トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 はっちゃけました(目逸らし)


バウタウン〜とばっちりユウリ〜

 吹いてきた風に塩の味を感じる。

 ここはバウタウン。海沿いの町とだけあって、ターフタウンとはうって変わり、かなり賑わっている。  

 海を目当てに来た観光客に、海鮮を求める商人、そしてジム戦に来ているトレーナーと様々な人々が混在している。 

 そんな中、私ことオレンジはガラルに来て最大のピンチに襲われていた。

 

「……はあああああぁぁぁぁ」

 

 私の深〜いため息にソニアは心配そうに。

 

「そんな深いため息ついてどうしたの?」

「お金がなくなりました」

「えぇ……どこで使ったの? オレンジはあまり贅沢するイメージないんだけど」

 

 その通り、私は普段贅沢しない。

 いや、基本的に高くない研究者の給料と、殺しにくる量の仕事に時間を圧殺されてできないと言った方が正しい。

 そのため貯金は貯まる貯まる。さほど多くはないが。

 しかし、旅をしている時まですべて貯金するわけにいかないので、その時は旅資金と貯金分を分けて手にしている。

 今回なくなったのは、その旅資金分のお金だ。

 

「前にソニアたちが私を尾行していた時に、ソニアに見せつけるために巨大スイーツを2つも食べたのが悪かったか……」

「思ったよりもバカな理由だった!?」

「……師匠って頭いいけど、時々バカです」

 

 ぐっ、今回は言い返せない。

 

「なくなったならお金おろしてくれば? 通帳にはまだあるんでしょ?」

「家にあります、通帳」

「なんで!?」

「忘れたんですよ! どこに旅するのに通帳持ってこない人がいるんですか!」

「あんたでしょうが!?」

 

 おっとそうだった。テヘペロ(棒)。

 

「というか、通帳なくて今までお金どうしてたの?」

「自動預金なので、貯金分は口座に。旅資金は、テレポートで現生支給です」

「何でそこは都合いいのよ……」

「前に貯金おろせなくて死にかけたからですよ!」

「あんた前科持ちか!?」

 

 そうあれはホウエンを旅していた時のこと。

 最初の一月、通帳を忘れお金がおろせなくて山できのみ狩りをしていた。

 あの時は本当にひもじかった。

 それから、ナナミのアイデアで旅資金分を現生支給されるようになったのだ。

 

「前科持ちとは失敬な。単に毎回通帳を忘れているだけです」

「うん、ごめん。常習犯だった」

 

 ソニアの冷たい瞳に、天然を否定した時のナナミの瞳と同じものを感じた。

 どうやら、心底呆れられたようだ。まったく、ちょっと忘れっぽいだけで世間は冷たい。

 ソニアはため息をついて。

 

「それでどうするの、お金? ホテルに泊まる分は私が建て替えようか?」

「大丈夫ですよ。ちょちょっと稼いできますので」

 

 私の言葉にユウリは首を捻る。

 

「稼ぐですか?」

 

 ソニアはまゆをひそめて。

 

「なんか、ものすごく嫌な予感しかしないんだけど……」

 

 そんな反応の2人を置いて、私はバウタウンの中を進んで行った。

 

 

 □

 

 

 さて、それではお金をどうやって稼ぐのか。

 働く? 何かを売却する? 否だ。

 私は労働を否定する気はないが、今更誰かの下についてこき使われたくない。

 そもそも、就労ビザもない。故に私はガラル地方の店舗で働けない。

 売却するにも、きんのたまのような高く売れる物は手元にない。

 

 では、どうやって金を得るのか。

 

 私はポケモントレーナーを事実上引退しているが、トレーナーカードは現在も更新している。

 要は現役になろうと思えばなれるのだ。

 一つ言っておくと表舞台に返り咲こうという話ではない。それはしたくないし、できない。

 問題なのはトレーナーカードを持っていることで使える金銭をかけたバトルの制度である。

 賭博法に引っかかるので表向きはお小遣いとしているが、トレーナーカードを持っているとバトルに勝利することで金銭の授与がされるのだ。

 

 よって、今回の作戦は、おいバトルしろよ→粉砕、玉砕、大喝采→お金もらうということだ。

 

 そうと決まれば手頃な犠牲者(トレーナー)を探すことにしよう。

 できれば一回で多くの金をもらえるトレーナーがいい。正直何度もバトルしたくない。

 その考えの下、私はバトルサーチャーを使って私の需要に合うトレーナーを探しはじめる。

 

 もらえるお金はトレーナーの資産、立場、実力に応じて変わる。

 そのためジムリーダーや四天王はその立場と実力だけで一度負ければかなり取られる。逆に弱くともお坊ちゃん、お嬢様はかなりとられる。

 故にカントー、ジョウトでは金持ち狩りがよく行われていた。やってたの主に私だが。

 見たところ庶民的な街並みのここにお坊ちゃんやお嬢様はいなさそうだ。

 

 となればそこそこの実力者。バッチ8個持ちくらいのトレーナーを探そう。

 

 サーチャーを照らしていると、しばらくして反応があった。

 お金はかなりある、ジムリーダー並みだ。そしてなかなか強い。あの人にしよう。

 私は海の方を向いているサングラスをした肌が褐色の女性に近づき。

 

「すいません。バトルをお願いできませんか?」

 

 そう言った。

 

 □

 

 バウタウンのジムリーダーであるルリナは現在困惑していた。

 なぜなら、ジムの休憩時間になったのでいつものように散歩がてら海を見にきたら、突然男からバトルを挑まれたのだ。

 ジムリーダーになってから、色んな人間に野良バトルを挑まれることはあったが、ここまで唐突なのは初めてだった。

 

 しかし、ルリナはすぐに冷静になる。

 なぜなら、男がバトルを挑んできた理由に大体察しがついていたからだ。

 

 ーーどうせナンパ目的でしょ。

 

 ルリナは自他共に認める美人である。

 その類稀なる美貌を活かして、ジムリーダーをやる傍らモデル活動も行い高い人気を得ている。

 そのためか、このようにバトルを挑む形でのナンパはよくあった。

 バトルに負ければ優しい顔をしてホテルに誘おうとしてきて、負ければ君強いねと腑抜けた顔で言ってくる。彼らにとってポケモンバトルなどその程度でしかないのだ。そんなポケモンバトルを馬鹿にしたような人間をルリナは心底軽蔑していた。

 

 ーーこういうやつに限って生半可な腕のくせに自信満々なのよね。

 

 心の中で毒づきながら、そんな輩を懲らしめたいという使命感が湧いてくる。

 

「いいわよ。やりましょうバトル」

「本当ですか? いやぁ、いきなりだったもので断られるかとヒヤヒヤしてましたよ」

 

 毒気のない顔の裏にどんなゲスい魔物を飼っているのか、ルリナは白々しい反応の男に不快感を覚える。

 見たところ服装や顔の造形的にガラルの人間ではない。

 大方、旅行先で調子に乗った哀れな男なのだと、ルリナは結論づけた。

 一定の距離をとり、男に合わせてルリナもボールを構える。

 

「それでは、よろしくお願いします」

「ええ、よろしく」

 

 笑顔でそう言いつつ。

 

 ーー相手がジムリーダーとも知らないで、哀れな男ね。

 

 心の中は冷徹だった。

 ルリナの頭の中には、泣きながら走り去る情けない男の姿が思い描かれていた。

 

 しかし、その未来視はほんの数分で答えを突きつけられる事になった。

 

「嘘……でしょ……!?」

 

 ルリナは目の前で起きた現実をなかなか受け入れることが出来なかった。

 いや、出来るわけがない。自分は男を懲らしめるために、ジム用ではなく、チャンピオントーナメントで使ういわば本気のポケモンたちを使った。

 総勢6体。

 それがたった1匹のエーフィに殲滅されたのだ。

 夢なら早く覚めてほしい。しかし、覚めない。これは現実だからだ。

 ざっと靴音が聞こえ、ルリナに影がかかる。ルリナを蹂躙した男が寄ってきたのだ。

 

「さて、では負けた分払っていただきましょうか」

 

 男の言葉にルリナはピクリと身体を反応させる。

 

 ーーあの舐め回すようないやらしい目(誤解)! まさかあの男、初めから私の身体が目当てだったのか(誤解)!

 

 ルリナは完敗したショックで思考がくっころ女騎士のようになっていた。

 そのため、今の彼女にとってオレンジは自分を性奴隷にしようとせんイヤらしい人間になっていた。

 

「くっ、覚えておけ! 私の身体は自由にできても、心までは自由に出来ると思うなよ!」

 

 芝居がかった大袈裟な手振りで、胸元を隠すルリナ。

 しかし、オレンジにそんな意図は一切ないので、ルリナの行動に面食らってしまう。

  

「はい? 何の話ですか?」

 

 怪訝な表情でいう。

 ルリナはキッとオレンジを睨みつけ。

 

「惚けないで! はじめから私の身体が目当てだったんでしょ! 負けた報酬を身体で払えって言うんでしょ!」

 

 ※ルリナさんは負けたショックでおかしくなっております。

 

「そんなわけあるかああああ!? バトルして負けた時払うものなんて1つしかないでしょう!?」

「身体」

「お金でしょうが!?」

「まさか金まで獲る気なの……。金、女、ピー……すべてを手に入れようと言うの」

 

 ※不適切な表現があったことを深くお詫び申し上げます。

 

「ああもう、なんなんですかこの人! 身体とかいらないんで、お金だけ払ってください!」

「ふっ、あなたにとって私は所詮都合のいい女。所詮はお金だけの関係なのね」

「その通りですけど!?」

「いいわ。それでも私はあなたのことを……」

 

 ※しつこいようですが、ルリナさんは現在壊れています。

 

「なんで、いきなり昼ドラ始まってるんですかねぇ……」

 

 涙を拭いながらお金を差し出してくるルリナに、オレンジは居心地悪そうに受け取る。

 無駄に高い演技力のせいで、この現場はヒモ男にお小遣いを渡してる惨めな彼女のような構図になっているからだ。周りからは、侮蔑が混ざった視線を感じる。

 オレンジからしてみれば、ただバトルを挑んだだけなのに、なんでこんな目に合わなくてはならないんだという気持ちである。

 そして、受け取ったお金を数える気にもならず、オレンジそそくさとその場から立ち去った、

 

 

 

 

 一騒ぎあったものの、次の給料日まで過ごせるくらいの金を手に入れたオレンジは、ジム戦の予約を終えたユウリ達と合流した。

 この後はバウタウンに住んでいるソニアの親友に会いに行くらしい。

 その道中、苦労して(主にバトル後の対応で)手に入れた稼ぎを見せると、ソニアもユウリも驚いていた。

 

「おー。本当に稼いで来たです」

「しかもけっこうあるわね。あんな短時間でどうやってそんなに稼いだの?」

「バトルの報酬ですよ。私、トレーナーカードの更新はしているので」

「ああ、なるほどね」

 

 ソニアは納得したようだった。

 ユウリはどんな相手とバトルしたのかと興味津々に聞いていた。

 オレンジは話した。相手の水ポケモン達をエーフィで蹂躙していく様を。まるでとても強いヒーローのような爽快な話にユウリは興奮し、ソニアは裏を考えて苦笑いしていた。

 もちろん相手が変態だったことは、教育に悪いのでカットである。

 そんな取り止めのないお喋りをしているうちに、ソニアの親友の家に到着した。

 

「ルリナー。来たよー」

 

 ソニアはドアに呼びかける。

 少しして、ドアがゆっくりと開いた。

 出てきたのはビーチバレーボールの選手のような格好した褐色の女性。

 

「えええ、ソニアさんの親友ってジムリーダーのルリナさんですか!?」

「そうなの。ルリナとは同期で、その時仲良くなったんだ」

 

 驚くユウリに、少し照れ臭そうに説明するソニア。

 しかし、オレンジはルリナの姿にとてつもない既視感を覚えていた。そしてルリナと目が合うと、すべてを理解した。

 ルリナも同様のようで、2人は同時にお互いを指さし。

 

「「ああああああああ! あの時の変態!」」

 

 変態まで綺麗にセリフが被った。

 突然絶叫しだした2人に、ソニアとユウリはついていけず唖然としているしかない。

 そんな2人にはお構いなしに。

 

「ちょうどいいわ、あの時のリベンジよ! バトルしなさい!」

「絶対嫌ですよ! あんなセリフ2人の前で言われたら、私恥ずかしさのあまり自害しますよ!」

「何言ってるのよ! あんたが私の身体を求めたんじゃない! 私だってあんなセリフ言いたくなかった……」

「でたらめ言わないでください!」

 

 ※ルリナさんはショックのあまり記憶に誤りがあります。ご了承ください。

 

 2人の言い争いに置いていかれていたが、ソニアはようやく我に返り、

 

「ちょ、ちょっと待って! えーと、2人は知り合いだったの?」

「聞いてよソニア! この男さっき私のことを大衆の面前で辱めて、挙句の果てに私の大切なものを……」

「超悪質な印象操作しないでください! バトルして勝って、賞金をいただいただけですよ!」

「1人づつ話しなさい!」

 

 そして1人づつ状況を説明し終えると、ソニアは頭が痛そうにこめかみを揉みながら。

 

「……要するに、2人はさっきバトルしとオレンジが勝った。それでルリナが再戦したがってるってことでいい?」

「そうよ、だから私と再戦しなさいオレンジ」

「だから嫌です。懐が潤った今、私があなたとバトルする理由がありません」

「金のためにしかバトルしないなんて、ポケモントレーナーとして恥ずかしくないの!」

「私はもうトレーナーは引退してるからいいんですぅー。というか、大して強くない人とバトルするのって、退屈だから嫌いなんですよ……あ」

 

 オレンジの失言に、ルリナのこめかみは青筋が走る。

 

「ふーん、このバウタウンのジムリーダーである私が大して強くない……言ってくれるじゃない」

「あわわわわ……し、師匠! 謝って! 絶対に謝った方がいいですよ! ルリナさんヤベェオーラだしてるですよ!」

「絶対断る。私は事実しか言ってない」

「あんたもなに意地はってるのよ!」

「師匠……? そしてその顔、ジムチャレンジャーのユウリ? あ、ふーん」

 

 ルリナは何かを察したのか、意地の悪い笑顔になる。

 目を向けられたユウリは困惑する。

 

「な、なんですか?」

「あなたこれから私のジムに挑戦するつもりなんでしょう?」

「そ、そのつもりですけど……」

 

 確信を得たのか、ルリナはさらに笑みを深めて。

 

「ねぇオレンジ。みたところ、この子あなたの弟子なんでしょ? なら、この子に勝てたら、私と再戦してくれない?」

「はぁ!? ちょっとなにを言って!?」

「別にいいでしょ? 生半可に鍛え方はしてないだろうし、それに大して強くないジムリーダー相手なら余裕でしょ?」

 

 皮肉るような言い方の裏に、オレンジは意地でも自分に再戦したいという燃えるようなハートを見た。

 

 ーーまあ、ユウリの修行には悪くないか。

 

 そう考えたオレンジは。

 

「いいですよ。あなたがジム戦でユウリに勝利したら、再戦を受けましょう」

「ちょっと師匠!?」

 

 まさか受けると思っていなかったユウリは、驚きのあまり悲鳴に近い声が出てしまう。

 オレンジの返答に、ルリナは睨め返し。

 

「ふん。首を洗って待っていなさい」

 

 そうして、オレンジのとばっちりで、ユウリの攻略難易度が跳ね上がった。

 

 

 





 Q.なんでそんなにワタルが嫌いなの?

 橙「ウザいし、はかいこうせんの巻き添えで生き埋めにされかけたり、いきなり大きな仕事ぶん投げてきたり、言葉が通じなかったり、ウザいからです。
 ただ、あれだけバカにされながら自分を貫き通すメンタルの強さだけは敬服しますよ」

 Q.イッシュ(2回目)の後、ワタルを半殺しにしたという噂については?

橙「半殺しなんてしてません。ただ、やつの貯金が半分になるまでバトルしただげです」


 アンケートありがとうございました。
 多数の投票の結果シンオウ地方編の短編を書きます。投稿はおそらく、一区切りつくエンジンジム戦後辺りだと思います。
 いつ頃なのって? 私の進行速度しだいです。


 


見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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