではないので、ゲットしたくないです」
「好みって……」
昔のトレーナー時代ならば、好みよりも強いポケモンを優先して捕獲していただろうが、今は引退してただの研究者なのだ。自分好みのポケモンを優先するくらい許される。
研究なら、他の捕獲されている個体を借りればいいのだから。
「って、それって結局、コノハナ捕まえたいのって研究関係ないんじゃ……」
勘のいいガキは嫌いだよ?
□
〜捕獲終了〜
□
無事ポケモンの捕獲を終えた私たちは、夜も深くなったので今日のところは五番道路でキャンプすることにした。
コノハナのデータと共にガラル地方における生態変化について報告書を作っていると、携帯にメッセージが入った。
誰かと見てみると、グリーンからだった。
私は報告書の作成を一度中断して、画面を開いた。
緑『おい、裏切り者』
随分と刺々しい文章だな。
橙『いきなり何ですか? 私また何かやっちゃいましたか?』
緑『惚けんなよ。ナナミから聞いたぜ? お前今めちゃくちゃ美人の女の子と一緒に旅してんだろ? 俺みたいな彼女いない族からすれば、立派な裏切り者だぜ』
橙『どう伝わっているのかは知りませんが、彼女はただのビジネス・パートナーですよ。あなたが邪推するような関係ではありません』
橙『というか、モテるあなたなら彼女作るくらい私にポケモンバトルに勝つより簡単でしょう? なにをモテないみたいに言ってるんですか?」
緑『俺が一人の女性の物になっちまったら、世界中の女の子たちが悲しんじまうだろ?』
ムカつくので、とりあえずこの文はスクショしておこう。新たな黒歴史追加だ。
緑『つうかやっぱり誤解じゃねえか。ナナミがテンション高めに吹聴してたから、てっきりお前に彼女ができたかと思ったのによ』
緑『……このネタで弄りまくってやろうと思ってたんだがなぁ。つまんねぇ』
橙『ちょっと待ってください。ナナミさんは私に彼女ができたと言い回ってるんですか?』
緑『いいや。オレンジくんがね、今はすごく綺麗な女の子旅してるのよって言われれば、そう思うだろ?』
橙『たしかに間違ってないですけど……』
完全に誤解されかねない言い方だ。
そういえば同僚に送ったメールが心なしかそっけなかった気がしたが、まさかそれが原因か。
研究者にとって女の話題はモテない、彼女欲しいの2択だからな。彼らからすれば、私はまさに裏切り者だろう。
緑『他のやつらは血涙流してたぞ』
橙『なにそれ怖い』
一応彼らもエリートの部類に含まれるのだから、出会いを求めにいけばいくらでもチャンスはあるのだが。
ああ、カントーに帰るのが怖い。
これだけ帰るのが怖いのは、メイのやつにイッシュ中に放送される中、公開プロポーズをされた時以来だ。
緑『なぁ、そんなことよりもその子そんなに可愛いのか?』
そんなことよりもって……。私にとっては結構大きな問題なのだが。
橙『ええ、可愛いですよ。カミツレさんにも劣らないと思います』
緑『マジで!? めっちゃ気になるじゃねえか! なあなあ、写真とかないのか?』
橙『今手元にはありませんね。私自身人の写真はあまり撮りませんし』
緑『じゃあ、今から撮ってこいよ。そして俺に見せろ』
橙『嫌ですよ面倒な』
緑『それじゃあ、土産のマラサダは俺の腹の中に入ることになるぜ?』
くそ! スイーツを人質(?)にとるとは卑怯な!
橙『……わかりましたよ。チャレンジはしてみますが、あまり期待しないでくださいね』
緑『おう、わかった』
グリーンのわがままに応えるために、私は外に出る。
テントの外は真っ暗で、少々肌寒い。耳を澄ませば、ポケモンの鳴き声が聞こえて来る。
私は辺りを見回し、ソニアのテントを見つける。
私はそちらの方に歩いて行き。
「すいませんソニア。まだ起きてますか?」
私の問いかけに、少しして反応があった。
「どうしたの? 何かあった?」
ソニアはテントから少し顔を出して聞き返してきた。
化粧を落としてサイドテールの髪を下ろしているが、世の女性が嫉妬に狂いそうになるほど透明感がある。この容姿ならモデルでも大成できたと思う。そう思わせるほど、ソニアは美人だ。
こんな女性がうちの研究所に来たら、毎日大騒ぎだろうな。
「ちょっと写真撮らせてほしいのですが」
「え?」
「それじゃあ、いきますよ」
「う、うん」
「はい、チーズ」
ぎこちない笑顔のソニアを私はスマフォのシャッターのボタンを押した。
思っていたよりもあっさり撮れたな。
「では、ありがとうございました」
「ちょっと待って!? なんで写真撮ったの!?」
「私の友人がソニアの顔を見てみたいと言うので、そのためです」
私がそう言った途端、ソニアは血相を変えて袖を掴んで。
「待ってぇぇぇ! こんなすっぴんの顔晒さないでぇぇぇ! せめて化粧くらいさせてよおおおお!」
「大丈夫ですよ。ソニアはすっぴんでも十分綺麗ですから。問題ありません」
「あんたに問題なくても、私にはあるの! すっぴんを晒されるって、女の子にとっては死ぬのも同然だからね!?」
「ええぇ……。そんな大袈裟な。というか、そんなに綺麗なのに化粧してどこを直すんですか? 私には分からないのですが?」
今でさえ、全世界の女性の嫉妬を買いそうなのに。
私がそう言うと、ソニアは満更でもないのか顔を赤くする。
「そ、そそそそんなおべっか使っても絆されないわよ!」
「あのですね、前から言いたかったのですが、私は基本的にお世辞は言いません! ソニアはすっぴんでも十分綺麗! まったく嘘偽りはありません!」
「そ、そんなことないし! 化粧した方がいいもん!」
「いやいや……」
「うそうそ……」
「いやいや……」
「うそうそ……」
「さっきから煩いですよ二人とも! いちゃつくならテントの中でしろです!」
「「べ、別にいちゃついてないし!」」
結局すっぴん写真を送るのは許可されなかった。
翌日、グリーンにはしっかり化粧をしたソニアの写真を送った。
評判は上々だった。
そして、同僚からは呪詛のメールが大量に届いた。
Q.旅をしていて危険だったことはありますか?
橙「毎回危険ですが、特に危なかったのはシンオウとアローラですね。パルキアにあくうせつだんで別次元に飛ばされたり、ウルトラネクロズマに腹を貫かれたり。まあ、重傷でしたが、命に別状はなかったです」
※アンケート終了します。
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