トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 ダイォールにキョダイガンダイを使うとどうなるか、いくら調べても出てこないので、今回は防げない体で書きました。
 違うとしても、書き直しはしないので、ご理解ください。

 ※前書き間違えてました


挑戦! バウジム!

 ジム戦当日。

 バウスタジアムの会場は満員御礼だ。

 それはそうだろう、片や今や注目度ナンバーワントレーナーの少女ユウリ、片やジムリーダーの傍らその美貌を活かしてモデル業もこなしていて高い人気を誇っているルリナ。

 そんな二人のバトルとなれば、人が集まらないはずがない。

 あまりの人気ぶりにチケットの購入は抽選となり、プレミア価格が付く勢いだった。

 そして関係者ではない私も例外でなくチケットの抽選に参加して、見事に......

 

 

 ......見事に外れた。

 

 

 そのため今私はジム戦の映像をホテルの部屋からテレビで見ている。

 自分でたきつけておきながら直接見届けられないとは情けない。

 

「ユウリに悪いですねえ......」

「仕方ないわよ。そこは運なんだし」

 

 隣で座りながらテレビを見ているソニアはいさめるように言う。

 

「本当によかったのですか? ソニアはルリナから関係者席に招待されていたのでしょう?」

 

 ソニアは親友だけあってしっかり席を用意されていた。そして当然のことながら、私の分は用意されなかった

 

「う~ん、悩んだけど乗り気になれなかったのよね。私一応ユウリの保護者代わりだし、相手の招待を受けるのは気が引けるもの」

「なるほど」

「それに一人でバトル見てても、私だけじゃ何してるかわからないから退屈だし。だから解説はお願いね、オレンジ」

「任せてください。解説できるところは解説しますよ」

 

 そう言っているうちにテレビから大歓声が響いてきた。

 テレビの方を見るとジムリーダーであるルリナが入場してきていた。

 実況の彼女を紹介する声が聞こえてくる。

 

『さあ、ジムリーダールリナの登場です。観客の大歓声が身に染みてくるようです。今日はこの時期にしては珍しくスタジアムは超満員! その理由については次のトレーナーが登場した時に話しましょう。ルリナさんは今日の意気込みを一言、絶対に勝つ!だそうです。殺気に似た雰囲気をまとっていましたが、今日のルリナさんは気合十分のようです!』

 

「気合じゃなくて、単純に殺気帯びているんでしょうね」

「絶対に殺気ね。ユウリ大丈夫かな?」

「問題ありませんよ。水ポケモン対策はばっちり叩き込みましたから」

 

 文字通り肉体言語(ポケモンバトル)で身体に叩き込んだ。

 ギャラドスやペリッパー、ガメノデスを使いユウリは何度もぼろ雑巾と化した。あれだけやったのだ、ルリナくらい(というのは失礼だが)楽に倒してほしいものだ。

 そうしている内に、ユウリの登場だ。

 

『さあユウリ選手の入場です! 先日はヤローさん相手にダイマックスすら使わずに勝利してみせるという衝撃のデビューを果たしました! その将来性に加え、可愛らしいルックスもあいまって今一番人気のジムチャレンジャーです!」

 

 ユウリがフィールドに入るとルリナに負けないほどの大歓声が降り注ぐ。どちらかといえば野太い声援が多いようだが。

 普段ソニアがいるせいで忘れがちだが、ユウリも素材はいい。

 よく鼻を摘まれたり、むくれたり、駄々をこねている姿を見ている私は一ミリも理解できないが。

 カメラにはユウリに必死に声援を送る太めや眼鏡の男たちの姿が映される。

 それを見たソニアは冷たい瞳で。

 

「……やっぱり男って若い女がいいのね」

「まあ、人それぞれかと」

 

 私はテレビの方を見ながら、当たり障りのない言葉で回答を濁す。

 はっきり答えても、気を使っても睨まれる地獄の質問だ。なら誤魔化すのが一番いい。

 怖い怖い。だからソニア、じとりとした瞳で私を見ないでくれ。

 

『さあ、勝つのは新戦力か! それともジムリーダーが意地を見せるのか! ついにバトルが始まります!』

 

 いいタイミングだ!

 

「ほら始まりますよ、ソニア。ユウリを応援しなくては!」

「そうね。……ちょっとルリナを応援したくなっちゃった」

 

 愚痴っぽく言う。

 私は苦笑を浮かべる。

 ソニアはいやに年齢について気にするな。二十歳など十分若い方だろうに。昔、老け顔とでも言われたのだろうか。

 そうこうしているうち内にバトルする二人が相対した。

 そして審判が映され。

 

『バトルは三対三のシングルバトル! どちらかのポケモンがすべて戦闘不能になれば終了です! それでは、バトル開始!』

 

 腕を振り下ろすと、2人はボールを持ち。

 

『いきなさい、サシカマス!』

『カマ!』

『行くです! ホルビー!』

『ホルッビ!』

 

 ルリナのポケモンはサシカマス、ユウリはホルビーだ。

 

「タイプ相性的には互角ね」

「たしかにタイプ的には互角ですね」

「どういうこと?」

「よく見てください、今回のフィールドを」

「フィールド?」

 

 ソニアが画面のフィールドを確認すると……。

 

「何あれ!? フィールド全体が水じゃない!?」

 

 その通り。今回のフィールドは、フィールドいっぱいに水が張られていて、その中にケンケンパのような感じで丸い足場が用意されている。

 完全にみずタイプ用のフィールドだ。

 

「ルリナはみずタイプの専門家ですから、自分の使うポケモンに合わせてフィールド作りをするのは当然でしょう」

「でも、それって自分に有利なようにしてるってのとよね? それってずるくない?」

「そんなことありませんよ。前にも言った通りジムリーダーはチャレンジャーの壁になることが役目です。そうした中でこのような作りのジムはチャレンジャーの対応力を試しているのですよ。情報は前もって公開されているわけですから、それをどうやって攻略するのかという壁の作り方もあるのですよ」

「へぇー。そういう考え方もあるのね」

 

 むしろ他地方では自分に有利なフィールドを作るのが当たり前だ。

 こちらは興行的な問題から、公平なバトルが好まれる傾向にあるのかもしれない。

 ヤローやカブのジムはあまり自分に有利な作りにはされていなかった。

 それが良い悪いとは一概に言えないが、チャレンジャーの難易度が下がるだろう。

 

 水面に入り身を隠すサシカマスに対し、ホルビーは水の上の足場でキョロキョロしながらサシカマスを探している。

 まあ、この程度みずポケモンと戦う上では初歩の初歩だ。もちろん対策済みだ。

 

『ホルビー! あなをほるです!』

『ホルッビ!』

『おっと、これはどうしたことでしょう!? ユウリ選手、ホルビーを水の中に潜らせました! まさかみずタイプのサシカマスに水中戦を仕掛けるつもりなのか!?』

 

 実況の的外れな煽りに私は失笑が漏れてしまう。

 しかし、意外にもユウリの作戦を理解できる人間はいないようで会場は異様な空気に包まれている。

 対しているルリナですら、何をしているのか理解できていないようだ。

 

『いっけぇ! ホルビー!』

『ホルルル!』

『これは!?』

 

 実況の驚きの声の先には、どんどんと水位が下がっていくフィールドが映っていた。

 最終的に水が抜かれたプールのようになったフィールドには、サシカマスがピチピチと寂しく跳ねていた。

 この奇態な光景に観客たちは言葉を失ってしまった。

 

『チャンスです! ホルビー、やれです!』

 

 ユウリの掛け声に反応するように、サシカマスの下が隆起した。

 

『ホルッビ!』

『カマガァ!?』

 

 あなをほるを受けたサシカマスは、宙に投げ出された。

 

『追撃です! かわらわり!』

『ホルッビ!』

 

 耳を光らせたホルビーはジャンプしてサシカマスに迫る。

 

『なめないで! サシカマス、ドリルライナー!』

『カマカマカマ!』

 

 なんとか体勢を立て直したサシカマスは、流星系の身体を回転させてホルビーに突撃した。

 ホルビーの耳とサシカマスの口がぶつかり合う。

 機械音のような音が響いてくる。

 しかし、落ちてくる重力と回転力が合わさったおかげか、鍔迫り合いはサシカマスが勝った。

 

『ホルビ!?』

『ホルビー、耳を使って立て直すです!』

 

 ホルビーは耳をホッピングのように使って地面に落ちる衝撃を殺した。

 

「うまい!」

「ふむ。しかし、ユウリの指示もいいですが、あのホルビーは本当に野生だったんですかね? あの耳の使い方は人間の指導がないとできないんですが」

「そうなの? でも、あのホルビーってワイルドエリアでも強い方だったんでしょ。なら、あれくらいできてもおかしくないんじゃない?」

「……まあ、そうですね。考えてみれば、あまり気にすることでもありませんでした」

 

 少々疑問は残るが、ワイルドエリアで凌ぎを削っていたことを考えればあり得なくもないか。

 ルリナが仕掛ける。

 

『水をなくしたからって、勝てると思わないことね! サシカマス、あまごいよ!』

『カマカマァ!』

 

 サシカマスが天空に放った青いエネルギーが弾けるとフィールドに雨が降り始めた。

 

『サシカマス、かみつく!』

『カマァ!』

『速い!?』

 

 水溜り程度の水位のフィールドを滑るように移動して行く。その速度は先程のドリルライナーを大きく上回っている。

 それを見たソニアは目を見開かせて。

 

「あれ、サシカマスのすばやさ上がってない!?」

「サシカマスの特性はすいすいと言って、天候が雨の時すばやさが2倍になるんです」

「に、2倍!? はぁー、速いわけだ」

「たしかに速いですが、水があるよりはだいぶマシですよ。あの水位なら二次元的な動きに限られて姿を視認しながらなので対応も十分できます。今回の対策ではそこに重点的にしましたから」

 

 ペリッパーのあめふらしで雨状態にしてから、ギャラドス(すいすいではないが)の猛スピードのアクアテールのコンボはユウリにはトラウマだろう。

 

「ほら、見てください」

 

 画面を指す。

 

『ホルビー! 腕に噛ませろです!』

『ホルッビ……ホルッ!』

 

 ホルビーは腕を差し出すとサシカマスはその腕に噛み付いた。

 ホルビーは顔を顰めるが、余裕がある。

 

『捕まえたですよ! ホルビー、かわらわり!』

『ホルッビィィ!』

『カマァ!?』

 

 かわらわりがサシカマスの頭部にクリーンヒットした。

 腕を噛ませて動きを止めて、そこを叩く。まさに肉を切らせて骨を断つ戦法だ。

 

『とどめのマッドショット!』

『ホルッビ!』

『カマァ!?』

 

 投げられた泥玉がすべて直撃すると土煙が上がる。

 晴れると、目を回したサシカマスが横たわっていた。

 

『サシカマス、戦闘不能! ホルビーの勝ち!』

 

 審判のコールが響いた。

 ユウリはよっしゃと拳を握り、ルリナは表情を崩さないものの悔しそうだ。

 そして画面の前にいるソニアも喜びを露わにする。

 

「ヤッタァ! ユウリの先制よ!」

「ええ、やりました」

「でも、ユウリがかみつくを受けさせた時はびっくりしたわ。あれもオレンジの入れ知恵なの?」

「やり方自体はユウリのオリジナルですよ。私はルリナは十中八九攻めまくってくるので、それを逆手に取る方がいいと伝えました」

「攻めまくってくる? あ、そっか。オレンジはルリナと一回バトルしてるもんね。戦法も体感してるか」

「いいえ。私とバトルした時ルリナにはほぼ何もさせてませんから、彼女の動きを予測できたのは別の理由ですよ」

「別の理由?」

 

 ソニアは首を傾げる。

 

「簡単ですよ。みずタイプ使う女性って、ほぼドSなんです」

「そんな理由!?」

 

 そんな理由とは失礼な。

 カスミとか、スイレン(ジムリーダーではないが)などみずタイプを使うトレーナーは総じてSばかりだった。

 あと、ルリナは雰囲気がナツメに似ている。だから、絶対にドSだ。間違いない。……くっころ? 何の話だか。

 ルリナは新たなボールを持ち。

 

『いきなさい、トサキント!』

『トーサキン』

 

 次にルリナが出したのはトサキント。カントーでもお馴染みのポケモンだ。

 

『ホルビー、まだいけるですか?』

『ホルッビ!』

 

 ホルビーは元気よく返事する。まだまだ余力がありそうだ。

 どうやら、ユウリはいけるところまでいかせるつもりようだ。

 

『トサキント、なみのりよ!』

『トーサキン』

 

 大きな津波がホルビーを飲み込まんと襲ってくる。

 どうやら、ルリナは直接攻撃よりも遠距離の方が分があると判断したのか、なみのりを使用した。

 その辺りの切り替えの早さは、さすがジムリーダーだ。

 

『くっ、ホルビーあなをほるでかわせです!』

『ホルルル!』

 

 地面に隠れて波の直撃は免れたものの、穴から入ってくる水で少しのダメージは受けてしまう。

 苦肉の策だが、それしかないだろう。

 

『穴に向かってハイドロポンプ!』

『トーサキン!』

 

 水の線があなをほるの穴に突き刺さる。

 地面からゴゴゴと音が鳴ると、噴水が巻き上がりその先からホルビーが投げ出された。

 

『頑張れですホルビー! マッドショット!」

『ホルッビィィ!』

『かわして、つのでつく!』

『トーサキン』

『ホビッッ』

 

 ホルビーの苦し紛れのマッドショットはあっさりとかわされ、つのでつくが直撃した。

 ホルビーは地面に落ちると目を回していた。

 

『ホルビー、戦闘不能! トサキントの勝ち!』

 

「ああ……せっかくユウリが先制したのに」

「そこまで悲観する必要はありませんよ。ユウリが先手を取ったことに変わりはありません」

「そうなの?」

「ええ。ユウリは情報を与えないで2体目を出せますから、まだユウリが有利ですよ」

 

 ユウリは新たなボールを持ち。

 

『いくです、ハスブレロ!』

『ハッス』

 

 出したのは新戦力のハスブレロ。とろんと瞳と頭についた大きな雨受け皿が特徴的だ。

 みず・くさタイプで、特性はすいすい。水使いのルリナには天敵のようなポケモンだ。

 おそらく長期戦になればルリナが不利になるだろう。

 攻めてくるな。

 

『トサキント、メガホーン!』

『トーサキン!』

 

 メガホーンはむしタイプの最高レベルの威力を誇る技。

 やはりタイプの専門家だけあって苦手タイプへの対策は怠っていないようだ。

 しかし、そんなバカ正直な攻撃が二度も通じると思うところがまだ若い。

 

『ハスブレロ、しろいきり』

『ハッスブゥゥ』

 

 ハスブレロが口から煙を吹き出すと、辺りは白い煙に包まれてハスブレロの姿を隠してしまった。

 対象を見失ったトサキントは驚いて立ち止まってしまった。

 

『そこです! エナジーボール!』

『ハッス!』

『トッサァァ!?』

 

 煙の中から飛んできた緑色の球体がトサキントを直撃した。

 こうかはばつぐん。吹っ飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられた。

 大ダメージのはずだが、なんとか生き残ったようだ。虫の息だが。

 

『少しでも体力を! トサキント、なみのり!』

『トッ……トッサキーン!』

 

 ホルビーの時にも見た巨大な波がハスブレロに迫ってくる。

 しかし、ユウリはチャンスとばかりの笑みを浮かべていた。

 

『ハスブレロ、れいとうパンチ!』

『ハッス!』

『しまっ!?』

 

 ルリナは自分の失態に気がついたが時すでに遅し。

 なみのりは大きな波を発生させて相手を飲み込みダメージを与える技だが、ポケモン自体は乗っていることから水と接着している。

 そうなれば水に向かってれいとうパンチを叩き込めば、氷はポケモンまでも侵食するのだ。

 そしてピシピシピシという音の後に、氷の彫刻となったトサキントが氷の山の上で鎮座していた。

 

『トサキント、戦闘不能! ハスブレロの勝ち!』

『よし!』

 

 ユウリはガッツポーズをする。

 ジムリーダーを追い詰めたことにたしかな手応えを感じているようだ。

 

「やったぁ! ユウリが王手をかけたわ!」

「はい。しかし、油断は禁物です。追い詰められた実力者ほど、怖いものはありません」

 

 そういわゆるプロとアマチュアとの間には明確な差がある。その差とは追い詰められてから力を80%出すか、120%を引き出せるかである。

 科学的な根拠はない。試合の流れのようにただの経験則に過ぎない。

 しかし、実際にそのような力は存在する。

 前のヤローは完全に理性的なジムリーダーだったが、ルリナは感情的なジムリーダーだ。

 立場などお構いなしに、本気でユウリを殺しにくる。

 

『負けない……私は負けない! あんたに勝って、奴にリベンジするのよ!』

 

 ルリナの雰囲気が変わった。

 ユウリもそれに勘付いたのか、まだポケモンが出されていないのにも関わらず、とっさに臨戦態勢に入っていた。

 ルリナは画面からでも分かりなど力強くボールを握っている。

 

『あんたで最後よ! いきなさい、カジリガメ!』

『ガメッ!』

 

 ルリナの出したポケモンはカジリガメ。みず・いわタイプで、すばやさの種族値はさほど高くない。

 タイプ相性的にもハスブレロに大きく分がある。

 しかし、このバトルではダイマックスがあることを忘れてはならない。

 

『この子は最後のポケモンじゃないわ。隠し球のポケモンなのよ!』

 

 ちょっと何言ってるのかわからない。

 アホなことを言いながら、ルリナはカジリガメをボールに戻した。

 そしてダイマックスバンドから流れ出る赤いエネルギーがボールに伝わると、ボールが巨大化した。

 その巨大ボールを投げ出すと。

 

ガメェェェェェ!

 

 巨大化したカジリガメはまるでガメラのようなフォルムに変化していた。

 どうやら、カジリガメはキョダイマックスするポケモンだったようだ。映像にはダイマックスを使用したものが残っていなかったから、知らなかった。

 ユウリはそれを見て、なにかを決意したのか自らの頬を叩いた。

 

『ここが勝負ですよ! ダイマックスタイムです!』

 

 ユウリはルリナと同じようにハスブレロをボールに戻すと、そのボールはバンドから流れてくるエネルギーにより巨大化した。

 巨大化して重くなったのか、ユウリは両足で踏ん張ってなんとかボールを投げた。

 

ハスブゥゥゥ

 

 ダイマックス化されたハスブレロが咆哮をあげると会場がビリビリビリと衝撃が広かった。

 巨大化したポケモン同士のバトルの迫力に、観客のテンションは最高潮に達していた。

 ここが今日のクライマックスだ。

 

『カジリガメ、キョダイガンジン!』

ガァァァ

 

 カジリガメは口を大きく開けると、エネルギーをチャージし始める。

 そして、球体となったエネルギーをビームのように打ち出した。

 

『ハスブレロ、ダイウォールで防ぐです!』

ハッス

『無駄よ!』

 

 ルリナの言葉通り、カジリガメが放ったビームはハスブレロの前に出現した壁を貫通した。

 

ハッスッッ

『うぇぇ!? なんでダイウォールを貫通しやがったですか!?』

 

 戸惑いの声を上げるユウリだが、ルリナは教えてはくれない。

 それはそうだ。追い詰められている状況で相手に手を明かすほど甘い心は持っていない。

 

「ダイウォールの効果はまだ専門家の間でも意見が割れていると書きましたが本当ですか?」

「うん。最初はまもるの上位互換で議論が続いていたんだけど、後からフェイントは防げないけど、ゴーストダイブは防げることが分かって、これは別の性質を持つ技なんじゃないかって意見も出てる。だから、正直私もどこまでが防御範囲なのか正確には分かってないのよね」

「前に資料で見ましたが、あのキョダイガンジンはまもるなどを完全に貫通する効果があるようですね。そことも関係があるかもしれません」

「貫通効果もダイマックス化で強化されてるってこと? うーん、どうだろ? おばあさまも論文で似たようなことを発表しようとしてたけど、関連性が証明できなくて断念したのよね」

 

 まだまだ研究段階のことなので、今後解明されるかもしれない。私の専門ではないので、人任せにするが。

 

 キョダイガンジンを受けたものの、威力は4分の1なのでハスブレロにさほど効いた様子はない。

 水を払うように顔をぶんぶんと振って、顔を引き締めていた。

 

『ハスブレロ、力勝負です! つっこめ!』

ハッス!

『どういうつもりか知らないけど、力勝負でカジリガメに勝てると思ってるの? カジリガメ、対抗しなさい!』

ガメェェェェェ!

 

 フィールドの真ん中で二体の巨大化したポケモンが組み合った。

 その衝撃はビリビリビリっとしんくうはのように会場に伝わっていく。

 ハスブレロは身長を活かしてカジリガメの首元を中心に上から押しつぶそうとし、カジリガメは顎を引いてそれを持ち上げてやろうとする。

 ハスブレロも必死に押さえ込もうとするが、やはりカジリガメの攻撃力には敵わないのか、だんだんと身体が持ち上がっていく。

 しかし、ルリナは気がつかない。ここまでユウリの思い通りに事が進んでいることに。

 

『今です! ハスブレロ、自分ごとダイソウゲン!』

ハッスゥゥゥ!

『何ですって!?』

 

 地面から巨大なツタがいくつも生えてきて、そのツタはハスブレロとカジリガメ両者を雁字搦めに締め上げた。

 

ガメェェッッッ!?

 

 カジリガメの悲痛な叫びが響く。

 乱暴な手だが、悪くない。ハスブレロは等倍のダメージに比べて、カジリガメには4倍のダメージ。明らかにカジリガメの方が大ダメージだ。

 ツタを解除すると、カジリガメはふらふらとしながら後退していく。

 そしてまだ余力のあるハスブレロ。大勢は決したようだ。

 

『ハスブレロ! とどめのダイストリーム!』

ハッスゥゥゥ!

ガメェェッッッッッ!

 

 巨大な水光線がカジリガメに直撃すると爆発が起こった。

 そして煙が晴れると、小さくなったカジリガメが目を回して倒れていた。

 

『カジリガメ、戦闘不能! ハスブレロの勝ち! よって勝者チャレンジャーユウリ!』

『よっしゃああ!』

『ああああああああ!』

 

 審判のコールにユウリはガッツポーズをとり、ルリナは頭を掻き毟って悔しさを露わにしていた。

 

 そして画面の前のこちらでも、ユウリの勝利を喜んでいた。

 

「やったああ、ユウリの勝ちよ! それも一体残しての快勝だわ!」

「はい。とても戦略的にバトルを進めましたね。今日は珍しく褒めてあげましょう」

「あはは、自分で珍しいって言っちゃうんだ。それにしても戦略的? ユウリは最初から自分ごとダイソウゲンを使うつもりだったの?」

「ええ。おそらくキョダイガンジンの性質を見て遠距離では分が悪いと判断したのでしょう。ルリナの性格的にわざわざ不利な土俵に入ってきた相手に対抗してこないことは考えづらいですから、あえて力勝負に持ち込むことを演じたわけです。より確率高くダイソウゲンを決めるためにね」

「へぇ〜。あんな一瞬でよくそんな判断ができるわね」

 

 ソニアは感心していた。

 しかし、私はそれよりも気になることがあった。

 

  ……少しユウリの顔色が冴えないような? 彼女の性格的にもっと喜びを表現していてもおかしくないのだが?

 

 

 □

 

 その日の夜。

 テレビ局の取材対応などを協会側に丸投げして、私たちはホテルのレストランで細やかな祝勝会を開いた。そこでのユウリは笑顔ではあったが、少し引っかかりがあるというか、作り笑いのようにも見えた。

 やはり何かあったのか。

 ユウリに直接聞きにいこうか考えていると、その件のユウリからメッセージが届いた。

 

『師匠、今日の私のバトルを見てどう思ったですか?』

 

 私は首を傾げた。彼女のバトルの総評なら、後日詳しくやることで話がついていたからだ。

 そんなことをわざわざ今聞く必要性が分からなかったからだ。

 

『いいバトルだと思いましたよ。まだまだ甘いところはありましたが、修行の成果が出てくれて嬉しく思いました』

『そうですか。ありがとです』

『どうして、今そんなことを? 後でもよかったのでは?』

『ちょっと、気になっただけです。気にしないでほしいです』

 

 こういう念押しをしてくる時は何かしら隠し事をしているのだろう。

 しかし、メッセージを見る限りまだ本人が話したがらないか、相談する程のことではないと考えているようだ。

 ならば、私からあえて聞き出すのは野暮だろう。

 

『そうですか。もしも、相談したいことがあれば気軽にしてください』

『わかったです!』

 

 その後、ダンデの『了解した!』という文字が吹き出しに書かれたスタンプが送られてきた。

 ユウリに何かしら起きたのだろう。

 しかし、それを聞くことはできない。

 

 つくづく、人の心は面倒くさい。

 

 

 




 Q.モテますか? 

橙「ええ、モテますよ。見た目以外、女の全て捨てた干物女に貞操を捧げる宣言されたり、全イッシュ中に流されている番組で公開プロポーズをしてくる女優だったり、カロスの目力着物娘に監禁されそうになったり、婚期を完全に逃した筋肉岩クイーンに食われそうになったり……それはもう本当に」

 この質問を答えている時の目は、死んでいたとだけ記述しておく。


見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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