トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
シンジュ団の集落を出発して数時間ほど歩いた頃、大きい木の門が見えた。シンジュ団の門よりも大きい。
「ここがコトブキムラよ」
なるほど、ここが後のコトブキシティなのか? 土地の形はだいぶ違うようだが?(コトブキムラは後のミオシティ)。
まあ、細かいことはいいか。なんせようやくヒカリと会えるのだから。
「ショウに早く会いたいのは分かるけど、まずはデンボクさんに挨拶しないとね」
「見透かされてましたか」
「そんなにソワソワしてたら分かるよ」
クスクスとカイは笑う。少し恥ずかしいな。
カイは門番と少し話したあと、私に手招きをする。どうやら、入る許可は得たようだ。
それに倣い門をくぐると、ドラマや映画でしか見たことがないレトロな街並みが広がっていた。これには少し感動してしまう。
「あの大きな建物がギンガ団の本部よ」
「なるほど」
道中カイと話をしていたおかげでこの時代の団の立場が大体理解できた。
団とはいわゆるその土地を守護する組織を指し、その頂点が団長なのだ。つまり私を散々苦労させた悪の組織とは違い、町長や首長の意味合いが強い。
ギンガ団もポケモンの調査や街の統治、拡張など幅広くやっているらしい。
「私はちょっとデンボクさんに話通してくるから、ちょっと待ってて」
「了解しました」
言われた通り本部の前で待機している。すると、少ししてカイが戻ってきた。
「どうやら今はショウもデンボクさんも外に出てるみたい」
「それは残念ではね」
「だから、先に訓練場の方に行っていいかな? そこに初めに言ってた時空の迷い人がいるの」
「もちろん」
どのみち会うのだし、それが得策だろう。
「それにしても訓練場とは、その方はこの村で訓練を行っているのですか?」
「うーんある意味そうというか、何というか。バトルしてるみたいだけど、面白い規則でやってるみたい」
どうやら、団長本人もあまり理解していないらしい。だか、話を聞く限りではバトルの腕に覚えのある人物のようだ。
少し歩くと、相撲場のような広場に到着した。どうやらここが訓練場らしい。
「じゃあ、呼んでくるね。ノボリさーん」
ノボリ? その名前どこかで……?
「はい。これはカイ様、ご無沙汰しております。今日はどうされましたか?」
「会わせたい人がいるの」
「会わせたい人とは……?」
「あの人よ! オレンジっていうの!」
特徴的なその車掌帽子、そしてボロボロになっているが丈の長い車掌服、そして血色は悪いがその顔。どっからどう見ても、サブウェイマスターのノボリだった。
私の前に来たノボリは不思議そうにしながらも口を開く。
「初めまして、わたくしノボリと申します」
そうか、記憶喪失だったな。それならば私のことを覚えていないのも納得だ。
「オレンジです。初めましてとはいいません」
「というと?」
「私はこの地に来る前のあなたと会ったことがあるからです」
「!?」
ノボリさんは分かりやすく驚いた顔をしていた。
「どういうことですか?」
「私も時空の向こうからやってきました」
「本当だよ。オレンジはショウの本当の名前を知ってたし、シンオウ様のことも知ってた」
「元々はヒカリを連れ帰るために来ましたが、カイの要請であなたも連れ帰る手筈になっています」
「すいません。頭が混乱していて……」
もしかしたら私の顔を見て何か思い出そうとしているのかもしれない。そういえば、私の携帯にたしか……。
私は携帯からとある写真を出す。
「これがあなたと面識のある証拠です」
見せた写真は私とトウヤがバトルサブウェイをクリアした時に記念に撮ったものだ。
ぶっきらぼうなトウヤと、決めポーズをしたノボリとクダリが写っている。
「本当だ! これノボリさんだよね!? それにノボリさんに似た人がもう1人……」
「……失礼ながらオレンジ様。この私と同じポーズをしている人物は?」
「クダリさんです」
「そうですか……クダリ、クダリ……」
刻みつけるように繰り返す。
「……いつも心に引っかかっておりました。記憶がないはずの私の中に、同じ顔をした人間のことがいつもいたのです。この答え一生分からないのではないかと思っていましたが、今分かりました」
ポツリと液晶に水が落ちる。しかし、雨など降っていない。その水はノボリの目から落ちたきたものだ。
「……クダリ……クダリ……今ようやく思い出しました」
その涙は重く、切なく、そして美しかった。
□
その後しばらく写真を見ていたと言われたので、携帯をノボリに預けたまま私たちは訓練場を後にした。
そろそろヒカリも帰ってきているだろうと思いギンガ団の本部に向かっていると。
「ありがとうね」
「何がですか?」
「ノボリさんの記憶を取り戻させてくれて」
「私が偶然ノボリさんと知り合いであり、偶然写真を持っていた。本当にただの偶然ですよ」
「それでもありがとう。シンジュ団の団長としてもそうだし、私自身として感謝してるの」
そこまで言われて謙遜するのも失礼か。
「それでは素直に受け取っておきましょう。お礼はおいしいご飯でも奢ってもらえれば」
「う、うん! どんときなさい!」
財布見ながら足りるか計算しているカイを横目に、本部に戻ってきた。
心なしかさっきより街のテンションが高いような。街頭からは誰かを呼びかける声が聞こえる。とても人望に厚い人物のようだ。
「どうやらショウが帰ってきたみたい」
どうやら、あの声かけはヒカリに向けられたもののようだ。そういえば、ヒカリはこの世界では英雄だったな。人気があるはずだ。
まあ、なんにせよこれで後は鼻神をミンチにして、ヒカリとノボリを連れて帰るだけだ。簡単な話だ。
ヒカリらしき人影が見えると、カイは手を振って呼びかける。
「ショウ〜!」
ヒカリも気がついたのかこちらに近づいてくる。
「カイと……え? あ、オレンジに似た人?」
「本人ですが?」
「あ、本人……え? えええええええ!?」
英雄とは思えない絶叫だった。まあ、無理もないが。
「ど、どうやってここに来たの!?」
「それはかくかくしかじかです」
「そ、そうなんだ」
「何で今ので分かるの!?」
「未来の技術なのでお気になさらず」
嘘ではない。たぶん。
まだ驚きがやまない様子のヒカリに、私は手を差し伸べ。
「帰りましょう、ヒカリ」
これでヒカリは私の手をとり、あとはhappy endのはずだった。
しかし、予想に反してヒカリの顔は冴えない。
「ごめんオレンジ! 私は帰らない!」
…………は?
「……あ、アルセウスのことを気にしてるのですか? それなら安心してください。私が2度とヒカリに近づきたくなくなるくらい心をへし折ってあげますから!」
「そうじゃないの……。ごめん!」
たまらずといった様子でヒカリは背を向けて走っていった。
「ちょっとショウ!? 追わなくていいのオレン……ジ……。し、死んでる」
ヒカリに拒絶された私は真っ白に燃え尽きたジョーのようだった。
補足……オレンジはヒカリを妹のように可愛がっています
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
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オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
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オレンジが女の子だったら
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オレンジの日常