トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
明朝、ホテルに隣接するフィールドに私とユウリは対面していた。
ジム戦本番まで残り2日に迫った。今日から特訓に追い込みをかけることにする。
具体的には今までは基礎的なほのおタイプ対策を叩き込んできたが、これから行うのは実践的な対策だ。
今日のテーマを伝えられたユウリは首を捻りながら。
「実践的な対策って、今までと何が違うです?」
「基礎はあくまで基礎。実戦では典型的な展開などほとんど起こりません。なぜなら、相手も典型的な展開など知っているからです。相手が容易に予測できる手など打つのは愚策ですからね。つまりは今まで詰め込んできた基礎を応用して、様々な展開に対応できるようにしなくてはならないということです」
「ふーん。要するに前の2つのジムとやることはかわらねぇですか」
「そうと言いたいところですが、あなたは他のチャレンジャーと事情が異なります」
「え?」
私の言葉にユウリはポカンと口を開ける。
「あなたは他のチャレンジャーに比べて注目度が桁違いに高い。そのためカブさんもあなたのバトルを見ている可能性があります。要は情報が他よりも知られているから、さらに対策を重ねないと力負けしてしまいます」
後、この前カブに連絡した時に今度私の弟子が挑戦するのでお手柔らかにと送ったら、燃え盛るカブさんスタンプが送られてきた。多分カブさん、私の弟子と聞いて相当意識してる。
それに嘘はついていない。カブの注目度が高いのは主に私が原因だが。
ユウリは私の言葉を鵜呑みにしたのか、なるほどと頷いていた。
「それでは、ほのおタイプの対策に移りましょう。前に話したほのおタイプの特徴を言ってみなさい」
「はいです! えっと、まずほのおタイプの特徴としては直接攻撃、特殊攻撃両方に威力の高い技を持つ攻めに特化したタイプです。さらに状態異常のやけどを負うと体力が減らされる上に攻撃力が下がるです」
「その通り。しかし、それはあくまで基礎知識です。カブさんレベルの使い手になれば、ほのおを守りに利用することも普通にやってきます」
「うえぇ、マジですか」
「マジです。だからこそ、今から実践的なほのお技を混ぜたバトルをやります。しっかり、燃やされなさい」
「燃やされる前提!?」
「別に勝てるなら勝っても構いませんよ。勝てるなら、ね」
「うぅ。や、やってやるですよ!」
自信はなさげだが、戦う気持ちは失っていないようだ。
「それではさっそくやりますか。バトルは3対3のシングルバトルです」
「はいです!」
私たちは合わせるようにボールを構えて。
「いきますよ、シャンデラ」
「シャンシャン」
「いけです、ハスブレロ!」
「ハッス!」
私が出したのはゴースト・ほのおタイプのシャンデラ。大きなシャンデリアのような見た目で、ランプの炎は青く燃え盛っている。
ほのお技の威力だけならウインディに劣っていない。私のポケモンの中でもトップクラスの特殊攻撃力を誇っているのだ。
そして、いつも通り先攻はユウリだ。
「ハスブレロ、フィールド全体にバブルこうせんです!」
「ハッス!」
「ほお」
ハスブレロの口から出てきた大量のシャボン玉が雨のようにフィールド全体に降り注ぐ。
これではどこに逃げようともシャボン玉に当たってしまう。だからこそ、回避方法は一つしかない。
と誘導しているのだろう。他に手はあるが、これはほのおタイプの戦い方の修行、あえてユウリの考えに乗ってあげよう。
「シャンデラ、上空にねっぷうです」
「シャンシャン!」
高熱の風が上空に放たれると、シャボン玉は耐久性に欠けるのか、パンパンと音をたててわっていく。
すると、プシュゥゥゥという音が鳴りシャンデラの周りをしろいきりが囲っていく。
ユウリは上手くいったとばかりに顔を綻ばせた。
「かかりやがりましたね!」
「なるほど、水蒸気を利用して霧を発生させたのですね。なかなかやるじゃないですか」
「まだまだ行くですよ! ハスブレロ、バブルこうせん!」
「ハッス!」
「シャンデラ、おにびを使って防ぎなさい」
「シャン、シャンシャンシャン!」
シャンデラはおにびをサイコキネシスでクロス状に高速回転させて、向かってくるシャボン玉をすべて防いだ。
そして、その勢いのまま風で霧も晴らした。
ノーダメージのシャンデラを見て、ユウリは目を剥いていた。
「はぁ!? 何が起こりやがりましたか!?」
「いくつかのおにびをサイコキネシスで高速回転させて、360度防げる防御壁を作っただけですよ。簡単な話です」
「いやそれ言うのは簡単だけど、やるのは相当難いやつですよ!? というか、360度ってどうやって破るですか!」
「それくらい自分で考えなさい。対戦相手が戦略の攻略法を教えてくれると思ってるんですか?」
「そんなめちゃくちゃ戦法誰も使わねぇですよ!」
大して強い戦法でもないぞ(すっとぼけ)。
こんなものレッドならフシギバナのハードプラントで正面突破してくる。
まあ、ジム戦で使われたらやってられないレベルではあるが。
「文句ばかり言っているとすぐにやられますよ。シャンデラ、シャドーボール」
「シャンシャン!」
闇の球が空気を裂いて向かって行く。
「ハスブレロ、れいとうパンチで打ち破れです!」
「ハッス!」
避けられないと判断したのか、氷の拳で相殺させようとしたが、あっさりと押し戻されて直撃した。
「ハッスッッ!?」
「ハスブレロ!?」
吹っ飛ばされたハスブレロは、傷を負いながらもかろうじで立ち上がった。
「くっ! ハスブレロ、しろいきりで自分の姿を隠せです!」
「ハッス」
ハスブレロはしろいきりに包まれて姿を隠した。
「甘いですね。シャンデラ、ねっぷうでまとめてやってしまいなさい」
「シャンシャン!」
「ハッスッッ!?」
霧全体を覆うよう熱風が霧ごとハスブレロを飲み込んだ。
直撃したハスブレロは、目を回してぐったりと倒れ込んだ。
「ハスブレロ戦闘不能ですね」
「うぅ、お疲れ様ですハスブレロ」
悔しそうに表情を歪ませながら、ハスブレロをボールに戻した。
「今のようにほのお技は範囲が広い技が多いです。そのため、しろいきりで姿を隠しても、効果は薄いのです。次からはしろいきりの使い方をもう少し考えなさい」
「はいです」
私の言葉にユウリはがっくりとしながら頷いた。
バトルはまだまだ続く。ユウリの次のポケモンは。
「行くですよ、ホルビー!」
「ホルッビ!」
「2体目はホルビーですか。シャンデラ、一旦戻りなさい」
私はシャンデラをボールに戻して、次のボールを持つ。
「行きなさい、マグカルゴ!」
「マッグ」
私が繰り出したのはマグカルゴ。ほのお・いわタイプで、ほのおタイプには珍しく防御力の種族値が高いポケモンである。
ただ、みずとじめんが4倍ダメージとなる上にすばやさもかなり低いため、バトルで使うのには人気がない。
私のマグカルゴの場合、そもそもバトルがそこまで好きじゃないため、おそらく他のポケモンより実力は低いだろう。しかし、カブさんの対策をするのにマグカルゴは最適といえるから、ちょっと無理してマグカルゴに頼んだのだ。
「さっそく行くですよ! ホルビー、マッドショット!」
「ホルッビ!」
「マグカルゴ、かたくなる」
「マッグ」
マグカルゴは向かってくる泥玉をその身で受けた。
「うえ!? 効いてないですか!?」
「ダメージはありますよ。ただ、私のマグカルゴはのんきな性格でしてね、あまりダメージを表情に出しません」
「紛らわしいですね! でもダメージがあるなら続けるだけです! ホルビー、もう一度マッドショット!」
「もう一度かたくなる」
またも泥玉が直撃するが、マグカルゴは表情一つ変えない。
「ああもう! 本当に効いてるですか!?」
「うるさいですね。次はこちらから行きますよ。マグカルゴ、がんせきふうじでホルビーの周りを囲いなさい」
「マッグ!」
放たれた巨大な岩は、ホルビーを囲うように立ち塞がった。
岩の中に孤立させられたホルビーは戸惑い、ユウリも経験したことない光景は混乱しているようだ。
そんな隙を作ってはつかないわけにはいかない。
「マグカルゴ、のしかかり」
「マッグ!」
青空教室になっていた天井部分からマグカルゴがふっていく。逃げ場がないホルビーはのしかかりをまともに受けた。
土煙があがる。
「ほうこれは」
土煙が晴れるとおもしろい光景が広がっていた。
なんとホルビーはボロボロになりながらもマグカルゴを捕まえて拘束していた。ほのおのからだであるマグカルゴを拘束するのは相当つらいはずだが、のしかかりの効果でマヒ状態になったおかげでやけどの効果を受けないのか。
「ホルビィィ」
「マグッ、マグッ」
マグカルゴは必死に拘束を解こうとするが、ホルビーの捕まえ方が上手いのか解ける気配はない。
ホルビーの頑張りにユウリはにかりと笑い。
「ありがとうですホルビー! そのままかわらわり!」
「仕方ありませんね。マグカルゴ、ふんえん!」
「ホルッビ!」
「マグァァ!」
ふんえんとかわらわりがぶつかり合うと大爆発が発生した。
黒い煙の中からはどらちも出てこない。煙が晴れると。
「……ホルッビ」
「マグ、マグ……」
目を回したホルビーと、ギリッギリで立っているマグカルゴがいた。
ホルビーの負けだ。
「ぐぅぅ、惜しかったです……」
「頑張りましたね。マグカルゴはバトル向けに育てていないにしても、十分強いです。あれだけ追い詰められれば十分ですよ」
「そうですか? ホルビーお疲れ様です」
「マグカルゴ、ゆっくり休んでください」
私とユウリはポケモンたちをボールに戻した。
「カブさんのトロッゴンも似たような戦法でくる可能性があります。しっかり、復習しておきなさい」
「オッケーです」
「それではラスト行きますよ」
「まだラストじゃねぇですよ! 次は私が倒すです!」
2人はボールを構えて。
「行きなさい、ウインディ」
「ガアウ!」
「勝つですよ! ラビフット!」
「ラビフッ!」
私が繰り出したのはウインディ。私の持つほのおタイプの中では一番強いポケモンだ。
カブもウインディを使用するということで、ちょうどいいデモンストレーションだ。
「きやがりましたね、ウインディ!」
ユウリはゲームのラスボスを相手するような顔でウインディを見る。ウインディは遠近どちらの攻撃もできてバランスがいいため、これまで何度も指導バトルをやっている。
そのせいか他のポケモンよりも警戒しているようだ。
「ウインディ、だいもんじ」
「ガアウ!」
「ラビフット、ニトロチャージでつっこめです!」
「ラビラビラビ、ラビフッ!」
だいもんじを地面に当てて炎の壁を作り視線を遮る、私のウインディの得意戦法に勘付いたユウリは炎が壁になる前に突破する手を使った。
そのだいもんじはコントロールするために70%くらいに威力を抑えてある。ほのおタイプのラビフットなら、何とか突破できるだろう。
私の予想通りラビフットは、炎の壁を突き破った。
「そのままにどげりです!」
「ラビフッ、ラビフッ!」
ほのおを突き破った勢いのまま、ラビフットは接近戦に持ち込もうとする。
「ウインディ、しんそくでかわしなさい」
しかし、ウインディは簡単にかわした。
「ウインディ、地面に向かってインファイト」
「ガアァァァゥゥ!」
地面に前足を猛スピードで打ち付けると、砕けた地面がすなあらしのようになってフィールド全体の視界を遮る。
「全然見えねぇです!? どこ行きやがりました!」
「あなたが焦ってどうするんですか。ウインディ、だいもんじ」
「ガアウ!」
斜めから飛んできた大の字の炎は、反応が遅れたラビフットに直撃した。
「ラビフッッ!?」
「ラビフット!?」
後ろに吹っ飛ばされたラビフットはフィールドを引きずるように転がるが、何とか立ち上がった。
追撃する手もあるが、そこでラビフットに捕まって接近戦に持ち込まれるリスクがある。ここは深追いせずに様子を見させることにする。
「ぐぅ」
ユウリは唇を噛む。
おそらく私が追撃をしてこないことに対してだろう。
簡単な話だ。ラビフットは技の構成的に接近戦に特化している。しかし、近接に持ち込もうとしてもしんそくで簡単に距離をとられてしまう。要するに相手を攻撃する手がないのだ。
接近戦特化。
それはラビフットの性格と種族値的にぴったりのスタイルであると同時に最大の弱点ができてしまう原因になる。
今までのレベルなら騙し騙しやってこれたかもしれないが、これから先そんな分かりやすい弱点があれば、ほぼ全てのトレーナーがついてくる。
すなあらしが止んだ。
さて、そろそろ決めよう。
「ウインディ、しんそくの速度からフレアドライブ!」
「ガアアアゥゥ!」
しんそくのすばやさを超越して速度のフレアドライブは赤ではなく、青い炎となってラビフットを貫いた。
爆発が起こると、煙の中からウインディが飛び出してきてシュタッと優雅に着地する。
煙が晴れると、目を回したラビフットが出てきた。
「ラビフッ……」
「ラビフット戦闘不能ですね。お疲れ様でしたウインディ」
「ガアウ」
首元を撫でると、ウインディは気持ちよさそうに目を細める。
ユウリの方を見てみると、目を回したラビフットを介抱していた。
「お疲れ様ですラビフット。ごめんね、最後慌てちゃったです」
「ラビフ」
ドンマイとばかりににかりと笑うラビフット。あのラビフット、人間の男なら相当イケメンだろうな。
なんてくだらないことを考えながら、ユウリの方に歩いて行く。
「いいバトルでした。少し心配でしたが、悪くないと思いますよ」
「そうですか? ……でも、課題もしっかり見えたです。ラビフットの弱点や、とっさの判断能力」
「そうですね」
「だから、もう一回バトルお願いするです!」
これは驚いた。
今まではもう一戦と言うと嫌そうな顔をしていたのに、自分から求めてくるとは。
これはもしかして、ライバルが出来てきて刺激を受けたのか?
何はともあれ、弟子がやる気なら応えない師匠はいない。
「はい、分かりました。すぐにやりましょう」
その後めちゃくちゃバトルした。
シャンデラ
イッシュ旅(1回目)でゲット。人を驚かすのが好きで、トウヤを驚かせまくって泣かたところをオレンジが気に入ってゲットした。
マグカルゴ
ジョウトの旅でゲット。あまりバトルが好きではない。しかし、その特性を活かして普段はウツギ研究所に貸し出して、研究の手伝いをしている。
Q.研究以外にどんな仕事してるんですか?
橙「そうですね……まず、オーキド研究所の経理全般。ジョウトの歴史研究の協力。デポンのメガシンカ研究の協力。シンオウでは進化研究とカンナギタウンの町おこしの副責任者。イッシュではスイーツチェーンのアドバイザー。アローラではリーグの協力者をしていますね」
Q.終わるんですか?
橙「普段はあまり仕事は重ならないのですが、重なると一気に忙しくなります。まあ、寝なければ余裕ですがね」
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