トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 ようやく物語が動こうとしている気がする(気のせい)。
 


まどろみの森〜伝説の剣と盾〜

 ルリナ戦を終えて次の日のこと。

 ソニアはフロントから渡された手紙を片手にオレンジの部屋に向かっていた。

 部屋の前に着いた。

 ノックをしてみるが、反応がない。

 

「あれ、おかしいなぁ? 今日は部屋でゆっくりしてるって言ってたのに……」

 

 ソニアは首を傾げた。

 

「まさか、部屋の中で倒れたりしてないよね」

 

 ありえないと言えないことが怖い。

 前にジム戦を見るという名目でオレンジの部屋に入ったが、中には厚いフォルダーとタブレットが無造作に置かれていた。断言はできないものの、忙しそうであることは予想できた。

 そのせいか、最悪の事態がソニアの頭をよぎった。

 すぐに鍵を使って(オレンジが鍵をよくなくすので、ソニアが管理している)、ドアを開けた。

 中に入ると、そこはもぬけの殻だった。

 オレンジの荷物もすべて消えている。飲みかけの飲み物が残っているところを見ると、チェックアウトしたわけではなさそうだ。

 机の上を見ると、一枚の置き手紙が置かれていた。

 

『少し遠出します。夕飯までには帰ります。オレンジ』

「いや、メールしろよ!」

 

 文明の利器を利用しないことと、そのせいで余計な心配をかけさせられたことに怒りが湧いてくる。

 しかし、オレンジのマイペースさは今に始まったことではない。今更怒っても仕方ないと自分に言い聞かせる。

 

「遠出って、どこに行ったのよあいつ……」

 

 まだガラルの地理にそこまで詳しくないオレンジの行きたい遠いところというのが、ソニアには皆目見当がつかなかった。

 こういうところで一言行き先を伝えないところが、秘密主義と思ってしまう要因である。

 おそらくオレンジなら1人でも大丈夫なのだろう。

 しかし、それでは旅仲間の自分の存在意義はなんなのか。

 

「やめた。まったく馬鹿みたい……」

 

 ソニアは頭を振って、ネガティブ思考を消し去る。

 オレンジは言うべきことはハッキリと言う人間だ。一月以上旅をしていれば、それくらい分かる。

 今回自分が旅をする一番の目的は自分自身の成長だ。

 それはオレンジも知っているし、出来ていないのならバッサリと斬ってくる。

 特に何も言わないということは、自分は成長できている。それでいい。それで……。

 

「……でも、一言報告くらいしなさいよ。馬鹿」

 

 寂しいミミロルのような顔で、ソニアは呟いた。

 

 

 □

 

 

 自分の部屋でそんなことが起きていることなどつゆ知らず、馬鹿はガブリアスに乗って移動していた。

 

「くっしゅん! ……はぁ、誰かが私のこと噂してるんですかね?」

「ガバァ」

 

 ガブリアスはたぶんソニアだろうなぁと思いながら、相槌を入れる。

 

「まあ、どうせグリーン辺りでしょうね。後でペリッパー便でビリリダマでも送りますか」

 

 なお、本人はまったく気がついていなかった。

 そして、グリーンはなぜか冤罪で爆弾を家に送りつけられることになった。完全にとばっちりだが、自爆いたずら程度、花火と変わらないので問題ない(マサラ人のみ)。

 

 そしてしばらく飛び続けていると、ようやく目的地に辿り着いた。

 オレンジは高度20mから飛び降りて、問題なく着地した。着いていた膝を戻して、ガブリアスをボールにもどす。

 顔を上げるとそこには見覚えのある深い森が広がっていた。

 まどろみの森。

 以前、ユウリとホップが遭難しかけた場所だ。深い霧と方向が分からなくなるほど大きな森で、さらに大量の野生のポケモンが出現するガラルでも一二を争う危険地帯だ。

 

 そんな場所になぜ来たのか。

 それは前にユウリたちが出会ったという謎のポケモンについて調査するためだ。

 単純な好奇心もあるが、1番は各地のトラブルに巻き込まれて続けた時に培ってしまった直感が働いたのだ。

 

 トラブルの予感がする。

 

 ここまで悪の組織も出ないし、わがまますぎる旅仲間に手を焼かされることもないし、事あるごとに面倒ごとが発生しないガラルの旅をオレンジはとても楽しんでいた。

 特にソニアの存在が大きい。

 ソニアがいてくれるおかげで仕事や家事の負担が半分になり、ユウリの話し相手にもなってくれるし、何より普通の女性である(ここ重要)。

 ここまで楽しい旅は、シンオウ地方以来である。

 

 そのため、オレンジとしてはこの旅を変な形で邪魔されたくはなかった。

 そこで一度調べてしまおうと思い立ったのであった。

 

「まあ、何もなければ、それはそれでいいのですが……」

 

 どうせ何かあると言外に匂わせながら、オレンジは森に入った。

 

 草むらの中を進んでいるうちにオレンジはとあることに気がついた。

 長年人が出入りしていないはずの森なのに、道と分かる道があるのだ。前に来た時はそれどころではなかったが、冷静に考えればおかしい。

 綺麗に整備までは行かなくとも、楽に通れるくらいには道になっている。人が入っていないのなら、もう少し野生味を感じるものである。

 仮説としては野生のポケモン達のおかげ、実は人が住んでいるの2つ。しかし、野生のポケモンだけならば一目で分かるし、人が住んでいれば町の住人が1人も違和感を感じないのは不自然である。

 もう一つあり得る。それは、特別なポケモンの力が働いている。

 

 ホウオウやルギア、カイオーガ等伝説級のポケモンたちは、自然にまで影響を与えるほど力を持っていることが多い。

 ユウリの言っていた霧がその類のものであるとしたら、彼女たちが見たものは伝説のポケモン、またはそれに匹敵する力を持つポケモンということになる。

 

 奥に進んでいく度に霧はどんどんの濃くなっていく。

 もはや、前すら見えないほどの濃さだ。これでは調査どころではない。

 しかし、こんなことは予想済み。しっかり対策はしてある。

 

「でてきなさい、スイクン」

「スイクーン!」

 

 でてきたのはオーロラポケモン、スイクン。ジョウト地方の伝説のポケモンである。

 普段はスイクンの希望で放し飼いにしているが、有事の際には特別な笛を鳴らせばオーキド研究所に来るようになっている。

 そしてスイクンは霧を操る能力を持っている。

 その力を利用して、調査を続けようという魂胆だ。

 

「スイクンこの霧を晴らしてほしいのですが、できますか?」

「クン」

 

 容易いことだと言わんばかりにスイクンはうなづく。

 そして美しい身体をさらに輝かせる。オーロラポケモンの名に恥じず、オーロラ色の光を放出すると、みるみる霧が晴れていった。

 

「さすがスイクン。やはりあなたを呼んで正解でした」

「クン」

 

 スイクンは当然だと軽くうなづいた。伝説のポケモンはプライドも高いのだ。

 

「グルルル……」

 

 ようやく道が見えると一安心した矢先、突如スイクンが何かに警戒するように唸り出した。

 オレンジがスイクンが警戒する方向を見ると、一つのポケモンの影が森の奥から上空に飛び出して、そのまま自分達の前に着地してきたのだ。

 オレンジは着地の風圧から顔を守る。

 ポケモンは四足歩行で狼型の顔をしていて、耳から伸びる長い網網の毛が特徴的だ。

 少なくともオレンジは、このポケモンに見覚えがなかった。

 

「何者……いや、何ポケですかね?」

「アオーンッッッッッ!」

 

 いきなり、攻撃力を上げるとおぼえを使われた。明らかに臨戦態勢である。

 

「どうやら、話し合いの余地はなさそうですね。スイクン、やりますよ!」

「スイクーン!」

 

 先に仕掛けてきたのは謎のポケモンだ。

 謎のポケモンは、爪を光らせてなかなかの速度で迫ってくる。あれはきりさくだ。

 

「スイクン、しんそくでかわしなさい!」

「スイクーン!」

 

 スイクンはその場から消えるように移動したため、謎のポケモンのきりさくは不発に終わった。

 

「そこにれいとうビーム!」

「スイクゥゥ!」

「ザシァッ!」

 

 ガブリアスですら一撃で戦闘不能にできる威力を誇るスイクンのれいとうビームであるが、謎のポケモンは顔をしかめただけだった。

 なかなかの防御力だ。伝説級か。

 

「ならこれでどうですか! スイクン、ハイドロポンプ!」

「スイクゥゥ!」

 

 巨大な水の螺旋体が謎のポケモンに向かっていく。距離的と速度を考えれば避けれるはずがない。

 しかし、謎のポケモンにはハイドロポンプは当たらなかった。

 代わりに新たなポケモンが水を受けていた。顔に傷がついた、同じく狼型のポケモン。

 

「ザマァ!」

「……まさか、二体いるとはね。これは予想外だ」

 

 スイクンのハイドロポンプを簡単に受け切るところを見たところ、新たな方は防御力に優れているようだ。

 そして前の方はすばやさと攻撃力に秀でている。 

 まるで剣と盾のようだと、オレンジは思った。

 

「さすがに伝説級二体にスイクンだけでは厳しいか」

 

 オレンジは新たにボールを持ち。

 

「いきなさい、ガブリアス!」

「ガバァ!」

 

 出てきたガブリアスは、相手の威圧感に気を引き締める。

 

「ガブリアス、ストーンエッジで二匹を包囲しなさい!」

「ガバァ!」

 

 ガブリアスの放った数多の岩が二体の動きを封じるように包囲する。

 二匹は動くことができない。

 

「そこです! スイクン、ハイドロポンプ!」

「スイクゥゥ!」

「同時に岩で一斉に攻撃!」

「ガバァ!」

 

 包囲していた岩を一斉にぶつける。そしてそこに水の螺旋体が貫いた。  

 爆発音の後に煙が上がる。

 煙が上がるが……なんと、新たな方のポケモンが前に出て平然と立っていた。

 どうやら、ほとんど効いていないようだ。

 

「……できれば手荒なマネはしたくないんですがねぇ。こうなれば致し方ないか」

 

 オレンジは別に二匹を捕獲しにきたわけではない。単に調査に来ただけだ。

 そのため、この場で相手を弱らせるほど強い攻撃をするつもりはなかった。しかし、加減した攻撃が通じず、相手が敵意を剥き出しにしてきている以上本気でかからないわけには行かない。

 でなければ、こちらが食われるからだ。

 

「2人とも本気で構いません。ガブリアス、ドラゴンクロー! スイクン、ハイドロポンプ!」

「ガバァ!」

「スイクゥゥゥゥ!」

 

 同じく新たな方が受けると思っていたが、ガブリアスの攻撃は前の方のポケモンが受けに来た。

 ガブリアスの爪がしっかりと当たったはずだが、効いた様子はない。

 

「フェアリータイプなんですか!? あの見た目で!?」

 

 見た目的には完全にかくとうタイプである。フェアリーの要素などかけらもない。

 

「ザマァッッッ!」

 

 対して新しい方のポケモンは先程と同じように受けれると思い水を受けたが、威力が上がったハイドロポンプに吹っ飛ばされていた。

 多少の計算違いはあったものの、攻撃は通じる。そう確信できた。

 新しい方はダメージを確認するように首をふる。まだ余力がありそうだ。

 

「スイクン、あの二体の周りに霧を発生させてください」

「スイクーン!」

 

 スイクンの雄叫びに起因して、二体の周りを深い霧が纏う。

 自分と同じ力を使われるのは初めてなのか、僅かに戸惑いの声が漏れてきた。

 

「ガブリアス、だいちのちから!」

「ガバァァァ!」

 

 地面に光った手を突き立てると、霧に覆われた地面一帯が光り始める。そして、次の瞬間柱が立つように爆発した。

 

「ザマァッッッッ!?」

「ザシァッッッッ!?」

 

 身を投げ出された二体は倒れ込む。

 どうやら、今の技は相当効いたようだ。

 そして肩で息をしながら自分を睨んでくる二体に、オレンジはため息をついて。

 

「そんな睨まないでくださいよ。元はと言えばあなた方から始めたことなんですから、正当防衛です」

 

 納得いかなげに前の方が唸るが、新しい方はバツが悪そうにしている。

 オレンジはとりあえず攻撃の意志は削がれたと判断して、二体に向かっていく。

 そして、バッグから回復道具を取り出した。

 見慣れぬ未知のものに前の方が牙を見せるが。

 

「安心してください。ただのくすりです。防衛とはいえ、傷つけてしまいましたからね」

 

 かいふくのくすりを二体に吹きかける。

 二体は蓄積されていたダメージがすべて消え去ったのを感じとり、唖然としていた。

 

「それで、あなた方はここで何を守っているんですか?」

「ザシァ!?」

 

 なぜそれを!? と言いたげに鳴いた。

 

「簡単ですよ。あの深い霧も、それが晴らされたから襲ってきたのも、この奥にある何かを守るためだと考えれば自然です」

 

 長年、伝説のポケモンと遭遇してきた男だからこそできる予測だった。

 

「とは言ったものの、入ってほしくないのなら入りません。管理者に逆らうのは、自然の理に反することになりますから」

 

 二体はその言葉に、さらに目を見開いた。  

 何度も侵入者を見てきたが、みんな深い霧に命を危機を感じて逃げ帰るものばかりだった。古代でも、自分たちの意思など関係なしに力を手に入れようとする人間ばかりだった。

 自分たちを倒した上でこんなことを言う人間は初めてだったのだ。

 どうする? と二体は目を合わせて話し合う。そして結論が出たようだ。

 

 新しい方のポケモンは、首を奥の方に向けている。ついてこいと言っているようだ。

 

 オレンジは、にこりと笑顔になり、二体の後を歩いた。

  

 

 □

 

 

 二体に案内されたのは森の最奥地だった。

 そこは神聖な空気が充満していて、息を吸うだけで肺が治療されるような気持ちよさを感じる。そして道中のおどろおどろしい雰囲気とは全く違い、神社のような雰囲気であった。

 二体は古びた神殿のような場所で立ち止まった。

 オレンジはそれに続く。そしてオレンジがそこに置いてある石板を見ると。

 

「2人の英雄ここに眠る。……これは墓ですかね?」

 

 オレンジの呟きに二体は首肯する。

 そして墓に刻まれた文字も読むと。

 

「剣の英雄 ザシアンと共に」

「盾の英雄 ザマゼンタと共に……これはあなた方の名前ですか?」

「ガゥ」

 

 再びの首肯。どうやら最初に出てきた方がザシアン。後に出てきたのがザマゼンタと言うようだ。

 しかも剣と盾。オレンジの印象に受けた通りだった。

 

「なるほど、これは世紀の大発見と言っても過言ではない」

 

 とは言ってもオレンジは学会に発表しようなど微塵も考えていなかった。

 彼は考古学者ではないし、何よりポケモンが住んでいる場所を荒らしたくはない。

 それよりも気になることがある。

 

「なぜ、彼らの存在が忘れ去られたんですかね?」

 

 ここまで強さと存在感があれば、多少なりとも資料が残っているものだ。しかし、今のところザシアンとザマゼンタというポケモンの存在を書き記した文献を見たことはない。

 アルセウスやキュレムですら、御伽噺という形で存在が伝えられていたのに、それすらもないのだ。

 まるで元からなかったかのように。

 

「いや、まだ発見されていないだけか?」

 

 オレンジはガラルの細かな話に詳しくない。その点で言うならソニアに聞く方が可能性がありそうだ。

 そしてオレンジはもう一つ気になることがあった。

 

「一つ聞きたいのですが、あなた方はなぜユウリたちの前に姿を現したのですか?」

 

 もしも侵入者や遭難者が遺跡に近づく度に姿を現していたのなら、町で噂になっていてもおかしくない。しかし、上でも言った通りそんな話はなかった。

 なのに、彼らはユウリたちの前に姿を見せた。何かしら意図を感じざるをえない。

 

 その質問には二体は答えなかった。まだ彼らも答えを決めかねているのかもしれない。

 オレンジはこのような現象に覚えがあった。

 そうあれは、シンオウ地方を旅している時のこと……。

 

「まあ、答えたくないのなら無理には聞きません」

 

 オレンジはここにこれ以上得られる情報はないと判断し、出口へと進んでいく。

 ちょうど神殿を降りたところで、オレンジは立ち止まる。

 そして顔だけ振り向く。

 

「もしもあなた方がユウリとホップを、そこの墓の英雄のように扱おうと考えているのなら、私はあなた方を全力で叩き潰して阻止します。覚えておいてください」

 

 殺気。

 古代英雄の盾となり剣となった自分たちが、ただの人の殺気に恐怖を感じさせられた。

 ザシアンは息を呑み、ザマゼンタは冷や汗が止まらなくなった。

 

 二体の英雄のポケモンはずっと疑問だった、なぜあの人間がこの地にやってきたのか。

 

 自分たちを捕獲する気配もなければ、この地を世間に晒す雰囲気もなかった。

 

 しかし、ようやく合点がいった。

 

 

 ーー警告だ。

 

 

 




 Q.苦手なことってないんですか?

橙「運が絡むゲームは苦手です。ジャンケンは未だ無勝です。大富豪は絶妙に勝てない手札になり、7並べは3回パスして終わります。人狼とか心理戦は得意なのですが……」

 Q.日頃の行いです……

 無言で殴られた。

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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