トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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今回は伏線張り回だね。


(間話)エンジンシティ

 

 ガラル第二鉱山を通り抜け、ようやくエンジンシティに戻ってきた。

 着いて早々にユウリは

 

「ジム戦予約してくるです!」

 

 そう言って駆けて行った。

 張り切っているな。最近バトルの調子が悪かったのだが、ビートとのバトルを見た限りでは戻ったようだ。バトルに前向きになっているのが、何よりの証拠だ。

 私はスマフォを見て、現在地を確認する。

 ここはエンジンシティの東側。今日泊まるホテルはエンジンスタジアムの近くなので、15分ほどかかる。

 通り道には雑貨や食品が売られる繁華街がある。

 

「どうしますかソニア。ホテルに行くまでにお店に寄って行きますか?」

「別に早急に買うようなものはなかったと思うけど、何かあったかな……」

 

 ソニアはうーんと顎に手をやり考え込む。

 

「あ、そうだ。本買っていい?」

「構いませんが、何の本ですか?」

「絵本なんだけど」

「絵本?」

 

 驚きのあまりオウム返ししてしまった。

 絵本といえば、子供向けに作られる本だ。そんなものをソニアがなぜ必要とするのか。

 

「前にユウリたちが遭難した時に遭遇した謎のポケモンのことは覚えてる?」

 

 すでに会ったうえに脅迫してきました。

 なんて絶対に言えない。捌かれる。絶対に捌かれる。私は曖昧に「はい」と答えておいた。

 

「その時にホップが霧が急に深くなったって言っていたでしよ? それで霧が深くなる能力を持つポケモンについて調べてたら、ガラルの英雄伝説っていう絵本に辿り着いたの」

「その絵本に出てくる英雄が霧を操るポケモンだったと?」

 

 ソニアは私の言葉に首を振った。

 

「ううん。この絵本に出てくるのは剣の英雄と盾の英雄の2人だけよ。この2人の英雄が、霧を操り敵のブラックナイトから身を隠す描写があったの」

「……ブラックナイト? それは何ですか?」

「あれ知らない? ブラックナイトは、大昔ガラル地方を滅ぼしかけた災害のことよ。本当にあったかどうかは諸説あるんだけど、今のところ何かしらの大災害があったことが通説的な見解になってるわ。その絵本ではブラックナイトは、物体を持った敵として描かれているみたい」

 

 ……嫌な予感しかしない。

 もしかして、ザシアンとザマゼンタが姿を見せたのは、そのブラックナイトがまた発生しようとしているせいか?

 また、2体の存在が完全に消されている理由は何だ? 2体が存在していると困る人間がいたのか? 

 そうなると怪しいのは2人の英雄だ。2体をいないものとすれば、自らの功績をより高く後世に伝えることができる。

 しかし、あんな綺麗な神殿が建てられていたのを見ると、少なくとも2人の英雄たちに雑に扱われていたようには見えない。

 

「そんなわけで、参考になるかは分からないけど、一応資料として買っておこうかなぁって思ったの」

「なるほど。それにしてもよく調べましたね。ソニアは考古学の方を専門にするのですか?」

「うーん、まだ決めてないなぁ。これも何となく調べてみたいと思っただけだし」

「研究者の大発見なんてそんなものですよ。最初はみんな好奇心から始まるんです」

 

 ただ、考古学者になるのはいいが、駄目人間にはならないでほしい。

 ソニアがねっころがってテレビ見ながら屁でもこいたら、私は世界の終わりを覚悟する。

 そんなことを言っているうちにユウリからメッセージが入った。

 内容は、ジムの予約が終わったから先にホテルにいるとのことだ。

 

「どうやら、ユウリが先にホテルに行っているようなので私たちも急ぎましょう」

「そうね。待たせても悪いし」

 

 そう言って早足で本屋に向かった。

 

 

 

 

 本屋でお目当の絵本を買い、私たちは今日泊まるホテルへと到着した。 

 ロビーに行くと、ユウリはロビーの椅子に座りながらとある女の子と話していた。

 相手の女の子は剃り込みの入ったツインテールでパンク目のファッションと、カントーにいたらあまり関わり合いになりたくない見た目をしている。

 一見ユウリとは共通の話題があるようには見えない。しかし、2人はかなり盛り上がっているようだ。

 

「やっぱりガブリアスキッドの名シーンと言ったら、45話でガブリアスキッドがヤジロン軍曹のだいばくはつをそらをとぶで回避して絶対絶命のピンチを免れるところですよね!」

「分かる分かる! 特にヤジロン軍曹がフライゴン首領のために自らを犠牲にしてでも倒そうとしたっていう裏話を聞いてからは、また見方が変わるのも胸熱とよ!」

 

 どうやらお互いガブリアスキッドのファンのようだ。

 正直黒歴史を思い出すので、あまり話題を聞きたくはないのだが……。

 気が進まなかったが、私たちはユウリに近づき。

 

「ずいぶん盛り上がってますね」

「あ、師匠! 聞いてくだせぇ、師匠! この子私と同じガブリアスキッドの大ファンなんですよ!」

「それはよかったですねー。お名前は?」

「あたしはマリィ、よろしく。こっちはパートナーのモルペコ」

「うらら!」

 

 すました表情でクールに言った。その横でモルペコと呼ばれたチャーミングなポケモンも挨拶してくれる。

 ソニアはモルペコに近づいて、頭を撫でる。

 

「わあ、可愛い〜」

「ウララ!」

「……ん?」

「どうかした?」

「いえ、今一瞬モルペコの顔が紫色に染まった気がしたような……」

 

 気のせいだろうか。ソニアもキョトンとしているところから、特に気になるところもないらしい。

 疲れているのかな?

 そんな私の疑問を気に留めず、ユウリは立ち上がって。

 

「じゃあ、マリィ。また今度、次会うときはバトルしようです!」

「うん。バトルしよう」

 

 2人は約束した。

 その日私たちはそのまま部屋に入った。

 

 

 □

 

 

 翌日の6時頃。

 珍しく早急に対処する仕事がない私は、ホテルの外をぶらぶらと散歩していた。

 まだ陽が昇りきっていない空は薄暗くて、少し肌寒い。らしい。シロガネ山に登り慣れてしまったせいか、そんな感覚は忘れてしまった。

 裏道に出た。

 都会の裏側らしくアングラな雰囲気を感じる。とは言っても、今は特に犯罪ごとが起きている気配はない。

 しいて言えば、先程から私の後をつけてきている人間がいるくらいだ。

 私はその場で立ち止まり。

 

「どちら様ですか? 先程から後ろをつけてきているのは気がついています。今すぐ出てきなさい。出てこないなら、敵と判断しますよ」

 

 ボールを構えて警告する。

 すると焦ったのか、つけてきていた人間はすぐに姿を現した。

 私はその顔を見て拍子抜けしてしまった。

 そう、私をつけてきていたのは昨日ユウリと仲良くなっていたマリィだったのだ。

 

「……どうやって気がついたと?」

「気配ですよ。人の気配くらい誰でも感じ取れるでしょう?」

「ちょっと何言ってるか分からないんだけど……」

「おやそうですか。まあ、ガラル地方は平和ですからねぇ。カントー地方ではこのくらい出来ないと危険ですよ。いつ闇討ちにあうか分かりませんから」

 

 ロケット団とか、ロケット団とか。

 タマムシシティの裏路地なんて歩いたら即ポケモンバトル仕掛けられる環境だったからな。まあ、タマムシシティのアジトの襲撃に参戦したせいで恨みを買ったせいだと思うが。

 

「カントーって怖い……」

 

 おっと、またもカントーの風評被害を生んでしまったようだ。

 まあ、すべて嘘ではないし別にいいか。

 

「それはそうと、マリィはなぜ私の跡をつけていたんですか?」

 

 おそらく闇討ちではないだろう。感じた気配に殺気は含まれていなかった。

 マリィは胸の前で手をもじもじと恥ずかしそうにさせながら

 

「……そ、そのトレーニングしてたらオレンジさんが出てくるのが見えたからつい」

「反応に困るんで、核心まで言ってください」

「昨日ユウリにガブリアスを見せてほしいって言ったら、あれはオレンジさんのポケモンだって聞いたから……それで」

「ああ、なるほど」

 

 要するに、ガブリアスが見たくて私の跡をつけてきたのか。

 たしかに、あの時のガブリアスの写真はsnsでかなり拡散されていた。その情報の中にはユウリが仕切っていた点も書かれていたし、彼女のポケモンだと誤解するのは納得いく。

 しかし、一度自己紹介をしただけの大人に図々しくお願いするのも気が引けて、中途半端な感じになっていたのか。

 見た目に反して普通にいい子だった。

 

「要するにガブリアスを見せてほしいという話ですよね?」

「う、うん。そう」

「別に構いませんよ」

「本当に!?」

 

 マリィはずいっと顔を近づけてくる。

 こんなにあっさり了承されるとは思っていなかったようだ。

 

「ポケモンを見せるくらい減るものではありませんから。出てきなさい、ガブリアス」

「ガバァ!」

 

 朝だと言うのに元気に登場してきたガブリアス。これはボールの中から会話を聞いていたな。

 相変わらずのお調子者っぷりを見せつつ、ガブリアスはマリィにのっしのっしと近づく。

 マリィは目を輝かせながら。

 

「ふあああ、ガブリアス! 本物や!」

 

 と大興奮していた。

 クールな見た目に反して子供らしく興奮を表に出すタイプのようだ。ユウリとは違うな。あの子は人見知りだがら、初対面ではわりと物静かだ。

 マリィは爛々とした目で私の方をちらりと見て。

 

「さ、触っていい?」

「お好きにどうぞ」

「ガバァ」

 

 ガブリアスもどこでもいいぜとばかりに腕を広げていた。

 許可が出たマリィは、震えている手をゆっくりと近づけていき、ガブリアスの群青色の肌に静かに触れた。

 

「本物はけっこうザラザラしてる。フィギュアと全然違う」

「本当にガブリアスキッドが好きなんですね」

「うん。小さい時、映画をイッシュで見たんやけど、その時のガブリアスキッドが本当に格好よかったんだ!」

「え、イッシュ……」

「どうかしたと?」

「い、いえいえ、なんでもありませんよ」

 

 危ない、危ない。不意に自分の出演作のファンと出会ってしまったせいで、あの時の記憶がフラッシュバックしてしまった。

 私の態度を不審に思ったのか、マリィはジロジロとガブリアスを観察し始める。

 まずい。イッシュ版が好きと言うことは、持っているフィギュアもイッシュ版の可能性が高い。ポケウッドは無駄にリアリティを追求しているせいか、グッズ一つ一つのクオリティが高い。フィギュアも例外ではなく、様々な技術を駆使して私のガブリアスそっくりに作られている。

 

「この頭の傷、フィギュアのガブリアスにそっくり……そういえば声も、よく聞くと映画のガブリアスそっくり」

 

 いや、ファンすぎん? 

 私は持ち主だから自分のガブリアスの鳴き声を判別することができるが、そうでなかったらポケモンの個体を鳴き声で判別するなんて普通出来ないぞ。

 それよりもどうしよう。これはほぼ私のガブリアスが映画に出ていたガブリアスだとバレている。

 

「ねぇ!」

 

 来たー!

 

「もしかして、このガブリアスってポケウッドの映画に出たことある!?」

「……まあ、一度だけ」

 

 もはや誤魔化せないと観念した私は正直に答えた。

 

「やっぱり、やっぱりそうなんや! この子があのガブリアスなんやぁ」

 

 ん? なんだろうこの感じ。予想通りガブリアスのことはバレているのだが、少し違和感があるというか。

 

「この子がガブリアスキッドと一緒にハチクマスクと戦ったんだもんね」

 

 あ、そうか。私がガブリアスキッドだと気がついていないのか。たしかに、あの役はずっと仮面を付けているから顔は分からない。声もかなり声色を変えてやっていたから気がつかなくてもおかしくない。

 これはまだ誤魔化せる。

 

「はい。ちょっとした縁で出させていただきましてね。ねぇ、ガブリアス」

「ガバァ?」

「ね? 出たのはあなただけですもんね?」

 

 ガブリアスは私の気持ちを察したのかコクコクと頷いた。

 私たちのやりとりを傍観していたマリィは、

 

「もっと、映画の話とか聞きたいんだけどいい?」

「え、ええ構いませんよ!」

 

 その後、バレないように必死に誤魔化した。

 

 

 □

 

 

 あの後ユウリにも話が伝わったらしく散々問い質された。

 ファンの熱意は凄まじい。ああいうテンションが面倒だから、あまり大っぴらにしたくないのもある。

 私は疲れのあまりベッドに身体を投げ出す。

 そんな時、スマフォがバイブした。相手を見てみると、こんな状況を作りやがった元凶からだった。

 

夏『久しぶり。今少し時間いいかしら?」

 

橙『よくありません』

 

 そう送って電源を切った。

 こんな疲れている時に、あんな疲れる人間とやり取りなんてしたくない。私はそのまま夢の中に旅立った。

 

 

 □

 

 

「電話も出ない……ちっ、電源を切ったみたいね」

 

 苛立ちを隠すことなく、電話を乱暴にベッドに向かって投げる。

 整った顔立ちに外に跳ねた髪は昔のロングヘアーの名残りを残している。風呂上りなのか、バスローブに身を包んでいる。

 彼女はナツメ。ヤマブキシティのジムリーダーにして、ポケウッドの人気女優であり、オレンジの幼馴染である。

 しかし、その仲はたいへん険悪である。今も連絡を拒否されたところである。

 

「お風呂お借りしました、ナツメさん!」

 

 虫の居所が悪いナツメに元気な声でお礼を言う声。

 可愛い系の整った顔にいつもツインテールにしている髪は下ろしていてロングヘアーになっている。バスローブから溢れそうになる胸元は、3年間でさらにバストアップした。

 彼女はメイ。ナツメと同じく大人気女優であり、オレンジとは3年前に旅をしていた。

 ひんにゅ……スレンダーなナツメは歩くたびに揺れる男の夢を睨みつける。

 その目線に気がついたメイは、むふふと笑い。

 

「そんな睨みつけないでくださいよ〜。ナツメさんの胸だって、一部のマニアには人気ですから」

「喧嘩売ってるなら買うわ。サイコキネシ……」

「まあまあ、そんなカリカリしないでくださいよぉ。その様子だと、オレンジさんにフラれたんですか?」

「私があれに恋心を抱いている前提で言わないで。単に連絡を無視されただけよ」

「やっぱりフラれたんだ」

「ぶっ殺」

 

 キレたナツメのサイコキネシスで小物が飛んでくるが、メイは慣れたようにひょいひょいと最小限の動きでかわす。

 余裕そうなメイにナツメはギリリと唇を噛んだ。 

 修羅場のような空気だが、メイはマイペースにドアの方に歩きながら。

 

「はぁ、久しぶりにオレンジさんの声聞きたかったのにな〜」

「本当に物好きね。あれのどこにそんな惹かれるのか私には理解不能だわ」

「理解されなくてけっこうですぅ。メイの旦那様はオレンジさん。初めて出会った時から決めたんだもん」

 

 不貞腐れたように言いながら、メイは上着を羽織り部屋から出て行った。

 エレベーターに乗りホテルのロビーに降りる。

 自販機を見つけ、ととと歩いていく。お金を入れるとピッという音と共にボタンに電気が灯った。

 メイは迷うことなくオレンの実ジュースを押した。

 

「3年前は失敗しちゃったけど、次こそはオレンジさんの心をメイに振り向かせてみせるよ」

 

 

 

 





 Q.好きな服は?

橙「破けにくい服ですね。よく服が再起不能になるので、理想はあくうせつだんに耐えられるくらいの服です」

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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