トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
久々ビート回。
伝説のポケモンたちとお話しして帰ってきた夜、夕食の席でソニアから手紙を渡された。
確認してみると。
「どうやら食事会への招待状のようですね」
食事会とは、要はパーティーを小規模にしたものだ。パーティーは多数人を対象にしていて人脈を浅く繋げるには有効であり、食事会は特定の人間との繋がりをより深める方で使われることが多い。
しかし、私にガラルの知り合いなどいない。わざわざ私を招待するとは、誰だろうか? 送り主を見ると。
「あ、ローズ委員長からだ」
「ええっ!? ローズ委員長って、あの!?」
「……?」
ソニアは驚くが、ユウリは誰か分からないのか首を傾げていた。
「はい。ガラル地方ポケモン協会のトップであるローズ氏です」
「!?」
ソニアの驚きに私は返してあげる。
そしてその横でユウリも目を見開いていた。どうやら、今回の招待相手がどれだけ凄い人間かに気がついたようだ。
手紙には明日の夜18時から開催する食事会に招待する旨が書かれていた。場所はバウタウンの高級レストラン。
たしか、今回の調査は協会主導で許可したのだったな。食事会という場を設けたということは、私の調査の成果について聞きたいのだろうか。
「なるほど、理解しました」
「行くの?」
「ええ。断る理由もありませんし、今回の旅はローズ委員長のおかげと言っても過言ではありませんから」
「服は大丈夫? まさか私服じゃ駄目だろうし」
私は無言で目を逸らした。
そんな反応の私に、ソニアを目がぎょっとなる。
「え? まさか本当に私服で行くつもり? 嘘よねオレンジ?」
取り乱しながら問いただしてくるソニアに、私はからりと笑い。
「そんなわけないじゃないですか。ちゃんと礼服は持ってきてますよ。もう、ソニアちゃんったら焦っちゃって可愛い……いひゃいいひゃい!? ごめんなさい! ごめんなさい!?」
目が据わったソニアに、両頬をもちを伸ばすように引っ張られた。
だんだんソニアが私へのお仕置きに慣れてきている気がする。力加減に抵抗がまったく感じられない。
私が腫れた頬を涙目で押さえていると。
「師匠も無謀なことしやがりますね」
「軽いカントージョークなのに、理解しないソニアが悪いです……いひゃいいひゃい!? すいません、私が100%悪いです!? だから、許してください!」
その後、私は散々しばき回された。
□
次の日、指定されたレストランに到着した。
いつもパーティーなどに着ていく少しお高めのスーツを着ている。
どこに招待状を見せればいいのか分からず、キョロキョロと探していると、入り口から化粧の厚い女性が出てきた。
「お待ちしておりましたオレンジ様。わたくしはオリーヴ。ローズ委員長の秘書をやっております」
そう言って深々とお辞儀をしてくる。
私はそれに合わせて頭を下げる。
「これはご丁寧にありがとうございます」
「付いてきてください。ローズ委員長が中でお待ちです」
カツカツとヒールを鳴らしながらオリーヴは中に戻って行った。
最低限の会話しかしない辺り、ナツメリズムを感じる人だ。
ちなみにナツメリズムとは、気が強いサバサバとした女性を指す。ああいうのは感情的になるとこわい。
レストランの内部は装飾に芸術性を感じ、お洒落な雰囲気が漂っていた。思っていたよりも高級店のようだ。
「オリーブさん。今日の招待客は私の他にどなたがいらっしゃるんですか?」
「オレンジ様の他は、委員長の部下やポケモン協会の役員、又研究者も数名来られています」
「研究者というと、マグノリア博士も?」
「いいえ。マグノリア博士も招待しましたが、予定が合わず断られました。……まったく、ローズ委員長の招待を断るなんて」
ぼそりと何か聞こえたが、聞かなかったことにしよう。
たぶんマグノリア博士は予定なんてないだろう。あの人はパーティーなどの集まりが嫌いと、研究者界隈では有名だ。
それにしても研究者が来ているのか。面倒なことにならなければいいが。
奥のパーティールームに到着すると、オリーブはドアを開いて手を中に向けた。
すると中にいた人々の視線がこちらを向いた。困惑、無関心、侮蔑、あらゆる感情が見え隠れしていた。
私は頭を一度下げて、中に入る。
すると談笑の輪を作っていたグループの中から、少しお腹が出ているがダンディな男性が笑顔で歩いてきた。
彼はローズ。ガラルポケモン協会のトップであり、今回の招待者でもある。
「はじめましてローズ委員長。このたびはこのような会に招待していただきありがとうございます」
「やあやあ、はじめましてオレンジくん。君の報告書にはいつも楽しませてもらっているよ」
「恐縮です」
たいしたことを書いた覚えはないが。まあ、半分お世辞だろう。
その後、ローズ委員長の取り巻きたちから自己紹介された。何となくだが、覚えられた。
そして挨拶が終わるとローズ委員長は、取り巻きたちに。
「オレンジくんと話したいことがあるから、下がってもらえるかな?」
取り巻きたちは動揺した様子だったが、すぐにローズ委員長の言葉に従った。
そして2人っきりになると。
「どうしてあの方たちを下がらせたのですか?」
「彼らは私の会社の人間だからね。君の研究の話を聞いても退屈だろう思ったんだ」
「ということは、委員長は私と研究のことについて聞きたいということでしょうか?」
「そうだね」
あっさりと肯定するローズ委員長。
トップ層の人間が研究レベルの話に興味を示すなんて珍しい。特に私の研究はトレーナー寄りだ。研究している人間もそう多くない。昔にトレーナー経験でもあるのだろうか?
「君の報告書の記述で気になる点が幾つかあったけど、聞いていいかな?」
「はい。遠慮なくどうぞ」
「では、お言葉に甘えて。まず、ガラル地方のポケモンたちは種族値が高くなる傾向があるって書いてあったけど、あれはどういう意味かな?」
「まず種族値は私が勝手に設定している基準です。そのポケモンの能力を平均化したものを種族値と言います。そして、ガラル地方のポケモンたちはその種族値が、他地方の同一個体と比べても高いのです」
ギャラドス、ホルビー、コノハナ……他にも様々なポケモンでデータを取ったが、やはりどの地方に比べてもガラルのポケモンたちは強かった。
「特にワイルドエリアのポケモンたちは、この傾向が顕著でした。おそらくガラル地方特有の厳しい自然環境がポケモンたちを強くしていると、私は予測しています」
「なるほど……。では、ガラル地方を他地方に宣伝するうえで、ポケモンたちの強さをアピールすることも有効ということか」
「あまりビジネスに口を出したくありませんが、おすすめは出来ません。強いポケモンが多いと評判にすれば、たしかに他地方のトレーナーがガラルに集まるでしょう。しかし、それはポケモンの乱獲を招く恐れがあります。もしも、その施策を行うのなら、ある程度対策を講じる必要があるでしょう」
実際、昔カントーも同じようなことが起きた。
カントーのトレーナーのレベルの高さから、誰が言ったかポケモン自体が特別なんて噂が色んな地方に流れてしまった。そのせいでポケモンの乱獲が社会問題になった。
その時はオーキド博士がデータを持って、それはデタラメだと証明して収束したが、ガラルは本当に強いのだ。カントー以上の被害が出る可能性が高い。
ローズ委員長は思案した様子で。
「なるほど。では、この話は今のところ保留にしておこう。私はガラル地方を傷つけたくないからね」
「賢明な判断だと思います」
意外にもローズ委員長はあっさりと折れた。
てっきり、会社の社長という話だからビジネス優先かと思ったが、そうでもないようだ。
「もう一つ聞きたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「ダンデくんとはバトルしたかい?」
ちょっと何言ってるのかワカラナイ。
「は、はは。私のような研究者がチャンピオンとバトルなんて、かないっこありませんよ」
「何を言っているんだい? 君はカントーのチャンピオンを軽くひねれる実力者じゃないか」
はっはっはっと、まるでジョークのように笑われた。
おかしい。どうしてそんなことが伝わっているんだ。たしかに、あれが強くないのはカントーでは周知の事実だが、私の実力までバレているんだ。
「私は仕事柄、けっこう人脈が広くてね。国際警察なんかにも知り合いがいるんだ」
「なるほど。私の情報について調べられたわけですか」
たしかに国際警察には何度か捜査協力している。その点では知られていても不思議じゃない。
しかし、警察を名乗るなら個人情報ぐらい守れ。後でリラに文句言ってやる。
何はともあれ、すべてバレているのならしらを切る必要もないか。
「はい。ダンデの申し込みでバトルしましたよ」
「結果は……聞くまでもないかな?」
「ええ。私の圧勝です」
「そうか。まさか彼が足下にも及ばないとはね……やはり他地方とのレベル差はまだあるのかな」
「そこまで重大に考える必要もないのでは? ダンデの実力は他地方のチャンピオンと大差ありませんよ」
実際ダンデがヒカリやムーンと戦ってもどちらが勝つか分からない。
「私が言っているのは突出した強さじゃない。平均値の話だよ。先程話したポケモンの種族値のようにね」
なるほど。ジムリーダーを含めたトレーナーのレベルの話か。
「ガラル地方は最近他地方のトレーナーの流入が多くなってきている。それ自体は構わない。カントーも同様だからね。しかし、ガラルの場合、他地方のリーグで挫折した人間が再起を図る目的で来るケースが殆どなんだ」
たしかに、ガラルリーグの規模は他地方に勝る勢いであるのに、レベルはそこまで高くない。
他地方で一流になれなかったトレーナーからすれば、絶好の場であろう。
「おかげでガラルで名を上げてから、自分の地方に帰るなんてことも多くてね。なかなか、ガラルリーグ自体のレベルが上がらないんだ」
「それは仕方ないのでは? 新興リーグである以上、他地方のトレーナーが流入することは普通のこと。むしろ、それを利用してしまえばいい。実力者がきたえてくれるのですから。実際、ガラル地方出身者のトレーナーはだんだんと育ってきていますよ。例えば私の弟子や、委員長が推薦したビートなどね」
「ビート……ああ。そうかビートか。いや、彼はイッシュの孤児院から私が引き取った子でね。正確にはガラル出身じゃない」
ビートは孤児だったのか。どうりで、あの時あんな目をするはずだ。
それにしても、いやにガラル出身者に拘るな。ローズ委員長の拘りなのか、ガラルの人間の一般的な考えなのか。
ローズ委員長は思い出したように。
「そういえば、最近活躍しているユウリくん。彼女は君の弟子なんだってね。いやはや、研究だけでなく、トレーナー育成にまでガラルに貢献してくれるなんて嬉しい限りだ」
そこまで筒抜けなのか。どこまで調べ尽くしているんだこの人。
「彼女のバトルを見ていると、小さな頃のダンデくんを思い出すよ。彼女はダンデくんを超えられそうかい?」
「本人次第ですね。しかし、現チャンピオンを超える可能性は十分あります」
「そうかそうか。それは楽しみだ。ガラルリーグが盛り上がれば、ガラル地方が活性化するからね。ユウリくんには期待してるよ」
「はい。本人に伝えておきます」
私は頭を下げると、ローズ委員長はご機嫌そうに歩いて行った。
少し疲れた。頭のいい人間と話すと、勝手に警戒心を強めてしまうのは私の悪い癖だ。
風にでも当たるか。
私はバルコニーに歩いて行った。
□
バルコニーに出ると、おもしろい人間を見つけた。
「げっ……」
「おやおやおやぁ? これはビートじゃないですか。いたのなら挨拶くらいしてくださいよ。知り合いに無視されるなんて、嫌われてるみたいじゃないですか〜」
そうツンデレ性悪小僧ことビートがバルコニーで街の夜景を眺めていたのだ。
私は嫌な顔をしているビートを気にせずに捕まえる。
「……なぜあなたがここにいるのですか?」
「ローズ委員長に招待されましてね。私は協会側の許可を得て調査の旅をしている身ですから、このような集まりは断れないのですよ。そういうビートはこんなところで何をしていたんですか? 生意気に夜景を見下ろす自分に酔ってたんですか? グリーンって呼びますよ」
「誰ですかグリーンって……。まったく面倒くさい」
露骨にため息を吐くビート。
どうやら、私はあまり歓迎されていないようだ。かまってくれないとお兄さん悲しいぞ。
「なんであなたはぼくに構ってくるんですか? 今日はガラルでも著名な研究者が多数招かれてるんですから、そちらとお話しすればいいじゃないですか」
「有名? ……すいません、聞いたことないですね。というか、ガラル地方の研究者はマグノリア博士しか知りません」
「そうなんですか。……まあ、ぼくも大して知りませんけど」
知らないのか。まあ、子供が研究者に興味を示すことなどほぼない。オーキド博士のように番組出演が多い人でないと、知名度は得られない。
「ジムチャレンジの調子はどうですか? この前はオニオンくん相手に少々てこずっていたようですが」
「タイプ相性もあったので仕方ありません。まあ、それでもエリートであるぼくが負ける可能性はゼロでしたが」
「はっはっは。最初聞いた時は自惚れやだと思っていましたが、今聞くと面白いですね」
「どこに笑う要素があるんですか!?」
この子にどこか弄りたくなる才能があると思っていたが、なるほど理解した。この子、グリーンのナルシスト時代に似ているのだ。
そしてそれは、私の大好物だ。
これから、ビートを弄り尽くしてやろうとしていると、会場の方から。
「何だこんなところにいたのか」
聞いたこともない声が聞こえてきた。
声の方を見ると私より少し年上の若い男が立っていた。
私はビートに耳打ちする。
「すいません。あの方は誰ですか?」
「たしかガラルの貴族の家系の子息です。横暴で有名な人です」
貴族の家系って……。カントーでは今更聞かない言葉だな。
私の疑問を他所に男はカツカツと近づいてきて。
「貴様がオレンジか? 思っていたよりも冴えない顔をしているな」
「いきなり失礼な人ですね……。どちら様か知りませんが、私は今この子とお話ししているので、お引き取りください」
「なんだと?」
男は眉をひそめると、ビートに汚らしいものを見るような目をむけ。
「ふん。そんな汚れた下民のことなどどうでもいい。貴様はポケモンを強くする研究しているのだろう? 俺のポケモンは最近不甲斐ない結果が続いているのだ。貴様の手で俺を強くしろ」
「馬鹿かお前は」
「なんだと!?」
おっとつい本音が。
「お断りします。聞いたところあなたは自分のバトルの強さをポケモンのせいにしているようですが、それは間違いです。育てる人間の能力が低いから、ポケモンも強くならないのです」
暗にお前のせいだバーカと言ってやる。
というか、強くしろと言われて強くできるなんて普通に無理に決まっている。私は魔法使いではなく、理論に応じて教えるに過ぎない。
しかし、間違いを指摘された貴族(笑)は憤慨している。
「貴様っ! せっかく俺の役に立ててやろうとしているのに、断るというのか!」
「当たり前でしょう。百歩譲って教えてあげるにしても頭くらい下げなさい。あなたの親はその程度の礼儀も教えないような人間なのですか?」
「下民が、こちらが優しくしていれば図にのりやがってっ!」
「いい加減にしなさい! ローズ委員長が主催した席でこれ以上の狼藉は見過ごせませんよ!」
そろそろイラついてきたので、証拠に残らない一撃(エーフィのサイコキネシス)を食らわせてやろうかと考えていたら、なんとビートが間に入ってきた。
これは驚いた。
しかし、貴族(笑)は相変わらずビートに侮蔑の目をむけながら。
「親に捨てられた下民が、俺に口などきくな!」
あ、無理だわ。
私はボールを取り出して。
「エーフィ、サイコキネシス」
「フィー!」
「っっっっ!?」
サイコキネシスで口を結び声を出せない状態で、地面にめり込ませた。
貴族(笑)はうつ伏せのままチーンと気絶していた。
「ちょっと何やっているんですか!?」
「問題ありません。外傷がない程度に調整しましたし、目撃者もいませんから」
「いや、そういう問題じゃ!?」
「いいですか、ビート。バレなければ犯罪じゃありません。よって合法です」
「その理論はおかしいでしょう!?」
何が問題がある。
どうせこういうタイプはプライドが邪魔して人に言うこともしない。騒がれても、こちらは使える手(ガラルチャンピオン)をいくらでも使って抵抗してやる。
よって、問題ない。証明完了。
「すいませーん。この方が突然倒れたようです。たぶん飲み過ぎだと思うので、個室の方に連れて行ってあげてください」
そういうと、店のスタッフが面倒そうにしながら男を引き摺って行った。
さて、アホが消えてせいせいした。
一連の行動を見ていたビートは頭を抱えながら。
「はぁ。なんであんな馬鹿なことをしたんですか」
「単にムカついたからですね」
「……あれが言ったことが原因ですか?」
「? ……ああ、親に捨てられたという話ですか?」
そういうとビートは顔をしかめる。どうやら、あまり突っ込んで欲しくないところのようだ。
「まあ、それもありますかね。私も親に見放されて、色々言われたので、ああいう輩は大嫌いなんですよ」
「オ、オレンジさんも親に捨てられたんですか?」
「まあ、そうですね。私は今更親に未練はないので、どうでもいいですが」
むしろ最近ではあいつらから戻ってこいとうざいくらいだ。
いい加減諦めて家ごと潰れてしまえばいいのに。
それにしても。
「そういえば私とあなたはだいぶ境遇が似ていますね。あなたにやたら構いたくなるのは、それが原因ですかね」
「……ふん。知りませんよ。もしそうなら、ぼくにとっては良い迷惑です」
「相変わらずツンデレですね〜。うりうり」
「頬をつかないでください! やめ、やめろー!」
顔を赤くするツンデレを、私は散々構いたおしてやった。
なんか貴族、なろう系のやられ貴族みたいだな。
Q.レッドとの戦歴は?
橙「数えきれないほどバトルしてますからね。正確には分かりませんが、殆ど引き分けです。ちなみに私はレッドには勝ったことがありません」
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
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オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
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オレンジが女の子だったら
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オレンジの日常