トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
今回は真面目な回です。嘘じゃないです。
宝物庫はジムの入り口から右に少し行ったところにあった。
歴史を感じさせる重厚な扉をキバナが鍵を差し込む。回すとガチャリと年季の入った重い金属音が響いてきた。
「開いたぜ。ついて来な」
キバナに案内されて扉の中に入っていく。暗い室内の先に一筋の光。その正体は太陽光だ。
青空に伸びるように長い階段がU字に連なっている。
「うげ......」
予想以上に長い階段にソニアは露骨に顔をしかめる。
ソニアは研究者らしく体力がないからな。この傾斜の階段はつらいだろう。
そんなことには気が付かず、キバナはすたすたと歩き進める。私もそれに続いていく。ソニアはこの先の資料を求めて覚悟を決めて登り始めた。
しばらく歩くと、逆U字型の大きな入り口が見えてきた。
「あれが宝物庫ですか?」
「そうだ。まあ、正確にはここも宝物庫の一部なんだが、大事なものが保管されてるのはあそこってわけだ」
「なるほど」
「ぜぇ、ぜぇ......やっとついた」
キバナが解説してくれるが、肝心のソニアはそれどころではなかったようだ。
中に入るとそこは予想に反して、かなり殺風景な場所だった。てっきり、もっと貴重な文化財らしき物が保管されているのだと思っていたが、壁に大きなタペストリーが四枚貼られているだけだ。
しかし、ソニアはそれを見た途端目を輝かせた。そして、息を切らせていたのも忘れてタペストリーに駆け寄っていく。
「すごい! これが古代人がガラルの歴史を記したタペストリーなのね!」
「ああ。とはいっても、俺様にはいまいち意味が分からねえんだよな~。こんなものにどんな意味があるんだろうな」
「そうですね。絵だけでは分かりにくいですね......ソニア、このタペストリーの調査資料はないんですか?」
「ちょっと待ってね」
そう言ってソニアはタブレットの資料を漁っていく。
「あった! えーとね、おばあさまが昔研究していた時の資料によると......一枚目が願い星を見る若者。二枚目が災厄が訪れ、困惑する若者。三枚目が災厄を追い払う剣と盾を見る若者。そして四枚目が王冠をかぶる若者。これはガラルに王国ができた時の物語を伝えるタペストリーらしいわ」
「へえー。これってそういう意味だったんだな」
「あんたは少しは知っておきなさいよ。ここの管理者でしょ?」
「え~、興味ねえから仕方ねえだろう」
2人が朗らかな雰囲気で話している横で私は考えた。
まどろみの森にあった墓に刻まれた言葉を信じるならば、あの剣と盾はザシアンとザマゼンタだ。そしてその墓に眠っていたのはあの二人の若者だ。
しかし、ここでもあの二体の存在が抹消されている。どういうことなのか。
「ソニア。あのタペストリーがいつ作られたものか分かりますか?」
「ええ!? ん~と、ここには古代王国により作成されたとしか書いてないけど......」
それはそうか。まどろみの森の方は発見されていないのだ。そこを細かく調査する優先度は低い。
「何でそんなこと知りたいの?」
「いいえ。何となく気になっただけです」
ソニアには伝えるべきか? しかし、ここまで存在を知られてこなかったポケモンだ。下手に広めてしまうと、自然関係を崩してしまう可能性がある。
ソニアが自力でたどり着いてしまうなら仕方ないが、私が恣意的に教える必要はないか。
それはそうと、この絵を見ているとどこか引っかかりを覚えるのだが。
「ところで、この絵どこかで見たことありませんか?」
「......たしかに。どこかで見たような......あああ!」
ソニアは何かひらめいたのか、急に絶叫した。
「二枚目! 前に買った絵本のブラックナイトと同じ! ......どういうこと? ブラックナイトは実際に起きた災害のはずでしょ? でも、普通災害が人の手によって追い払えるはずがないし......絵本がでたらめ? それともブラックナイトが事実と異なってた? ああもう、分かんない!」
「まあ、考えられる仮説とすればブラックナイトが追い払える災害だったということですかね?」
「追い払える災害......?」
「要はポケモンの力により起こった可能性があるということです」
「ポケモン!? でも、ガラル全体を危機にさらすような力を持つポケモンなんているの?」
「いますよ。例えばシンオウ地方には時間と空間を司るポケモンがいます。ホウエン地方には海・地面を司るポケモン等々、人智を超えるほど強大な力を宿したポケモンというのは結構いるんです」
「ブラックナイトもそのポケモンと同レベルってことかよ?」
「あくまで仮説です。ソニアが言った通り、絵本の方が間違っていて、ブラックナイトとこちらの若者が立ち向かった災害は別物という可能性も十分あります」
むしろそちらの方が可能性が高い。所詮は絵本だ、偶然このタペストリーを知っていた人間が作った可能性もある。
ソニアは口元に手を当てながら。
「これはもう少し調査してみる必要がありそうね......」
「もしかしたら、まだ発見されてない遺跡があるかもしれませんしね」
「そうね......キバナ、今日は協力してくれてありがとう」
「おう。また頼み事あったら言えよ」
「私からも、希少な機会をありがとうございました」
同じく礼を言うと、キバナは笑顔で返してきた。
私が宝物庫から出ようとすると、キバナはソニアに何かを耳打ちしていた。
「な、何言ってんのよ!」
「ははっ、図星か......まあ、いいんじゃね? ちょっと面倒そうなやつだけど、ソニアにはピッタリだと思うぜ?」
少し気になったが、二人っきりで話したいことなのだろう。
私は先に宝物庫から出ることにした。
□
ソニアは熱くなった頬を押さえながら、階段を降りていた。なぜ熱いのか、それはキバナに言われた一言が原因だった。
『ソニアって、オレンジのこと好きなんだろ?』
不意に言われたこの言葉に、ソニアの心はかき回された。意味が分からない。
ソニアは呑気に頭の後ろに手を組みながら歩いているキバナに。
「どこをどう見てそう思ったのよ......」
恨みがましく言う。
キバナは特に気にした様子もなく。
「ん~、何となくだな」
「何よそれ!」
「しいて言うなら、雰囲気? なんか、すげえ信頼してるなぁって。ソニアが男をあんな信頼してるの見たことねえもん」
「それはあんたとダンデ君がバカだったから......」
そう言いながらソニアは、自分のオレンジに対する評価を思い出す。
たしかに少し直してほしいところはあるが、性格に大きな問題もないし、研究者だから話も合う。何よりオレンジの優れた知識と洞察力には舌を巻く場面が多々ある。そういう意味では尊敬の念すらある。
少なくとも、キバナやダンデよりも男性として見れるだろう。
しかし、恋心があるかと言われると自信はない。今までそんな相手ができたことがない故の経験不足だ。
頭を使いすぎて疲れたソニアはため息をつく。
「はあ......ともかく、私はオレンジのことなんとも思ってないわよ。たしかに他の男よりも信頼しているかもしれないけど、それはビジネスパートナー的なものにすぎないの」
「わかったわかった。変なこと言った俺が悪かったよ」
キバナが折れて、そこで話は終わった。
そして長い階段をようやく降り切り、入り口を出ると......
オレンジがツインテールで巨乳の見知らぬ女の子に抱き着かれてデレデレ(ソニアの主観)していた。
「はあ?」
ソニアの声は絶対零度よりも冷たかった。
Q.どうやって仕事してるんですか?
橙「今は主にタブレットやパソコンなどの機器を利用していますが、重要な書類はデータが消えるとまずいのでファイルに紙状態で保管しています」
※次回から少しだけ、質問コーナーを弟子トークにしてみます。
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
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オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
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オレンジが女の子だったら
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オレンジの日常